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2025年3月1日土曜日

財務省とトランプは諸悪の根源ですか?

ー議論が無ければ知の共有もないー

 

単独の知的作業で世界の全てを知ることは不可能である。そこで人は分担して知識を収集し、それらを共有することで世界についての知を創造し深めてきた。そのプロセスは、対話による知識の授受と確認、それらの評価と接続、さらには対象とする事象の本質についての理解深化などである。

 

日本の文化は、その対話で互いの知を広く深くするというプロセスに冷淡だと思う。人々は、言葉は人に侵入し、その人を変える或いは汚すと感じる感覚の中に生きている様に思う。そして人間は、神が作り上げた純なままであるべきと考えるようだ。
 

それ故、人は見知らぬ人とは距離をとり、電車内など人が密集するところでは沈黙を守る。それは長い間続いた政治権力には好都合である。この文化の時間軸は80年かもしれないし、2000年かもしれない。日本文化として宗教的意味も伴って定着していると考えれば、後者の時間軸で考える方が正しいだろう。
 

 

1)言霊の国は、議論で知識を深める機会に欠ける


インターネットが普及した昨今でも、日本は上記のような言霊の国であり続けている。数字の4や42を嫌う。プロ野球の選手の背番号には、これらの他、9番なども見当たらない。また、受験生の前では決して「落ちる」という言葉を用いてはならないし、「桜が散っている」と言ってはいけない。

 

人が経を読んだり写したりするのは、「照見五蘊皆空度一切苦厄」のような言葉は理解出来ないが、言葉自体に霊的価値があると感じるからである。更に、沈黙を美徳とする故、外を歩いている一般人への情報周知は、標語等を幟や看板に示す方法が多用されている。

 

ある命題について相手側の考えを否定することは、より高いレベルの理解への道筋である。しかし、それ(命題の否定)は、言霊の国では人格非難と受け取られかねない。ことばとその人物は一体であり、言葉はその人物(心や能力)が外に出たと見做されるからである。

 

 

日本社会では、多数の人が関与する情報伝達と対象の理解深化のプロセスが円滑でないので、知的な部類に入る人達でも国際的な政治や経済に関しては非常に浅い理解にとどまる場合が多い。それは日本語という言語の壁があるのと、上記に示したように、日本国内では多くの人々の間で情報獲得、検証、深化のプロセスが十分には働かず、まともな知識が流通していないからだと考えられる。

 

ネット社会になって、この情報の多元化やSNS等での情報の分散処理がなされるようになり、急速に事態は改善されるだろうが、ここ数年の国際政治の歴史的変化に間に合うかどうかはわからない。間違った情報が権威あると見なされたところから発せられ広がった場合、日本国民の殆どがその部分の理解が不可能となってしまうのが現状である。

 

例えば、著名な大衆的経済評論家である森永卓郎氏が、ザイム真理教という言葉を日本中に広めてしまえば、相当知的な他分野の人物も不景気を財務(×オーム)真理教の悪として短絡的に処理してしまい、その歴史的な失政を矮小化し、根本から正す手段を国民から奪ってしまう。

 

この財務省を悪として処断する根本的な間違いは、原点から考えれば簡単にわかる。本来、官僚機構は政治の下請け組織であり、無謬性を有する。(補足1)つまり、財務省の上に内閣があることをわざと無視している。「財務省が悪いと思う」は、泥棒がこの手が悪いという言い訳と同じである。
 

その「ザイム真理教」なる“財務省=諸悪の根源”的な考え方を、公共の福祉に貢献すべき(放送法第一条)地上波テレビも繰り返しお経のように広めている。国民のための情報を伝達すべきNHKも、国民から視聴料を "むしり取り”ながらこの宣伝グループの一員となり下がっている。https://www.nhk.or.jp/radio/magazine/article/my-asa/teg20240114.html

 

上記NHKの記事は森永氏の考え方を紹介しているが、森永卓郎氏の論理に対する反対意見が紹介されていない。それは視聴者を真実に近づけるというNHKの設置目的を放棄したものである。真実に近づくためには議論が必須であるというのは、ギリシャの昔からの常識である。しかし日本では、真実は天下り的に供給されると考えるようだ。


 

2)日本の農政と「ザイム真理教」という日本政治に対する誤解

 

東大大学院特任教授である鈴木宣弘氏による、日本の農政がまるで米国の為に存在するかのように見えると、簡潔に指摘した動画を紹介したい。https://www.youtube.com/watch?v=k50hllDg44A

 

 

この動画では、70年以上続いた自民党の農政に「食の安全保障」という考え方が欠けているという重要な指摘がなされている。国際政治が流動的になっている今こそ、日本国民はこの問題を大きく取り上げて議論すべきだろう。少し残念なのは(後で言及する)諸悪の根源に財務省を置いている点である。

 

具体的には、鈴木教授によれば昨年のコメ不足の背後には、敗戦直後から現在までの自民党政府の一貫した売国奴的な食糧政策が存在すると指摘している。つまりコメ不足は、農家の保護育成に使うべき農政予算を、減反政策等の農家潰しの為に用いた結果であると言うのである。

 

何故農家を潰すのか? それは日本国民が将来餓死するかどうかよりも、米国の農産物輸出に協力することの方が自民党政治家にとっては重要だからである。何故、米国の方が大事なのか? それは、彼ら国会議員或いは政府高官としての地位とそれに対するあらゆる権益は、米国の支配下の政治構造の中で得られているからである。
 

今回のコメ不足の原因が戦後の自民党政府の悪政の結果であるという事実を隠すために、日本政府はコメ不足は流通システムが上手く稼働していないからだと説明し、備蓄米の放出でごまかすつもりらしい。しかし、恐らくコメ不足の問題は今後常態化するだろう、そう鈴木教授は話す。

 

その他、野菜の収穫には先ず種子の入手が大事だが、それを一昨年だったかに種子法を改正して、日本独自に保管販売することを禁止するという売国奴的政策を行っている。これも米国の種子業者(モンサント社)から間接的に圧力が原因だろうと鈴木氏は言っている。

 

更に、この動画では核戦争の結果として起こる飢饉について推測した結果を紹介している。米国の或る科学者の推計によれば、もし核戦争が起こってしまった場合、日本に核爆弾が落とされなかった場合でも予想される核の冬によって7000万人の日本人が死亡するというのである。気候変動等の効果よりも遥かに大きい確率と規模で、悲惨な情況になる可能性があるのだ。(補足2)

 

通常兵器による台湾有事等でも、物流が障害されることによる食料危機が予想され、大量の餓死者が出る危険性がある。これらの場合の餓死者は、食料安全保障をしっかり行っていれば何とか無くすことが可能である。国際政治への参加つまり外交を考える上で非常に重要な予測である。

 

ただ、この素晴らしい意見表明の動画を、ザイム真理教というタグを表に出して戦っておられるのには非常に驚いた。ザイム真理教の問題とする限り、問題の在処が明確化できない。これは官僚機構の問題ではない(C.F., 官僚の無謬性:補足1)。政治の問題であり、内閣及び国会(特に予算委員会)の問題である。そのことにこの知識人も気付いておられないのだろうか。

 

つまり、総理大臣をどう選ぶかが問題である。トランプ政権に代わってからの米国官僚機構の改編を見れば、それは明らかである。

 

これまで通り、国会で質問することや農作物増産に努力する類の戦いでは事態は改善しない。問題は戦後政治全体に存在するのだから、自民党や公明党を永田町から追い出す工夫を緻密に組上げる必要がある。これ以上の国会での議論は不要である。

 

そのためには似非野党を除いて連携を模索し、選挙制度改革を目指すべきである。一票の格差が二倍以内なら合憲だという最高裁を潰すべく行動すべきである。また、自由な報道を獲得するために、旧態依然たるテレビ局も攻撃すべきである。

 

そのような活動自体は小さい効果しか持たないかもしれないが、問題の在りかを明確に示し、それを除去する運動を的確に進めれば、その結果として同じ意識を国民と共有できることになるだろう。それに成功すれば、改革の確かな芽となる可能性が高い。


 

3)日本の閉じた言語空間とウクライナ戦争に関する誤解

 

ウクライナ戦争に関する日本の全てのマスコミ報道は、独裁国家での報道のように純粋且つ幼稚であった。その結果、「ウクライナ=善&ロシア=悪の構図」が、日本国民の頭を独占している。

 

2022年に発生したロシアのウクライナ侵攻を、事件以前の30年間の歴史を無視し、国際法違反という教条主義的解釈だけで報道することにより、報道や政治に携わる知識人にまでに無知の壁を築いて真実から遠ざけている。https://ameblo.jp/sherryl-824/entry-12887898228.html

 

その情報元の米国バイデン政権でも、当然情況は同じであった。上のの構図が、殆ど言論統制と言えるほどに報道機関を占領していた。しかし米国では、トランプ政権に代わって無知の壁は将に炎天下の氷のように解け去った。もし10年トランプ政権が続けば、報道機関の経営者は全て交代しているだろう。

 

ウクライナ戦争の歴史パターンは、日本が戦争に追い込まれたという太平洋戦争の歴史パターンと似ている。(補足3)Fルーズベルト政権は、諜報活動と様々な圧力によって日本を真珠湾攻撃に追い込んだ。この理解は現在広く日本国民に共有されているが、日本のウクライナ戦争に対する貧弱な理解は、この経験から学んでいないことを示している。(補足4)https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12726626308.html

 

昨日だったか、国際問題を取り扱うyoutuberの朝香豊氏が、「実はトランプはロシアを追い詰めている」という副題で動画を配信している。https://www.youtube.com/watch?v=Q5BUx-Zpo6Q

 

 

彼は、ウクライナ戦争に関しては日本のマスコミのこれまでの解釈:ロシアによる国際法違反の侵攻は悪であり、欧州各国の左派政権とバイデン政権の米国はウクライナのために支援してきたという説(上記のモデル)を、多くの自民党政治家を含め、そのまま受け入れている。(補足5)
 

そして、トランプは和平実現を言明しながらロシアを経済的に追い詰める戦略は、マッドマン理論で解釈できるとしている。私には全く訳が分からない。この動画は、日本の貧困な情報風土の被害を受けた知識人(彼はinfluencerである)の泣き言のように聞こえる。

 

トランプのロシアに対する圧力は単に戦争終結のためのものだろう。ウクライナ戦争について、バイデン政権や欧州のリベラル派政権の作戦に乗せられたウクライナに主要な責任を帰していることから、それは明らかだと思う。トランプのこの戦争の評価は、「ゼレンスキーは戦争を始めるべきではなかった」という言葉でも明らかである。

 

補足:

 

1)官僚の無謬性とは、すべての政策の責任は政府にあり、官僚は単にその実行のための下請け組織でしかないという意味である。(また、「ある政策を成功させる責任を負った当事者の組織は、その政策が失敗したときのことを考えたり議論したりしてはいけない」などということではない。日経新聞のこの記述は間違いである:https://www.nikkei.com/article/DGKKZO30783840R20C18A5EN2000/
 

2)この論文にはアクセスできなかったが、インドのメディアが引用して議論していたのでそのサイトを以下に示しておく。https://timesofindia.indiatimes.com/world/us/devastating-impact-nuclear-war-in-us-would-wipe-out-300-million-report-says/articleshow/105248987.cms

 

3)トランプ氏は18日の記者会見で、ウクライナに戦争開始の責任があると示唆した。首相在任中、ウクライナ支援に尽力したジョンソン氏は太平洋戦争の発端となった旧日本軍による米ハワイの真珠湾攻撃に触れながら発言に異を唱えた。
 

4)ここでも再び原爆記念碑の言葉を引用する。「安らかに眠って下さい  過ちは 繰返しませぬから」という言葉には、戦争に導いた人たちや原爆を投下して国際法違反のジェノサイド行った人たちに対する怒りの感情など全く感じられない。国際法違反のジェノサイドの現場にこのような言葉で記念碑を建立したことの異常さをもっと真剣に日本人はレビューすべきである。

 

5)ほかに私の知る範囲では、多くの自民党政治家の他、右派の桜井よし子氏、経済学の上念司氏などウクライナ戦争をのモデルで理解している右派の人が多い。自民党政治家が国家よりも自身の権益を大事にする類の人物であることは既に書いているので、ここではあまり議論の対象としなかった。https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12858831049.html

 

 


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