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2021年6月4日金曜日

新型コロナの集団免疫について(2)スウェーデンは集団免疫達成していたのでは?

一昨日、ワクチン接種を全国民レベルで摂取する場合の危険性について、抗体依存性増強(ADE)という視点から考えた。その結論として、さしあたり新型コロナ(COVID-19)のパンデミックを抑えるには、ワクチン接種をすべきだが、将来の変異株のパンデミックを考えた時、積極的に国民全員が擬似感染をするのは危険であると書いた。

 

勿論、ワクチンで感染を完全にブロックできれば、問題は解決する。しかし、発展途上国での感染は今後も続くだろうし、そこから先進国への再伝搬もあるだろう。更に、ワクチン接種により殆ど今回のパンデミックを克服したかに見える英国でも、最近徐々に感染数が増加してきている。(補足1)将来変異株が次々と発生した場合のADEに関連した危険性は現在のところ解らないが、新型コロナ対策を完全にm-RNA型ワクチンに依存することは危険である。

 

しかし、米国を始めワクチン接種で全てが解決するような雰囲気である。米国テキサスでは、ワクチン接種を強制するという病院が現れ、一部従業員が提訴するという事態になっている。ファイザー製ワクチン等に対する米国の承認が、緊急避難的に認められているに過ぎないにも拘らずである。

 

 

今回は、ウイルスに感染した場合に獲得する免疫と、m-RNA型のワクチン接種の場合の免疫が違うのではないかという点を、少し考えてみた。

 

そこで貴重な情報を与えてくれるのが、スェーデンのデータである。スウェーデンは昨年まで、老年者及び基礎疾患保持者をなるべく感染しないように隔離推奨をする一方、労働年齢にある人達を比較的自由に経済活動に従事させることで、集団免疫の獲得を目指す方針を取ったからである。

 

1)スウェーデンが目指した集団免疫の効果:

 

スウェーデンの感染者数、死亡者数とその積算のデータを下に図示する。今回の議論は全て、https://www.worldometers.info/coronavirus/country/sweden/を参照し、そのデータを元に行う。横軸は日付(最下段)であり、左端が2月15日、右端が531日である。

 

 

スウェーデンの場合は、毎日の感染者数は大きく三つの波として現れている。第一波から第三波の毎日の死者数(上段)と感染者数(中段)を比較すると、死亡者数の相対比が大きく減少していることがわかる。スウェーデンのワクチン接種が20%を超えたのは2021418日であり、この傾向には影響していない。

 

スウェーデンのストックホルム(人口92万人、スウェーデンの人口1015万人の約9%)の公衆衛生庁は2020716日、ストックホルム住民の約40%がSARS-CoV-2に対する免疫を獲得したという推計値を挙げ、集団免疫がほぼ達成されたと宣言。更に昨年10月、“スウェーデンが「集団免疫」を達成した政策”という記事も発表され、スウェーデン全体が集団免疫を達成したと思われた。

https://www.medical-confidential.com/2020/10/15/post-11421/

 

実際、昨年7月から9月まで100人〜200/日程度の感染者となり、そのまま終息するのかと思われた。しかし、10月に第二波が明確となり、1023日にはこれまでの最高数を超えて、1867/日の感染者数となった。ここで、スウェーデンの感染症対策責任者で疫学者のアンデシュ・テグネル氏が11月2日、日本記者クラブでオンラインで会見し、「ワクチンなしでの集団免疫達成は不可能」などと語ることになった。https://www.tokyo-np.co.jp/article/65996

 

そして昨年12月頃から、ワクチン接種を始めることに政策を変更した。ただし上述のように、一度以上の接種人口が全人口の10%を超えたのは322日、20%を超えたのは419日である。https://ourworldindata.org/covid-vaccinations 因みに第二波の感染者数が最高値を記録したのは、413日である(上のグラフ)。

 

第二波は1223日の11376/日をピークに全体で凡そ第一波の5倍の積算感染者数を記録した。ただ、グラフの2段目を見ると判るように、第二波の死者数は第一波と殆ど同じレベルである。その後、三つ目の山が今年(2021年)2月から始まり、感染者数は第二波と同程度だが、死者数は第二波と比較して、大凡1/5程度である。

 

この死亡率の相対的な減少は、スウェーデンの人たちが獲得している免疫によると考えるべきだと思う。それは、そのような免疫のない日本のデータと比較すれば判る。つまり、スウェーデンは昨年10月の声明通り、最初の武漢型のSARS-C0V2ウイルスに対する集団免疫を達成したのだと私は考える。そうでなければ、日本では相当高い第三波(主に英国型のウイルス)の死亡率が第一波の死亡率の20分の1程度である筈がない。(グラフ参照)

 

2)日本の場合

 

日本のCOVID-19の感染データを下に示した。この感染の波は、普通第一波から第四波と呼ばれているが、上記スウェーデンでの呼び方と合わせる意味で、第一波と第二波(昨年8月)をあわせて、第一波と呼ぶ。

 

一日当りの感染者数は、スウェーデンの第一波、第二波、第三波の一日当りの感染者数の傾向と良くにている。これはそれぞれの株の感染力の大きさを示しているのだろう。積算値では、9月末での感染者数は83000人、今年36日の積算値は438000人である。第二波の感染者数は、第一波の約4倍に上る。この良く似た感染者数のプロファイルは、スウェーデンが達成した筈の集団免疫は変異株の感染の段階に関しては効果が薄かったということになる。

 

次に死亡者数累計を見ると、昨年9月末で1564人、今年36日で8119人である。感染者数と死亡者数の二組の数値の比率、83000/438000=0.189)1564/8119 =0.193)は極めて近い。つまり、スウェーデンと違って集団免疫が無い日本では、感染者数に比例した死亡者数がそれぞれの波で出ていることになる。

 

スウェーデンの場合、変異株が現れてもその死亡者は大きく減少しているので、免疫は重症化と死亡を妨げる方向に寄与しているのではないだろうか。つまり、感染数を(現在の増幅数での)PCR検査陽性者の数から、本格的な発病数に変えれば、スウェーデンでは大きな集団免疫の効果が出ているのではないだろうか。

 

以上の議論は、スウェーデンと日本の変異株が同じであると仮定して進めた。しかし、日本のCOVID-19の変異株とスウェーデンの変異株とは当然全く同じではないが、現在日本もスウェーデンも英国株が主であるので、それほど大きな差はないだろう。

参考記事: “この増加の原因は、欧州や日本(関西)では明らかに英国株(B.1.1.7株)だ”(論座4/19日の記事)

https://webronza.asahi.com/science/articles/2021040800001.html

 

第三波の時間的ズレは、英国株が地球の裏側の日本に到着するのに、スウェーデンよりも一ヶ月ほど時間がかかったのだろう。日本での英国株の死亡率は、従来型同様大凡1.7%位でほぼ一定であるが、感染力は相当強いことを別のデータを補足として示しておく。(補足2)

 

3)ウイルス感染による免疫と、m-RNA型ワクチンによる免疫は違うかも:

 

今回の私が仮定したように、スウェーデンで集団免疫が達成されたとすると、それはスウェーデンでの第三波の英国型の株への感染者の重症化を防いだことになる。或いは上述のように感染の定義を、現在のPCR検査(増複数を含めて)での陽性から本格的な発病に変えれば、スウェーデンの集団免疫は、感染数を大きく減少させたと言えるだろう。

 

一方、イスラエルや英国でのワクチンによる感染数の激減は、現在のPCR検査が陽性になるのを大きく防止した。従って、ファイザーやモデルなのワクチンは、上記ウイルス感染による免疫と違うタイプの可能性がある。例えば、最初に感染する箇所と重症化する場合の病変箇所が異なるので、ウイルス感染で得た免疫は全体のプロセスに関するものであると考えれば、そのような可能性が十分存在する。

 

ファイザーやモデルナのワクチンは、ウイルスのスパイクタンパク質を合成するm-RNAを脂質ナノ粒子の中に封じ込めたものである。感染はスパイク蛋白が細胞表面に分布するACEII(アンジオテンシン転換酵素II)に取り付くことで始まるので、そこの防止という点でシャープに効果を発揮するのだろう。

 

この違いを示唆するサイエンスに発表された研究がある。それは同じくスパイク蛋白に関連するが、ACEIIに結合する段階ではなく、感染力を増すためのメカニズムであり、それがACEIIの分布が多くない細胞にも感染する新型コロナの特性を説明するだけでなく、新しい薬の開発に役立つと書かれている。https://www.igakuken.or.jp/r-info/covid-19-info27.html

 

何れにしても感染の段階で100%阻止できれば問題はない。しかし、感染を増強する因子が変異株で現れて(つまりADE)、今回のワクチンでも徐々に感染者が増加した場合(再び補足1)、ウイルス感染から生じた免疫の方が、重症化防止という点で効果を発揮するのではないだろうか。

 

補足:

 

1)現在英国ではワクチン接種が相当進んでいる。しかし、殆ど克服出来たかもしれないと思っていた英国での感染数は、現在徐々に増加してきている。5月の最初の10日間の感染数は20160人、次の10日間は22857人、その次の10日間(5月20日〜5月30日)は29866人であった。

 

2)下図が私が棲むK市の感染者数のグラフである。青い点は毎日の感染者数であり、オレンジはその積算人数を20で割り算した値である。第三波の急激な感染者数増加が上の図よりも明確にあらわれている。データはK市公報からとった。

 

 

 

 

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