1)米国トランプ大統領が日本に来ている。作日、トランプは皇居で新天皇と会ったのち、北朝鮮に拉致された人たちの家族と対面した。それをアレンジした安倍内閣の政治的パーフォーマンスである。トランプ大統領の政治的パーフォーマンスでもある。
どのような手段でも用いて家族を取り返そうとする拉致被害者の人たちの気持ちは痛いほどわかる。しかし、拉致問題のかなりの部分は、歴史の中に吸収されてしまっている。つまり、日本海に投げ捨てられた人たち、朝鮮ですでに死亡した人たちも大勢いるし、北朝鮮の指導者により「過去の問題」と宣言されている。
日本がしっかりと70年前に戦後処理をし、その後確かな国境管理をしていれば、拉致問題は起こらなかったか、或いは、相当程度防止できた可能性が高いと思う。その原点をもっと議論し、その結果を踏まえて現在の国境警備体制や国家安全保障体制の改革を考えるべきだと思う。そして、その考察および改革方向を国民に明らかにすべきである。
すでに殺された人たちの命を尊い犠牲とし、精一杯今後の日本国の体制改革に生かす義務が、日本国には存在すると思うのである。現在、生存している被害者の方達の命は、日本側が騒がない方がより安全だろう。
なんどもこの問題は議論したが、日本国がその存在根拠を否定した"国或いは地域の何者か"(補足1)による拉致は、テロ行為である。存在そのものは否定していない国が拉致したのだとすれば、それは戦争行為である。その原点を日本政府は国民に対して十分には説明していない。
勿論、それを日本政府は犯罪或いはテロ行為だとは言っている。しかし、テロ行為や犯罪行為なら、その犯人の棲家を、国家のトップである総理大臣が公式訪問するのはおかしい。(補足2)戦争行為なら、戦争中の相手国に国家のトップが公式に訪問することなど、到底考えられない。
安倍総理は、北朝鮮を訪問して金正恩と会うつもりのようだ。繰り返しになるが、それは、小泉元首相の時同様、異常だと思う。戦争行為に出た相手国から、トップが謝罪に日本に来るのなら兎も角、こちらからお金を持って行くということが、どうしても私にはわからない。
ダッカ日航機ハイジャック事件(1977年9月)の時には、当時の福田赳夫総理が超法規措置と称して、テロリストに対してお金を支払い、彼らの仲間を釈放するという、土下座行政をした。(ウィキペディアの「ダッカ日航機ハイジャック事件」参照)その時、国会が大荒れに荒れたという記憶もない。福田赳夫内閣は、その後も一年以上続いている。(補足3)
勿論、その当時、諸外国も似たような対応をしたとウイキペディアには書いてある。何をするかわからないし、言葉も通じないテロリスト相手であるから、仕方がないという弁護もあり得るだろう。更に、当時の福田総理は、直接犯人たちと交渉したわけではない。また、今回のケースは、世界のほとんどが承認している国連加盟国の北朝鮮が相手である。何もかも大きく異なる。
2)一般論として、国家承認していない国を国家のトップが訪問することは避けるべきである。しかも、人質解放のために総理大臣や大統領が、拉致した国を訪問することなど、米国やその他の国では考えられない。そのように言うことで、何も考えない人たちの人気を得ようとしているのだろう。政治家たちは、被害者家族の悲痛な気持ちを政治利用しているように、私には見える。
ただ、小さい国が国家存亡の危機にあると考えた場合、大きな国を訪問することはあり得るかもしれない。(補足4)つまり、もし仮に安倍総理が訪朝するとしても、北朝鮮に核放棄させることが出来るという見込みがなくてはならない。
拉致問題は、北朝鮮の金正恩にとっては負の遺産であり、既に解決済みだと表明している過去の問題である。そんな解決の見込みのない問題は、官僚レベルの下準備に任せるべきである。仮に、第三国で日朝会談を行うとしても、表に出すべきではないと思う。
トランプが拉致被害者家族と今回も会ったのは、それを政治利用して、米国の利益実現のために安倍総理を北朝鮮に送りたいからである。その米国の意図は、核兵器を搭載したICBMを北朝鮮に持たせないためである。勿論、東アジアの友好国の安全に寄与することも少しは考えているだろうが。
日本の総理大臣なら、北朝鮮に中距離核ミサイルなども廃棄させ、今後の核ミサイル保持を諦めさせるように、目的を絞って交渉すべきである。もし、それが実現すれば、つまり、北朝鮮が米国と緊密になり、日本も国交樹立できたのなら、拉致問題は自動的に解決する筈である。(補足5)
3)最後に一言&:
北朝鮮問題は、中国、ロシア、韓国、日本、米国の6カ国の問題であり、総合的に考えるべきである。特に、米中貿易戦争の真最中の今、東アジアの中で、どのようにして日本が存在基盤を確保するのかを考え、その実現のための一つとして、考えるべきである。単に拉致問題解決といえばわかりやすいが、大損をしてしまうだろう。
更にもう一言。北朝鮮は核放棄することはないだろう。北朝鮮は、対米国の兵器として考えていなかっただろうし、米国もそう考えていなかっただろう。トランプが大統領になる前に、日本も韓国も核兵器を持てば良いと語ったことがある。それが、上記の証拠であると同時に、問題解消の唯一の方法である。https://www.jaea.go.jp/04/iscn/archive/nptrend/nptrend_06-04.pdf
現在そのように言わないのは、北朝鮮核問題が、米国に良い政治的位置をプレゼントするからだと思う。(補足6)北朝鮮の当初の核武装の目的は、対中国(&対ロシア)の防衛であり、韓国の吸収統一、日本への脅しだろう。
これは一素人の考えであること、お断りしておきます。(10:30編集あり)
補足:
1)日韓基本条約において、韓国を朝鮮半島唯一の合法国家であると、述べている。そして、日本は北朝鮮を国家承認していない。
2)小泉訪朝は小泉元首相による大失敗のスタンドプレイである。国交のない、そして、その存在を否定した国家を、総理大臣が訪問するというのは、大成功した場合を唯一例外とする、愚挙である。土下座外交の醜い姿を何故、日本国民は非難しないのか、今だに、テレビで政治的動きが報道されるのが、本当に不思議である。土下座が醜く映らない、卑しい国家なのだろうか?
3)日本の野党の正体が、このことをとってもわかるだろう。
4)米国との戦争が避けられない状況になったときでも、それを避けようと努力したのは野村吉三郎大使であった。安倍総理が北朝鮮を訪問すれば、世界の笑い者になるだろう。そうならないとしたら、北朝鮮が核放棄して(或いは核放棄したことにして)、日米側の陣営の一員となった時だろう。
5)強盗から宝物を取り戻すには、最後まで宝物の話はしない方が良い。つまり、全て幻であったとしても、人間関係を樹立し、将来の安定な生活のビジョンを見せることで、警察に赴いた方が得だと説得することである。それができれば、宝物は自動的に帰って来る。
6)米国はイスラエルなどの要請もあり、中東へ核兵器が流れることを防止しなくてはならないだろう。それは米国の仕事を増やすだろう。しかし、仕事がないよりも増える方が、何かと地位維持或いは向上に役立つ。
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