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2025年4月19日土曜日

トランプ革命と米ドル基軸体制についてのまとめ

トランプ大統領の関税政策は、ドル基軸通貨体制の崩壊への備えだという考え方が正しいだろう。ドル基軸体制の維持は、グローバリストたちにとっても、米国を利用して世界帝国を実現するまで必須である。ただ、彼らは世界支配が完了すれば米国も米ドルも不要である点が、トランプの姿勢とは根本的に異なる。

 

1)トランプはドル基軸体制崩壊前に米国を外国に依存しない強大な独立国に再建しようとしている

 

篠原信と言う方がJBpressという雑誌に“同盟国にも関税かけ軍費増大を求めるトランプ、全ては「ペトロダラー・システムの終焉」を見越しての判断か”という記事を著している。ここで、ペトロダラー・システムとは石油決済を利用した米ドル基軸通貨体制を維持するための体制である。https://news.yahoo.co.jp/articles/

 

米国はグローバリストたちが世界支配のための活動で蓄積した36兆ドルという莫大な国債残高をもっている。そしてその1/4は外国保有である。それらはドル基軸体制でのみ特別な意味を持つが、ドル基軸体制(ペトロダラーシステム)が崩壊すれば、その時点で価値がかなり下落する可能性がある。(補足1)

 

 

従って、米ドル基軸通貨体制が崩壊する危険性を市場が感じると、米国債とその他の米ドル建債券が売りに出され、米国は金利高騰からドル安そして輸入物価の高騰という困難を迎えることなる。最近のトリプル安(株安、国債安、ドル安)は、その危険性の暗示というか、既にその兆候が現れているかも知れないと当事者は心配しているだろう。

 

通常は、国債と株は資金を分け合う関係にあるので、同時に下がることはあまりない。トリプル安が持続すれば、それは米国売りを意味しており、米国にとっては国難だろう。しかし今回は後に述べるように一過性のもので本当の米国売りは始まっていないだろう。(補足2)

 

トランプはドル基軸体制下でグローバリストたちが作り上げた世界一の消費市場の米国を利用して、それが崩壊しないうちに強国米国を再現しようとしているのである。一方、グローバリストたちはもともと無国籍なので産業の空洞化とか貧富の差の異常な拡大等が発生しても大きな問題ではなく、米国が一つの独立国としての体を喪失することも顧みず世界の政治支配を急いでいるようだ。

 

一方米国民を大事に考えるトランプ大統領は、ドルの価値が崩落しない内に独立国に必須の物品等を輸入に頼らず、自国で作る体制を整えるべきだと考え、その方法として相互関税を考えたのだと考えられる。(補足3)

 

米ドルを脅かすのは差し当たりBRICS通貨かもしれない。その創生の中心と考えられているのは実質経済力が米国に勝るとも言われる中国であり、米国が最大の貿易赤字を出しているのは貿易相手国である。トランプ関税が中国を第一の対象とするのは当然である。(https://www.youtube.com/watch?v=CHY2dKlNaol)

 

しかし、基軸通貨を作るのは世界から高い信用を得なければならず、大変困難な道であるので、米国が世界随一の覇権国家である限り、しばらくは経済活動に便利に整備されている米ドル基軸体制の崩壊はないだろう。


 

2)グローバリストたちによるペトロダラー創成と米国の世界覇権戦争

 

米国は20世紀の後半から世界のリーダーとして世界中で軍事オペレーションを展開してきた。それらのうちイラクやリビアでの戦争は、米ドルを石油決済専用通貨としてサウジアラビアに約束させ、その体制に従わないようなアラブの政権転覆のための戦争だと考えられてきた。(補足4)それにより金本位制を放棄した後も、米ドルが国際決済通貨としての地位を保つことになった。

 

また、ソ連崩壊後のカラー革命への米国の関与は、ヨーロッパでの米国の覇権をより確実なものとするためだったと解釈される。しかし、米国の戦争に対するこの分類はおそらく表面的であり、イラクやリビアでの戦争も東欧でのカラー革命のような戦争も、根は同じなのだろう。

 

最近、ヨーロッパ議会で行った講演でコロンビア大学のジェフリー・サックス教授は、ソ連崩壊後の東欧でのカラー革命(ウクライナのオレンジ革命を含む)、イラク、シリアを含む中東の戦争、スーダン、ソマリア、リビアを含むアフリカの戦争はすべてアメリカが主導して引き起こしたと話している。(補足5)

 

それは、イデオロギーからではなく、東欧各国の顧問などを務めた自分の体験からの認識であると話している。サックス教授はウクライナ戦争の経緯も詳細に語っており、それはこれまで本ブログサイトで書いてきたこととほぼ同じである。

 

https://www.youtube.com/watch?v=hA9qmOIUYJA

 

ジェフリーサックス教授は、中東での米国の戦争は全てイスラエルにとっての理想の中東を建設するために、イスラエルロビーとネタニヤフが米国にさせた戦争であると上に紹介の講演で語っている。つまり、イラク戦争などは米国をイスラエルの代理に採用した代理戦争だというのである。中東での戦争は、要するに米国とイスラエルの覇権を確立するためのもので、ペトロダラーは重要なその産物なのだろう。

 

要するにイスラエルとネオコンなどの支配する米国は一つの権力の二つの顔なのだろう。このような米国の過去の国際政治は、民主党の政権であっても共和党の政権であっても同じである。やはりグローバリストと米国内のイスラエルロビー、そしてイスラエル国のシオニストたちとは、20世紀を通して関係が深まったと想像される。

 

つまり、ドル基軸体制を今後も維持し、最終的には世界帝国を建設するために米国を利用するためである。ここで米国を利用するのは、元々心理的には無国籍のグローバルエリートの金融資本家たちを表に持つ、上に書いた巨大で強固なこれまでの米国とイスラエルの共同体的組織なのだろう。彼らは「通貨を牛耳るものは世界を牛耳る」を金科玉条とする人たちである。

 

その米国と完全に対立する姿勢のトランプは、やはり反グローバリストなのだろう。本ブログサイトではずっとそのように評価してきたのだが、最近になって大統領選後の組閣やウクライナ戦争におけるマルコ・ルビオとウクライナのサウジでの会見などを見て、その評価が揺らいできたのだが、やはり間違いないだろう。

 

彼らグローバリストが安心して気を抜ける瞬間は世界帝国が完成したときである。それを目指したレーニンとトロツキーは、ロシア(厳密にはジョージア)の現地人スターリンにソ連を掠め取られてしまった。今回の戦いは二度目の世界帝国への挑戦である。それを掠め取ろうとしているのがトランプだと言えるだろう。


 

3)トランプはグローバリストが占拠している偉大な米国を取り返すつもりだろう

 

トランプはイスラエルの味方で、ネタニヤフとも親密な態度をとってきた。従って、これまでのグローバリストたちが地下深くから指揮した米国の政治を完全否定する訳ではない。トランプは、多くのドル資金と犠牲者を出すこれまでの戦略を批判しているが、それは多くの犠牲と資金を無駄に使ってきたと考えているのである。トランプの公約のMAGA(偉大な米国を建設しよう;米国第一)は、世界帝国の実現と隣り合わせである。

 

トランプは民族主義者というよりも、上の動画でジェフリー・サックス教授が言うように帝国主義者に近いと思う。トランプは表舞台で覇権主義的である点が、グローバリストたちとは異なる。そしてトランプの目的も、アメリカを強力にするのは同じだが、世界帝国の実現までアメリカを引っ張ることは考えていないだろう。つまり米国人のための主権国家アメリカの確立へ舵を切ると思う。

 

これまでの米国の政治により、世界中の国々には反米勢力が一定の政治勢力として存在する。そして、既に上に述べたように世界経済における米国の優位性が減少している現在、世界の金融における米国のドルの覇権も長くは持たない。トランプは仮にドルが基軸通貨でなくなっても、大きなドル安にはならないように国際収支及び財政の黒字化を考えて、DOGEによる政府効率化と関税による製造業の米国内回帰を目指しているのだろう。

 

グローバリストたちは通貨と情報の支配から世界帝国を築く努力をしている。一方トランプは、米国という世界一の消費市場を利用して、米国に製造業を呼び戻し強力な米国の再建を目指している。トランプは、グローバリストの世界帝国樹立の企みとは一線を画しており、彼らのホステージとなっている米国を米国民のために取り戻すことにした。

 

地球は巨大であり、このままでは地球温暖化で人が棲めなくなるという話や、パンデミックによる被害を最小にするために世界連携が必要などという話などはグローバリストたちが作り上げた物語である。それらを解決するためとして、世界大戦という悲惨な出来事(グレートリセットによる)を経て、世界を統一するというのがグローバリストたちの企みである。

 

そんな必要などない。実際、地球には人類が発生させる二酸化炭素を吸収する能力を十分持っているのだ。トランプもそう思っているだろう。

 

 

 

補足:


1)一般に国債(国の借金証書)は国民の資産となり、現在の通貨制度の下では金と同様に中央銀行の準備金の根拠を構成するも考えられる。基軸通貨発行国であり世界の覇権を握る米国の国債は、他国にとっても確かな国家の準備金としての意味を持つ。基軸通貨発行権を失うと、そのような意味を失うので、その分価値が減少する。

 

2)長期国債が売られているとしたら、おそらく中国が売っているのだろう。中国は人民元を支えるためにドルを必要としているためである。日本の農林中金が大きな損失を出し、その補填のために米国債を売却したという話もある。これが原因で、トランプは最大の米国債保有国の日本に相当の配慮をしているのかもしれない。https://www.cnbc.com/video/2025/04/14/japan-not-china-might-have-incentive-to-sell-us-treasury-holdings.html

 

3)独立国に必須のものとは、国民が日々消費する食料とエネルギーが先ず考えられる。その他、例えば戦争などが発生した場合、基礎的工業製品(例えば鉄やアルミなどの必須材料や基本的機械の製造技術、その材料としての半導体など)が手に入らない場合、国内産業が止まってしまい、民生品だけでなくミサイルや戦闘機まで国内で製造できなくなる。それらのものも自前で用意できなければならない。

 

4)近代貨幣制度の出発点は、金(ゴールド)の借用証書を通貨とする制度だが、その金本位制は世界経済の膨張とともに成立しなくなった。それがニクソンショックである。そこで彼らは、世界の覇権を米国に握らせることでドル基軸通貨体制を維持するしかない。そこでサウジアラビアを取り込んでペトロダラー体制を作ったのだ。

 

5)この動画での講演内容は、長周新聞により日本語に翻訳されているので、私は主にそちらで読んだ。https://www.chosyu-journal.jp/kokusai/34317

https://www.chosyu-journal.jp/kokusai/34414

 

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