ユン・ソニョル(尹錫悦)大統領は12月3日夜に戒厳令を発布し、国会を閉鎖すべく軍をを派遣したものの、その特殊部隊が大統領の意思に反して国会を閉鎖しなかった。翌日開かれた国会で戒厳令解除の議決が出され、ユン大統領もそれを受け入れた。
このことにより、野党「共に民主党」(以下民主党)が過半数を占める国会は、一度与党の欠席で可決出来なかった大統領の弾劾案を14日に可決しユン大統領の職務が停止された。弾劾案は最高裁判所で審理されることになった。もし可決された場合にはユン大統領は罷免され、その後大統領選挙が行われることになる。また、近日中にユン大統領が内乱罪で告発される可能性が高くなっているという。
この件について数日前に文章をアップしたが、不十分な内容だったので一度取り消した。今回、再度修正版をアップすることにした。
1)戒厳令を発布した理由
今年4月15日に国政選挙が行われ、野党である共に民主党(以下民主党)が多数当選し、ユン大統領の国政をことごとく妨害することになった。大統領の活動がまともに出来ないように必要な予算をゼロにしたり、重要な政府高官や検察官弾劾するなどの妨害を行った。
この件は或る勇気ある韓国のyoutuberによって解説されているので、それを引用する。https://www.youtube.com/watch?v=jGyRdNLnlSQ
民主党は、米軍撤収、国家保安法撤廃、ユンソンヨル大統領弾劾などを掲げ、全国民主労働組合総連盟(民労総)と共同で活動している。最早妥協はなく、半年後に出されるであろう韓国最高裁の弾劾が否決される公算が大きいようだが、遅くともその時点から韓国は新たな段階に入るだろう。
今回の混乱は4月の国政選挙で野党の民主党が多数党になった時点に始まる。ユン大統領側は、この選挙に不正があったと考えており、今回の戒厳令は選挙管理委員会の強権的捜索が重要な目的の一つだったようである。
BBCの取材を受けた韓国外国語学院の准教授は、「ユン(尹)氏はおそらく逮捕され、尋問され、最終的には内乱罪で起訴されるだろう。ただ、状況はまだ流動的だ」と話した。当時国防部長官(国防大臣)だったキム・ヨンヒョン(金龍顕)氏は、大統領に戒厳令発布を進言したとして内乱罪で既に逮捕・拘禁されている。https://www.bbc.com/japanese/articles/cd9x25xzg85o
米国国務長官のブリンケン氏は、この大統領弾劾の動きに関して、「韓国は民主主義の強靭さを示した」と述べた上で、大統領代行となった ハン・ドクス (韓悳洙)首相と協力する姿勢を強調し、米韓同盟に対する「強い支持」も表明したという。https://www.yomiuri.co.jp/world/20241215-OYT1T50017/
韓国警察は内乱罪による野党の告発を受けて捜索しているが、これは法的に正しくないと思う。何故なら、戒厳令発布は大統領の職権の範囲内であるからである。ただ、韓国憲法は戒厳令を布いたのち、国会への報告を義務づけている。更に、国会が戒厳令を解除を決議した場合、大統領はそれに従わなければならないとしている。
この憲法上の矛盾が今回の混乱の大きな直接的原因のようだ。(この憲法上の矛盾をそのまま指摘できなかったのが、前回投稿を一度取り下げた原因である。)この件について、及び上記の勇気ある韓国人の若者と同じ話が昨日の李相哲さんにより説明されている。https://www.youtube.com/watch?v=m7wI2LBGjGI
2)韓国政界における深い左右分断
「共に民主党」のイ・ジェミョン(李在明)代表は、ユン大統領弾劾が成立した場合、その後の大統領選挙における最有力候補である。しかしイ氏は公職選挙法違反で有罪判決(第一審)を受けており、野党は有罪が確定しない内に大統領選挙に持ち込みたいのだろう。https://www.youtube.com/watch?v=Tk7TfWnWbBo
竜谷大学教授の李相哲氏は、早くて来年5月に有罪確定の可能性があると話す。
その一方、ユン・ソニョル大統領は弾劾裁判で戦う意思を示しており(補足2)、かなり長引く可能性が高い。裁判の中で、韓国が北朝鮮のスパイ天国となっているとのユン大統領の主張が国民に伝われば、韓国民(特に左翼系)の熱気が冷める可能性がある。
イ・ジェミョン 氏と並んで弾劾運動を主導してきた第三党「祖国革新党」のチョ・グク(曹国)氏も娘の不正入試の件で告発されており、12日に有罪が確定し収監された。(補足3)その他には有力な候補を欠いている様で、仮に6ヶ月後にユン大統領弾劾が成立するとしても待てないのである。
韓国の検察は、ユン大統領が元検察のトップだったにも拘わらず、戒厳令発布を進めたとされる国防部長官を早急に内乱罪で逮捕した。ユン大統領の出身母体である検察も、左右に深く分断されているのではないだろうか。実際、パク・クネ政権時、保守政治家を選挙で落選させるために、検察は左翼の国家情報院職員が選挙介入した件をもみ消している。https://japan.hani.co.kr/arti/opinion/23972.html
現在韓国は、政治も司法も左右に深く分断された勢力により運営されている。韓国は、米国ブリンケン国務長官の期待?に反してか沿ってか今一つわからないが、左側に急旋回する可能性が高い。米国務長官のブリンケン氏は、何も知らない筈が無いので、上記コメントは異常である。
3)背景と今後
朝鮮半島は中国など他国に支配されてきた歴史を持ち、その最後の支配国が日本である。それもあって、韓国民衆の愛国心は反日によって成立している。反日が反共と交錯しているのが、韓国分断の原因だろう。(追補1) https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12466516806.html
数年前に韓国の京畿道(補足1)議会で、一部日本企業を「戦犯企業」と規定し、学校が保有している製品に「本製品は日本の戦犯企業が生産した製品である」と記したステッカーを貼り付ける反日教育を義務付ける条例案が可決された。反日を国是とする韓国を雄弁に語る出来事である。
https://www.youtube.com/watch?v=jOgP1p9gkuA
従って、韓国の20世紀後半からの政治は、反日とその揺り戻しの繰り返しである。今回も野党の目論見通り「共に民主党」のトップが大統領になれば、反日政策である慰安婦問題と徴用工問題等をぶり返すだろう。(補足4)左翼の政党には、日韓基本条約など眼中にないのである。
韓国は自由主義経済の恩恵を受けながら、この反日遺伝子が自由主義経済圏への反感を誘起し、隣接する共産主義独裁にすら親近感を持つようになる理由だろう。その混乱のままに今日まで来られたのだが、今回はそのような中途半端なことで終わらないかもしれない。
桜井よしこ氏は、「共に民主党」の李在明代表が仮に大統領になった場合、北朝鮮に急接近する政策をとるだろうと話している。ただ、北朝鮮は既に南北国境をまたぐ道路を破壊し送電線を撤収するなどして、韓国を敵国と定めており、行き詰った李在明政権は中国に方向を切り替えて接近するだろう。その結果、韓国が中国共産党政権の勢力圏になる可能性があり、それを心配している。https://www.youtube.com/watch?v=KMgeljL8ZQc
或いは、そんなことになる前に韓国は内乱或いは内戦のようになり、北朝鮮がそのすきに乗じて韓国侵略を試みる可能性もある。その場合、朝鮮戦争の再開であり、米国と日本はそれと戦うことになる。最近の3代の首相による法と法解釈の変更により、日本は戦争ができる国として米国の同盟国になっている。米国は当然のように日本を朝鮮戦争の米国代理とし、日本はウクライナ化する可能性が高くなり、存亡の危機を迎えることになる。それは以前から書いているように、グローバリストの極東戦略の中心の一つである。
なるべく穏便に、一審で選挙違反の件で有罪判決が出ている李在明氏の有罪が確定し、ユン大統領の弾劾が最高裁で否決されることに期待したい。
4)この件の本質:米国民主党政権の戦略
韓国のアイデンティティは反日であると書いてきた。韓国元ソウル大学教授の李栄薫氏らが書いた本「反日種族主義」は、この事実を韓国側から書いたものである。韓国に反日種族という遺伝子がある限り、日本との真の意味での融和はあり得ない。
ユン大統領が目指したのは、この反日種族主義の返上だったが、それが左翼野党との対立の中心にある。この危機をユン大統領が乗り越えれば、極東の同じ自由主義圏の国としての絆を取り戻すことが出来るだろう。逆にユン大統領が弾劾され、共に民主党が政権を再び掌握すれば、韓国は元の反日国にもどる。
上に米国ブリンケンしの言葉を紹介したが、この筋書きは米国ネオコンの極東戦略の中にあるので、ブリンケン氏は冷静に見ているのである。更に、韓国に反日であってほしい国は、北朝鮮だけでなく西欧諸国のほとんども含まれる。
ブリンケン米国務長官の韓国の民主主義を賛美する言葉には、米韓関係が破壊されるかもしれないという心配が感じられない。それは、今回の混乱は、彼らの思った通りの出来事であり、この極東の二国に仕組んだ仕掛けが正常に働いただけだからである。
もし、朝鮮戦争が再開され、極東の4ヶ国;中国、北朝鮮、韓国、日本が消耗戦に入り、人口が激減したとすれば、米国ネオコン民主党の理想のシナリオかもしれない。英国の国営放送のBBCが、この件の報道を日本のマスコミとは比較にならないほど勢力的に行っているのも印象的である。
追補:
1)分断の原因として、北朝鮮と中国による工作が重要である。反日には欠かせない慰安婦問題も、その背後にこれらの国があると考えられている。そこからの工作が韓国の団体である挺対協とともに、問題を作り出し政治的に利用したのだ。
補足:
1)第三勢力「祖国革新党」は、文在寅政権時の法務部長官だったチョ・グク(曹国)氏が代表の左翼政党である。2024年の韓国国会総選挙に向け結成された。
2)パク・クネ(朴槿恵)元大統領の弾劾裁判の時には、朴氏は裁判に出席しなかった。
3)韓国大法院(最高裁)は12日、 子どもの不正入学に関わったとして業務妨害や職権乱用の罪に問われた「祖国革新党」代表のチョ・グク氏に対し、一、二審の判決を支持し、懲役2年と追徴金600万ウォンを言い渡した。実刑が確定し、チョ・グク氏は国会議員を失職する。https://www.asahi.com/articles/ASSDD2JPZSDDUHBI01TM.html
これら政治家の刑事事件の頻発は、「司法の武器化」だと野党側は批判しているが、大統領と法務大臣を今回内乱罪で告発することも同じ様に見える。
4)日韓の間に楔を打ち込むのは、尖閣諸島問題も含めて英米グローバリストの企みである。慰安婦問題もその例外ではないのかもしれない。その本質について書いたことがあるので、それをいかに引用する。https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12466515859.html
(12月21日早朝編集、表題を変更し追補1を追加して最終稿とする)
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