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2018年4月8日日曜日

北朝鮮と米国は完全な核撤去なしの和平に合意するだろう:日本政府は拉致被害者救出を目眩ましにして国民を騙し、それを黙認するのか?

(4/8/15:40 最終版)

1)北朝鮮との体制維持の約束や平和条約の話し合いとその合意は、完全且つ検証可能で不可逆的な核解体撤去(補足1、以下CVID)が条件だというのが、米国の公式見解であった。そのことを報じた中央日報の記事が書かれたのが、3月3日の午前中である。http://japanese.joins.com/article/185/239185.html

その後、3月13日にティラーソン国務長官の更迭が、更に23日にはマクマスター安全保障担当補佐官の更迭が、報道された。新しい安全保障担当補佐官は超強硬派のボルトン氏だということで、日本の関係者もビックリしたようである。これで誰しもCVIDの原則を米国は絶対に曲げないと信じただろう。しかし、それは以前のブログで書いたように演出の可能性がある。

その流れの中で、金正恩は中国を訪問した。(補足2)この中朝会談で金正恩は、「南朝鮮(韓国)と米国が善意をもって応じ、平和実現のために段階的、共同歩調の措置を取るならば、非核化の問題は解決できる」と表明したと報じられている。(3月28日午前13時の毎日新聞)つまり、CVIDなんてとんでもないと考え、米国との間で貿易戦争を始めそうな中国の助力を得るべく訪中した様に見える。

しかし、金正恩が考える核廃絶の最終的な状態やそこへの具体的なプロセスなど、詳細は全くわからない。トランプ大統領を始め米側当事者は自信ありげだが、確かな見込みを持っているのだろうか。

実際には、米朝の考え方に相当の開きがあるように思える。それが下の記事にも書かれている。https://thediplomat.com/2018/04/north-korean-denuclearization-one-goal-different-interpretations/

記事によれば、駐韓大使代理(acting ambassador)のマーク・クナッパーは2日(月曜日)ソールでのフォーラムで、「米国のポジションは全く変わっていない。また、北朝鮮との会談の主なる目的は、CIVDは必要条件であり議論の余地の無いことを強調することである」と発言している。

更に、北朝鮮への接触に際しても、「米韓同盟は完全である。米国は文在寅大統領の“非核化の進展なくして北朝鮮との関係の進展はない”という方針を信じ且つ強く同意する」と言っている。

しかし、進展だけではCVIDを意味しない。これら代理大使の言葉は、全くの公式見解にしても、一貫していないように思える。

2)最近配信されたメルマガで、外交評論家の田中宇氏は、米国もCVIDを要求しないことは明らかで、米朝会談は彼等にとって成功するだろうと書いている。習近平もトランプも、CVIDは軍産共同体支配の米国が外国の政権転覆の道具として来たという見方で一致しているというのである。 http://tanakanews.com/180404korea.htm

田中氏は、北朝鮮は核弾頭の一部を隠し持ち続け、中国やロシアは、それを黙認せざるを得ないと現実的に考えている。そして、トランプも同様だというのだろう。田中氏は、米国の政治を裏から眺めるプロである。9.11についても米国の公式見解とは全く異なった見方をしている。つまり、いつもの英米特有の二枚舌外交をする可能性が大きいと見ているのである。

一旦開発した核兵器をCVIDという形で放棄するのは、リビアのカダフィの二の舞いになるので、非現実的だと田中氏は書いている。リビアと、ロシアと中国を近くに友邦として持つ北朝鮮は、かなり違う環境にあるのだが、それでも「核と政権と米国」の基本的力学は同じだろう。

日本としては、田中氏が考えているような米朝合意になりそうなら、少なくともその事実を国民に広く知らしめるべきである。

4月2日の虎ノ門ニュースの最初の方で、青山繁晴氏は米朝会談の開催の可能性が出た段階で、南北朝鮮の会談が具体化したという。つまり、それらの順番が最初だれもが思ったものとは異なるというのである。青山氏の言う通りなら、米韓は密接な連絡のもとに一貫した方針で、この問題の解決について話を進めていることになる。

青山氏もやはり、北朝鮮は核兵器の完全廃棄はしないだろうと言っている。https://www.youtube.com/watch?v=77z1JM2CrA4&t=2770s

この話は韓国代理大使の言葉の中にある“完全な米韓同盟”と重なる。米国は、既に裏では常識になっている“儀式的核廃絶合意”で話をまとめて、日本にはCVID、つまり完全且つ検証可能で不可逆な核廃絶、に北朝鮮が合意したという表看板をトランプの笑顔とともに見せるだろう。

その表看板を裏から補強する枠を打ち付けるために、首脳会談は全て米国主導で計画されたものだと言っているのだろう。

3)日本がなすべきことは、事実の把握である。そして、米国が表と裏を使い分けて、日本には裏を隠し通せると思わせないことである。つまり、米国に核廃絶の確認なしで(CVIDの原則に拘らず)北朝鮮を承認させないことである。

外交評論で著名な佐藤優氏も”口先だけ核廃棄”付き米朝合意を予想しており、米朝合意後に北朝鮮の経済開発のために、米国は日本に対して白紙小切手を北朝鮮に渡すよう要求するだろうと言っている。https://www.youtube.com/watch?v=Oc0t8EgvE2I&t=157s

その可能性があるのは、政権に近い青山氏が最初の動画で拉致問題の重要性を強調していることで想像がつく。(補足3)つまり、安倍総理が裏で、米国のCVIDの原則を放棄した上での北朝鮮の承認を黙認する代わりに、拉致被害者と言われる人たちを白紙小切手(補足4)と交換に北朝鮮から返してもらうという、合意をする可能性がある。

それで安倍政権は盤石になり、日本の安全が根底から毀損されるというシナリオである。吉田茂や佐藤栄作の対米盲従の姿勢を、その孫や兄の孫が繰り返すのである。

ただひとつ不思議なのは、佐藤優氏は上のyoutube動画の中で、文在寅政権の中の人が、トランプ大統領の政権内の人と上手くコネを創って、今回のCVIDなき核廃絶プランで話をまとめただろうと言っている。しかし、韓国の人たちは、核兵器を影で持つ北朝鮮が米国の政権保障を得ても、安心なのだろうか?

韓国の大衆も、日本の大衆同様真実を知らされていないのだろう。ただ、 文在寅氏は満足だろう。これで、文在寅氏は大統領を退いても、朴槿恵氏や李明博氏のように刑事訴追をうけることはないだろう。相当頭が良い人なのかもしれない。

補足:

1)この用語は、complete, verifiable and irreversible dismantlementの訳であり、CVIDと省略形で見出しなどに用いられる。
2)トランプ大統領が中国や日本からの鉄鋼やアルミに25%の関税を掛けると発表したのが、3月1日である。米国の強硬姿勢演出と米中貿易摩擦が金正恩の中国訪問を容易にしたのではないかとブログに書いた。本当のところはわからない。一時は以下のBBCの記事を正しいだろうと書いたが、これも全くわからない。 http://www.bbc.com/news/world-asia-43564834
3)何度も言うが、日本人拉致は日本政府が国民を拉致されたのであり、責任は日本政府にある。それは既に起こったことであり、遺族に対する賠償は日本政府がすべきである。取り返すのなら、憲法を改正して、軍事力を背景に交渉すべきである。その為に、日本の外交が歪められ、1億3000万人の命と子孫の命を天秤にかけるようなことは絶対に避けるべきである。
北朝鮮は日本にとって、外交上山のクマと同然である。クマが人を襲ったとしても、それは防げなかった行政の責任である。安倍内閣は、その喩えを延長すれば、「今後クマが人を襲わないように、山に餌場を造って大量の餌を置く。その為に、住民の非常食が少なくなっても仕方がない」という解決をする可能性があるのだ。https://blogs.yahoo.co.jp/mopyesr/43611478.html
4)比喩的表現であり、白紙小切手など渡す訳がない。実際は日韓基本条約で韓国に渡した金を現在価値に換算した額程度の”協力金”だろう。

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