北野幸伯著のクレムリン・メソッドは、国際政治の基本的なことを教えてくれる。その最も大切なポイントは、国際政治は善悪や正邪を争う場でないということである。日本のテレビで放送されている政治討論などの番組では、常にどちらが正しいか、どちらが悪か善かという話になる。しかし、その議論を繰り返しても、日本の国際的立場が良くなることはないだろう。
また、国際政治の場面において多くの国は、先ず戦略を立てて、それに沿って情報を集め、場合によってはその解釈を都合良く行なうことで、外交を有利に進めようとする。この方法は、現在日本の方法とは順序が逆のように思える。つまり、日本では先ず歴史的事実や現在得られる情報などを集める。次に、それらを基礎にして、世界の中での日本の行動を考えるのではないだろうか。
以上、二つの原理を理解しないことには、外交戦に負けることは必定ではないだろうか。つまり、尖閣諸島は中国固有の領土であると主張する中国に対して、歴史的事実をあげて、反論するしか、方法が浮かばないのだ。また、慰安婦問題でも、歴史を掘り返して、強制連行の事実はないという主張しか、対抗手段として浮かばないのである。
しかし、中国や韓国が持つ対日本戦略を想定することを最初に行い、その戦略から出たプロパガンダが慰安婦像の建設などであると理解した場合、歴史を掘り返すだけでなく、別の戦術を思い付く筈である。
以上が、クレムリン・メソッドを一読して得た中心的な智慧である。著者があとがきに勧めている様に、今後何度か読むことになりそうである。
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