12月6日頃に、YoutubeのHaranoTimes氏が再録した中国人民大学翟東昇教授の動画は、米中関係の背後にユダヤ系資本家の協力があったこと、バイデンの資金供給に中国が協力したこと等を暴露した。https://www.youtube.com/embed/gTcWNnYltaU(このブログ・サイトでは12月7日に紹介した)
その動画は中国では削除されている。しかし、中国政府から独立していると言われるVision Times(本拠地は米国)の日本語版「看中国」が、話の内容とその中で出てくるユダヤ人女性の正体について、12月11日に記事を書いている。https://www.visiontimesjp.com/?p=12134
その中国人民大学の国際関係学院副院長で、貨幣研究所の研究員でもある著名学者が、今度は新型コロナのパンデミックを、一帯一路構想をバージョンアップするチャンスだと主張する講演をしている。その動画を紹介しているのも、HaranoTimesさんである。https://www.youtube.com/watch?v=jDm2cz8JRQU
その講演内容が興味深いので、ここでその概要を紹介する。
1)講演の内容について
これまでの中国と先進諸国との経済関係は、ドル基軸体制下の米国を中心としたバブルである。西欧の資本投資により中国で大量生産が成され、輸出であげた中国の利益は、米国等の国債購入という形で欧米に還流する。
しかし、このグローバル経済を米国人の半分はもうやりたくないと考えている。彼らトランプ支持者はトランプに騙されている訳ではない。明確にグローバル経済に反対しているのだ。欧米諸国は既に年を取りケチになっており、この関係は長続きはしない。
そして、中国が利益をあげても、欧米が無限に信用拡大をすれば、中国の債権は希釈されてしまう。今後は、中国は欧米以外の50億人で、中国を中心にした新しい経済関係をつくるべきである。新しい債権と債務のバブルである。(補足1)
そこでは人民元が価値の基準となり、中国が(現在の米国のように)世界最大のマーケットとなる。そのためには、現在貧しい途上国の経済が発展して、そのマーケットの中で自立しなければならない。それは、途上国の王族や貴族では無理であり、中国が指導しなければならない。
何故なら、貧国には(自国民のための)強い政府がなく、それらの国の王族貴族は、欧米に投資して低い利子を貰うという無駄をしている。貧国が自立発展するには、輸出できる産業を育て、そのためのインフラ整備がなされる必要がある。そのために中国がそれらの50億人が属する貧国に輸出すべきは、強い政府を作る経験と能力である。(補足2)
先進国の資本、商品、貨幣の循環の中に入るには、それらの国は貧しい状態から競争力を持つ国に“離陸”しなければならない。その時、その推進力を産み出す「強い政府」がなければならない。その強い政府は、宗族、社会、家庭、非政府組織、メディア、世論等に対して、強いコントロールができなければならない。
ただし、貧国の人を、直接我々の社会に入れてはならない。異文化の人間の混住は、様々な衝突が起こるからである。我々も、五湖の激動などの悲惨な経験を知っている。(五胡十六国: 中国史上の民族大移動)
以上から、パンデミック後の中国が一帯一路の周辺途上国を対象に執るべき政策は:
① 投資を増加して、資金貸しを減らす。途上国への債権増ではなく、設立された会社の株所有を増加すべき。それらの国々を周辺において、中国中心の人民元を決済通貨とする第2のグローバル・マーケットを築く。そして、世界から投資を呼び込む。
②一帯一路上のこれらの国々に、分散投資ではなく集中投資をする。集中でなければ、制御ができないからである。
③これらの国々には道路建設だけでなく、貿易可能品の産業育成を手伝う。これを現地の王族や貴族に任せてはならない。現在失敗しているし、失敗必定である。
具体的にはこの100年ほどの期間に、100程度の特区の設立をして、そこに例えばパキスタン人300万、インド人300万人、その他300万人の1000万人規模の都市とする。多種族は問題ないが、単一文化でなくてはならない。共通語はないので、中国語が公用語になる。
大体以上の内容である。
2)私の感想
翟東昇教授の講演は、中国の自分勝手な論理が満載されているが、それでも尚、論理の筋は通っている。現在のグローバル経済の金融の構造や、途上国が工業化できない理由なども正しい指摘だと思う。
「先進国の経済の中に一定の位置を得るには、先進国との間の貿易可能品を作り出す必要がある。そのためにインフラへの投資が必要だが、途上国の王族や貴族は、自身の資金を先進国に投資して低い利息を得ている」という指摘である。
これは王族貴族の愚行というより、利己主義である。つまり、強い政府があれば、或いは創る事ができれば、王族や貴族の資産は国内投資に向かう可能性が高くなる。しかし、現状では自国に投資しても砂漠に水を撒くようなことになることを知っているのだろう。(補足3)
自国への投資が可能になるには、一定の目論見が成立することである。それは、先進国の協力があって出来上がる。例えば、中国に対して米国(そして日本も)が果たした役割などがなかったなら、中国は工業国に離陸できなかっただろう。
早期に先進国の経済ループに入れば、その離陸のエネルギーが少なくてすむ。しかし、今となって(先進国が年をとっている現状で)は、途上国が自力で工業国等に離陸するのは困難である。
檻の中に置かれたような途上国の情況は、恐らく植民地主義の遺物だろう。植民地支配で、それらの国に王族や貴族と一般大衆という分裂が固定的に出来上がったからである。独立により途上国の富が、収奪されないとしても、それは途上国の王族や貴族に渡る。その結果、彼らによる欧米先進国への投資という形で、結局欧米に還流するだけだからである。
翟東昇教授の中華思想的な途上国開発のモデルは、非常に勝手なものである。最後の多民族都市の構築と中国語の公用語化など、その最たるものだが、それに反論するには相応のレベルの別のモデルを出す必要がある。
(4月7日、早朝 表題を改める
補足:
1)このバブル(泡)という表現は、ここでは金融における債権と債務の関係が巨大化していくことだろう。いつかは破裂して無に帰するからである。会社の資産査定は一定のルールで成されて、債務超過の会社は破産となって潰れ、債権のかなりの部分は債権者に分配されるだろう。しかし、国家の債務超過、特に世界の中心となる国家の債務超過は、無限に大きくなり得る。覇権が別の国に移動すれば、これまでの覇権国には高度なインフレが発生し、これまでの周辺国が持つ莫大な債権は紙くずとなる。
2)この翟東昇教授の考えには説得力がある。ただ、その強い政府が、習近平の独裁中国では、この論理は成立しないだろう。つまり、翟教授が把握している現在の中国は、共産党の一党支配の国であり、習近平の独裁体制ではないのだろう。
それはこの動画の最初の発言、「私の民本主義政治経済学の理論観点から、一帯一路をどう建設すべきかについて話したい」から明らかである。
3)この点は大事で、如何にGDPの大部分が内需であるとしても、生活必需品(エネルギーや食料)を輸入しなければならないのなら、先進工業国の中に輸出できる品がなければ、その国(例えば日本)の経済は崩壊する。三橋貴明氏や藤井聡氏などの政府財政支出がデフレの元凶という考えの人達は、その点を看過していると思う。
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