妙佛というハンドルネームの方のyoutube情報はたいへん面白い。そこで、カルロス・ゴーン逮捕の裏に、米中の次世代自動車、次世代産業をめぐる争いがあるという話を聴いた。勿論、その手の似た話は別の人も言っていたが、妙佛さんの中国関係の話には特別な説得力がある。そこで、世界の次世代自動車をめぐる争いをネットで調べてみたので、以下まとめてみる。以下、一素人の勉強メモである。
上記争いで、当然ながら日本は米側にある。中心として動いた(捜査のスイッチを入れたのは)経産省だろう。勿論、国策捜査とは言え、違法性がなければ、ゴーン氏を処罰することは出来ない。しかし、違法性は多分どこにでもあるのが、この社会の実態だろう。(補足1)https://www.youtube.com/watch?v=0OwL_R9Us-k
1)次世代自動車とは、電気自動車などのZEV(zero-emission vehicle)と自動運転車やICV (intelligent connected vehicle)のことである。ICVとは、情報通信網(Information Sharing Networks, ISN)と連携して、スムースに動く賢い車(smart car)である。(補足2)信号もISNによって渋滞などの起きないように、そして道路の優先順位に従って制御されるだろう。
先ず、ZEV(zero emission vehicle)における競争だが、単なるHV(ハイブリッド車)はZEV規制に引っかかる傾向にあり、自動車会社は今後主に、電気自動車(EV)、燃料電池車(FCV)、プラグインHV(PHV)のどれかで競争することになる。(補足3)下に2018年のモデル毎の生産台数世界ランキングを示す。
世界トップはテスラのモデル3であり、第四位と第五位のテスラ車を加えると、テスラの世界シェアはダントツの一位である。世界二位は中国の北京汽車(汽車は自動車の意味)の車、第三位に日産リーフが入っている。日本からはトヨタのプリウスプライムが九位、十位が三菱アウトランダーである。ルノーの電気自動車Zoeがそれに続いている。
問題が発生した原点に、周知の如く日産が日本の自動車会社ではあるものの、1999年にフランスのルノーの資金協力で経営を立て直したことがある。この情けない日本産業界の姿は、不採算部門を整理縮小する決断が日本式人事でトップになった人には、なかなかできないことに原因があると言われる。
また、三菱自動車も2016年の燃費不正問題で窮地に陥り、日産から出資を受けて命拾いした。その結果、同社の筆頭株主(30%以上)は日産である。その結果、ルノーは日本のEVとPHVの技術を持つ二つの会社に対する支配力を得たことになる。
上記ランキング第11位のルノーの車にも、日産のV技術が利用されていると考えると、日産の電気自動車における地位の高さが理解できる。
その日産のEV技術等を完全にフランスのものにしたいというのが、フランスの元国営会社ルノー(筆頭株主はフランス政府、持ち株比率19.74%、日産は無議決権株15%程度保持、ウイキペディア参照)とフランスの本音である。そして、ルノー、日産、ダイムラー(ドイツ、ベンツで有名)の戦略的同盟関係、ルノー、日産、三菱の同族関係を考えると、EUは米中とともに次世代自動車をめぐる争いの一角としての地位を得ることになる。
2)ZEVと伴に現在厳しい競争になっているのがICVである。スマート化したZEVやPHVを5G通信網で自動運転する技術を巡る競争が、次世代自動車をめぐる競争である。自動運転には、遅延時間がゼロに近い5G通信網がなければならない。自動運転車の走行には、高速通信によるリアルタイムの制御が要求されるからである。
この次世代自動車関連の競争全体で優位に立っているのは中国だろう。それは、中国の5G通信における大きなシェアが関係している。下図は日本経済新聞の記事からとった4G及び5G通信関連の特許出願シェアである。ファーウェイやZTEの中国が、5G通信の特許を多量に保持している。同様に多くの特許シェアを持つのが韓国のサムソンやLG電子である。https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44412620T00C19A5MM8000/
ここでも、日本の活力の無さが際立っている。サムソン言えば日本の三洋に学び創業された会社であることを考えると、益々情けない気持ちになる。(補足4)以上から、5G通信とICV技術は、同じ目標に向かう技術であり、何れも中国がNo1~2の地位を保持していることがわかる。
中国のGDPは世界二位であり、近い将来一位になるのは明白だろう。政治的&軍事的にも経済的にも世界覇権を狙っていることを、中国の習近平主席は一帯一路構想と中国製造2025という標語で内外に宣伝した。現在はその実現を疑うのが主流の考えであるが、数字が2035とか2050になっても、最終的には中国製造20XXは達成されると私は考える。(捕捉5)
民主党政権時には、米国は中国融和策を取っていた。米中関係を見直す切掛となったのは、共和党トランプ政権の誕生であり、現在では米国全体が対中国対決モードである。そこで米国は、EUが中国と関係を深めることを警戒している。EUの中心は、ドイツとフランスであるので、それらの国と中国を切り離すことが、米中戦争における米国の戦略の一つの筈である。どのような勢力争いでも、一位の没落は、二位三位連合の結果であることが多いのである。
上記次世代自動車と5G通信における米中の争いでも、EUは独自の対中戦略を取る可能性がある。その米国の懸念で動いたのが日本の経済産業省なのだろう。日産をルノーから取り戻すことは、電気自動車の大きな陣営を米国側に取り戻すことになる。ZEVとICVを抑えることは、5G通信の市場の最大部分を抑えることになると思う。
以上、少し情報を集めて、この分野の知識と考え方をアップグレードした。
補足:
1)ロッキード事件もウォーターゲート事件も、第一の政治勢力が必要としたから起こった事件だろう。司法の完全独立など、どの国を探しても無いのが実態である。近代国家とは、それが存在するかのように表舞台で演出できる国に過ぎない。それでも、独裁国とは同じではない。独裁国を意識して言い換えれば、理想の周りを故意または自然にジグザグ走行するのが、近代国家である。
2)自動運転車は、三次元的な道路地図を参照しながら、自車と他車や歩行者などとの位置関係を把握して、自動的に動く車である。従って、リアルタイムでそれらの位置関係を把握し、それに基づいて車を制御する必要がある。
3)ZEVとは排気ガスを出さない車なので、完全にZEVといえるのは、電気自動車と燃料電池車(FCV; fuel cell vehicle)である。ただZEV規制は大気汚染や大気中二酸化炭素の増加を防止するための規制であるから、電気自動車(EV)は、火力発電が存在する以上その本来の要求に合致していない。走行に用いる電気の他、バッテリーのリチウムなどの製造には、多量の電気を要するからである。https://www.renewable-ei.org/activities/reports/img/pdf/20180627/REI_EVreport_20180627.pdf
太陽エネルギーで水素をつくり、それをFCVで用いるのが、最もCO2排出量が低い車での移動方法だろう。兎に角、ZEV規制も多分に政治的である。なお、水素の利用が環境問題として大事なことは既に本サイトで書いている。https://rcbyspinmanipulation.blogspot.com/2018/10/blog-post_13.html
4)数日前の朝鮮日報の記事にこのことが書かれているが、それは今日の日韓関係についてのニュースを読んでいる時に見つけた。勿論、ウィキペディアのサムソン電子の項をみても良いが、この記事は非常に面白いので推薦したい。https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190503-00080059-chosun-kr&p=2
5)中国経済はもう終わりだという類の情報がyoutubeで流されている。それらの予測があたったとしても、中国が無くなるわけではない。仮に、国家としての中国がデフォルトしても、更に、共産党一党独裁体制が終わったとしても、中国は日本にとって最大の脅威として残る可能性が高い。日本の空気(山本七平氏の言う空気)は、自分に心地良い情報のみ選択的に流すので、正確な情報を得るには、外国からの報道を含め、自分でネットから有用な情報を探し、且つ、自分で考えるべきである。
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