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2018年6月1日金曜日

朝鮮半島のリビア方式による非核化:米国は、時計の針を逆方向に回す努力をしているという自覚があるのだろうか?

1)6月12日に米朝会談が開かれる可能性が残されている。韓国の総合ニュースによると、ポンペイオ国務長官は、ニューヨークでキム労働党副委員長と米朝首脳会談に向けて話し合った結果として、「実質的な進展があったものの、まだ多くの課題が残っている」と述べた。

その上で、米朝会談を開催するかどうかについては「まだ分からない」と述べ、更に金英哲副委員長が金正恩委員長の新書をトランプ大統領に手渡すため、ワシントンに向かうことを明らかにした。http://japanese.yonhapnews.co.kr/northkorea/2018/06/01/0300000000AJP20180601000500882.HTML

金正恩は、米国に対して明確な体制の保証を要求しているのだろう。そのような方法があるのだろうか?どのような約束が北朝鮮の金正恩政権の存続保証になるのだろうか?CVID(直ちに完全不可逆検証可能な核廃絶)を行うことと矛盾しないことで、そのような約束が可能なのだろうか? それについて、一人の素人が想像したことを書く。

一つは肩透かし的方法で、表向きCVIDを受け入れることにして、日本や韓国を核攻撃できる能力をしばらく維持するという密約である。それが最も可能性が高いだろう。密約は、過去の英米の得意技であったからである。勿論、トランプはそれを潔しとしないかもしれない。

密約以外では、以下は全くの素人の発想なのだが、平和協定から大使の交換を短期間に行い、例えば交渉に参加したポンペイオ氏や娘婿のクシュナー氏を大使として置くことなどがあると思う。その程度のことをしなければ、なかなか話がまとまらないだろう。

これも肩透かし的だが、トランプ政権は金正恩政権と交渉をしているふりをして、北朝鮮でのクーデターに期待している可能性もあると思う。しかし、それはむしろ危険な方法だと思う。米国の力や西欧諸国の考え方を最も良く理解しているのが金正恩であり、クーデターで出来た先軍政権は、妄信的に核兵器に依存する可能性が大きいと思うからである。斬首作戦なども、クーデター期待と同様、世界にとっても危険で稜線渡り的である。

2)もし言葉通りに、リビア方式による北朝鮮の非核化を考えているとしたら、米国は、時計の針を逆回転させる努力をしているということになる。そのような自覚が、米国にあるのだろうか?

核兵器でも何でも、拡散するのが物理法則である。西欧で大きく進んだ科学技術文明も世界に拡散した。それを元に戻すことなど出来ない。地球など孤立した系(補足1)では、拡散の程度が時間の進み具合の尺度である。時計が逆方向に進み出すことがないとすれば、否、絶対に時間は後戻りしないのだから、その系においてある物を拡散状態から元の局限状態に戻すには、外部からエネルギーを加える必要がある。それが、科学の理論の示すところである。米国は外部に出ることができるのか、そして、そのエネルギーを注ぐ用意があるのか?

米国は、その目的を達成するためにエネルギーを使わずに、羊飼いのラッパのように脅しを使うとしたら、また、本来当てにならない他国のエネルギーを充てるという、安易な方法を考えているとしたら間違いだろう。(補足2)特にトランプ政権は省エネに熱心なようであり、それが今回の米朝交渉において失敗に終わる原因とならないように祈りたい。

米国の目的が東アジアにおける平和の確保なら(補足3)、エネルギーを使わないで平和を達成する本来の方法がある。韓国および日本に相応の核抑止力獲得を黙認する方法である。それは、北朝鮮に余分の圧力を加えることなく、平和協議を可能にする。北朝鮮も強引に半島統一することなど考えないだろうし、出来ないだろう。北朝鮮をまともな国家として認めるのなら、彼らが核武装してもおかしいことは何もないのである。また、その周辺にある韓国や日本も同様である。

日米韓、それに中国ロシアなども、自然な将来の東アジアの独立国家とそれらの関係のあるべき姿を考えるべきである。そこ基準にして、そこに近づける形の合意こそ、最小のエネルギーで到達出来る筈である。(補足4)

将来も、韓国や日本を自分たちの隷属下に置き、今回更に北朝鮮もそのような形に置きたいと考えるのは、時計の針を逆戻りさせるような企てだろう。つまり、欧米の国家が優れていて、東アジアの国々は何もわかっていないので、自分たちの支配下に入るべきだと考えるとしたら、それはアジアを植民地にしていた時代に逆戻りしたいということになる。

これからの時代において核兵器は使うべき兵器でも、使える兵器でもない。しかし、国家として独立し、その尊厳を互いに認めるというのなら、全ての国家は核抑止力をもち、その上でその責任を自覚すべきである。生来のならず者国家など、存在しない。(補足5)

もし、しばらく時間的余裕を欲しいと思うのなら、繰り返しになるが「北朝鮮がリビア方式のように核廃絶するのなら、北朝鮮と平和条約を結びクシュナー大使を北朝鮮に派遣する」という位の合意が必要だろうと想像する。北朝鮮と取引(DEAL)をするというのなら、何かを交換するというのが通常取引の常識だと思う。「命令に従え」というのなら、取引ではない。

追加(17:00):佐藤優さん出演の「くにまるジャパン」では、合意は段階的核廃絶でなされ、第一段階はICBMのみの完全廃棄だろうと解析している。そこで、北朝鮮の経済支援が始まり日本が主となって参加する羽目になるだろうという話である。この悲劇的な日本の外交の背景には、森友問題などでの官僚パッシングと政府の官僚を見捨てる姿勢があるという。外務官僚たちは、体を張って現政府に協力しても、失敗すれば見捨てられるだけで割りが合わないと思っていると分析している。https://www.youtube.com/watch?v=scPML3QIEzg

補足:

1)孤立系とは物質やエネルギーの出入りのない系である。その体積が不変なら、局在していたものは拡散するというのが、自然科学の法則である。
2)なんどもブログに書いたように、朝鮮戦争を終結せずに今まで引き延ばしてきた責任は米国にある。
3)米国は東アジアでの平和確保など目的ではなく、北朝鮮から核兵器を廃絶すること自体が目的なのかもしれない。それは、米国など数カ国による世界支配の固定化という大きな目的を背景にしている。
4)国家はエゴイズム的存在なのだろうが、それを弱肉強食の原理で解決するのは20世紀までの話にしてほしい。
5)北朝鮮がならず者国家だとすれば、それは反対側にいる身勝手な国家が育てたと考えるべきである。

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