米国の政治はDeep Stateが動かしているという理解が、ネット社会ではほぼ定着している。ここでDeep State(以下DS)とは、SES(Senior Executive Service)と呼ばれる高級官僚たちとSESと関係の深い有力政治家、更に世界の金融と経済を支配する人たちや有力シンクタンクなどとの政治的ネットワークと考えられる。https://www.youtube.com/watch?v=EHeuNIQ9i68
つまり、米国の政治は政策を考えて作り出すシンクタンク、政界の活動家であるロビィスト、それを議会に諮って法律化する政治家たち、そしてそれを実行する大統領府と各部門の高級官僚たちで動かされている。この中で力があるのは民主党が作り上げた高級官僚組織SESであるとするのが上の動画である。議員の役割として期待されるのは、極論すれば背後が作り上げた脚本に従って法律作りを演じることに過ぎない場合もあるだろう。(補足1)
最近数年間の世界政治をみれば、新世界秩序やグレートリセットという言葉にあるような世界史的改変を目指す一部の人々の明確な意思に従って世界の政治が動いているように感じられる。米国民主党による政治は、この世界史的な地球規模の動きと連携している。しかし、このDSモデルには、そのような特定の主体性あるグループやそのイデオロギーが反映していないように思う。
米国人の心中には、未だに建国の意思が教育等で存在しており、米国政治が特定の金融資本に乗っ取られている米国政治の現状に対し、十分な考察がなされていないと思う。以下にそれらの点についてなるべく原点から考察を行う。
2)Deep State (DS)の歴史
近代資本主義社会は、産業と金融の連携で発展する経済構造を特徴とする。その経済の主体である株式会社等が、政治に参加し政治を自分たちに有利に動かしたいのは当然である。
これら企業を取りまとめる金融資本家或いは「金融資本」(補足2)に、政治を動かすという意思が存在した場合、個人や個別企業に比べてはるかに大きな力があるので、大きな政治的力となる。DSとは、そのような動機で始まり長期間に亘って成長した政治組織だと考えられる。
因みに、金融資本は現在では自由主義経済の構造中最上部に位置する。その下に株式会社等があり、個人はその下の最下層に位置する。この経済構造にも拘わらず、政治において最高権力者として個人を置くのが民主主義政治である。 この政治における個人が金融資本に完全に抑えられているというのが、表題の金融資本による独裁政治の意味である。
これは、資本主義社会において自然な姿であり、近現代の歴史の流れだろう。金融資本の中で、最も大きく成長したのが産業革命を主導した英国における「金融資本」であった。米国に移住したのち現在のDSをつくりあげたと考える。米国の広い国土と豊かな資源環境の下で、資本主義の経済構造を自らの成長を助ける形に仕上げ、現在、米国の殻を破って世界の政治・経済の支配に乗り出したように見える。
この資本主義社会におけるDSの誕生のメカニズムは、普遍的でありその結果世界各地に類似のDSが現れる。それらはよく似た意思をもつので、主として米国の金融資本が米国政府を使って作り上げた経済のグローバル化策を用いて連携して動くように支配している。そして最も強大な米国のDSが中心となり、この経済構造が成立している先進国を支配下に収めている。これが現在までのDSの歴史のように思う。
3)DSに支配される側からのDSの発生メカニズム
政治家になる動機は何だろうか? 政治家という職業に、社会的地位や名誉に一身をなげ打つだけの意味があるのだろうか? それを考えることも政治学の重要な項目であるべきだが、そのようなアプローチが大学等では研究・教育されているだろうか。
中世の絶対君主制や封建制の中では、だれもが政治を支配することの意味が理解できた。食うや食わずの世の中にあって、栄華を極めた王室の建造物や封建時代から残る名城を見るだけでも分かるだろう。近代資本主義社会を引き継ぎ、民主主義を成立さえたと考えられている現代、個人が政治家となり、表の世界で政治を支配するメリットは何だろうか?
民主主義国家では、選挙で当選すれば誰でも政治家になれる。選挙のたびに平身低頭する政治家を、民衆は身近な存在として感じるだろう。政治家も一応名誉ある地位と考えられても、大会社のCEOや一流の芸術家や小説家など、多くのより高い名誉ある地位がこの世界に存在する。そのような大衆の認識が、政治家に対する報酬が少ない原因であると思う。
この大衆の感覚と政治家の本来のあるべき地位とのギャップが、民主主義国家では非常に優秀な政治家を生まない原因である。例えば、youtube動画の世界では、世界を救うほどの政治的成果でもノーベル賞(補足3)狙いだろうという解釈がまかり通っていると前回記事でも批判した。(補足4)
金融資本家たちは、政治へ関与する取っ掛かりとして、政治家という地位の重要性と報酬との間の大きなギャップを利用する。それほど優秀でない政治家候補はその企みに従順に乗る。それは自然の成り行きであり、代替案を熟考しないで単に厳しく禁止すれば、政治家の質が益々低下するのみである。それが現在の政治家(特に左翼政治家)の姿である。これが私が考えたDSの誕生メカニズムのエッセンスである。
国政選挙に参加するには、選挙活動に勝ち残らなければならない。政治家候補には十分な資金を持たない場合が多い。(補足5)そこで選挙活動等の資金を補おうとして設立されたのが政治活動委員会(political action comittee; PAC)という制度である。更にその活動資金を無制限にする為に名目上独立の機関としたのがSuperPACである。
この制度で多額の政治資金を政治家に供給し、自らの野望をそれら政治家を使って達成しようとするのが、米国の金融資本家たちとそのネットワークが作るDSである。スーパーPACはこのDSが政治支配の能力拡大のために作り上げた制度だろう。https://cigs.canon/about/management/37840b9264f1c1229ac9c84ae44c943d73bdc364/20240221_7930.html
因みに、現在日本で進行している企業・団体献金の廃止を含む政治資金規正の動きの中で、民主党が政治団体を除外しようとしているのは、米国の上記制度に倣っているのだろう。つまり、民主党も自民党も政治資金に関しては同じ考えであり、多額の政治資金を念頭に例外を設けようとしているのである。https://news.yahoo.co.jp/articles/6f293a9d37279987b3d3d79e8a61c1836057b968
金融資本家たちは、企業と政治の両方を支配することで、巨万の富と自分の欲望を実現しようとする。(補足6)彼らは、SuperPACに制限なく多大の資金を供給し、特定の議員を支援する。そして議員たちは政治という演劇の中での役者を務めるため、主要メディアの宣伝(プロパガンダ)に従って最後の儀式である選挙によって選任される。
提供した金は、違った形で増額の上回収するという目論見あっての資金提供である。それが政治を民主国家にあるべき姿から変形するというのも至極当然である。このような政治環境では、大衆が選挙によって政治を動かすことなど不可能である。以上、これまでの米国の政治は金権が支配しており、その意味で一党独裁、金権党の独裁に近い。
4)Deep State (DS)と寡頭政治
米国では、ほとんどの国会議員(連邦議会議員)らは、議員を辞めたあとは膨大な政治資金の流れのなかに身を置いて現役時代よりも多額の報酬を得ることになる。議員としてのキャリアはそのロビィストになるための準備期間とも言えなくもない人も多いという。
この膨大な金融資本からロビー活動によって政治に流れるのはお金だけでなく、当然彼らが期待する政治の方向に関する情報も含まれる。その流れのなかに棲む住人は議員だけでなく、大統領までの行政官も含まれる。そのようにして金融資本と政治を結びつけるのである。その構造全体がDSである。
2019年11月に「崩壊する米国と道に迷う世界」という記事を書いた。この中にニューヨーク在住の国際政治研究家の伊藤貫氏の言葉から引用した文章があるので再録する。https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12544848302.html
経済学者のサイモン・ジョンソン(Simon Johnson)は、「IMFを経験して(chief economist、2007年3月〜2008年8月)分かったことは、米国もロシアと同様に寡頭政治(Oligarchy)だということだ」と言ったという。それは、ウオール街の金融業者が、巨大な金融資産で、政治をコントロールしているという意味である。米国の政治は世界の政治であるので、その結果として現在のグローバル化政治経済となったのである。
米国には建国以来、民主主義の伝統がある。それに英国で育ったDSが乗り込みオリガルヒ的な政治と経済を作り上げた。この大きな長年かかって作り上げられた構造の巻き戻しが、不動産で財をなした異色の政治家トランプとSNSによる加勢で可能となったように見える。この両者、金融資本家オリガルヒとそれに対抗するトランプ一派との戦いの頂点を若干過ぎた位置が現在の米国政治だと思うが、未だ勝敗は明確ではない。
終わりに:
現金、預貯金、株式、債券、など実物資産でない換金性の資産を金融資産という。金融経済はこれらの間の取引からなり、お金を通して実物経済と関係を持つ。金融資産が巨大化すれば、その一部が偏在化し、現実社会に通常あり得ない影響を及ぼす可能性がある。
世界の金融経済は肥大化を続け、現在実物経済の4倍程度あると言われている。このように巨大化した金融経済の身震いにより、実物経済が風邪をひくというのが現状である。リーマンショックなどがその例である。
金融はあくまでも実体経済を助けるわき役でなくてはならない。それをまるで主役のようにしてしまったのが現在の金融経済である。それを積極的に企んだのが、ある一部の金融家である。そしてそれを助けたのがDS政府による巨額の政府債務とそれに呼応する形で増大した民間債務の増加である。
国際金融協会(IIF)によると、2024年9月時点で世界の債務残高は312兆ドルに達しているという。その約1/3が公的債務である。https://www.nira.or.jp/paper/opinion-paper/2022/63.html
米国の公的債務の多くは、自国のための財政支出の他、DSの要求に従って世界の政治経済を牛耳るための戦争の経費として積み上げられた。公的債務は、私的資産となって蓄積するので、巨大化した私的金融資産は幾つかのプールの中にため込むための工夫もされてきた。
例えばビットコインの総額は12月10日現在、288兆円にも上る。仮想通貨全体ではこの倍程度になるようである。この何の裏付けもない仮想の世界にすら、金が流れて金融資産化しているのである。それが金融経済のバブル的構造の典型である。
仮想の世界にまで金融経済が進出するのだから、もっとも人間的な政治の世界に金融の力が影響を強めるのは当然の成り行きだろう。その馬鹿げた世界を作り上げたのが、金融を奇形的に発展させた現在の仕組みである。それを実行した者たちは、上記米ドルの地位を守る戦争などを含めて人類史的な悪の創造者である。
その元をたどれば、上述のように人類の中での生存競争である。人間の生存欲が他に及ぼす行為は通常悪であり、自然なことではある。優秀な頭脳の持ち主が悪となり、劣悪な頭脳しか持たない者たちを支配し淘汰するという自然現象と言えなくもない。
補足:
1)米国の政治家は日本の政治家と比較して優秀な人物が多い。それ故、DSの枠を超えて本来の民主政治を取り戻そうとする政治家も時として現れる。その場合には、暗殺されたりスキャンダルをファイルの中から取り出して、或いは捏造して失脚させられる可能性が高くなる。上記動画では、ヒラリークリントンに対するDSの工作活動が述べられている。
2)金融資本は、資本主義という経済構造の中で株式会社等を支配する最上部の組織である。個人は株式会社等法人に雇用される存在であり、構造的には最下層である。民主主義とは、その最下層がすべてを支配するという政治形態だとすると、生物界を人類を含めて自然淘汰の世界と考える限り、幼稚な理想論にすぎない。
3)自然科学研究に携わった経験では、ノーベル賞の対象となったかなりの数の研究には世間で騒がれるほどの価値はない。自然科学の発展は世界中の無数の研究者が作りあげたのであり、ノーベル賞は単に独断と偏見で発展の歴史を極めて荒く点描したにすぎない。
4)下に引用の読売TVnews系youtubeチャンネルでは、世界を第三次世界大戦から救うことになるかもしれないトランプ次期米国大統領(予定)の最近の活動にたいして、ノーベル賞を狙ってその候補となる期限の1月末までにウクライナ戦争を停戦させるためだと、かなり著名な方が話している。勿論、本人の気持ちは知る由もないがマスコミ従事者は、そのような低い評価を口にすべきではない。https://www.youtube.com/watch?v=bQJtqXfioFE
5)大きな企業の経営者が政治家になれば、この穴埋めができる。それがドナルド・トランプだろう。ひょっとしてイーロン・マスクがその跡を継ぐかもしれない。政治資金を他に頼っていてはDSの廃止を政策として提出することは不可能である。
6)政治を支配し企業に富を誘導する時、上記方法がもっとも有効になる産業は軍需産業である。そのように考えると、J.F. Kennedyのやろうとしたこと、米国の軍事戦略を大量報復型から相互確証破壊型に変更し、それに伴う軍事予算を削減することは、軍産共同体の産業側にとってはなんとか妨害したかったようである。これはナオキマンの動画で日本保守連合(JCU)の饗庭浩明氏がロバートケネディJrから聞いたJFK暗殺者の話である。https://www.youtube.com/watch?v=0fGMEwQ-PSQ (28分頃から)
追補: 今回はこれまでとは違って特定の民族を表に出さない形でDSを議論しました。これまでの議論は当ブログサイトに山ほどアップしましたのでご覧ください。過去の文章からうまくピックアップできないのですが、一つだけ下に引用します。
https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12862389687.html
(18:00、2か所修正、12/13/5:30一部修正し追補を付けて最終稿とする。)
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