1)ここ数年、世界のいたるところで貧富の差が問題視される様になった。そしてふと、非常に豊かな者と貧困に喘ぐ者が共存するこの社会を、人々は民主社会と呼ぶのが不思議に思うようになった。民主社会とは大衆が社会の主であり、決して貴族的な者が主人でない社会のはずではないのか(補足1)。
現代社会の統治と運営が民主主義を基本的ルールとして行われているというのが、少なくとも近代化した国家の常識と思われたが、それは大きな嘘であることに人々が気付き始めた。資本貴族支配に対する反発が今後政治により吸い上げられれば、世界は大きく変化するだろう。トランプ氏の当選や英国のEU脱退を、ポピュリズム支配の結果として貶すのは旧勢力の宣伝行為であると思う。今後、少なくとも一時的には世界が混乱するだろう。その後、より平等な社会に移行するかどうかは、現代人の知性による。
2)200年ほど前までは、社会の主産業は農業であり、土地が富を産んだ。封建領主は農奴を使って富を得る権利を国王から得ていた。私の考えでは、現代社会には資本家と呼ばれる貴族とその貴族にサービスする人、それに大衆の三種類の人間がいる。貴族にサービスする人とは、マスコミであり、御用学者であり、スポーツ選手、芸能人など所謂有名人である。貧富の差があるのは、貴族社会では至極当然のことである。
大昔の貴族社会と異なるのは、国家の骨組みは政治家が中心となり維持しており、その政治家を大衆が選んでいる点である。現代の大衆が十分賢明に動けば、これまで貴族にサービスしてきた政治家を、大衆にサービスする人に変えることが出来る筈である。君主制から共和制の革命は、資本貴族社会という遷移状態を経て、これから完成するのだと思う。最初の段階では鉄砲などが道具となったが、今回はインターネットなどの情報手段が主なる武器である。
現在、情報入手と交換が容易になり、大衆の中に政治に関心を持つ人がふえてきている。その結果、米国の戦略家のブレジンスキーが正直に白状したように、政治力の大衆への移動が始まっている。氏の「100万人の政治に目覚めた人をコントロールするより、その100万人を殺す方が容易である」という過激な発言が思わず出たのは、大衆が十分な知恵を持てば、彼ら戦略家も大衆の監視の対象になり得るからである。https://www.youtube.com/watch?v=Gc9rsvBIh9U
資本貴族の社会は米国製である。米国の富の半分は上位1%の人間が握る。このような社会をそのままにしておいて良いはずがない。今後数年間の間、混乱の後将来の世界の姿が見えてくるのではないだろうか。
3)何故、このような資本貴族が誕生したのか? それは、蓄積された資本が富を生み、それが資本の更なる増加を産むという、サイクルが存在するからである。ピケティの資本収益率が経済成長率より大きいという指摘は、まさに人々が資本貴族と貧困層に二分されることの指摘である。(補足2)
現在の高度経済社会は、誰のものか? 科学と技術の融合による生産性が飛躍的に向上したこの社会は、過去の人たちの努力が産み出したものであり、その相続権はすべての人が持つ。その経済活動の舞台の上で、才能豊かな人が大きな成果を得たとしても、その全てがその個人の実力に帰せられるべきではない。ましてや、その子孫に、その蓄積された資産が高率で相続されるのは、むしろ不公平である。
今後、世界各国は富の平等分配に向けて動くべきである。経済発展がすべての民のためになった時、国家は安定すると思う。その実現には知恵と世界の協力が必要である。それには、異なる国家の大衆間の協力が不可欠であり、今までそれぞれの為政者により刷り込まれた対立の原因(偏見)を乗り越える必要がある。東アジアの歴史問題などもその一つである。
この世界の動きを止めようとする勢力は、多額の金を用いて政治に干渉するだろう。したがって、個人以外の政治献金は禁止すべきである。政治は本質的に人のためにあり、法人に政治への介入を許せば、その法人に属するものの一票の価値が何倍にもなるからである。これらの改革は、創業の意欲を失わせるという意見が出るだろうが、それは正しくない。
世界の知識が共通のものに移行すれば、この動きが加速されると思う。現在の多くの国際的対立は作られたものであり、大衆の真意ではない。兎に角、世界のリーダーは今後も米国であるから、米国の改革がトランプ新大統領の元で進むことを期待したい。
補足:
1)民主社会とはdemocratic societyの翻訳である。Democraticの名詞形democracyは大衆(demos;common people)が、ルールや力(kratos)を持つ社会を意味する。蛇足だと思いますが、念のため。
2)理系人間の私にはマルクスは遠い存在であり、その有名な著作など読んでいないが、このあたりのことは既に書いてあると想像する。共産主義社会の、「能力に応じて働き、必要に応じて取る」が実現するには、高度に経済発展していることが必須である。不思議なのは、なぜ経済発展には程遠いロシアや中国で共産党支配が起こったのかということである。ソ連はXXが作ったという”陰謀論”は、本当に単なる陰謀論なのだろうか?
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