2018年7月10日火曜日

北野幸伯著「中国に勝つ日本の大戦略」感想

2018年7月11日午前8:30改訂

1)北野幸伯著「中国に勝つ日本の大戦略」を、途中少し飛ばしたところもあるが、最終章「中国の近未来」を残してざっと読んだ。ここ10年ほどの日本を取り巻く国際政治に関する記述は、簡潔で分かりやすく書かれており勉強になった。

しかし、そこには日本のとるべき大戦略が書かれていると思ったが、それは著者も書いているが期待外れであった。米国との安保条約を宝として維持し、日本の名誉を汚す韓国の主張に対する反論なども抑えて、近隣諸国との友好関係を戦略的に推進あるいは構築すべきであるとの内容だからである。

その理由として書かれているのは、過去の歴史を見ると分かるように、同時に多くの国と対立しては外交で失敗するという、まあ当たり前のことである。その方法が、「戦略的忍耐」であるというから、読者ががっかりするのは当然だろう。以上の主張は単に、破滅への道は日米関係の破綻或いは中国や韓国を結果的に挑発してしまうことだという命題の対偶(補足1)をとって言葉にしたに過ぎないと思う。

この本の中で著者の姿勢を示していると思われる重要なポイントの一つは、日本の核武装は不可能だと決めつけていることである。その理由の一つとして、米中には日本に核兵器を持たせないという密約があると書いている。それは、ニクソン時代のキッシンジャーと中国周恩来らとの間で結ばれたという伊藤貫氏の本の中の記述の再録である。そこから短絡的に日本の核武装は国際的孤立への道だと結論している。北野氏は伊藤貫氏が日本の核武装を主張していることには全く触れていない。(補足2)

そして、自民党の伝統的方針である日米同盟の堅持、およびインド東南アジア諸国との戦略的関係構築やロシアとの関係構築などを目指すことに加えて、韓国との融和姿勢を回復することなどが、重要だとしている。特に慰安婦問題などを主張する韓国を現状のまま認め、融和路線を敷くべきだという主張は、日本の国家としての骨組みなど無視しろと言っているに等しい。

本来、このタイトルの本であれば、そこには:
戦後完全に抜かれてしまった日本の背骨を再生し、国家としての体裁を回復するかが最初に記述され、更にそれを前提にして、日米関係をいわゆる互恵関係の形での強化すること、インドとの強い関係の構築、韓国との友好関係の樹立などに関する方法論がなければならないだろう。後の部分は無くても良いくらいだと思う。国際問題の本質は、日本国をしっかり現代建築として立て直すという国内問題である。

2)日米関係が大事なことは言うまでもない。インドとの関係深化、ロシアとの関係回復、中国を刺激しなこと、全て大事なのは当然のことである。それらを日本が軟体動物的なその場その場の現実主義で成し遂げようとするしか生き残る方法がないのなら、差し当たり北野氏の書いた通り、そうすべきだろう。しかし、そこには国家としての発展はないし、国民にとって夢も希望もない。

安倍総理が戦後レジームからの脱却という言葉を引っさげて二度目の登板を果たした。それは、戦後完全に抜かれてしまった日本の背骨を再生し、国家としての体裁を回復することの宣言であった。しかし、靖国参拝で国際的なバッシングを受け、孤立することになった。安倍総理が戦後レジームの脱却と言いながら、単に戦前への復帰ととられかねない姿勢をとってしまったのは大失敗であったのは事実である。

これらの方針を北野氏は完全否定しているが、それは北野氏がどこか別の国の利益を代表しているのかと思わせる。ことの本質は、国際的関係を支配するのは野生の原理であり、日本イジメの良い材料を安倍総理が与えてしまったということである。それは安倍総理の国際関係と歴史認識不足や政治的能力が十分でなかったことが原因だと思う。

その後、米国議会において希望の同盟演説を行い、安倍総理は米国の評価を完全に回復した。そして、中国の「日米関係の分断工作」を無効化させることになった。これを北野氏は、高く評価しているが、おそらく昔からの自由民主党の伝統的方針通り行ったことが、世界の情勢変化とピッタリ合っただけだと思う。

日本の大戦略の第一は、日本の背骨の回復と頭脳のブラッシュアップである。それが、日本が国際的に名誉ある地位を占めるという厚い面の皮をつけることにつながる筈である。そのためには、日本の政治を田舎の政治屋から取り戻すことが何よりも大事だと思う。

具体的には、一票の格差完全撤廃と道州制など大選挙区制を実現し、主に都市部の知識階級から中央政府の政治家を選ぶという改革がもっとも有効だと思う。

そのために英雄が必要かもしれない(橋下徹は英雄に似ていたが、何者かに潰された)。英雄の出現には、その素地が必要である。その素地作りのため、国民が政治経済歴史など社会学への関心を持つことが大事である。それを阻んでいる日本のマスコミ、特にクイズ番組、健康番組、お笑いとスポーツのみを放送しているテレビ界を如何に改革するか、全ての日本国民は考えるべきである。

特に、力を持つ官僚たち、裁判官たち、知識人たち、報道界の人たちは、国難の今こそ行動すべきである。官僚たちは、かなりの割合で今の事態がわかっているだろう。日本政府の中枢にいるのだから、内閣にコネを作って意見を積極的に提出するなどの行動をすべきだと思う。最高裁の心ある人も立ち上がるべきである。一票の格差2倍は明らかに違憲なのだから、選挙の無効を宣言すべきである。その後、最高裁を首になり、細々と生きることになっても良いではないか。二、三人その程度の志を持つ判事はいないのか。

補足:

1)対偶「pならばqである」という命題の対偶は、「qでなければpでない」である。真なる命題の対偶は必ず真である。多分、中学の数学の教科書にある。

2)日本が背骨と立派な頭があり、そこにはまともな哲学や歴史認識があると世界が認めるなら、核武装も可能になる時代がくるだろう。軟体動物では、永久に憲法9条を堅持するしか、生き残る道はない。

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