日本政府の放漫財政が続けば、それが原因となって日本の通貨は崩壊する可能性が高くなる。それにも拘わらず、日本の与野党の政治家は積極財政を主張して財務省と対立している。その先棒を担いでいるのが怪しげな経済学者や経済評論家である。
日本の与野党政治家たちは完全にポピュリストであり、どちらが政権をとってもこれ迄通り効率の悪い政府運営により多額の財政赤字を積み重ねるだろう。現在でも政府の負債はGDPの約2.5倍であり、国際比較ではダントツ一位である。財務省の役人によるレクチャーを無視する剛腕首相が現れたら、日本円は崩壊する可能性がある。その根拠を示す。
下に示したのは財務省が発表している2022年度の政府の貸借対照表(以下BS;補足1)であり、この負債の額の1442.7兆円が2022年度の政府の負債である。この年のGDPは約548兆円であるので、政府の負債総額はGDPの2.63倍と計算される。
それに対応する資産だが、合計しても740.7兆円しかなく、その差は702兆円となっている。元財務官僚の経済評論家の高橋洋一氏は、徴税権を無形資産として組み込めばこのBSでも健全だと主張している。2022年の税収は65兆円を少し超えた位であるので、(例えば800兆円程と)勝手に査定し資産に計上すればよいというのである。
しかしそれは、貸借対照表を作成するそもそもの目的に反するので、どの主要国もやっていない。また、日本は会計的に他の先進諸国と全く異なった骨組みを持つわけではないので、正統な議論とは言えないだろう。それは、例えば天皇制も資産だという程度の議論である。(補足2)
諸外国も似たような貸借対照表を作っているらしいが、徴税権を資産に計上している国はない。この日本の状況について何語でも理解できるチャットGPTに調査してもらった。その結果、以下のような答えが返ってきた。
日本の政府純債務残高(金融資産を差し引いた負債)は、2023年時点でGDPの154.15%と高い水準にあります。 これは、レバノンに次いで世界で2番目に高い比率です。一方、総債務残高(金融資産を差し引く前の負債)はGDPの249.67%で、スーダンに次いで世界で2番目の高さとなっています。
このような財務状況でも、現在以上の積極財政を与野党議員は主張している。日本の政治家のほぼ100%が大衆迎合主義(ポピュリスト)である。薬を飲むべきだと言う代わりに、フェンタニルを与えて日本国を世界のゾンビにしたいのだろうか?
2)日本の病的財政は、日銀が独自に金融政策が実行出来ないことで証明されている
日本の財政は病的である。その証拠の一つに以下の事実がある。2022年春に115円程度だったドル/円レートは、米国の利上げ(補足3)に伴って円安に大きく振れ、日銀がマイナス金利からプラス0.1%に改めた2024年2月には150円以上になった。それにも拘わらず、日銀は何もできなかったことである。
原因は、上の表にある様に公債発行額が対GDP比200%にも達していること、そしてその半分を中央銀行である日本銀行に押し付けたことにある。日本銀行は他国の中央銀行のように独自に金利操作できないのである。
日銀を一私企業とすれば、日銀自身を守るために国債を買わなければ良い。しかし、日銀は政府の子会社であり、日本国債の信用を棄損してはならない。仮に日銀が保有する国債を市場に放出すれば、ただちに日本国債の価格は暴落して、日本国の財政は破綻してしまうだろう。
令和6年の日銀政策金利は0.25%だったが、それでも国債の償還や利払いにあてる「国債費」は27兆90億円と過去最大となった。https://www3.nhk.or.jp/news/special/yosan2024/revenue/
従って、例えば政策金利5%だと税収は国債費で消滅してしまうだろう。そのような状況になる前に、諸外国のファンドによる空売り攻勢などで日本円は潰されてしまうかもしれない。勿論、政策金利を5%にすれば、日銀の資産である日本国債の価値が大きく減少し、日銀の信用が低下して日本円はいずれ紙屑となる。
そのような事情から日銀は金利操作など独自の金融政策を取れなくなっているのである。この状況に陥る前に日本政府は何をやるべきだったのかについては、以前の投稿で議論したので引用するだけにとどめる。https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12870307815.html
日本は共産主義国ではないので、政府は直接的な投資或いは会社への資金援助はできるだけ避けるべきであって、インフラ整備や法による規制の設定や解除などで企業活動を助けることに重点を置くべきである。
3)ザイム真理教という言葉で緊縮財政を批判する評論家
経済評論家の森永卓郎氏は、「安倍政権のときに毎年80兆円の国債を発行して、それを日銀に買わせた。日銀がその額の国債を買った瞬間に財政負担は無くなる。」と下のyoutube動画で言っている。https://www.youtube.com/shorts/NuUwMa6u-58 ;
日銀は日本政府の子会社であるから、政府の債務である国債はそのまま日銀の資産に計上されており、連結すれば打ち消すと言っているのである。この考え方は、唯一共産主義国家だけで成立する。この無責任な経済評論家の言葉は、日本を共産化すべきだと言っているのに等しい。
彼は、新たに発行された80兆円の貨幣を無視している。80兆円は、日銀当座預金として金融機関等から回収しているというだろうが、その理屈はそのまま成立しない。何故なら、市中銀行は日本政府の子会社ではないからである。それを利用しようという人物は日本国内には現れていないかもしれないが、海外には存在する。
金利を上げられない日本銀行の弱点を利用して外国資本は円キャリートレードという方法で大儲けしている。日本円で金を借りてドルに交換し、それで米国債などに投資するのである。その大きな金利差で稼ぐのである。日銀は簡単には金利を上げられず円安傾向は今後も続くので、円キャリートレードは外国資本にとっては打ち出の小づちなのだ。
円安からインフレになり、いずれ日本円の価値は益々低下する。そうなれば外国資本の円建て借金は目減りして、二重の儲けとなるだろう。それは実質的に国民の預貯金を国家が接収した図式に等しい。日本国民は気が付いて居ないから良いではないかと言うのだろう。
その考え方は、老いた頭のせいではない。彼はもっと若い時から持っていた考え方である。それは以下の動画を見ればわかる。https://www.youtube.com/shorts/aTImQtYaqcA
それは米国の左翼が言い出した近代貨幣理論に酷似している。日本は基軸通貨発行国ではないので、厳密にはMMT理論は成立しない。それでもその理論を無理やり適用しようというのである。日本の一部経済評論家やその取り巻きがその理論の提唱者であるステファニー・ケルトン教授を招待して、講演を日本国内で行った。(補足4)彼らは”隠れ共産主義者”である。
4)受給ギャップ(デフレギャップ)の問題
受給ギャップとは、総供給可能量と総需要量の差である。デフレギャップが大きいというのは、要するに物を作っても売れないという供給側から見て不景気状況にあると言うことである。この日本の状況を一人財務省と日銀の所為にしてしまおうというのが、日本のyoutubeなどでも多く見る意見である。
この現象を売れない物を作り続ける企業の責任としないで、国が公共事業などをドシドシ実施することによって国民に金を十分配らないことが原因だというのが、上記(及び補足4の中の)評論家たちの言い分である。彼らは、日本国民が一人当たり1千万円以上の預貯金を銀行や郵貯に積み立てていること等、全く気にしていない。
老後が心配であるので、必要な物は外国品を買って余ったお金は貯金をしておこうというのが日本国民の平均像である。現状にイライラがあり、将来に不安があるから金を貯めるのである。それらの為のデフレギャップを財務省のせいにするのは虐めに等しいと思う。
パソコンでもスマホでも、そのためのソフトでも殆どが外国品である。安くて良いものは外国品である。高くてもどうしても買いたいものは(自動車以外は)外国品である。老後の不安とか、まともな仕事に就職できないイライラ、自分が失業してしまうかもしれない不安、失業しているが仕事が見つからないというイライラなどを政府がしっかりと対策を立てておれば、日本人も多少は贅沢をするだろう。
日本企業は労働生産性の向上に熱心ではない。更に、新規産業を立ち上げる程の元気がない。そのような全体的な経済界の活気は、財務省にはどうしようもない。それは日本文化全体の問題であり、労使の関係の改善による労働流動性の改善や、小さいころから暗記ではなく原点から自分で考える思考力を重視した教育など、根っこの部分からの改善が必要である。
自分で考えて生きる人が殆どになれば、金を手に入れたらどのように使うかを幅広く考えるだろう。それが企業の体質にまで影響する筈である。以下は、日本の会社が利益を蓄積しても設備投資にあまり使わないという現状を表している。これでは日本経済は衰退するのは目に見えている。
補足
1)これは日本国政府の貸借対照表である。独立法人等との関係は貸付金や出資金の名目で計上されている。独法などを含めた連結貸借対照表は以下のサイトに発表されている。
https://www.mof.go.jp/policy/budget/report/public_finance_fact_sheet/fy2022/renketu.gaiyou20240326.htm
2)天皇制は日本人の精神構造にまで影響しているので非常に重要な資産とも言えるかもしれない。しかしそれは財政の書類に入れる訳にはいかない。もっとふさわしい例を思いつかなかっただけである。会社の会計書類に詳しい人を対象としているなら、「のれん」がよりふさわしい例だろう。
3)米国連銀は、2年間0.25%だった政策金利を2022年3月から2023年8月の間に5.5%まで上げた。日本以外の先進国は為替レートの安定のために利上げに付き合ったが、日本は利上げできなかったのは、この多額の国債残高とその半分ほどを日銀が保有していたからである。勿論、日本の景気悪化を防止するという理由もあるが、2023年の企業収益は非常に好調であった。
4)米国の共産主義者であるオカシオ・カルテス議員は、MMT理論で政府の積極財政を主張している。彼女は、ニューヨーク州立大学、ストーニーブルック校のステファニー・ケルトン教授が主唱するMMT理論に傾倒しているのだが、それは共和党では支持されていない。ケルトン教授は、経済評論家の三橋貴之氏や京大土木の藤井教授らの招待で来日し講演している。彼らは安倍内閣の時、内閣参与(藤井氏)として積極財政策を提案している。
https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12739282063.html
(20:45 編集あり;翌早朝2か所に軽編集)
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