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2017年4月8日土曜日

保守とは何か:摘菜収のミシマの警告という本を読んだが何が言いたいのかわからなかった

1)最近、摘菜収の「ミシマの警告」という本を読んだ。副題は、”保守を偽装するB層の害毒”である。B層とは、マスコミ報道に流されやすい比較的IQの低い人たちのことである。(補足1)著者は、小泉、安倍、橋下、小池の4氏を支援する人たちの大多数をその様に(B層と)考えて、日本は破壊されつつあると言っている。

この本の前半のテーマは分かりやすく、「日本で何故健全な保守勢力が育たないか」である。読者としての私が理解したところでは、その答えは議会制民主主義の歴史に学んでいないからである。つまり西欧では、キリスト教から発生した啓蒙思想(補足2)が民主主義を生み、その欠陥を補修した形の議会主義が定着している。日本は明治以降、その結果を輸入したが、その歴史に学んでいないのである。

その辺りを、三島由紀夫の著述を引用して書いている。この前半部分は我々理系バカには勉強になるが(補足3)、後半は著者の現実離れした解析に付き合うことになる。小池東京都知事や安倍政権の批判、数年前に大阪府知事だった頃の橋下維新を攻撃するところで終わっている。

著者は直接民主主義と間接民主主義を明確に区別し、前者を民主主義、後者を議会主義と呼んでいる。三島由紀夫は議会主義を擁護する立場であったとしている。保守(主義)は、「何とかイズムを信奉しないで過去から受け継いだものを大事にして、現実的改善で対応する政治姿勢」である。

三島が議会制を擁護しようとしたというが、それが主題ならそして西欧の議会主義の歴史を考えれば、参議院の改革や一票の格差是正などに話が行くべきだがその点は何も書かれていない。この人は保守且つ改善が嫌いだからだろう。

これまでやってきた延長上に現実的な改良を加え、その範囲に答えを見いだす保守の姿勢は成熟国家にはふさわしいが、日本など西欧のものまねで議会制を導入した国では、形だけのマネに終わっており、元々十分に機能していない点が多々あると思う。

三島が真っ当な保守だとの触れ込みだが、石原慎太郎が三島に「共和制という選択はありえないですか」と聞いた時、三島は「あなたが共和制を主張したら、私はあなたを殺す」と言ったという。(P135)その姿勢は保守ではなく、国粋主義のものだろう。イデオロギーを持ち出すのは保守ではないのなら、国粋主義を持ち出す三島は保守ではないということになるが、著者はどう考えているのだろうか?

2)繰り返しになるが、保守で国家の運営ができるのは、成熟した国家且つ孤立した国家の場合である。国際社会で生きていくには、不連続的に変化する国際情勢に対応しなければならないので、革新的な政治姿勢も必要である。幕末の日本はまさにその様な状況であり、保守ではなく薩長の革命政権が天皇制を採用して国難を乗り切った。その辺りの認識はこの著者には何もない。

著者は、最近の小泉政権や安倍政権の政治、更に、大阪維新の会の政治を衆愚政治に堕落した(直接)民主主義的政治と看做している。最近の小池都政も同じ解釈で俎板に載せている。味噌も糞も一緒にした議論である。 https://www.youtube.com/watch?v=8MbURcYJGsY

原因として、保守が反共産に堕落した後、本来の保守が日本に戻っていないことをあげている。それも真実だろうが、上記のようにそれだけではない。本物の議会制が未だ一度も日本国に導入されていないと考えるべきだろう。

その処方箋を議論せずに、現状の悪口だけを並べて不平不満を言っているように感じた。その改革すべきところを真面目に議論しようとした勢力をも、保守的でないという理由だけで味噌糞に批判する姿勢には嫌悪感すら感じる。つまり、小池都政と橋下府政の区別をしていない。

橋下氏は、太田房江知事の無責任府政から引き継いだ大阪府を、財政破綻寸前から建てなおしたと私は考えている。道州制も、地域の伝統を新たに利用することで日本国に新しい生きるエネルギーを生み出すには最適だと思う。小池氏はポピュリストであるが、橋下氏を同等のポピュリストと捉えるのには反対である。

B層という知能の低い大多数の支援を受けた小泉政権や安倍政権を批判するのはわからない訳ではない。しかし、B層に阿る政権とB層をカルチベイト(cultivate)して、真っ当な政治勢力に育てようとした勢力とを一緒にするのは、東京人の傲慢である。また、この本や「アンチクリスト」の現代語訳の言葉使いの荒さから、この著者がまともな知性を備えた方には思えない。(4月9日早朝編集)

補足:
1)著者によると、2005年の郵政選挙の際、自民党が広告会社に作成させた企画書に登場する概念だそうである。(52頁)構造改革に賛成でIQの低い人たちを指す。
2)人間に共通の理性があり、その普遍性を主張する思想。フランス革命、英国の議会制民主主義や三権分立の考えは、そこから発生した。ウィキペディア参照
3)スペインの哲学者のオルテガも大衆を批判する一人である。彼は、近代化に伴い新たにエリート層として台頭し始めた専門家層、とくに「科学者」を、「近代の原始人、近代の野蛮人」と批判した。。

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