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2019年2月3日日曜日

北朝鮮問題の落とし所と極東アジア全体の平和について

1)米朝会談が近づいているが、金正恩は核を放棄しないし、できないだろう。仮に米国と完全核放棄を約束して実施すれば、北朝鮮国内の政治力学の結果として金王朝は滅びるだろう。その地位を確固たるものにするために、金王朝がその象徴として核兵器を開発し保持した事実を重視すべきだと思う。

一般に核兵器でも何でも、部分的であってもオープンな空間での拡散は必然である。実際、鉄器も鉄砲も、世界に拡散した。ある地域で、その拡散したものを再び平和裏に局在化させるには、権力によるエネルギー行使が必要である。諸国家に広がった核兵器の場合、“世界政府の警察機構”による力の行使が不可欠だろう。

従って、北朝鮮の核保持によって高まった政治的リスクの解消について、韓国や日本なども巻き込むような悲劇的な事件に繋がる可能性の少ない現実的な方法は、米国など国連の常任理事国を始めとする国際的に指導的立場にある国家が、以下のような合意をすることだと思う。それは、全ての一定の資格をクリア出来た国家に、“基本的国家の権利”として核保持を認める合意である。(補足1)その“一定の資格”とは、核兵器を平和的に維持管理できる中央政府の能力である。

核兵器でも何でも武器は、攻撃のためであると同時に防御のための道具でもある。北朝鮮が、国家としての独立を確保すべく、武器開発を行ったこと自体は自然であり、その権利を侵害する“権利”は他国にはないと思う。(補足2)

国家が他国の侵略を防止する為に武器を持つことは、各人が暴漢に襲われたときに反撃可能なように体を鍛え、且つ、各戸が戸締まりをして一定の防御具を置くことと等価である。しかし、社会に「公という権威」とその権力が発生したときには、その防御具を軽く出来る。防御具を全廃するのは、豊かで平和な世界と、速やかな警察力が行使出来る背景が必要だろう。

一般に非武装があり得るとしたら、世界政府が出来て地球上に平和が達成された場合である。非武装を平和の為の方法だと、ある政治家が宣伝したとする場合、その政治家が低知能の極限にあるか、その言葉が悪巧みの手先であることの表明である。

以下繰り返す。力づく以外の方法で北朝鮮など各国から核兵器を無くすることは、世界国家的な公権力が出来るまで不可能である。核兵器は、金王朝のシンボルであるから、核兵器全廃を宣言し且つ実行すれば、金王朝は潰れるだろう。その直前には、核兵器を管理する能力がなくなり、日本の米軍基地所在地が、核の標的になる可能性があると思う。

2)国々が夫々独自の文化を持ち、固有性(identity)を保って地球上に存在する前提では、非武装主義は偏った宗教であり平和の敵である。非武装中立は、良からぬ目的をもった勢力の政治的プロパガンダのセリフである。それは治安の悪い土地で富を保有しながら、防御の為の道具や武器を持たないことを表明する行為と同じだからである。

平和を愛するスイスの人たちが永世中立を宣言すると同時に、スイスという国家は武装し、各戸が核シェルターを備えることは論理的に整合している。しかし、核の恐怖から逃れる目的で、各戸に核シェルターを備えるのは、非効率且つ不完全である。頭上で核爆発が起これば、被爆者に対しては多少の延命効果しか無いと思う。前のセクションで述べたような取り決めがあれば、スイスはいち早く核武装するだろう。

一方、日本の非武装平和主義は、国際社会が国家に基本的権利を認め、国際間の争いの極少化に、その基本的価値を置けば、国際的お荷物の筈である。勿論、日本が将来滅びることを、国際的な暗黙の了解事項と考えるなら、日本国のその政策は称賛されるだろう。ここで、国家の基本的権利とは、「国家の独立、存続、そして反映を追求する権利」である。

日本国は、日本国民の将来の安全と福祉のために、そしてアジアのお荷物にならないように、政策を改めるべきである。そして世界はそれを認めるべきである。日本国民は、核兵器を道具と考え、それと同居するために核アレルギーを克服すべきである。それは、外に出て春を楽しむために花粉アレルギーを克服するのと同様である。

日本国が核アレルギーを無くし一定の核抑止力を何らかの方法で実現すること(補足3)、そして北朝鮮の中距離核までの保持を権利として認めることが、この地域に政治的安定をもたらすだろう。そして、平和条約を締結することが、拉致被害者の帰国を実現する唯一の道であると思う。

また同時に、米国、中国、ロシアを含む国際社会からは、異常で不安定な状態にある、韓国、北朝鮮、日本、台湾からなる東アジアの4つの国に対して、その“国家の基本的権利”を回復する様に、援助と理解がもたらされれば良いと思う。それが世界的混乱を事前に防止することになり、国際的な利益となると思う。

3)核兵器を発明してしまった人類が、どのようにして平和を維持するのかという問題を考えた場合、その被害を最小にするための方法は上で述べたように世界政府を作り上げることだと思う。

強力な武器の発明により、一つのオリジンを持つ権威と権力の及ぶ範囲が拡大したことは、人類の歴史の基本的なストーリーである。(補足4)その視点でみれば、核兵器は世界政府と共存することで、やっと安定的に世界政府の倉庫に収めることが可能となる特別な兵器である。

ある国の資本家が抱く“思索の崇高な部分”に、政治のグローバル化つまり世界政府の実現がある。そして、経済のグローバル化とそのための人の移動が進められたのは、その下部構造(唯物弁証法的概念)の発達のためだと主張されるだろう。

しかし現在のところ、それを推進する人たちのみが巨大な純資産を蓄積する富者となり、それ以外は貧者となった。その結果、世界は混乱の入り口にある。それは、上記思想が自分たちの利益のために作り上げられた不完全且つ偽りのモデルだからだろう。それは、元ウクライナ大使の馬渕睦夫氏の主張する通りだと思う。

彼らが、世界戦争なしに、政治のグローバル化つまり世界政府的組織を実現したいと思ったのなら、急速な経済のグローバル化と人の移動の自由化は悪い選択だと思う。貧富の差の拡大と異文化の人たちの混住は、国内政治を混乱させ急進的ナショナリズムを喚起するからである。

世界政府が出来上がった場合でも、恐らく国家という枠組みが自治政府の枠組みとして残る筈である。現在のグローバル化は、その前に国家の障壁を破壊する可能性がある。その後には、世界政府という秩序ではなく、世界的混乱が残るだろう。

世界政府樹立には、独立した国家間の同盟関係を世界に広げることと、世界に拡散した戦略兵器の一元管理を実現することが重要な部分だと思う。その原始的な形は既に国際連合やその周辺機関として存在する。その発展には、加盟国特に常任理事国の意識改革を始め、広い範囲での国連の改革が必要だろう。

ある特定の国に対する核廃絶の要求は、その国にしかるべき受け皿が用意されない限り、単に局地的に歴史の逆流を目指すことである。それを無理矢理実現したときには、多大の犠牲者がその国とその周辺国に出る可能性が高いと思う。その選択は愚かだと思う。それよりも、その地域(つまり極東アジア)全体での核兵器のマネージメントの問題と考えるべきであり、北朝鮮の核問題の緊迫化は、現在がその時期であることを示していると思う。

以上は、国際政治に素人である人間の私的なメモです。前提は、世界の中心的な国家の指導者の方々に善意と誠意が存在することです。批判等議論いただければ幸いです。

補足:

1)一定の資格を満たさない国、つまり核兵器を乱用する可能性のある国には、核保時を認めるべきではない。その判断には、世界的な権威の樹立が必要であり、それには、国際連合を世界国家に育てるのが一番の近道である。

2)米国が中距離核の全廃条約を破棄したのは、米国の主張の通り核兵力の分布がアンバランスになったのなら当然である。

3)差し当たり、日米同盟の新たな緊密化と石破氏の言う非核三原則の放棄である。そのセットで東アジアの安定に寄与できるのなら、米国には協力してもらいたいと思う。

4)強力な鋼の剣や火縄銃の発明は、大きな領域の部族や城郭都市の範囲に及ぶ権力を作った。連発式ライフル銃、大砲、軍艦などの武器の発明は、単一根源の権力が支配する範囲を城郭都市レベルから国家という枠組みまで拡大した。ミサイルとそれに搭載可能な核兵器の発明は、それに相応しい権力とその広い支配域を確立していない。それが、現代の世界である。その様な場合、米国が個人に銃保持を認めるように、国家が暫く核ミサイルを保持し管理する体制を持たなければならないだろう。

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