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2019年11月2日土曜日

日本の終焉の前に、戦争までの歴史の評価を終了すべき(2):日本国憲法の話

1)現在の政権に正統性があるのか?

現在、日本の国会議員は選挙で選ばれている。しかしその選挙は、明治時代の廃藩置県を元に決められた選挙区割と大きな一票の格差とにより、完全な普通選挙ではない。その原因は、何度も選挙無効の裁判が行われても、最高裁が現行の一票の格差を認めてきたことである。結果として、明治維新の官軍の末裔が、未だに政治の中心に座る体制が維持されている。(補足1)

上記藩閥政治の支配層が自分たちの権力維持のために、選挙制度の改訂をしてこなかったことと、日本で三権分立が実際上成立していないこととは、密接な関係がある。司法が行政から独立していないので、①日本での最高裁判決は国家行政上の重要なところを遡上に乗せることができない。その言い訳として、統治行為論なる異国の理屈が都合よく用いられている。(補足2) https://www.asahi.com/articles/ASLDM4TRXLDMUTIL02B.html

三権分立と言っても、その三権は本来国家元首の下に位置する。そうでなければ、3つ首がある動物のようで、にっちもさっちもいかなくなる場面がありえる。普通の国では、三権が三竦みの情況になれば、国家元首が結論をだす。しかし、日本には国家元首の規定が憲法にない。(補足3)

話を元に戻す。三権分立が成立していれば、最高裁は行政のトップと同等であるから、行政に対する憲法判断が可能となる。日本のように、総理大臣が最高裁長官を指名する国では、総理大臣の行政に最高裁はクレイムを付けられない。

日本国憲法41条には、「国権の最高機関は国会である」と書かれている。つまり、現行憲法のままでは、日本が国難の際に元首の役割をするのは、総理大臣ではなく、名誉職的になっている国会議長かもしれない。しかし、参議院議長なのか衆議院議長なのかは、分からない。

現在ような状況下でも、この国の根本的な体制(国体)が法的に整備されていないことが、大きな問題となったことはない。もちろん指摘はあっただろうが、それが国全体に広がらないのは、日本の政界や官界、それに報道関係者などが十分西欧の学問体系を学んでいないからだろう。(補足4)

2)日本国憲法の欠陥

日本国家が上記のような情況にあるもう一つの重要な原因は、敗戦後の戦争の総括を日本は何もやって来なかったことにある。400万人の軍人や民間人の死者を出しながら、日本はその戦争の総括をせず、その戦争責任者の末裔の可能性が高い人たちを、国家の要職においている。

日本の右よりの方々は、米国フランクリン・ルーズベルトによる戦争吹っ掛けや、戦後の東京裁判、それに占領軍の洗脳工作WGIP(War Guilt Information Program)こそ、戦後日本を国家としての体をなしていない情況に追い込んだ元凶だと言う。しかし、それは「敵が日本を倒した」「卑怯な奴らだ」と言い続けて75年間、今なお立ち上がろうとしない惨めな姿なのだ。 https://www.sankei.com/life/news/150408/lif1504080003-n1.html

日本の保守本流を辞任する自民党が、国家としての整合性回復の第一歩を踏み出せない理由は、天皇の存在だろう。現在の天皇性は、先の敗戦の結果日本全土を占領した国連軍(実質は米軍)の統治下において決定された。憲法が公布されたのは、1946年11月3日のことである。その第一条に「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く」と書かれている。天皇は統治者(つまり国家元首)でなくなったのである。

つまり、日本国が祝日にしている11月3日の憲法記念日とは、日本の国家元首が消滅した日なのである。この祝日を70回以上も迎えながら、そのことに言及した人は居るのだろうか?もちろん、憲法制定当時は、最高権力者のマッカーサーが居り、被占領国なので別に不合理な点はないだろう。しかし、その憲法を日本国が独立したとされるサンフランシスコ講和条約以降も、そのままにしてきた。何故なのか?

その原因は、7年間国連軍に占領されていたとは言え、日本国憲法は大日本帝国憲法の規定に沿って改訂され、日本の天皇を中心とした国家体制が継続していたことである。その一方で、天皇を国家元首とし、日本国軍を復活させるという憲法改訂は、その当時の環境でも今でも無理である。

対外的には、一つには米国大統領トルーマンの態度が恐ろしかったことがあるだろう。もう一つの原因として、周辺国との国交回復が為されていなかったことがある。しかし、最も大きな原因は、国内にある。それは、日本国軍の保持と天皇元首制を謳う憲法への改訂は、国民の同意を得られないということである。それは戦争前の体制に戻るという印象を与えるからである。あの戦争は、深層心理にまで及ぶ深い傷跡を日本民族に残したのである。

憲法改正をする時としては、日韓基本条約、日ソ共同宣言、日中平和条約など一連の戦後処理が終わったとき以降の安定政権の時だろう。その最初のチャンスは、中曽根内閣の時である。中曽根康弘氏は、これまで皇族以外で大勲位菊花大綬章をもらった唯一の総理大臣である。それは、憲法改正しないで政治の面での天皇制を護った功績なのだろうか?(この勲章も明治の遺物である。)

3)まともな国になるには:憲法改正の要点

日本がまともな国になるには、国家元首と日本国軍を憲法に規定しなければならない。その唯一の方法は、明治維新以降の歴史、特に先の大戦の再評価を行い、天皇の地位を江戸時代以前の姿に戻すことであると思う。つまり、名実ともに共和制への移行である。

その事により、先の大戦で交戦国であった国々や、戦場となった国々、更に、日本の一部として当事国であった、韓国、北朝鮮、台湾などから、真の平和国家として再出発する日本の覚悟に対して、大きな理解が得られるだろう。

それは誰も言ってこなかったが、多くの人達は気づいていた筈である。その動きは、小泉内閣の時にあった女系天皇容認論である。天皇の地位を徐々に小さくして、最終的には権威を消滅させるという手法である。それは、日本民族から天皇を奪い去ることになり、日本人はアイデンティティを失うことになる。

そのような元も子もなくする方法ではなく、元をしっかりと残す方法を考えるべきである。つまり、天皇を日本人の精神文化の中心に置くが、世俗の政治とは切り離す英断を、憲法改正とともにすべきである。それは、天皇を政治利用した薩長藩閥政治からの完全脱却を意味する。

そのために、旧皇族を復帰させて、男系男子の皇位継承を将来に亘って可能にする。そして、実際の政治においては、米国のように大統領選挙人の選挙と、選挙人による投票という形で大統領を決定する規定を、憲法の中に書き込むのである。更に、日本国軍を再興する。実際には、自衛隊を自衛軍と現行の英語名をそのまま翻訳するだけである。

天皇を精神文化の中心に置くことは、近代国家として必須の政教分離原則も明確に担保され、同時に、天皇陛下が現実の政治の泥をかぶる可能性も取り除くことができる。そして、それが天皇軽視でないことを、天皇を尊崇する日本国民に納得してもらうには、明治維新からの歴史見直しが必須なのである。

それは、大日本帝国の天皇制は、薩長が倒幕のために天皇を利用したことが出発点にあることを、国民が学ぶことである。つまり、蛤御門の変などで、革命軍的な薩長軍が徳川軍を圧倒する方法として、錦の御旗を偽造して用いたことが関係している。

その利用が上手く行ったので、明治憲法の第11条に「天皇ハ陸海軍ヲ統帥ス」と定め、賊軍の末裔と考えられる可能性が高かった薩長軍(軍の要職はほとんど薩長が占めた:ウイキペディアの藩閥政治参照)の権威を高め、その後の政治支配にも利用したのである。

因みに、この明治憲法の規定が、中国大陸における関東軍の暴走など、先の日中戦争の間接的な引き金であったことは良く知られている。

これらを成し遂げるには、かなりの努力を要する。しかし、国難が極めて高い確立で予想される現在、それを成し遂げなければ、日本は滅びる可能性が高い。

(11月3日夕刻:改訂、整理出来ていない文章で失礼しました。)

補足

1)大日本帝国の政治は藩閥政治と言われ、薩長土肥出身の有力者により政府要職が独占されていた。要職は、藩閥の周囲(縁故関係など)に拡散はしたが、その延長上に現在の日本もある。現在の総理も副総理もその系列下にある。https://www.mag2.com/p/news/215037/2

2)統治行為論は司法にも手の届かないところがあるというのだろうが、国家元首が規定されていない場合、行政の独走を許すことになる。歴代の最高裁判事は、私の考えでは、遊んで高給を食んでいる。

3)韓国大統領が、「徴用工問題で三権分立の原則を尊重し」というのは、国内用のセリフであり、外国つまり日本に向けてのメッセージではあり得ない。外交は元首の名に於いて成されるのであり、そこにはその国の最高裁の出る幕はない。

4)諸説あるようだが、Wikipediaの「日本の元首」欄をみると、元首など不要だという学者(浦部法穂)もいるようだ。元首が居なくて、誰が内乱のときに戒厳令をだすのか? 学者とはXXの別名なのか?

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