2016年6月18日土曜日

ヘリコプターマネーは高いインフレを招き、結果的に国民の預金を収奪する政策である

1)円高不況が再来しそうな日本だが、どうしてこのようなことになるのか? 以下のサイトにその原因として、需要不足と供給能力不足という二つの側面が書かれている。その対策である構造改革や規制緩和などは、よく言及されるがもっと具体的に書いて欲しいと思う。http://www.newsweekjapan.jp/kaya/2016/03/post-12_2.php

需要不足というのは、現在の設備等で供給できるサービスの中において、今欲しい物の量が供給力以下であるということである。供給能力の不足というのは、同じ様な状態を「今すぐ欲しくなるようなものを、会社が作り出してない」と視点を換えて言っているのである。しかし後者の見方をすれば希望が残る。国民がそれほど幸せに暮らしているとは思えないのだから、それらを部分的であれ解決できる様に新しい経済的仕組みを作ることで、不況から脱却できる可能性がある。つまり、国民の不満の対策になり得る、物質的、技術的、人的サービスを経済活動に乗せるのである(補足1)。そのような新しい供給能力は長い時間スケールでは具体化するだろうが、現在中高年である人間には間に合わない。

兎に角、今日ほとんどの国民はそれほど幸せでないが、一応生活はできるレベルにある。その様な場合、日本人の精神構造では将来に備えることを考える。会社でも個人でも国家でも、自分(自社、自国)はあまり借金したくないので節約をして貯蓄に走る(補足2)。しかしそのことが不景気の原因であることには気付かない。幸せでない人間の習性は、防衛的且つ保守的になることであり、そして、それは今後豊かになる展望を自ら閉ざしていることになる。経済的デフレスパイラルは心理的デフレスパイラルと並行すると思うのである。

そのような状況を変えるのに、ヘリコプターマネーという劇薬が効くだろうか? 覚せい剤のように一時的に快楽を得るだろうが、破局に向かうだけだと思う。http://jp.reuters.com/article/column-forexforum-tohru-sasaki-idJPKCN0WQ0RJ 上記サイトで主張するように、円の暴落と国民が溜め込んだ預金を実質ゼロにすること、換言すれば、国家による国民の預金収奪が隠れた目的であると思う。それはマクロには一つの解決策であるが、ミクロに見れば、国民はたまったものではない。

2)日本におけるデフレの原因について少し時間を遡って考える。

経済活動は売り買いであり、それらはお金(マネー)を媒介にして行われる。売り買いというが、それはマネーを媒介にした等価交換であり、買った金額と売った金額は当然等しくなる。したがって、貯金をすれば、その分は誰かが借金していることになる。日本は、国民が貯金をして、その分政府や企業が借金をすることで経済が回ってきたが、それも限界に来た(補足3)。そして、世界では米国が借金をして他国が貯金をすることで経済が回ってきたが、それも限界にきたのである。ヘリコプターマネーという政策は、この限界をリセットしようという国家の自己破産政策だと思う。

経済の拡大期には、食べるものも住む家も電化製品も欲しいものばかりであり、それらを一応揃えるまでは貯蓄どころではない。その大きな実需要と将来の潜在的需要のため、企業も将来を楽観する時期であり、誰かが預金をしたとしても、その金は他の会社などが利息を支払って借り投資に用いる。需要が供給を上回れば物価が上昇するので、有利で借りても返済への負担は額面ほど大きくない。つまり、貯金は控えめに行い、将来を楽観的に考えて欲しいものは買うのが、資本主義社会の経済が難なく回っていく条件である。これは先進国へのキャッチアップの段階である。

今の日本や欧米先進諸国は、その時期、つまり、産業革命後の技術革新と生活環境の改善の時期が一通り終わり、大きくなった会社(資本)が新しい需要を求めて海外に進出する時期である(補足4)。それを可能にするために、従来の国境を跨ぐ際の規制などをなくして、企業が世界中に進出しやすい環境を作るべく先頭にたったのが、米国など先進国であり、それを支配する巨大資本である。それが、所謂経済のグローバル化である。

その結果、ほとんどの工業製品にはmade in chinaの文字が刻まれていることになり、国内産業は新しいものを生み出さなければ生存できる空間が狭くなる(補足5)。そのため、種々の経済活動の障壁や事業転換を容易にするための障害などを撤廃しようというのが、ネオリベラリズム(新自由主義)であり、グローバリズムと同根であると思う。その結果生じたのは、大きな貧富の差であった。

外国での企業活動を含めて、日本の会社と個人の全体での収支はかなりの黒字であっても、一部の資本家と富裕階級を除いて、多くのその他の人々には富の分配は行き渡らない。その結果、将来に不安を持つようになり、悲観気分は増幅され貯蓄に励むことになり、経済は冷える。その結果、小さい政府ではやはり駄目であるということになり、社会主義的側面をもった大きな政府の出番となる。それは歴史の流れだろうと思う。

ヘリコプターマネーは、その最も安易な政策であると思う。この政策は、長く自由主義に親しんだために、社会主義的政策の匂いを嫌う人たちが、富裕層の金に直接手をつけないで経済の循環を確保したいという政策である様に思う。しかし、それは失敗するだろう。

兌換紙幣から不換紙幣に移った時、インフレは起こるだろうが、国家の信用が紙幣の信用を支えるだろう。しかし、ヘリコプターマネーを実行すると、紙幣はその国家の信用とも切り離され、その結果必然として紙切れへと変わることになると思う(補足6)。国際金融取引が盛んな今日、最初に外国投資家が円建て国債を売ることになり、実行直後に円は暴落してしまうと思う。

ヘリコプターマネーを支持する人たちに、前米国FRB議長のバーナンキ氏や、ノーベル経済学賞を受賞したスティグリッツ氏などがいると聞く。彼らは議論に火をつけるために言ってみただけだろう。実際、世界の中央銀行の総裁(EUのドラギ中央銀行総裁、米国のイエレンFRB議長)らは、考えたことがないと証言している。マクロ経済学者の片岡剛士氏は、赤字国債発行してのヘリコプターマネー政策を、600兆GDP達成までなどの限界を設けてやるのには賛成と言っている。限界を設けることができないのが、この政策の覚せい剤的なところだと思う。片岡氏は、日本のハイパーインフレを、ヘリコプターマネー的政策を実行した高橋是清の責任にするのはおかしいと言っているが、今回はそれを証明することになると思う。

(以上、完全な素人の思考メモです。批判をお願いします。)

補足:
1)最近では、パソコン、インターネット、携帯電話(スマホ)などだが、これらは全て米国発である。この種の延長として、自動運転の車、ドローンとそれによる宅配、水素自動車や水素電池(離島での太陽光発電と水素製造)、介護ロボットなどロボット産業などがある。
2)日本の精神構造を代表するのが京都である。京都発の企業には、セッセと預金に励む企業が多い。任天堂、京セラ、ローム、島津製作所、村田製作所、などである。
3)経済が停滞すると、企業も保守的になり借金を減らすようになる。
4)産業革命前は、土地が財を生むほとんど唯一のものであった。そこで、新式武器を持つ先進国はそれ以外を植民地支配してその土地を奪い、住民は奴隷化して富を蓄積した。産業革命後は、土地よりも会社、つまりお金と設備などの資産(つまり資本)と技術などの知的資本が富を生む中心的なり、発展途上国はその活動の場として支配されることになる。
植民地支配と異なるのは、途上国経済も発展して、国民の生活レベルが向上することである。その結果、発展した途上国も、新しく同様の支配国を探すか、すでに先進国が進出している国を奪い取るかの経済戦争に参加することが可能になる。これは昔の植民地を争う戦争と同じであり、現代の戦争とも言える。ひょっとして、核兵器、空母、迎撃ミサイルシステム、原子力潜水艦など巨大兵器はそれにふさわしいのか?という疑問も生じるが、それについては後で考察する。
5)この新しいものとして、健康食品や健康器具などかなりイカガワシイものにも大企業が参加するようになった。
6)高橋是清は大蔵大臣として、日銀による国債引き受けで政府支出を増加させ、恐慌からの回復ができたが、軍部の要求で歯止めがきかなくなり(226事件)、戦後のハイパーインフレに繋がった。現在、財政法5条で公債の直接引きうけは禁止されている。

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