1)読売新聞の記事として、「安倍首相と北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長による首脳会談実現に向け、日朝両政府関係者が複数回にわたって水面下で交渉を行っていたことがわかった」と報じられている。https://news.nifty.com/article/domestic/government/12145-042414/
北朝鮮との外交関係を持つまでのプロセスを考えることは重要課題である。しかし、日韓基本条約に書かれているように、日本は韓国を朝鮮半島唯一の政権として認めているので、北朝鮮と外交関係を開くことは日韓関係の見直しでもある。従って、記事の最初の文章は其れを意味しているとは考えにくい。また、日本政府はごく最近まで対北朝鮮政策の基本として、米国の猟犬のような姿勢で最大限の圧力をかけて、完全且つ不可逆な核兵器の放棄を迫ってきた。以上から、水面下にしろ、北朝鮮との外交関係を開くという基本的な話では無いはずである。
実際、その記事の中で、首相は「北朝鮮と直接向き合い(拉致問題を)解決していかなければならない」と会談実現に強い意欲を示しているという文章がある。つまり、日本政府の上記水面下交渉の全体は、その安倍総理の言葉が意味するところに一致するだろう。この日本政府の「北朝鮮問題といえば拉致問題」という認識はオーソドックスな姿勢ではない。それは、既にブログ記事として書いた。(6月12日の記事)
また、拉致問題には2つの側面があると別記事で書いた。この件は、日本の沿岸警備不足等の貧弱な行政が原因で起こった、何者かによる自国民の拉致という過去の事件である。その理解では、責任は自国民を護れなかった日本政府にあるのだから、拉致被害者とその家族に対する保障は日本政府がすべきである。
その後、この拉致が北朝鮮という国家により引き起こされたことが明らかになった。拉致被害者が現在存命であり、彼らが望むのなら奪還しなければならないという問題が二つ目の側面である。その場合、北朝鮮を仮想敵国として捉え、戦争を含めた外交問題として対処すべきである。数人のギャングが行った犯罪ならともかく、国連に加盟している国家が行った犯罪的行為に対して、裏門を用いた類の交渉で解決を目指すのは、まともな国の考えることではない。(4月22日の記事)
現在、北朝鮮は国際的に認知された独立国である。そして、米国さえも外交関係を開くことも視野に入れている現状を考えれば、日本国と北朝鮮との外交関係を樹立することを考え、その一環で拉致問題も解決すべきである。後者だけを独立して扱うことなど本来ありえない。
また、拉致被害などが今後生じないように、日本の沿岸警備や治安警備のあり方、日本に滞在する外国人や外国人の団体の実態の把握と監視、それらに対する治安上の措置をとる必要があるのか、必要があればどのようにとるか、などの問題に回答を用意すべきである。
2)日本政府は「拉致問題」を理解しているのか? これまでの日本政府の拉致問題解決に関する手法は、単に金を渡して返してもらうなどの異常な方法であった。それは、政府が正しく拉致問題を理解していないからだと思う。
戦後米国の支配下に入った日本は、米国の望む形で日韓基本条約を締結した。その結果、日本は北朝鮮をまともな国家として認識できない状況にある。その日米韓の関係を善き状態として温存しながら、拉致被害者を取り返す方法として考えたのが、金で取り返すという方法である。しかし、その手法は時代遅れなことは明らかである。それでも尚、安倍総理は同じ手法を使おうとしている。
現在、対北朝鮮問題として考えるべきこととして、私は以下のように考える。繰り返しになるが、日本は日韓基本条約で韓国を朝鮮半島における唯一正当な国として認めており、北朝鮮を外交関係のない仮想敵国として把握している。我々は、日本国が北朝鮮を現状正常な外交関係を持ち得ない国としていることを十分承知する必要がある。国家としてその存在を認めていないのだから、自国民が“北朝鮮”に拉致されたとしても、北朝鮮という国(朝鮮民主主義人民共和国)に文句をつける理由はない。(補足1)これは原則論だが、拉致問題を考える上で重要である。
その理解があれば、北朝鮮が国家として行った拉致問題の解決は、北朝鮮を国家として認識できるように外交関係を開いた後に解決するのが正常なやり方であることが分かる。外交関係が開かれるまでの段階で考えるべきは、①北朝鮮からの防衛の必要性をどのように考え、其れを元に②防衛計画のグランドプランを作成し、次にそれに従って③具体的にどの様なプロセスでそれを実現するか、等について回答を用意すべきだと思う。
それらが準備でき、互いに独立国としての体裁が整えば、外交関係を開くことが可能となる。そこで、拉致は韓国へ送るスパイ等の養成の一環として行ったと言ったのなら、つまり、日本国に無関係なら、賠償の要求とともに被害者の引き渡しを要求すべきである。
補足:
1)たとえ話で説明する。夜間何もわからない内に猫が何物かに拐われた。どうも山の中のあの熊が“犯人”らしいと隣家から聞いた。この段階が現状である。熊が犯人なら、言葉が通じない熊に文句を言う人はいない。鉄砲を持って、奪還に向かうのがノーマルな方法である。日本が採用している方法は、「熊に拐われた猫を救うために、熊の好きな餌を投げて猫を手放させ、そのスキを見て取り返す」という鉄砲を持たない現状から苦心して考え出した方法である。
しかし今、熊というのは嘘であると知った。街の実力者の手下の隣家が、親分の嫌いなその家の主を熊と言っただけであった。自分もその親分に近いのだが、その向こうの家の住人が言葉が理解できる人なら、隣家とは独立に知り合いになり居なくなった猫の話を聞くべきなのだ。猫が必要だったので奪ったと言ったのなら、賠償とともに猫の返還を要求すべきである。こちらが金を支払う理由などない。
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