1985年8月12日に起こった日本航空機123便の墜落事故に関する謎が、40年後の現在までSNSや書籍などでの議論の対象となっている。それらの中では、この事故には自衛隊の演習が関与しているという疑いあり、それがこの話題が継続する理由の一つのようだ。これが自衛隊の名誉にかかわるとして、自民党の佐藤正久参議院議員が4月10日の外交防衛委員会で政府に質問している。
この質疑応答は、日本政府や国会の隠蔽&捏造体質などの他、政府の防衛関係の中心となる政治家のあまり高くない能力を表しているように思われたので、ここに紹介したい。
なお、下に示したのは佐藤正久議員がこの事故或いは事件に関する不適切な著作として攻撃する、2017年7月30日 河出書房新社から出版された青山透子氏の著書の表紙である。私はこの本は読んだことはないが、後述するようにこの事故の原因を政府は隠蔽していると思っている一人である。
質疑の概略:
4月10日(2025年)の参議院外交防衛委員会で佐藤議員は、日本航空機123便の御巣鷹山墜落事故に自衛隊が深く関与しているという説がSNSや書籍などで広まっており、これが自衛隊の名誉にかかわるので政府は対策をとるべきだいう趣旨の質問をした。(なお、この議事録は国会会議録検索システムには未だアップされていないようだった)
佐藤氏が手にもって中谷元防衛大臣に示したその書籍は、現在ノンフィクション関係の推薦図書として学校図書館に並んでいる青山透子氏の本である。(表紙写真を上に示している)ベストセラーで既に10刷となっており、青山透子氏による類似テーマの著作はアマゾンのネットページに合計7冊も並んでいる。
佐藤議員は、先ず防衛大臣である中谷元氏を指名し、中谷氏が資料として提出したその本を読んだことを確認した。その後、この本の内容について次のように要約している:
駿河湾で試験中の護衛艦の対空ミサイル発射訓練に元海上自衛隊員のJAJ123便の機長が協力していた。その際、自衛隊の標的機がJAL機を撃墜してしまった。事故機の横田基地への緊急着陸を自衛隊が禁止しただけでなく、その撃墜の痕跡を隠すためにわざと墜落地点の特定を遅らせ、その間自衛隊の火炎放射器で墜落現場を焼いて証拠を隠滅した。アメリカの大統領から中曽根総理大臣への書簡に外務省担当官がわざわざ事故ではなく墜落事件という言葉をつかっていることからも、中曽根総理も外務省も知っていて隠蔽した。(日本語については若干修正した)
続いて佐藤議員は、この本の内容をどう考えるのかと事故調査を担当した国土交通省に質問した。答弁にたった国土交通副大臣である高橋克法氏は、1987年6月に出された調査報告書の内容の要約を淡々と読み上げ、政府のこの件への認識とした:
事故原因については、後部圧力核兵器の不適切な修理に起因し、後部圧力隔壁が損壊したことにより胴体後部、司直尾翼、操縦系統が損壊し、飛行性能の低下と主操縦機能の喪失を来したために生じたものと推定されるとしている。この事故経緯については様々な角度から調査解析を行った上で、専門家の審議の上、ほぼ間違いないとの結論に至ったため、強い推定を示す推定されるという表現を使用している。以上です。
こののち佐藤氏は青山透子氏の著書における記述と事故調査報告書の記述との間の大きなへだたりについて全否定するものの具体的な指摘はせず、この本の記述は自衛隊の名誉毀損にあたるとし、防衛大臣にこのことをどう思うかと正している。
中谷防衛大臣も新たな説得力ある根拠を何も示さずに、事故機墜落に自衛隊機は関与していることは絶対にないと強く否定した上で、この本の内容は遺憾であるとし、今後しっかりと対応したいという言葉でこの件の答弁を終わった。
佐藤議員は質問を続ける。公益社団法人の全国学校図書館協議会によって、この青山透子氏の本三冊が推薦図書となっているが、この選定は問題ではないのかと文科省に質問している。文科省副大臣は、その団体は文科省の所管にないが、佐藤議員の懸念について防衛省の動向も踏まえてその団体に伝えたいと答えた。
佐藤議員はこれらの質問のあと、自衛隊の災害出動に関して質問を続けている。従って、質問は全体としては自衛隊の名誉を保ち活動を支援する趣旨でなされたようだ。以下、この災害出動に関する部分はここで議論する問題ではないので、割愛する。
佐藤議員の質疑における疑問点:
以上のやりとりは、日航機123便事故に関する真実が事故二年後に政府の事故調査委員会が公表した通りであるという前提の上になりたつ。しかし、自衛隊関与説にも長い歴史がある。それを無視する佐藤議員の姿勢には、傲慢さと無知を感じる。
複数回の国会審議などとの関連で、政府な何らかの言論弾圧を青山透子氏に行ったと想像する。それにも拘らず、この自衛隊関与説には事故の被害者とその親族を含めて多数の国民の心の中に40年近い間存続し続けた。上に紹介の佐藤議員や中谷防衛相の短いやり取りだけで、全国民の前で完全否定できるほど軽いものではない。
本当に根も葉もない陰謀論の類なら、防衛相や自衛隊トップによる名誉毀損罪などでの提訴ののち、司法という舞台で解決できている筈である。佐藤氏や中谷氏は、国会議員としてその40年間にわたる国民の声を聴く能力を持っていないのか?
何故、元自衛隊高官の御自分や現在の防衛相が、この議論に終止符を打つべく青山氏と司法の場で対峙する方法で戦わないのか?何故、国家権力全体で抑え込もうとするのか? 根も葉もない陰謀論を吐く一人の女性に対する構えとしては不自然ではないのか?
繰り返す:上記本の著者が根も葉もないことを言って、自衛隊や国家の名誉を棄損しているというのなら、例えば防衛大臣の名前で名誉毀損で告発することが可能である。何故40年近い間、司法の場でボイスレコーダーの記録も何もかも提出して、司法の場で争わなかったのか?
この質疑を報じたyoutbe 動画の視聴の後半は、日本国の防衛の中心にある防衛相と元自衛官の参議院議員の情けない体たらくを見る思いだった。 答弁にたった国土交通省や文科省の担当は副大臣であり、大臣は嫌な仕事と知って副大臣に下請けに出したと疑う。嘘をついてまで佐藤議員に迎合すると、票を失う危険があるからだろう。
私が一年前に書いたブログ記事
私もこの事件の真相などについ昨年1月にブログ記事としてアップしている。そこに、事故原因は圧力隔壁破損だというが、機内ではそんな急激な気圧低下は起こっていないこと(実際機長らは酸素マスクを着用していなかったと言われている)や、垂直尾翼の一部が破損していることは事実であるが、専門家は圧力隔壁の破損では残存破片に見えるような破損は生じないだろうと言っているなどについて言及し、中曽根内閣が米国政府とも相談の上、この事実を隠蔽したというのがその時の結論である。
当時米国レーガン政権はスターウォーズ計画を打ち上げ、日本の中曽根政権もその日本版の防衛計画を定め、その一環として自衛隊が駿河湾で迎撃ミサイルの発射訓練をしていたと言われている。日米両政府には協力して隠蔽する動機が存在する。
事故原因とされる圧力隔壁の不完全な修理を行ったという不名誉をボーイング社は甘受したのだが、その後日本が購入した飛行機の大部分がボーイング社製であることは、ボーイング社が賠償などの責任を全く問われなかったことも含めて、上記結論を陰謀論だとして退ければ非常に不可解な点として残る。
https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12836247903.html
おわりに: この質疑を聞いて、全体としてのレベルの低さに唖然とした。日本の政治はこのレベルなのだろうか。このダイナミックな国際政治の中、日本は北極海の氷山の中を航行するタイタニック号のようだ。寒い。
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