一週間程前のテレビ放送で、小池百合子都知事が会社の内部留保が300兆円もあり、それに課税すべきだと言っていた。更に、「もし2%課税するとしても、6兆円の財源ができる」と数字を上げての具体的な発言であった。今朝のテレビでも、共産党の人(確か小池晃氏)が企業の内部留保が400兆円もあると言っている。だれでも一寸聞いた範囲では、そんなに金を溜め込んでいるのなら、課税すべきだと考えてしまうのではないだろうか。
そこで、少し考えてみた。内部留保金とは、会社の純益の内使わずにストックしたお金のことだが、課税などを考える場合その課税対象金額を計算するのは結構厄介だろう。何故なら、貸借対照表(BS)にはあからさまには現れないからである。
企業が、設備投資にも、配当にも、給与にも回さないで利益を溜め込んでいるというのだが、ストックされた金額はすぐには出ない。考え方としては、BSの債務の中の利益剰余金に一番近いのだろうが、利益剰余金は投資などに回しても、当然その額は変化しない。
もし、どうしても内部留保に課税するのなら、その年度の粗利益から給与など一般管理費等経費を引き、更に法人税と配当を引いた額を対象にするしかない。それから、企業規模や業種などにより調整した一定額の控除後の金額に課税をするのである。その場合、ストックに対するものではないので、希望の党の小池氏が言うような計算はできない。
希望の党の小池氏の2%でも6兆円という言葉は、企業の会計について何の知識もないか、或いは有権者を騙すための発言かのどちらかである。共産党の言う400兆円の内部留保に課税するという台詞も同様である。
確かにそのような課税を行えば、配当金や一時支給の形の給与が増加するだろう。しかし、そのような場合、企業買収や大規模投資などに向けて内部留保を蓄積するようなことが出来なくなるので、企業経営の方針に対して税務署が介入するようなことになる。日本の企業は、日本人一般と同じく将来不安を感じる経営者が多いから(補足1)、一定の金融資産を溜め込んでいるのだろう。そうなら、何かあったときに倒産などの危険性も増す。
兎に角、内部留保課税は二重課税という重要な問題がある上に、企業の体質を弱めることになる。日本がダイナミックな経済の国になるような、人材育成や規制緩和、更に、長期的には企業経営者レベルを含めた労働の流動性増加などが実現される方向への経済慣習の改質などが大事だと思う。利益が出たからと、法人税以外の方法で毎年それを吐き出させるのは、異常である。
それよりも何故、所得税に対する累進課税を考えないのか。日本のジニ係数0.379は米国を除く先進国では最も大きいと言って良い。(補足2)それを西欧諸国と同等の0.30付近まで下げる位の累進所得課税を考えるべきだと思う。https://blogs.yahoo.co.jp/mopyesr/42992721.html
この方面に詳しい方の議論を是非頂きたい。
補足:
1)つまり、実力のない人が日本特有の企業文化のなかで出世して、社長などになっているということである。S-bankとかいう会社を起業した人のように、劣後債というような社債を兆円レベルで発行しても尚、高い信用と株価を実現している人は、日本の企業では非常にマイナー(優秀な)な存在である。(追記:劣後債の金額ですが、桁を間違えました。ただ、会社が発表している2018−2019年の予定額が1.1兆円です。10・15・19:00)
2)日本は、0.379で非常に高い。ドイツ0.27フランス0.31、イギリス 0.32、スウェーデン0.23など。
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