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人類史の本流は中華秩序なのか、それとも西欧型秩序なのか

1)米国が露呈させた中国共産党政権の真の姿と日本の課題   日本が抱えている最重要な課題は、コロナ問題や拉致問題等ではなく、表題の問に対して明確な答えと姿勢を持つことである。短期的な経済的利益に囚われないで、現在が世界の歴史の方向が決定される時なのかどうかを考えるべきである。...

2021年4月23日金曜日

人類史の本流は中華秩序なのか、それとも西欧型秩序なのか(II)

表題の文章を書いて半年以上経った。ここで、もう一度この問題を考えてみる。新事実も出ているので、もっと説得力のある議論が出来るかもしれないと思ったからである。その第一報は次の記事である。https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12629638596.html

 

1)共産中国の独占資本主義

 

中国の資本主義経済体制の本質は、中国共産党が中国株式会社を経営して利益を上げることである。そして、その利益を最大化する時の条件(束縛条件)は、共産党政権の力及びその支配域が減少しないことである。「労働者である国民個人の人権、欧米文化としての法の支配、民主主義の知恵」などへの配慮は不要であることは、香港やウイグルなどの件で明らかである。

 

この方式は、鄧小平以来の高度成長期には成功してきた。ただ、経済力がつくに従って、現場上層の共産党員による私的利益追求がひどくなった。一般に、中国人は公(おおやけ)を信用しない。一族の繁栄は、地方や中央政府(つまり中国共産党)の中に出世する人物を輩出し、そこから冨の流れを得ることに掛かってくる。この中国のコネと賄賂の文化は、小説ワイルド・スワンズのあちこちに書かれていることである。(補足1)

 

中国を世界の工場とし、国民を奴隷のように、そして一部は本当に奴隷にして働かせ、冨を築く方法は、高度成長期を経て行き詰まってきている。その原因は、上記腐敗もその中に入るが、第一に周辺国と比較した場合の人件費の高騰である。(補足2)この高度経済成長の後期に現れる“泥沼”を乗り切るには、中国人民大学翟東昇教授の講演にあったように、世界に冠たる産業を何か急いて築き上げることである。

 

その際、欧米文化の「法の支配」などには拘っている余裕はない。知的所有権は無視して、技術の差は盗み(補足3)で埋め合わせて、5G技術など先端産業で世界シェアを取ることである。更にそれを盤石にするのは、それらのバックグラウンド技術を、中国製造20251000人計画で作り上げるのである。民間企業的なファーウェイなども盗聴でも何でもして、親会社の中国共産党のために働くのである。

 


https://www.youtube.com/watch?v=C-M00hLqxg0

 

高度成長期が終わり、先進国の中で確たる地位を得るには、本当は、その国のこれまでの歴史と文化が重要になる。国民が知恵や真理を愛すること、公のルールに敬意を持つことなど、“ソフトなインフラ”が、ハードなインフラである道路や鉄道網、エネルギー設備、それに上下水道などの整備に加えて必要である。

 

中国は、時間のかかるソフトなインフラの整備を無視して、国家権力による強制と洗脳でそれに代えようとしたのである。そのような西欧文化が数百年かけて築いた文明を、数十年でスキップしようとしたことが、欧米と衝突する原因となったのである。その中国の姿勢は、トランプ政権の米国が明確にしたことであり、トランプ政権の大きな成果の一つである。(伊藤貫氏による:https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12654696184.html

 

一定期間内に高度成長から先進国として離陸しなければ、再び後進国に逆戻りする危険性が高くなり、習近平政権は内部から潰れる。また、習近平は広範な政治的バックグラウンドが無いので、問題をチャイナ7の合議制で解決する鄧小平以来の伝統に拘れば、江沢民が後継と考えた李克強などとの知的ゲームに巻き込まれることになり、失脚する可能性が高くなる。

 

つまり、習近平の独裁政権への移行は、高度成長期の終わりであったこと、強固な政治的背景を持たない人物がトップになったことが原因だろう。(補足4)そのため、独裁化には腐敗追放で政敵を次々と葬り去るという方法をとったのである。だれもが腐敗している中で、腐敗を口実に政敵を追放すれば、共産党全体に亀裂を生じるのは当然である。その亀裂をも、強引に権力で縫い付けるのである。(補足5)

 

このやり方は必然的に、鄧小平体制から毛沢東体制へ、そして、中世の王朝中国に向かって歴史を逆行することになる。欧米の歴史が築き上げた国際秩序や人権重視の政治文化を無視して、国家の権力と領域を拡大されては、周辺国はたまったものではない。例えれば、フビライ・ハンの中国が、大きな経済力と軍事力を持って地球上を闊歩すれば、世界にとっては大きな脅威である。

 

世界は現在、自由主義陣営と共産党中国との深刻な対立、新冷戦になっている。経済的に中国と太く結びついてしまった今、距離をとることは経済的に大きな損失を伴う。その一方、中国に世界制覇を許しては、ウイグルやチベットのように、或いは、それ以下に扱われるだろう。何方に転んでも、無事には済まないのである。

 

2)米国のリーダーシップと先進国諸国のとるべき姿勢

 

法の支配と個人の人権を重視する先進国は、人類のこれまでの歴史を護るという自覚と、それを貫徹する覚悟をもつべきである。米国はそのリーダーとしての責任を果たすべきである。そのためには、米国は自国内の混乱の原因を探し出し、それを先ず克服すべきである。

 

バイデン政権にそれが出来るのか、かなり疑問である。何故なら、米国の民主国家体制も中国の体制のように、国家資本主義化していることが考えられる。その中心勢力に担がれたのがバイデンだからである。

 

昨年から今年の大統領選挙をめぐる民主党系勢力とトランプ側勢力との戦いでは、本来重視されるべき事実と論理が軽視され、途上国の選挙のように観えた。もし、トランプが伝家の宝刀である戒厳令を発布し、もし部分的な軍政が布かれた場合、将に内戦になっていた可能性すら存在する。

 

一例をあげる。先の選挙で大きな役割をしたのがBLM運動である。BLM運動は、黒人差別撤廃という人権問題としての運動では無かった。BLM運動の本体は、ベネズエラやキューバで共産主義の教育を受けた4人の女性が設立したblack lives matter global networkである。BLM global network の共同運営者であるパトリッセ・カラーズ(37)が今年3月、約15000万円の豪邸を購入していたのである。https://news.yahoo.co.jp/articles/5d34ba558fd044c4c53758c875366493b5ffc740

 

場所は「居住者の大多数が白人であるロサンゼルスの高級地区」である。そして、彼女が2016年から配偶者とともに複数の不動産を購入しており、総額320万ドル(約34000万円)にもなることも報道された。つまり、BLM運動は人権問題の仮面をかぶり、多くの黒人を中心とした人権派を巻き込みながら、中心部分はある勢力の傭兵だったのだ。その「お金の出どころ」はいったいどこなのか?

 

その他、大手マスコミが歪めた情報を流し、プラットフォームであるはずのyoutube、ツイッター、フェースブックなどが、トランプ派の情報発信を妨害したのは、自由と人権、法治の国の選挙とは思えない。その米国の姿は、共産党政権の本質と良く似ている。違いは、中国の共産党に相当する部分が米国では表面に出ていなかったことである。昨年の選挙に絡んで垣間見たその正体が、上記BLM運動や、ユダヤ資本の方々が語るポリティカル・コレクトネス、それに追随して金儲けに走るGAFAMなどである。

 

米国の分裂とは、アメリカ社会全体が真実よりも自分の利益を優先する(中国同様)何でもありの資本家たち(米国のエスタブリッシュメント)と、フロンティア精神と自由と人権を重視する古き米国との分裂である。前者の勢力は、建国時の精神や文化を破壊するためと安い労働力を得るために、大量の移民を入れて米国を変質させることを目指した。それがホンジュラスから大量の移民キャラバンを支援したユダヤ資本らが考える米国を変質させる手法だろう。それに追随しているのが、GAFAMである。彼ら新しい巨大資本には、古き良き米国に共鳴する部分がある筈である。

 

上記先進民主国のリーダーとして米国が本来の役割を果たすには、先ずこれらの混乱を修復をしなくてはならない。その意味では、現在バイデンが唱えている米国の統一は正しい方向である。しかし、バイデンは米国を分裂させた側の代表であり、当の本人にはリーダーになる資格はないだろう。そして、トランプは中国の本性と米国の原点を明確にした功績は大きいが、分裂する米国のもう一方の当事者であり、歴史的役割は終えた。

 

つまり、天才トランプの役割は終わり、これからはポンペオなど共和党の若き(と言っても壮年だが)中心部分に座る方々の時代である。彼らが先進諸国のリーダーとなり、中華秩序の暗黒の未来から、世界を救うべきである。トランプさんは、自分の役割が終わったことを理解し、彼らの背後で力添えをすべきである。MAGAの標語はもう賞味期限ぎれであることをトランプは知っている筈である。

 

3)中国の今後の方針と民主主義国家の対応

 

先日紹介した中国人民大学翟東昇教授は、「中国が世界の工場として稼いだ資金は、米国などの国債の購入となった。先進国は債務を際限なく膨張させることで対応できた」と発言した。https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12666893508.html

 

国家の債務超過は、物価上昇を誘発するが、それは債務の一部帳消しに等しい。そして、中国がデジタル人民元を発行して、世界の決済通貨にするという計画は、中国共産党政権が潰れない限り可能だろう。世界経済の中で、確固たる技術を背景にして先端工業製品や医薬品などを供給する能力があれば、政府の債務超過はあまり問題ではない。為替レートと物価が適当にその帳消しの方向に動いてくれるからである。

 

習近平政権の中国製造20251000人計画の背後に、このシンクタンクの学者のような人が戦略を練っているのだろう。彼らは、ベースに何も置かずに戦略を練るので、日本にはない大胆な発想と実行力を発揮する。

 

中国は、今回の新冷戦で一端世界の権力から遠ざかるかもしれない。しかし、アフリカや南米などの発展途上国を纏めることで、デジタル人民元の決済圏を形成するだろう。そして、再び米国圏に挑戦することになるだろう。中国国債が優良資産(補足6)なら、無限に発行可能である。その便利さは、自然と利用者を増加させ、それにより信用も自然にできるだろう。つまり、中国共産党政権が盤石であれば、デジタル人民元は貨幣の3要素を保持できるだろう。これが現在の債務超大国の米国に学んだことである。

 

その中国にとってあまり良くないシナリオで歴史が進む前に、「中国の経済停滞は世界にとって脅威である」という論理(補足7)で、中国の手先となって働く人達が多く現れ、今回の新冷戦も有耶無耶になる可能性も残されている。つまり、中国からのデカップルには不況と戦う覚悟が必要であるのだが、株式会社の経営者にはそのような長期の視野を持つ者が非常にすくないのである。

 

これまでの人類の歴史を破壊しないためには、それ(デカップル)は乗り越えなければならない山上の関である。その結果生じる不況は、市井の一般人には全く理不尽に感じるものだろうから、先進国のトップはそれを充分理解し、民主政治の中で国民を説得しなければならない。中国首脳が独裁の有利さを強調するのは、堕落した愚民の指導は、民主主義体制では極めて困難だからである。

 

ニュージランドはこの1月に中国と自由貿易協定を結んだ。外相は、5アイズは情報の共有であり、政治の共有ではないと言ったという。オーストラリアが説得に乗り出すというが、首相が事の重大さを理解していない可能性がある。https://www.youtube.com/watch?v=30WM0GT8Fk4

 

また、ドイツとフランスは16日、バイデンの主催する会議に先立って、中国と気候変動会議に開催した。現在のドイツは、社会主義国家の延長であり、中国に理解を示すEUの中心になっている。フランスのマクロンも経済のことで視野が短くなっている可能性が高い。https://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000213189.html

 

終わりに:

 

民主国の足並みを揃えるのは、繰り返すが、バイデンレベルがリーダーの米国大統領なら、容易ではないだろう。次回の米国の選挙では、もし米国がFRBなどを牛耳っている一派なら、ポンペオなどを落とすために、共和党からはトランプを応援する可能性がある。賞味期限切れの利用であり、内戦覚悟の最後の手段である。

(11:10 最後の節は、大胆な終末論なので、「終わりに」と別項目にした。)

 

補足:

 

1)政治的プロセスにおいて多少の金の動きは、中国の文化であることは、数年前までは、元富士通総研の柯隆氏がテレビなどで言及していたことでもある。

 

2)国民を奴隷のように働かせるというのは、国民の福祉が最優先ではないという意味である。国民の生活向上は共産党支配の中国の力の基礎となるので、その意味で国家の目的である。更に、賃金の上昇は内需の拡大となり、バランスのとれた経済発展にも必須である。

 

3)半導体チップでの集積度は、素子のパッキングの細かさで決まる。4nmのチップが可能で世界シェアの殆どを抑えるのが、台湾のTSMCと韓国のサムソンである。中国が台湾を吸収したい大きな理由の一つは、TSMCを手に入れることだという人も多い。

 

4)胡錦濤は後継に李克強を考えていたが、それを防ぐために江沢民が習近平を担ぎあげたという。胡錦濤までは鄧小平の威光を背景にした政権だったが、習近平は始めて鄧小平時代が完全に終わったあとの政権となったという。https://www.musashino-u.ac.jp/albums/abm.php?f=abm00017977.pdf&n=06_%E5%8A%A0%E8%97%A4%E9%9D%92%E5%BB%B6%E5%85%88%E7%94%9F.pdf

 

5)汚職追放は、重慶の薄熙来の手法である。薄熙来が習近平とトップの座を争う競争に名乗りをあげたものの、勝てそうにないので、腐敗追放を看板に掲げて国民の人気を取った。これがかなり成功したので、そのモデルに倣ったのだろう。因みに薄熙来も巨万の冨を裏で稼いでいたことは明白であり、その後自分自身の失脚の原因とされた。

 

6)youtube動画MOTOYAMA氏は、日本の年金基金の半分は高利の中国国債で運用されていると言っている。これは未だ裏をとっていないが、MOTOYAMA氏の言うことだから、確かだろう。

 

7)「中国の国家資本主義が脅威でない理由 ~世界経済に深刻なダメージを与えるリスクはむしろ中国の長期停滞」キャノングローバル戦略研究所研究主幹、瀬口清之氏の文章は、中国文化とその危険性を全く無視する中国のスパイのものような感じがする。https://cigs.canon/article/20190926_6004.html

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