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2021年6月10日木曜日

陰謀論という言葉の非科学性

1)科学と宗教

 

科学は、最も一般的な表現を用いると、「事実と論理で組み上げた知的体系」とでも言えるだろう。そして、科学の構築は、これまでの科学に新たな事実の把握と論理的関係付を最もコンパクトな形で行うことである。その論理的関係付は、目的を共有する多数の参加者、つまり科学者、が平等の原則でオープンな議論を通して行う。

 

宗教は、ある既存の価値の体系であり、信者は多くの場合その聖典を学び、その記述とおりに実行することを目指す。宗教には論理が存在しても、既にその聖典の中に組み込まれており、科学のように新たに組み上げるものは無い。勿論、新たな宗教が、それまでの宗教の変更の形で生じることがあるが、それは新しい教祖により行われるのであり、信者には関係はない。

 

宗教と科学の大きな違いの一つは、聖典の言葉には予めその宗教が既定する価値が含まれていることである。代表的な言葉として、善、悪、罪などがある。これらの言葉は科学の中には現れない。「悪い科学」は、科学ではない。勿論、科学的発見が、人類一般或いは一部の人達にプラス/マイナスになる場合があるが、それは社会学や政治の言葉で語られるべき話である。

 

2)新型コロナ肺炎における「陰謀論」

 

(この様な意見でも、陰謀論を使わないで否定するのが科学的態度です)

 

一つ例を挙げて説明する。最近よく聞く言葉に「陰謀論」がある。それが非科学的に用いられる場合が多いので、注意喚起したい。先ず、「陰謀論」という言葉には既に負の価値が含まれている。従って、「陰謀論は善である」はまともな文章ではない。陰謀論を持ち出しある命題(補足2)に対する議論を放棄するのは、科学的姿勢ではない。

 

最近、BuzzFeedというサイトに “ワクチンめぐり広がる「陰謀論」:専門家が「これからが正念場」と警鐘を鳴らす理由” という記事が、ある人により執筆された。

https://www.buzzfeed.com/jp/kotahatachi/conspiracy-theory-6

https://www.buzzfeed.com/jp/kotahatachi/conspiracy-theory-5?bfsource=relatedmanual

 

その文章は以下のように始まる。

 

新型コロナワクチンを「大量破壊兵器」と否定したり、コロナそのものが「詐欺」であると訴えたりする「陰謀論」。その危険性や、問題点はどこにあるのか。専門家に話を聞いた。

 

この文章は、政治的なものであり科学には程遠いことが、上記の「科学」に対する説明でわかっていただけると思う。この記事は、二つの命題:①“新型コロナワクチンは「大量破壊兵器」である”及び②“コロナは詐欺である”を、有害無益とするために「陰謀論」が用いられている。しかし、その判断を支える科学的議論は全く示されていない。専門家に聞くまえから、危険で問題のある命題だと決めつけている。

 

従って、この記事は単なる政治的プロパガンダ、或いは、宗教的意見の表明に過ぎない。勿論、科学的考察により、上記①と②が否定或いは肯定されることは、両方とも十分考えられる。

 

上記記事には東京渋谷でのデモが写真入りで紹介されている。そして、以下のような記述がある。

 

プラカードには、「コロナは詐欺」「マスクを外そう」「ワクチンで死者続出」「無症状から感染しません」といった言葉が躍る。配られていたビラにも、「コロナの嘘」「ワクチンは大量破壊兵器」などと綴られていた。

 

これらはいずれも誤りだ。新型コロナウイルスは確かに存在しているし、ワクチンの高い効果や安全性は治験などで実証されている。

 

以前から新型コロナの脅威について記事を書いてきたが、コロナ騒ぎは陰謀だという声にも一理あると思っている。

 

何故、世界経済フォーラム(WEF(補足1))が、コロナパンデミック後の世界を念頭にグレートリセット(政治のグローバルな変革)を言い出したのか? 

何故致死率など人的被害を他の病気と比較して相対的に把握せず、大騒ぎしているのか? 

メジャーなマスコミの政治的プロパガンダではないのか?

などの疑問が何時も頭に浮かんだ。

 

例えば、日本における肺炎による死者数(平成29年度)は96800人で、肺炎は毎年10万人程度が死亡する恐ろしい病気である。一方、新型コロナ肺炎の死者数はこの一年半ほどで13700人である。

 

勿論、我々高齢者には、罹患すれば死亡率が5%を超える恐ろしい病気である。しかし、一般論として死亡率などから見れば、新型コロナはそれほど恐ろしい病気ではない。個人が持っている持病や基礎疾患の方が、それぞれの個人にとって恐ろしいケースが殆どだろう。

 

例えば、ワクチンにかなりの量含まれるポリエチレングリコールがもし腎臓や肝臓に悪いのなら、打たない方が賢明かもしれない。それに、デング熱のように、将来変異株が現れ、ワクチン接種者が抗体依存性増強(補足3)により多く死亡する可能性も残されている。第一、ファイザーなどのmRNAワクチンは、緊急性を考えて米国FDA(食品医薬局)などが一時使用を承認しているだけで、一段落したあとは再度承認審査の対象になる。

 

それらの事実を科学的に考えないで、「コロナは詐欺」「ワクチンで死者続出」「コロナの嘘」「ワクチンは大量破壊兵器」などの言葉を陰謀論というゴミ箱に不用意に投げ込む姿勢は、ある種の宗教か政治的プロパガンダに載せられた愚かな人間の姿に見える。

(16時40分編集、補足3を追加;20時2−3箇所編集)

 

補足:

 

1)WEFは世界の支配層のトップクラスを毎年招待して、スイスのダボスで世界政治の将来を議論するために集まっている。そのダボス会議での議論が世界の将来に影響すると考える人も多い。

 

2)命題とは、言語や式によって表したある判断のことである。その内容が客観的に正しい場合、命題は真であると言い、正しくない場合は偽であると言う。(Weblioから転載)科学は、自然界や人間界の記述を、開放的な議論の空間を用いて、真なる命題で体系的に記述することを目指すこと、及びその知的体系を言う。

 

3)複数のタイプのあるウイルス病(例えばデング熱)の場合、あるタイプのワクチン或いは感染で免疫を得た場合、次に違うタイプ(或いは変異株)が流行したとき、免疫を全く持たないケースの方が重症化率が低いことがある。つまり、抗体を持つことが重症化につながるので、この現象を抗体依存性増強(ADE)という。(6月1日の記事参照)

 

 

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