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2025年3月7日金曜日

ウクライナ戦争停戦への道は未だ遠い?

1) 初会談でトランプ大統領を激怒させたゼレンスキー大統領


ウクライナ大統領ゼレンスキーは米大統領トランプ(以下敬称略)との会談で非常に失礼な態度を取り、約束の議題であったウクライナの鉱物資源開発協定の調印もせずにホワイトハウスを去った。

 

ラフな服装もその一つだが、何よりも失礼なのはウクライナ戦争の停戦プロセスの第一歩を約束して調停役のトランプと初会談を持ちながら、交渉相手側のロシアを徹底的に批判した上で、今の段階では停戦は考えていないという趣旨の発言をしたことである。

 

この鉱物資源開発協定は、トランプがウクライナ戦争当事国間に割って入るために作り上げた計画であり、前回記事に書いた通り、経済的な効果はそれほど重要視していないと思われる。

 

例えばBloombergは、ウクライナには経済的に採算が合うと国際的に認められた主要なレアアース鉱床はないと報じている。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-02-19/SRWH5YT0G1KW00

 
下に存在すると考えらている地下資源の地図を示しておく。これは多分ゼレンスキー側で作成したものだろう。鉱物資源開発の話は、ゼレンスキー側からフランスに援助との引き換えに持ち出したという説がある。https://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000407782.html

 

ウクライナ戦争を停戦に導き、これ以上国民の命を無駄に失わないことを希望するなら、ウクライナにとって、トランプに停戦協定まで導いてもらえるという話は大きなチャンスの筈だった。

 

マルコ・ルビオ国務長官に口頭で調印すると約束した上でのホワイトハウス訪問だったが、上述のように、彼は本心ではこの段階での調印には納得していなかった。

 

ある時点から、鉱物資源開発協定への調印よりも、トランプとの直接面談を利用してトランプから戦争への全面支援を求める交渉が訪米の目的となってしまったようだ。その理由は、現在のロシアによる支配地域をそのままにして停戦しては、これまでの多大なる犠牲が無駄となるからである。

 

 

2)ゼレンスキーの大失敗:ロシア侵攻直後に始まった停戦交渉で調印しなかったこと

 

もし2022年2月24日のロシアによる侵略以前の領土を明確な形で奪還できないのなら、その直後に始まった調停案を受け入れておればもっと有利な形で停戦出来ていたと考えられる。そこでその時の停戦へ向けた動きを、Ikumu Nakamuraと言う方がGloval News Viewというサイト(補足1)に記した記事を参考に少し復習してみる。https://globalnewsview.org/archives/21445

 

2022年2月28日に、ベラルーシでウクライナとロシアの間での停戦交渉がスタートし3回ほど会議を持ったが、双方の隔たりが大きすぎて話は一時立ち消えになった。その後3月初めに、イスラエルによる調停が何回か行われた。更にその後の3月初旬に、トルコのエルドアン大統領の仲介による協議が始まり調印近くまで進んだ。

 

そこで署名しなかったことは、ゼレンスキーの大失敗であり、ウクライナとロシアの双方、及び世界にとって悲劇的だった。この失敗は、①ゼレンスキーをウクライナの大統領に担ぎ上げた“裏の勢力”の誘導の結果であった。上記Nakamura氏の論文からその部分を引用する。

 

 英国ジョンソン首相(当時)は、ゼレンスキー大統領にウクライナへの財政的・軍事的援助をアピールし、さらに、ロシア打倒の必要性について説き、トルコでの協議の中止を呼びかけたとされている。ウクライナの報道機関のひとつであるウクライインスカ・プラヴダは、ジョンソン首相の訪問について、「ロシアとウクライナの交渉決裂に導いた」と、厳しい評価を下している。

 

また、4月25日には、イギリスの後を追うように、アメリカのロイド・オースティン国防長官(当時)もキーウを訪問し、②ロシアを弱体化させることが、この戦争におけるアメリカの目的であることを表明した。〈下線と太字はブログ筆者による)

 

その裏の勢力からの圧力は現在も未だ継続している。参政党の山中泉氏によると、トランプとの面談前に前政権の国務長官ブリンケンなどに会い、停戦すべきでないと説得されたという。https://x.com/SenYamanaka/status/1896732974324076838


 

3)今回会談での発言:戦争継続を希望するゼレンスキーと米国前政権首脳

 

今回の2月28日(2025年)の会談の動画全体は、次のサイトにある。その一部を引用し、今回の会談が破断になった経緯について再度考えてみる。https://www.youtube.com/watch?v=ajxSWocbye8 

 

 

このトランプとの会談で、ゼレンスキーは口論となる直前に(30min 50s)以下のように話している。(語ったままの文字起こし

 

First of all, I want I want really to tell you, and I think that everybody understand that Ukraine, more than Ukrainians, nobody wants to stop this war. But at the future any negotiations, its understandable that two sides of the war, not Russia and the United States, because this is not the war between Russia and the United States,  will be at the negotiation and negotiation table.  

 

Then of course, United State like the strongest partner of the Ukrain and of course Europe. Europe is important because we really defend Europe for today. All Europians are really recognized that we are defending the line.(以下続く)

 

ゼレンスキーの英語はかなり粗雑なのだが、さしあたりこれをGoogle翻訳すると、以下のようになる。発言の英語もその翻訳も機械的に行うことで、本筆者の恣意的解釈の入り込む余地を取り除いていることを理解してもらいたい。

 

まず第一に、本当に皆さんに伝えたいのは、ウクライナは、ウクライナ人以上に、誰もこの戦争を止めたいと思っていないということを皆さんが理解していると思うということです。③しかし、将来のいかなる交渉においても、これはロシアと米国の戦争ではないので、戦争の双方、ロシアと米国ではなく、交渉のテーブルに着くことは理解できます。(補足2)

 

そしてもちろん、米国はウクライナの最強のパートナーであり、もちろんヨーロッパです。ヨーロッパは重要です。なぜなら、私たちは今日、ヨーロッパを本当に守っているからです。すべてのヨーロッパ人は、私たちが防衛線を守っていることを本当に認識しています。

 

この最初の発言 I think that everybody understand that Ukraine, more than Ukrainians, nobody wants to stop this war. の部分の意味は、特に慎重に推理すべきだと思う。

 

「ウクライナ人よりもこの戦争を止めたい人など誰も居ないことを、皆理解していると思う。」は、それに続くBut at the future, any negotiations(しかし将来のどのような交渉においても)と続けることで、現在のトランプの仲介による交渉をやりたくないと言っているのである。

 

現時点から将来のある時期(in the future)での交渉まで、「But」で繋ぐ形で話を飛ばすことで、「しかし現時点では、我々は戦争を止める訳にはいかない、ロシアに勝たなければならない」という彼の考えをトランプに伝達しているのである。(補足3)

 

ゼレンスキーの戦争継続の論理は、日本のマスコミも宣伝しているように、プーチンは旧ソ連の領土を奪還したいと思っているである。もしウクライナが負ければ、バルチック沿岸諸国やポーランドをロシアは侵略する。ウクライナの国民は、邪悪なロシアとの戦いの最前線で命を落としている。それ故ヨーロッパ諸国は我々ウクライナを支援するのである(整理短縮)」。

 

ただゼレンスキーのこの戦争に関する理解は完全に間違っている。ソ連崩壊後に侵略的だったのはロシアではなく、米国とNATOである。そのことは、トルコのエルドアン大統領による仲介で和平に近づいていた時に教えられていた筈である。

https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12726626308.html

 

ここでこのソ連崩壊後からの米国民主党とネオコン政権の責任追及の話を始めれば、世界は混乱するだけである。(補足4)

 

従って、このトランプとの協定に署名できなかったのは、ゼレンスキーの大きな失敗だったという解釈や、この戦争においてウクライナを支援しただけのヨーロッパ首脳は愚かだったとかいう理解で留まれば、問題の本質は全く見えない。
 

 

4)世界の裏権力

 

彼ら(英、米(ネオコン)、仏、独など)はソ連崩壊からNATOの拡大、カラー革命(オレンジ革命)、マイダン革命などの歴史を全て熟知した上で、この戦争においてウクライナを支援している筈。英仏らEU諸国は、戦争を遂行することを諦めてはいけないとゼレンスキーを励まし諭す会議を、トランプとの会見直後に英国で開催している。
 

彼らはロシアを崩壊させることなくしては彼らの将来がないと考えているのだろう。彼らはもっと大きなことを、彼らの政治家としての使命と考えていると思う。その使命を投げ出しては、もっと上の権力(上で言及した裏の勢力)から彼らの政治生命は奪い取られると考えている筈である。それはGreat Resetや或いは新世界秩序樹立などと呼ばれるトロツキーの世界共産革命の現代版である。

 

32日の欧州首脳会議の際に英国王室がウクライナ戦争を支援する一環としてゼレンスキーをもてなしたことから、この2022年から用いている“大きな裏の権力の存在”を想定する国際政治のモデルは所謂陰謀論ではないことが分かるだろう。https://www.bbc.com/japanese/articles/c39vxdmwgm3o
 

彼らはなりふり構わず、ゼレンスキーの背中を押している。英国王の極近くに裏の権力の中枢が存在する。英国には国王も自由に出入りできない場所がある。

 

既に、トランプにもチャールズ国王から英国への招待状が出されているが、この英国王とゼレンスキーの面談は、明らかにトランプへの圧力を意図したものである。従って、英国王室の招待を受け入れたものの、トランプの英国訪問の時期はずっと後だろう。


 

5)ウクライナ戦争停戦は英仏の関与で困難になるかも
 

上記のゼレンスキーの発言のもう少し後で口論が始まる。そして会議は解散となり、その後トランプはゼレンスキー批判を繰り返し、バイデン政権が決定し現在も継続しているウクライナへの武器支援さえも打ち切りを指示することになった。

 

もし武器支援が打ち切りになれば、ロシアは停戦交渉開始までに占領区域を簡単に拡大するだろう。それ故、英仏のグローバリストやゼレンスキーは慌てることになった。彼らの目標達成は益々困難となるので、急遽、ウクライナの鉱物資源開発協定にサインするために米国を再度訪問したいと書いた手紙をトランプに送った。

 

トランプはその手紙を受け取ったという事実を、議会での初演説の際に公表した。感謝すると言ったが、これで強引には進めなくなり心の底では感謝などしていないだろう。英国スターマー首相やフランスマクロン大統領も、米国を再訪問するゼレンスキーに伴うということになっているようだ。まるで父兄同伴のようだ。

 

レアアース等の資源開発のために米国民間人が多数ウクライナに駐留することには、プーチンは相当難色を示したようだが(補足5)、トランプの経済制裁への言及と互いに信用出来る政治家であるとの相互の認識が、プーチンを納得させることになったようだ。

 

プーチンを説得する際、「第三次世界大戦を防ぐためだ」というセリフがあっただろう。そのトランプの労苦をゼレンスキーがもしウクライナのことを、そして世界の人民のことを心配する気が多少ともあるのなら、もっと評価すべきだった。

 

今後、停戦交渉を妨害するために、英仏はこの鉱物資源開発にも参加したいと言い出す可能性が高いと思う。最初に言及したように、フランスは米国よりも早い時期にこの話をゼレンスキーから持ち出されたようだ。https://apnews.com/article/ukraine-france-minerals-rare-earths-defense-weapons-lecornu-e5fc5fa487d0b8fd884c7783356812d4

 

ただ、英仏が地下資源開発協定に始まる停戦交渉に参加すれば、停戦交渉は纏まらなくなる。それは、英仏のウクライナ和平監視団のウクライナ駐留を要求する可能性が高く、それをロシアは拒絶するからである。

 

グローバリスト側のこれら時間稼ぎの間に何が起こるかわからない。トランプやイーロンマスクは飛行機事故などに警戒すべきだと思う。


 

補足:


1)Gloval News View (GNV)は、大阪大学を拠点とするメディア研究機関。(日本で)報道されない世界の出来事や現象、傾向、視点を解説形式で提供するほか、日本の国際報道を分析し傾向を調べ公表しているようだ。大阪大学大学院国際公共政策研究科(OSIPP)教授の国際政治学者であるヴァージル・ホーキンス(Virgil Hawkins)氏が創設した。()内は本筆者による推測

 

2)ゼレンスキーは米国トランプとロシアのプーチンが勝手にこの停戦協定を進めていると疑い、それが大きな不満として存在する。これは、ロシアもこの停戦協定案には反対意見が強いので、トランプが予めプーチンに制裁とセットで相談したのだろう。トランプはウクライナの背後の勢力の方が強敵であり、且つ、直接の二か国面談は直ちに破談となることを知っているのである。

 

3)ゼレンスキートランプ会談の全文和訳は、NHKが掲載している。https://www3.nhk.or.jp/news/html/ause/k10014737411000.html

 

ただ、「nobody wants to stop this war」という非常に微妙な部分をグローバリストの主張を認めるような形で翻訳している。そのために、その次の「But at the future」を翻訳から除外している。翻訳文でいえば、セクション3の緑色の部分の下線部(しかし、将来のいかなる交渉においても)がNHKの翻訳では消されているのである。

 

このBut at the future (at a  time in the future 位の意味だろう)の存在により、今は停戦は無理であるとの彼のその時点での考えが表現されている。その重要な意味がNHKの翻訳文には反映されていないことになる。尚、NHKにはUSAIDからのお金がBBCを中継して送られていることが明らかになっている。

 

4)ソ連が崩壊して、NATOの役割が終わったにも拘らず、旧ソ連諸国の政情を不安定にする工作を行い(所謂カラー革命)NATOを東方に拡大していったのである。このあたりのことについては、ロシアのウクライナ侵攻10日ほど前に本サイトにアップした記事を見てもらいたい。

https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12726626308.html

このような考察は、米国シカゴ大学のミアシャイマー教授も繰り返し言及しており、その学説の又聞きなどから素人の私でもわかることであり、そしてブログ記事に書いてきたことである。従って、ヨーロッパ首脳が愚かだと考える限り、問題の本質は見えない。

 

5)トランプとゼレンスキーが喧嘩別れになった前回面談を、元ロシア大統領のメドベージェフは「豚が豚小屋の主から叩かれた」と表現していることから、ロシア幹部もトランプに信頼感を寄せているわけではないことが分かる。https://news.yahoo.co.jp/articles/2edb6adb498d908305b27bfd8e5843890a73ef07

 

(3月8日早朝、趣旨不変だが大幅な編集あり;3月9日早朝、セクション3の文章を書き替えた。助詞を数か所修正、最終稿とします。)

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