京都府舞鶴市での大相撲巡業で、土俵上で挨拶をしていた舞鶴市長が倒れた。土俵上に数人の男が上がったものの手を拱いていた。見かねて土俵に上がり、最初に心臓マッサージをして市長を助けたのは女性看護師であった。その後、①:“女性の方は土俵から降りて下さいというアナウンスが場内に流れた”が、女性看護師は救助隊員に救命行為を引き継ぐまで続けた。
https://www.asahi.com/articles/ASL456G6ML45UTQP021.html
②“相撲が再開となったときに、大量の塩を土俵にまいて、穢を清める儀式が行われた。”上記①と②に関して、その後批判が殺到した。相撲協会は①については謝罪をし、②については、力士が流血した際にも清めの塩撒きは行うので、女性が上がったことに対して行ったのではないとの言い訳をした。
土俵の上に女性が上がっては行けないというのは大相撲の伝統であり、それは周知のことである。当時官房長官だった女性の森山真弓氏が、優勝力士の表彰をしたいといって断られたのが1990年のことだったし、少年相撲で勝ち進んだものの女の子だったために蔵前国技館で決勝大会に出場出来なかった10歳の子供の話は、1978年のことだという。
https://www.news-postseven.com/archives/20160313_392117.html
テレビ報道でも話題になっているが、今朝のとくダネ!でもゲスト出演したやくみつる氏は、②については相撲協会の言い分に100%尻馬に乗る形で支持した。①については、マニュアル通りの行動で、緊急時には臨機応変に対応すべきだったと言っている。私は、嘘つき日本人の典型を見る思いで聞いていた。
しかし、やく氏は「緊急時は女性が上がっても良いとマニュアルに書くのも変だ」とも言っており、何が言いたいのか訳がわからない。ただ、別サイトには、「女性禁制を撤廃しろと言いたい」とか、「そもそも女性が不浄という感覚がおかしい。女性はよく、そんなこと言わせておくなと、当時(補足1)も思いました」とある。
本当に相撲を理解しているのだろうか? 後述の内館牧子氏の本(補足2)を読んでいないのだろう。それで相撲に詳しいなどとよく言えたものだ。http://news.livedoor.com/article/detail/14536670/
要するに、彼は何も分かっていない。私は、相撲において最初から女性が不浄だという感覚はないと思う。不浄なのは「女性のことを、勝負すべき土俵の上でも考えてしまう男のこころ」なのだろう。大相撲における土俵の上の女人禁制は、「土俵の上で、相撲以外のことは一切心から排除して、戦え」という意味だと思う。
つまり、土俵上の女人禁制は、「男同士で純な気持ちで戦いたいので、どうか遠ざかって見ていて下さい」というお願いであり、女性が汚らわしいという意味ではない。男にとって女性は魅力的な存在であり、それは筋骨隆々な力士にとって尚更のことである。女性が土俵に上がれば、一点の曇りもなかった男の闘争心に陰りが現れる可能性がある。女性の皆さんには、そう考えてほしい。
この件、海外でも話題になっていると、報道機関や新聞は騒ぎたてる。そんなことを国内に報道せずに、海外の同業者にしっかり説明すべきだ。勿論、市長は命の恩人である女性には感謝すべきだし、その後多量に塩を撒いて女性の気配を打ち消す儀式の意味も、新聞社など報道機関はしっかり説明してやれば良いと私は思う。(補足3)https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180405/k10011392311000.html
例えば、作家の内館牧子氏は、次のように説明しているという。(二番目に引用したサイト)「伝統の『核』を成す部分の変革に関しては、当事者にゆだねられるべきものと私は考えている。たとえば歌舞伎の女形や宝塚歌劇のあり方に関し、現代の考え方で『男女差別に怒りを覚える。男女平等に舞台にあげよ』という訴えがあったとする。そしてもしも、それが受け入れられたなら、その時点で歌舞伎でなくなり、宝塚歌劇ではなくなる」(要点のみ)
素晴らしい説明である。この内館牧子氏の言葉は、朝日新聞(2001年3月17日付)に掲載されたと上記サイトの文章にある。何故朝日は、内館牧子氏の意見を聞いて記事に書かないのか? それでは、火事が簡単に消されて面白く無いからなのか?
追補:(15:30)
上に書いたのは、土俵に女性を上げない理由についての一つの考え方である。一方、日本相撲協会の公式見解は、「土俵に招いた女神の嫉妬を招くため」の様である。https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180405-00010025-fnnprimev-soci
しかし一般には、「女性は汚れた存在だから」という説明を良く聞く。
「女性は汚れた存在」という理由は、月経との関係で女性に加えられた制約と関係しているだろう。例えば月経の時には、プールにも、公衆浴場にも入れない。その常識があるので、土俵に登って欲しくない理由として、分かり易く(しかし男の身勝手として)利用したのだろう。
何れにしても、土俵といえども治外法権の空間ではないので、緊急事態には相撲は停止され、土俵上も一旦相撲場のルール支配から、社会一般のルール支配に変更されることになる。ローカルなルールの設定は、公共の福祉に反しない範囲で自由だと思う。
同様の理由により、男性も女性用シャワー室や女性用更衣室を緊急時に使うことは、実害のない範囲で許されて良い。人に男女の区別がある限り、平時におけるローカルなルールの設定は、いちいち非難されることではないと思う。 (公益法人であることとの関連はここでは議論しない。)
補足:
1)大阪府知事だった太田房江氏も、土俵の上に上がって優勝力士の表彰をしたいと言って断られた。当時とはこの2000年の出来事が議論された頃を指す。
2)内館牧子著「女性は何故土俵にあがれないか」(幻冬舎新書)読んでいないので、コメントはできないが、後述の内館氏の意見が書かれているだろう。
3)http://www.bbc.com/news/world-asia-43652428 何も分かっていないと誰か言ってやれ。この種の新聞は、政治問題でも全てこの程度の理解で記事を書いているのだろう。BBCだろうが、ワシントン・ポストだろうが、情報提供しているのか、プロパガンダをしているのかわからない。
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