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2021年6月13日日曜日

新型コロナの特効薬? ペルーにおけるイベルメクチンの効果

新型コロナのワクチン接種が進んでいるが、治療薬についての期待と議論は少ない。(ヒドロキシ)クロロキンの有効性については中国や韓国で既に確認済かと思ったが、米国食品医薬局(FDA)は一端出した緊急使用許可を取り消した。現在許可が出ている治療薬は、レムデシベル(正式許可)だけだろう。予防薬でも、ファイザー等のワクチンは緊急使用許可(EUA)である。

 

そんな状況の中で、治療薬として注目されているのが、大村智氏発見のイベルメクチンである。新型コロナ(以下covid-19)の治療に著効を有するという説がある。例えば読売新聞onlineは、調査研究としてかなりの情報を今年4月に発表している。https://www.yomiuri.co.jp/choken/kijironko/cknews/20210427-OYT8T50019/

 

イベルメクチンの効果を非常に高く評価しているのが、国際的な医師グループであるFLCCCfront line covid-19 critical care alliance; 新型コロナ救急医療フロントライン;補足1)である。彼らが紹介したのが、昨年5月頃からイベルメクチン投与を始めたペルーでの結果である。著効があったと思われるが、202011月に就任した新大統領は、どういう訳か、イベルメクチンの使用を中止した。https://news.yahoo.co.jp/articles/52223fb47d6866c9bc11e3ab097d7a611d4c19dd 

 

その後今年3月、イベルメクチンの治療効果を否定する論文が権威ある米国医師会雑誌に出された。しかし、以下に述べるように、不自然な部分がこの論文には多く存在する。イベルメクチンの件も、Covid-19の出所とそのパンデミックに絡んだ多くの疑問と同様、国際政治の暗闇に真実が隠されているような印象を受ける。

 

日本では、イベルメクチンの適用外使用は既に厚生労働省により認められているが、本承認も緊急使用承認も出されていない。日本こそ、この薬の真価を確認して、適用外使用などという中途半端な姿勢から脱すべきである。Covid-19には特効薬が無いので、その出現を期待する人が多いと思う。(補足2)

 

2)イベルメクチンはCovid-19の特効薬なのか?

 

上記FLCCCの人たちは、イベルメクチンのCovid-19治療薬としての効用を強く主張している。昨年10月末に公表したFLCCCメンバーの論文(ただし審査済論文ではない)では、その効果は以下のように整理されている。(補足3)
 

SARS-CoV-2 の複製を阻害し、感染細胞培養で 48 時間までにほぼすべてのウイルス物質が存在しなくなる; ② 感染した患者の世帯員における COVID-19 感染の伝播と発症を防ぐ;③ 症状の早期に治療された軽症から中等症の患者の回復を早め悪化を防ぐ; ④ 入院患者の回復を早め、ICU 入室と死亡を回避する; ⑤ 住民全体に配布され使用されている地域において、致死率の大幅な低下を導く。

 

下は、イベルメクチンを用いなかったペルーのリマ州を除く8つの州でのイベルメクチン投与効果を示す図である。毎日の過剰死の数(赤い線)とCovid-19感染者数(薄い青の部分)とを、その8つの州で示したもので、灰色の領域はイベルメクチン配布以前を示す。

 

注目されるのは過剰死(赤の線)が、イベルメクチン配布の直後に最大となり、それ以降は急激に減少している。そのピーク位置は、Covid-19発症数のピークとはあまり関係がない。この事実は、イベルメクチンがCovid-19感染者の治療に大きな効果があることを実証している。

 

 

もう少し詳細に見る。左下のUCAYALI州では、(イベルメクチンの配布済の)8月半ばに感染者が最大となっても、死者数増加はほんの僅かである。一番右下のMOQUEGUA州の結果でも、10月の感染数増加の所に死者数のピークがない。全ての州で、時間軸上の死者数のピークは、イベルメクチン投与による死者数の減少により決定されていると思われる。

 

この効果を確認するには、軽症者ではなく、中等症から重症者への治験を実施するべきだろう。

別の報告の図になるが、リマ州での死亡数の統計では、感染者数の統計と同様に2−3ヶ月の間隔を置いた大きな二つの山を形成している。(以下の文献の最初の図参照https://covid19criticalcare.com/ivermectin-in-covid-19/epidemiologic-analyses-on-covid19-and-ivermectin/ )

 

その一方、イベルメクチンはあまり効かないという報告が米国医師会の研究誌に今年3月発表された。https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2777389 その報告に対するFLCCCグループによる批判も出され、その和訳は北里大学のホームページに掲載されている(下に掲載)。

 

試験管内での実験では、既に書いたように一定濃度でのイベルメクチンの存在は、SARS-CoV2ウイルスを48時間以内に消滅させる。ただ、その濃度を患者の血中で実現するには、寄生虫駆除の際に用いられている通常服用量の15倍程度の投与が必要なようである。http://jja-contents.wdc-jp.com/pdf/JJA74/74-1-open/74-1_1-43.pdf (世界のイベルメクチン効果の研究のレビュー)

 

しかし、上記JAMAの論文では、寄生虫駆除に用いられている通常濃度の僅か1.5倍ほどの投与で試験している。それでも、2日ほどだが、イベルメクチン投与群で回復日数が短くなっている。しかしその結果は、小さな人数での治験故、有意の差ではないとして切り捨てられている。更に、患者の観察を21日で打ち切っているので、全員を最後まで追跡していない点で不完全な報告だと言える。(補足4)

 

このJAMAの論文は、少なくとも新規治療薬を得ようとする姿勢では書かれていない。そのため、効果があまり出ないように臨床試験をしているように見える。

https://kitasato-infection-control.info/swfu/d/ivermectin_20210418.pdf

 

3)陰謀が渦巻く世界

 

何故、このような無益な論文が一流の研究誌に出されるのか? その疑問と同時に思い出すのが、昨年2月パンデミック後早々に一流雑誌のLANCETに出された、Covid-19の原因ウイルスが実験室から漏洩したものではないとする科学者たちの意見表明である。https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(20)30418-9/fulltext 

 

この意見表明では、中国の研究者と互いに情報を開示し共有することが、この疫病に打ち勝つ近道であるというような虚しい言葉が書かれている。そして、原因ウイルスSARS-CoV2は自然界からでたもので武漢の研究所から漏れたものではないとして、漏洩説を陰謀論として退けている。(補足5)

 

注意を要するのは、上記LANCETの意見表明者の中に、米国大統領顧問だったファウチ博士(米国国立アレルギー・感染症研究所 所長)からウイルスの機能発現研究の助成金を武漢病毒研究所に送ったPeter Daszakという名前が存在していることである。Daszakは、WHOの武漢視察団にも入っていて、上記と同様の報告を出している上、武漢のコウモリ婦人こと石正麗と共著論文2−3報を持つ人物である。

 

陰謀論、それは科学の言葉ではない。科学界に政治的プロパガンダが紛れ込んでいるという危惧を強く持つ。この問題を突けば、“蛆虫の入った缶を開ける”ことになるようだ。現代の科学界は病んでいる。https://www.vanityfair.com/news/2021/06/the-lab-leak-theory-inside-the-fight-to-uncover-covid-19s-origins

(15時15分、小編集)

 

補足:

 

1)上記読売の記事によれば、FLCCC20203月にアメリカのイースタンバージニア医科大学のポール・E・マリク教授がリーダーとなって設立された。

 

2)この薬の特許は切れている。それで、第三相の臨床検査を終えて正式承認を得ることは、経費対利益を考えた場合、民間には出来ない。それなら、FLCCCなどのメタ解析(他人の研究論文などを集めて解析する)を利用して、緊急使用許可を出すべきである。インドなどでは合成して用い、効果を挙げているようである。ワクチン会社に対して忖度する義務は日本政府には無いはず。

 

3)FLCCCメンバーによる20201031日の論文は、FLCCCのサイトと北里大のHPに掲載されている。ただ、この論文は学会同業者の審査(peer reviewという)を経ていない。

https://kitasato-infection-control.info/swfu/d/ivermectin_1.pdf 

和訳https://kitasato-infection-control.info/swfu/d/ivrmectin_20201031.pdf

 

4)400人の患者のうち、398人(99.5%)が試験を完了した。 症状の解消までの時間の中央値は、イベルメクチン群で10日(IQR9-13)であったのに対し、プラセボ群では12日(IQR9-13)だった。 21日目までに、イベルメクチン群の82%とプラセボ群の79%が症状を解消したなどと書かれている。統計的には有意の差がないという結論である。私見だが、あと二人がどうなったのかという重要な点について書かれていないのが気になる。

 

5)最近、Covid-19原因ウイルスが武漢病毒研究所から漏れたという説が有力になってきている。その際に良く引用されるのが、最後の所で引用したVanityfairという雑誌の文章である。

尚、武漢海鮮市場から流行が始まったという説は既に破綻している。何故なら、海鮮市場と無関係な所で最初の患者が出ているからである。しかしこのウイルスはコウモリ由来だということになっている。そうすると、何故発生箇所が武漢なのかが大きな疑問となる。何故なら、コウモリ由来なら雲南省など南部の地域から伝染が始まる筈だからである。

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