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人類史の本流は中華秩序なのか、それとも西欧型秩序なのか

1)米国が露呈させた中国共産党政権の真の姿と日本の課題   日本が抱えている最重要な課題は、コロナ問題や拉致問題等ではなく、表題の問に対して明確な答えと姿勢を持つことである。短期的な経済的利益に囚われないで、現在が世界の歴史の方向が決定される時なのかどうかを考えるべきである。...

2021年5月30日日曜日

善悪、差別、社会、そして個人の自由

差別は悪であるが、好き嫌いの表明は自由である

 

「差別」とは、一群の人たちを「区別」した上で、その区別とは無関係な場面において、感情的、経済的、或いはその他の冷遇をすることである。本文章は、「差別はどうして“悪”なのか?」という疑問に答えるのが主目的である。その際の重要なポイントは、差別を悪として議論の対象とするのは、宗教的場面を別にすれば、近代社会の公空間においてのみである。

 

1)善悪という概念:

 

善悪という概念は、人類が社会を形成する様になって初めて生まれた。つまり、善悪は社会が発生し、公的な空間が出来た後に生じた概念であり、個人の内部や完全に私的な関係においては善悪は無意味な概念である。

 

その後、人格神を持つ一神教において、善悪は私的な空間においても意味を持つようになった。これが一神教の特徴であり、それ以外の宗教との決定的な違いである。一神教を信じる方々を含めて議論する為には、社会的善悪と人格的善悪(補足1)とを区別することになる。そうすると、今回の話は社会的善悪についてと言うことになる。私は一神教の信者ではないので、後者を単に善悪と呼ぶ。

 

古来、人と人間という二つの言葉を区別して用いる場合、前者を動物としてのホモ・エレクトス(Homo erectusの意味とし、後者を社会の中で生きる人の意味に用いる。善悪は人間を対象とした場合の概念であるが、厳密に個としての空間に閉じ込められた人には存在しない概念だということになる。(補足2)

 

私はここで何時も引用するのが、親鸞の教え、「人は誰でも、死の間際に“南無阿弥陀仏”と唱えるだけで、極楽往生をとげる事ができる」という言葉である。最後の瞬間、どのような人間も完全に個の空間に閉じ込められ、その空間とともに消滅する。

 

その時、善悪は全く無意味な概念となり、南無阿弥陀仏という念仏を最後に消滅する命は、その瞬間には無意味となった生前の悪行の記憶を放棄することが出来、阿弥陀仏を思う気持ちのままに消滅するのである。

 

それは鎌倉仏教には無かったものであり、比叡山の横川中堂を後にした親鸞は、この善悪という言葉に込められた社会の装置が、仏教の教えの通り本質的ではないことを知った上で、四苦に苦しむ衆生の救済のための宗教、浄土真宗を拓いたのだと思う。(補足3)

 

2)差別は、社会の存立を危うくする悪である

 

差別の悪は、他の悪と同様、社会をつくることによって発生し、その悪が蔓延することで社会の存続が危うくなる。

 

人間は社会を作ることによって、他の動物との生存競争に勝つようになった。そして、社会が時間とともに発展し、現在高度な文明により維持されるようになった。その結果、人間はより楽な生活が可能となり、人口も増加した。(補足4)

 

その結果、複雑化した社会の維持(発展)には、様々な人材を必要とするようになった。社会における適材適所の原則は、取り敢えず平等を人物評価の原点とし、外見や個人的趣味、一つや二つの評価ポイントでの優劣と待遇の判断を避けることが賢明だとする“道徳”が出来上あがった。

 

例えば、だれでも美人を好み、醜人を嫌う。それは人の生物的感覚の結果であり、人が動物ホモエ・レクトスである以上不可避である。しかし、その美人に扠したる能力がなく、その醜い人にまれに見る能力や知恵があれば、公的な空間では、つまり社会は、その醜い人を重用することで大きな利益を得る。

 

その結果、「外見で人物の判断をしてはならない」という道徳が出来上がる。つまり、美醜で予め人を差別することは、その社会の利益に反するという事実の、道徳への翻訳である。

 

美醜を肌の色に変えても同様である。肌の透けるような白い人たちが主な構成員となっている地域に、肌の色が黄色いアジア人が居たとする。その白人たちは、そのアジア人とは幾分疎遠になる可能性が高い。しかし、そのアジア人が知的で勤勉であれば、社会で重要な役割を果たす可能性がある。

 

従って、アジア人差別は、その社会にとって大きな損失になる可能性が高い。それが人種差別を悪とする道徳の存在理由である。差別の感情が私的な空間に閉じ込められ表にでなければ、結果としてアジア人が社会の適材適所に分散され、その社会全体の能力が向上し安定化する。アジア人も白人も同様に満足して生きることが可能になるだろう。

 

ただ、私的な時間と空間で白人がアジア人を嫌う感情を持ったとしても、それはその白人達の自由である。アジア人も白人を嫌う感情を私的な空間に閉じ込めておれば、問題はない。大事なのは公的な空間においてどのように振る舞うかである。

 

近代国家では家を一歩出た瞬間から、人は公的な空間に入る。交通機関の利用、生活必需品の購入、住居の賃貸契約など、家の外で金銭が動く時の全ての行為は、公的な空間における法的な行為である。そのような時、誰かが誰かを予めそれらの行為と無関係な特徴において差別する行為は、道徳に反するだけでなく場合によっては違法であり、社会悪である。

 

宗教上の問題を別にすれば(再度、補足2)、善悪は公的な空間と時間に限られた概念である。現在の民主主義と法治の原則を最重視する近代社会では、宗教は最初に述べたようにあくまでも私的な空間での話であり、社会的善悪とは本来無関係である。(補足5)

 

3)階層社会と私空間における差別:

 

差別を悪として退けるのは、先進国を中心とした近代社会である。それは、個人の自由と平等、人権尊重、そして法治を原則とする公的空間である。階層社会はそれらの原則を受け入れない社会であり、従って差別を議論しても意味がない。(補足6)

 

また、私空間での差別は、普通問題にならない。例えば、親が子供への対応において個別に差を設けても、法令に違反しない限り問題にならない。(補足7)長子差別や末子差別については、社会(公空間)は批判する権限を持たない。

 

また、閉じたグループ内、例えば共同体内部での人間関係における待遇差も、その内部で話がとどまる以上差別にはならない。会社などの機能体組織内でも、上記差別を議論する前提が成立しないので、議論に意味はあまりない。(補足8)

 

ただ、これらの組織等と公空間の境界、例えば採用や解雇に関係する状況等では、公空間と関係するので差別は問題となり得る。

 

人の好き嫌いを処罰することは人権無視となる。一人の空間に閉じ込めることが可能なら、差別感情をもったり、差別の言葉をメモにしても罪にはならない。勿論、ある特定の人格神に私空間を渡した人(信者)には、その自由は無いだろう。(18時20分、編集)

 

 

補足:

 

1)「人格的善悪こそ、人の善悪である」と考える人が大勢いるだろう。しかし、人の評価で対象と出来るのは行為のみである。人の心の中は見ることが出来ない以上評価しようがないからである。「」の言葉を信じる人達の“人格”は、対象となる人のこれまでの行為を見て抱いた幻想に過ぎない。

 

2)人格神を崇める一神教の信者たちは、私空間にもその人格神が存在する。従って、個人は二つの人格の複合体ということになる。余談だが、日本の明治以降の政治の間違いは、天皇を人格神のように作り変えたことである。

 

3)これが私の浄土真宗に対する理解である。議論していただければ幸いである。

 

4)昨今の先進国における人口減少は、社会が住みにくくなったからである。それは文明の発展ではなく、崩壊が始まったことを示している。

 

5)古代において一神教は民族のリーダーの神格化により生じた。一神教は多民族との戦いの旗頭として存在し、従って私的空間に於けるよりも、社会的空間での意味の方が大きかった。しかし現代では、一神教の主なる存在空間は私空間となった。この一神教の位置における時代に伴った変化は、地球上の位置により異なる。

ここで一言補足2に追加をする。一神教の世界では「善悪は神が決める」が、今回の議論における結論は「善悪は社会が決める」である。後者の考え方では、善悪は時代とともに変わる。それを裏返せば、一神教の善悪は時が経つに従って、時代遅れとなる。一神教の世界は、この事を真剣に考えるべきである。

 

6)階層社会でも、一つの階層の中では差別は問題になるだろう。しかし、ここでは議論しない。

 

7)法令に違反するのは、公空間に影響する行為である。しつけの範囲にあれば、子供に対する暴力(例えば平手打ち)に見えても、公空間の権力は及ばない。

 

8)ここで深刻なのは共同体的組織内でのイジメである。イジメの実態が刑法にある暴行や障害であっても、警察は動きにくい場合が多い。それは、閉じた共同体的空間での出来事だからである。一般にその種の事件では、当事者に所謂善良なる人物しか居ない場合が多く、警察も徒に刑法犯を作り上げることをためらうのである。8年ほど前の事件について書いた記事があるので、それを一つリファーしておく。

https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12466514013.html

2021年5月29日土曜日

東京オリンピックは中止すべき:中国に乗っ取られているIOCと親中派の二階ー菅連盟

オリンピックの開催まで60日も残されていない。今回のオリンピックは、日本の国際社会に於ける将来の位置を決める重要なイベントである。何故なら、東京オリンピックは北京の冬季オリンピックと一体となってしまったからである。

 

東京オリンピックの開催は、対コロナの問題だけではない。日本国の、米国を中心とした世界の民主国連合と中国共産党を中心とした全体主義連合の間の選択になる。その事を十分考えて、日本国民は東京オリンピックの中止デモやあくまでゴリ押し的にオリンピック開催に拘る菅首相の更迭に向けた運動をすべきである。

 

1)新型コロナとオリンピック:

 

新型コロナ(COVID-19)に感染する人数は、未だに世界で毎日60万人以上いる。その2%の人たちが毎日死亡している。その数は統計に載ったケースだけのものであり、実態はそれ以上だろうが、誰も知らない。

 

統計に一定の信頼が置ける国々の中では、インドでは毎日20万人、ブラジルでは6万人、米国でも2万数千人が新たに感染している。https://www.worldometers.info/coronavirus/country/us/

 

そんな中で、オリンピックを開催しても、発展途上国は参加できな国も多いだろう。また、参加できたとしても、選手たちは十分な準備が出来ておらず、実力を発揮できないだろう。

 

世界が新型コロナと戦争している状況で、「平和の祭典」オリンピックの開催に意味があるのか?この内容の投稿を本ブログで何度もしてきた。その直近の再録記事が513日のものである。

https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12674242110.html

 

更に、このオリンピックは国際政治の中で重要な意味を持っていることを524日の記事に書いた。その部分を再録させて頂く。https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12676414706.html

 

日本政府が中国共産党政権に対する忖度を続けるのは、自民党幹事長の周辺や公明党などの親中勢力の所為だろう。この日本の姿勢が続く結果、日本の民主国の中での地位低下或いは孤立に繋がる。

 

中国への忖度の例として、私は菅政権が東京オリンピック開催に拘っていることを考える。習近平主席は、2022北京冬季五輪を国際的地位や評判を高める機会と捉え期待している。そのため、コロナ肺炎でオリンピックが中止になることを警戒し、東京での開催を支持している。菅政権のオリンピック開催に拘る姿勢は、その中国に対する上記親中派の忖度が反映した結果だと思う。(一部編集)

 

今日本は、開催の意味をオリンピックの精神から考察するだけではなく、オリンピックが国際政治のフロンティアにあることを考えた上で、その開催中止を決断すべきである。

 

現在、米国を始めとする民主主義国は連合を成して、ウイグル人、法輪功の人たち、香港の人たち、そしてチベットや内モンゴルの人たちの人権を無視し、国際的な標準である「人権重視と法治主義」を無視する中国共産党政権とそれに取り込まれた途上国や東アジアの国々との冷戦に突入している。

 

その勢力争いの中で、中国はオリンピックを利用して日本も自分達の勢力範囲に取り込もうとしている。このまま東京オリンピックが開催されれば、中国は大選手団を組んで東京に送り込み、世界中に放映されるテレビを利用して、中国を国際協力を推進する国として宣伝するだろう。そして、閉会の時には、世界に向かって北京で再会しようと呼びかけるだろう。

 

 

 

2)北京オリンピックボイコットの環

 

ポンペオ前国務長官は、中国共産党政権によるウイグル人の非人道的な虐待を「ジェノサイド」という言葉を用いて非難した。更に、トランプ政権は一貫して、今回の新型コロナウイルスをチャイナウイルスと呼び、中国のP4実験室から故意又は事故的に漏れ出たものだと主張していた。

 

就任当初のバイデン新大統領はその考えかたを否定して、トランプ政権が行っていたウイルスの出所調査を中止させた。しかし、最近米国全体がバイデンの考え方よりもトランプの考え方を継承する様になり、大手メディアも意見を180度替えることになった。その姿勢を、バイデンも渋々取り入れて、調査機関に90日以内にウイルスの出所に関する調査をして報告するようにという命令を出した。

https://www.bbc.com/news/world-us-canada-57260009

 

その昔、米国を中心とした自由主義圏とソ連を中心とした共産主義圏の間の冷戦が半世紀続いた。自由主義圏にとってそれよりも遥かに荷の重い冷戦が、ソ連の代わりに中国を置く形で始まったことになる。今後対中貿易に関しても、嘗てのココムのような制度が持ち込まれ、制限されることになるだろう。

 

仮に自由主義圏の冷戦勝利となれば、その終結後出来上がる新しい戦勝国連合(United Nations)は米国と民主主義を共有する諸国が作り上げるだろう。その中に、まともな形で参加出来るか、そうではなく敵国条項の対象国に含まれるのか、現在その境目に日本と韓国は存在するのである。

 

2つの道の間の選択は、最初は何方でも大して変わらないような状況で行われる。日本のそれは、オリンピックに大選手団を送り込んで、国際関係をオープンにして広げると称する中国共産党政権のプロパガンダに加担するかどうかである。二階幹事長と菅総裁の自由民主党と公明党の連立政権は、コロナ下で国民が苦しむ中、その方向で動いている。

 

更に、IOCWHO同様、完全に中国に取り込まれている。バッハ会長以下のIOC幹部は、何が何でも東京オリンピックは開催するとの強い意志を示し、中国の書くシナリオに全面的に協力する姿勢である。そのことは519日のバッハ会長の言葉:大会が可能になるのは日本人がユニークな粘り強さと逆境に耐え抜く能力をもっているからだ。その美徳に感謝したい」というふざけた言葉にあらわれているhttps://news.yahoo.co.jp/byline/endohomare/20210526-00239899/

 

ここで、日本国の主権の及ぶ範囲として、IOCへの協力を中止すべきである。この決断をしなければ、その後の上記2つの道の境目は深くなり、日本は“人権と法の支配を無視する全体主義国家の連合”の協力国として、最後までその道にロックインされるだろう。(補足2)

 

このオリンピック開催の3つの問題点、1.新型コロナと戦う国民への医療サービスを一部犠牲にするという問題、2. 多くの国が新型コロナとの戦いで苦しみ、満足な形で参加できない状況で平和の祭典「オリンピック」を開催する意味などがあるのかという疑問、更に、3.オリンピックは中国共産党政権の一大プロパガンダとして利用されるだろうという国際政治の問題を考え、国民は菅首相更迭の運動を始めるべきである。

 

米国は最後の警告として、或いは日本国民を目覚めさせるために、日本を渡航禁止の国の中に含めた。未だに2万数千人の新規感染者を出しているにも拘らずにである。日本国民は、菅総理の米国訪問時の冷遇、例えば晩餐会の豪華な食事の代わりにハンバーバーが出されたこと等をもっと深く考えるべきである。また、韓国文在寅大統領が米国を訪問した時には、飛行場には儀仗兵も配置されなかったことの意味を考察すべきである。

(5月30日早朝、編集あり)

 

補足:

 

1)この文章中「 もし日本国憲法に契約が違反していないのなら、IOCの決定が国家主権に優先する筈はない」は「もし日本国憲法に契約が違反していないとしても、IOCの決定が国家主権に優先する筈はない に訂正したい。

 

2)日本の没落に関して、評論家の中野剛志氏はそのように表現したと思う。それをネタに記事を書いたのは2019年のことであった。“国家の没落を我々は食い止められるのか:ロックインモデルを用いた考察https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12560835048.html

 

2021年5月27日木曜日

前立腺肥大症とその解決法とについて

前立腺は男性のみに存在する器官である。大多数の男性の前立腺は、高齢になると肥大し排尿障害の原因となる。薬物療法により手術の必要がない場合が多いが、それを躊躇っていると、場合によっては腎臓機能の悪化の原因となる場合もあり、その場合の殆どは手術が最善の治療法となる。

 

今回の記事は、素人だが体験者として、主に前立腺肥大の手術に関しての情報をまとめる。誠意を込めて書いたつもりだが、素人ゆえにその責任は取りかねる。読者は各自の責任で内容をご確認いただきたい。

 

1)前立腺肥大による排尿障害と手術法について

 

腎臓でつくられた尿は、膀胱に貯められる。それが、一定量(健常者は400L程度)に達すると、膀胱の内圧が増加し、その情報が脳に伝達される。そして、脳から膀胱壁を収縮させ、内尿道括約筋を弛緩させる信号が送られ、随意筋である外尿道括約筋を弛緩させると放尿となる。

https://www.kango-roo.com/learning/3287/

 

前立腺は、この内尿道括約筋とその下にある外尿道括約筋の間の尿道を取り巻くように存在し、その肥大は尿道を圧迫し狭窄させ、排尿障害の原因となる。排尿障害が時として、腎臓機能を悪化させると、悲劇的な場合は透析患者となる場合もあるので、早期の治療が望まれる。

 

最初の選択は、薬物療法である。それで十分な効果を発揮できないのなら、手術をするべきである。現在、様々な低侵襲性の方法が存在するので、その中から自分に適した方法を選択して、手術するのが正しい対処法だと思う。

 

手術をしないで排尿障害を解消する方法として、自己導尿という方法があるが、社会的に活動できる人なら全く勧められた方法ではない。被介護の状況にある方或いはそれに近い高齢者のみが用いるべき方法であり、バルーンカテーテルの留置か自己導尿かの選択肢としてのみ存在する方法だろう。https://kaigo.homes.co.jp/manual/healthcare/medical_practice/balloon/

 

前立腺肥大症の外科的治療として、例えば、米国ケンブリッジ大の泌尿器科のホームページには、HoLEPREZUMUroLift、およびTURPが紹介されている。日本では、REZUMUroLiftは殆ど用いられていない様なので、その簡単な解説は補足に廻す。(補足1)https://www.cambridgeurologypartnership.co.uk/urology-info-for-patients/prostate/holep-urolift/

 

日本で行われている前立腺肥大症の経尿道的外科療法は、大きく分けて3つに分類される。これらは尿道にレゼクトスコープ(補足2)を挿入して、行われる。

 

一つ目は、前立腺の内腺全体を外腺部分との境界から剥がすように切り取り、その後内腺部分を細かくして外部に取り出す方法(経尿道的前立腺核出術)で、HoLEP(近赤外線レーザーによる)とTUEBTransurethral Enucleation with Bipolar;特殊電気メスによる)がある。

 

前者はホルミュームYAGレーザー(波長2.1μm)を用い、(補足3)後者はオリンパスが開発した特殊な電気メスを用いて、内腺を除去する方法である。(後者の装置については、https://www.medicaltown.net/urology/product/lowerpart/esg400turis/

 

日本泌尿器科学会のガイドライン(以下ガイドライン)において、HoLEPは推奨グレードAでありTUEBは推奨グレードBである。(補足4)HoLEPは、大きく肥大した前立腺にも適用できる低侵襲外科治療である。レーザー光は前立腺の内腺を外腺から剥離するために用い、切り取られた内腺部分は一旦膀胱内に移される。その後、別の装置で吸引破砕され、体外に取り出される。

 

二つ目には、PVP(photoselective vaporization of the prostate)法と呼ばれる方法で、前立腺内腺の多くを緑色レーザー(KTPレーザー、波長532nm)で蒸散させ除去する。この光は酸化ヘモグロビンを含む組織を過熱蒸散させので、効率的に前立腺組織の蒸散させる。このPVP法は、ガイドラインの推奨グレードAである。

 

PVP法は、非常に大きく肥大した前立腺(80cc以上)には推奨されないようだ。これはガイドラインには明確には書いていないが、この治療法で著名な病院のHPや患者の口コミとして書かれている。例えば、原三信病院(2011年にPVP法を導入)のHPでは、80ccを超える場合、術後4年ほどして排尿障害を生じるので、CVP法を勧めていると書かれている。https://www.harasanshin.or.jp/medical/uro/pvp.html

 

CVP(Contact laser Vaporization of the Prostate)は、波長980nmのダイオードレーザーを用いる方法であり、直接組織に接触させてその部分を蒸散させるPVP法と似た方法である。波長980nmは「生体の窓」(補足3)に位置するので、蒸散させる箇所から離して照射するのは副作用の原因となるだろう。2017年のガイドラインにはCVPという用語は使われていない。半導体レーザー前立腺蒸散術として引用されているのが、CVP法だと思う。ただ、推奨グレードはCであり、泌尿器科学会には十分認められていない。

 

三つ目の方法は、TURPTransurethral Resection of Prostate :経尿道的前立腺切除術)であり、電気メスを用いて前立腺の尿路狭窄の原因となっている部分を切り取る。この方法は、ガイドラインにおいて推奨グレードAであり、現在でも前立腺肥大の外科治療のスタンダードな方法である。

 

しかし、この方法には様々な欠点がある。血管が多く存在する前立腺の内腺を電気メスで削るので、出血量が多く大きな肥大(80 cc以上)には適用出来ない。輸血をしなければならない場合もある。更に、還流液下で手術を行うが、その後遺症である低Na血症(TURP症候群)を引き起こす可能性がある。最後の欠陥は、バイボーラー型の電気メスを用いる(Bipolar TURPと言う)と、生理食塩水を還流液に用いることが可能になり、防ぐ事ができると文献には書かれている。

 

これらを総合して、80cc以上に肥大した前立腺にはHoLEPが、それ以下の場合にはHoLEP, PVPが推奨される。CVP法は、実績を積み上げることで推奨グレードが上がるかもしれないが、生体の窓(650-1000 nm;補足3参照)に位置する波長のレーザーを用いるので、私なら避ける。

 

2)日本での適用実態

 

2011年の日本泌尿器学会のガイドラインでは、TURPHoLEPに推奨グレードA(強く推奨する)を、PVPには推奨グレードB(推奨する)を、CVPには推奨グレードC1(根拠は十分でないが、行っても良い)を与えている。2017年では、PVP法は推奨グレードAに格上げされている。

 

TURP法、HoLEP法、TUEB法、CVP法の比較は、これらを用いて来た大阪警察病院のHPの記述が参考になる。http://www.oph.gr.jp/medical/treatment/hinyou/index.html 下に各年の実施件数の変遷を示す。

 

この病院のHPには、HoLEP法は202011月に導入された新しい方法であるとの記述があるが、

HoLEP法自体はそれほど新しい方法ではない。1998年にニュージーランドで開発され、21世紀のはじめには、日本でも導入されている。https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsejje/25/2/25_351/_pdf

 

ただ、80ccを超える前立腺肥大にも好成績を残す低侵襲な方法であり、この病院も導入に踏み切ったのだろう。従って、上記グラフには2021年以降にHoLEPの実施件数が入ってくる筈である。

 

岐阜総合医療センターも泌尿器科における前立腺肥大手術の詳細な実施統計を掲載している。その実施数の遷移を示すグラフを下に示す。

 

岐阜総合医療センターでは、HoLEP手術が、2009年に初めて実施され、その後TURP法による手術が激減している事がわかる。https://www.gifu-hp.jp/urology/#point03

 

更に、2011年には、これまで行われていた開腹による手術が完全に無くなっている。つまり、大きく肥大した前立腺にもHoLEP法が適用できることを如実に示している。(補足5)

 

HoLEP法の優れている点は、ホロニュームレーザーは波長が2100nmと長く、生体に強く吸収される。一方、PVP法で用いられているKTPレーザー光の波長は532 nmCVP法のダイオードレーザー光の波長は980nmであり、血液のないところでは両者とも生体内に深く浸透するので、潜在的な危険性を孕んでいる。後者は、所謂生体の窓と呼ばれる波長領域にある。

 

何れにしても、実施件数が多い病院がその方法に習熟しているということになるので、各病院のHPでそれを確認することが、患者としては大事だと思う。(27日15時編集し、最終バージョンとする)

 

 

補足:

 

1)REZUMは新しい低侵襲性の治療法である。蒸気を使用して前立腺を収縮させ、尿閉を改善する治療。デイケースとして運ばれ、患者は数日以内に通常の日常生活に戻ることができる。UroLiftは、前立腺の最小限から中程度の肥大による尿路症状のある男性のための新しい低侵襲治療である。それは尿道内から行われ、閉塞性前立腺組織を取り除くのではなく、ピンで留めることを伴います。この方法は全てに適している訳でなく、適用には泌尿器科医からのアドバイスが必要。

 

2)レゼクトスコープ(resectoscope)は、長さ30cmほど直径現在9ミリ程度の内視鏡である。現在改良が重ねられ、8ミリまで細くなっている様だ。細くなるほど当然患者への負担は小さくなる。(2018年第32回日本泌尿器内視鏡学会総合ランチョンセミナー)https://leaders.co.jp/wp/wp-content/uploads/2018/10/LuncheonSeminar20181127.pdf

 

3)この記事に現れるレーザー光の波長は以下の通り。ホロニュームレーザー、2100nm;

KTPレーザー、532nm; CVP用ダイオードレーザー、980nm; 因みに、生体による吸収の少ない近赤外の波長領域は、650nm~1000nmであり、生体の窓と呼ばれる。尚、ホルニュームレーザーを用いた手術の工学的見地からの記述は以下の文献に詳しい。

http://www.medicalphotonics.jp/pdf/mp0008/0008_024.pdf

 

4)日本泌尿器科学会、男性下部尿路症状・前立腺肥大症診療ガイドライン(2017年改訂)

https://www.urol.or.jp/lib/files/other/guideline/27_lower-urinary_prostatic-hyperplasia.pdf

推奨グレードA~Dは以下の通り: A:行うよう強く勧められる;B: 行うよう勧められる;C:行うよう勧めるだけの根拠が明確ではない;D: 行わないよう勧められる

 

 

5)愛知県下では、HoLEPによる実施件数が多いのは、名市大医学部付属東部医療センターである。ここではTURP法による手術件数もかなりあるが、それはTURP法に習熟した医師が居るということだろう。予後の良し悪しは、手術法の優劣も重要だが、その手術法に対する執刀医の習熟度も同様に大事である。因みに、筆者は非常に優れた医師の執刀によりHoLEP手術を受けることが出来たと、その執刀医に感謝している。

http://www.emc.med.nagoya-cu.ac.jp/category/sinryoukamoku/6033.html

2021年5月24日月曜日

中国虎の尾を踏んだ民主主義体制を支える米国アトラス

人権重視や法治の原則を歴史の中で育てたことのない中国は、太古からの基本的価値である「利益」を追求する上で、民主国の様な縛りがない。今日の世界秩序は、それら人権重視や法治の原則を中心的価値におく民主主義体制で成り立っているので、その政治経済の付き合いの中に中国を招き入れるのには無理がある。巨大化した中国共産党支配の中国(CCP)が存在感を増すにつれ、民主主義体制諸国からなる世界の危機が次第に大きくなっている。

 

この危機にある民主主義世界を支えるギリシャ神話のアトラスのような役割を、米国は担わざるを得ない。神話によると、天空を支えるアトラスはその重荷に耐えているが、何とか他者にその役割を代わってもらおうと画策する。

 

1)米軍の台湾軍への深い浸透

 

昨日のYou TuberHanaro Timesさんは、米陸軍の兵が台湾軍の中に入って米軍との連携を深めているというニュースを紹介した。 このことは米国からなかなか公表されないので、台湾が意図的にある兵の愚痴を公開する形で、民主国台湾の防衛に協力する米国の姿を世界に知らしめたようだ。(補足1)

 

現在、多くの国が知っている米国の台湾軍への「テコ入れ」を、CCP外交部が知らない筈はない。従って、CCPの沈黙は、それに対する対策の準備が出来ていないのだろうと、Harano Timesさんは話す。https://www.youtube.com/watch?v=qDPStSa6krg

 

 

 

また、512日にブリンケン米国務長官は、CCPの法輪功弾圧を専門とする秘密警察組織「610弁公室」の主任を制裁した。更にアメリカ独立出版社協会(IBPA;アメリカ最大の出版社協会)は514日の授賞式で、明慧出版センターが出版した英語書籍『明慧レポート法輪功が中国で迫害された20年間』がベンジャミン・フランクリン賞を受賞したことを発表した。(補足2)

https://jp.minghui.org/2021/05/20/75870.html

 

これらの人権無視の中国を国際社会に周知する米国の措置は、トランプ政権の対中国政策の延長上にある。しかし、それは共和党だけの姿勢ではない。民主党を含めて米国議会全体の姿勢であることは、民主党の下院議長ナンシー・ペロシが、CCPのウイグル等での人権無視を攻撃し、「米国は北京オリンピックへ選手以外の派遣をしないようにすべき」と主張したことでもわかる。https://www.bbc.com/japanese/57166910

 

更に、米国政治の支配層の中心部分に位置すると考えられる大富豪ジョージ・ソロスが、2019年のダボス会議で中国と習近平国家主席を非難し、世界は「これまでにない危険」に直面していると聴衆(世界)に警告した。以上から、一部グローバル企業を除いて米国の殆どは、中国を敵国であるという意志を明確にしている。https://www.businessinsider.jp/post-183960

 

Harano Timesさんが言うように、米軍の台湾軍への深い浸透は、このような米国の姿勢の一環である。ここで重要なのは、台湾軍への明確な協力は、CCPが設定しているレッドラインであることである。それを踏んだにも拘らず沈黙するのは、上に書いたように、CCPが米国の統一した意志を怖れて、身動きが取れない状態なのだろうと分析する。

 

レッドラインを超えた米国に対して反応するなら、非常に強い反発でなければならない。そして、それは台湾侵攻レベルの強い行動であるべきである。しかし勝算がなければ、この米国の強烈な敵対行為に対して知らない振りをする以外にない。

 

台湾に侵攻すれば、それは真珠湾攻撃をした日本の結末を再現することになる。つまり、日本を敗戦後の共産革命に導こうとしたと思われる山本五十六のような存在がなければ、中国共産党による台湾侵攻は無いということだろう。

 

2)今後の米国の戦略:

 

民主主義国家群のリーダーである米国には、世界の民主国を束ねて中国共産党政権(CCP)の弱体化或いは体制転覆を、粘り強く待つ以外に手はない。ただ、米国の国力の相対的低下を考慮すれば、他の先進民主国の共同作戦レベルの参加がなくてはならない。つまり、米国が今後進めていく戦略は、世界の各地域に軍事的拠点を置き、その地域の有力国の力を利用してそれを運営することだろう。

 

CCPが崩壊するまで、その体制強化が続くだろう。アジア太平洋地域では日本がその中心的役割を果たす様期待されている。

 

米中軍事衝突シナリオとアジアの同盟体制:(上野英詞)

 

しかし、オーストラリアなど多くの先進国が感じる「民主体制の危機の感覚」を平和ボケの日本及び日本国民はは共有できていない。そして、日本はこの一人前の国家になるチャンスを逸し、最後までCCPに対する曖昧な姿勢を続けるのではないだろうか。

 

日本政府がCCPに対する忖度を続けるのは、自民党幹事長の周辺や公明党などの親中勢力だろう。この日本の姿勢が続く結果、日本の民主国の中での地位低下或いは孤立に繋がる。

 

中国への忖度の例として、私は菅政権が東京オリンピック開催に拘っていることを考える。習近平主席は、2022北京冬季五輪を国際的地位や評判を高める機会と捉え期待している。そのため、コロナ肺炎でオリンピックが中止になることを警戒し、東京での開催も支持している。菅政権のオリンピック開催に拘る姿勢は、その中国に対する上記親中派の忖度が反映した結果だと思う。(補足3)

 

このままでは、孫正義氏が心配するように、コロナの蔓延に苦しむ日本は、東京オリンピックの開催という重荷を抱え込み、パンデミックからの立ち直りを遅らせるだろう。

 

 

そして、西欧型先進国群の中で、経済的停滞の中に取り残される代表的な国となる可能性が高い。

(25日6時編集、最終稿)

 

補足:

 

1)Harano Times さんによると、台湾軍のある兵が「最近キッチンの仕事が増え昼もろくに休めない」とか、「米兵は牛乳なのに我々は粉ミルクしかもらえない」などという愚痴をSNSに上げたことで、最近米兵が相当数台湾軍の中に入っていることが明らかになったと言う。それはバイデン政権が、明確に米軍と台湾軍の連携に言及しないので、台湾側からリークした可能性が高いと分析される。

 

2)中共批判の最前線にあるEpoch Times(大紀元時報)は法輪功 (Falun Gong) のメディアである。Falun Dafa (Falun Gong)運営の米国Minghui Net19996月に設立された。主な目的は、中国本土からの直接の情報を使用して、CCPによる法輪功への迫害を明らかにし、法輪功についての真実を明らかにすることと、自己紹介している。日本では2001年に明慧ネットが開設された。

 

3)何故菅政権が東京オリンピックに拘るのかは、大きな謎である。開催中止によりIOCに損害を生じても、パンデミックが日本の責任でない以上賠償責任は無いはず。恐らく、二階氏や公明党が、中国の意向を汲んで菅総理に働きかけているからだろう。それ以外に考えられない。

 

2021年5月15日土曜日

「何でもプロ化により堕落する」例:五輪を中止できないプロの5輪屋

社会の機能はその発展に従って多くの専門に分かれ、それぞれを各専門家が担当することで維持される。この傾向が進むほど、各専門家は全体的視野を失い、自己利益を優先することになる。専門の先鋭化と専門家の視野狭窄は、社会の老化の原因となる。その老化した社会の中で、自分の利益を優先する姿が堕落したプロの姿である。

 

典型例は日本の政治家であり、その地位は世代を超えて相続され、政治プロ化している。彼らは、視野が狭く、世界の政治経済全般を俯瞰する能力は素人よりも低い。これは日本国(日本社会)の末期的症状の主原因である。

 

1)オリンピック開催の是非:

 

今回のオリンピックの件だが、5月3日のTV放送だったと思うが、あるニュースバラエティ(補足1)で、橋下徹氏が「レベル3やレベル4の情況で流石にオリンピックは無理でしょう」と言った。しかし、自民党のワクチン対策PT座長・鴨下一郎氏は、オリンピック開催に執着する菅首相に忖度してか、オリンピック関係者と日本国民一般を分離して考えるとの自民案を披露した。

 

橋下徹氏とは、素人政治家として大阪府の財政を大きく改善した元大阪府知事である。(補足2)鴨下一郎氏は、元野党の日本新党から1993年に出馬し、政治家になった元素人政治家だが、その4年後には早々に自民党に入り、プロの政治屋になった人物である。2007年には、安倍改造内閣で環境大臣として初入閣、入閣後間もなく資産等報告書の記載の不備が発覚したことが早々とプロ化した証明だろう。

 

その番組の中だったと思うが、フランス在住の電子掲示板サイト2チャンネルの創設者であるひろゆき氏(西村博之氏)が、「オリンピックが中止になれば、オリンピック関連の職を得た人が失業するでしょう。高給で雇用されている彼らにとっては、そうなっては大変だから、開催に固執しているのです」という内容の話をした。

 

ひろゆき氏は、オリンピック関係者のための医療体制整備を考える人達を、オリンピックを国民の命に優先する姿勢だとして疑問の声を挙げている。「平和の祭典」も、プロ化した関係者が主役になると、堕落の祭典になってしまうのである。

https://news.yahoo.co.jp/articles/bd63e312c4f5e26d56f9ef85af704c8a43942a3d

 

菅首相の戦略は、”新型コロナがなんとか低いレベルの被害に抑えられることに賭け、オリンピックが成功裏に終わったタイミングで解散総選挙して2期目を目指す”のだと、誰かがテレビで言っていた。このままでは、最低の首相として歴史に名を残すので、一発逆転の切り札にオリンピックを使いたいということのようだ。

 

何れにしても、堕落しきったプロの政治家により、日本国がズタズタにされようとして居る。それを直感的に感じてか、日本国民の多くはオリンピックを中止すべきと考えているようだ。

https://www.yomiuri.co.jp/election/yoron-chosa/20210509-OYT1T50173/

 

 

 

2)プロによるその分野の堕落

 

アマチュア(amateur)とは、その分野を開拓し参加するが、職業の対象としない人を言う。アマチュアは、フランス語のamateur「それを愛する人」( one who loves, lover)に由来し、18世紀の西欧(英国やフランス)で 始まった考え方(精神、思想)である。そこには貴族の趣味という感じが存在する。しかし考えてみれば、人間文化の殆ど全ては貴族のアマチュア精神により作られた。

 

どのような分野でもプロ化により、ノーマルな人間の行いとしての軌道を外れ、異常なものに進化してしまう。プロ化すれば何でも堕落するのである。

 

例を挙げる。高度に発展した科学は、偉大なギリシャ市民のアマチュアリズム、知を愛する人達が築いた。「知を愛する」は、英語ではphilosophy(フィロソフィー )というのだが、明治時代の誰かが「哲学」という訳の解らない漢語に翻訳してしまった。都道府県名に名を残す「愛知」が本来のフィロソフィーである。(補足3)

 

アマチュアリズムとは、その分野への参加者が他人に比較して優れた成績を残すことを必死に追求するのは愚かなことだと考えることである。そしてその考え方を持つことが、その分野の本来のあり方を維持するのである。

 

科学は知を愛する人達のアマチュアリズムが支えているのである。成績を必死に追い求めると、個人は不正に走ってしまう。それは高度な「科学という文化」の中に紛れ込むと、高度な生命体の中の微量毒素のように働いて、科学の発展を遅らせる。スタップ細胞事件など数多くの捏造事件の発生の遠因は、科学のプロ化である。

 

科学と技術の分野で成功した人に送られるノーベル賞は、元々は金のない優秀な若い人に奨学金を与え、彼らから金の心配を取り除き、その分野の研究に没頭できるようにと、アルフレッド・ノーベルの遺言で作られた。

 

それが何時の間にか、ノーベルの遺産を運用するプロの人たち(その管理団体というプロ集団)の利権と絡んで、現在のような形になったのである。それは、既に職業化していた科学者の堕落を加速した。ノーベル賞獲得が世界における地位と栄誉の保障になるまで、その賞の価値が上昇したことと平行して、人々は科学と技術という二つの独立した言葉の意味を理解できなくなり、科学という人類の作り上げた優れた文化を忘れさった。(補足4)

 

3)スポーツはアマチュアの楽しむものである:

 

アマチュア規定がスポーツに持ち込まれたのは、1839年にイギリスで行われたボートレースのヘンリー・ロイヤル・レガッタでの参加資格だった。成文化されたのは1866年イギリスの陸上競技選手権大会である。

 

この情報の出典である日本大百科全書によれば、「アマチュアamateurは、ラテン語のamator(愛好家)という語に由来し、スポートsport(職場を離れて楽しむ)の語とともに用いられるようになった」という。

 

そのスポーツをプロ化し堕落させたのが、資本主義経済と絡んで発展したオリンピックだろう。たとへば水泳の選手の筋骨隆々とした姿は、まるでサイボーグ(改造人間)のようであり、彼らの記録とそれをめぐる争いは、人類文化の何を為すのか? 

 

そのように考えれば、オリンピックを開催して、経済的利益を得ようとする菅首相の姿は、異様な世界の視点からみればノーマルなのかもしれない。

 

オリンピックが、世界の平和と人類の福祉に貢献するとした場合、「オリンピックで重要なのは、勝つことでなく、参加することである」(クーベルタンの言葉)。従って、過度な商業主義を排し、もっとシンプルで何処の国からでも参加できる形で開催されるべきだと思う。

 

そのように考えた場合、インドやアフリカ諸国、ブラジルやチリなどの南アメリカ諸国などから殆ど参加出来ない形では、オリンピックを開催する意味がない。

(12時:三木谷浩史氏の記事追加、14時追加の編集)

 

補足:

 

1)ニュースバラエティとは、ニュースを専門にしながら視聴率のためにそれをお笑い番組的に変形した視聴者を欺く番組である。このブログでも屡々出てくる「そこまで言って委員会」は、最初はかなり真面目に最近の政治などについて議論していたが、そのうちにお笑い番組のようになった。TV局のバラエティ化の方針に唯々諾々として協力した人は最近退陣した。

 

2)元官僚で現在自民党参議院議員の太田房江知事の後を継いで大阪府知事となった橋下徹氏は、職員の前で「あなた方は財政再建団体の職員である」という類の挨拶をして、その深刻さと今後の財政健全化の方針を訴えた。プロの太田房江氏は、依然自民党政治屋の一角を占める。

 

3)英語のphilosophyphilは愛するとか相性がいいという意味で用いられる。たとへばhydrophilicは「親水性の」という意味である。その反対の意味の意味は、phob(嫌う、避ける)が受け持ち、hydrophobic「疎水性の」として用いられている。

 

4)科学は哲学の一分野、自然を対象にした哲学である。科学的発明の多くは、哲学者により成された。パスカルの原理、ピタゴラスの定理などのように、哲学者として有名な人の名前で数学や自然科学の原理が呼ばれているのは、哲学と科学の間に垣根など無かったからである。ニュートンも、イングランドの自然哲学者、数学者、物理学者、天文学者、神学者とウィキペディアには紹介されている。一方、技術は何らかの目的が最初にあり、それを解決する方法として開発された方法である。発光ダイオードの開発でノーベル賞を与えられたのは、青色発光ダイオードを開発した中村氏や赤崎氏だが、最初に発光ダイオードを開発した米国人ではなかったことが、現在のノーベル賞の性質を雄弁に語っている。 

2021年5月11日火曜日

日本での「オリンピック開催是非」の議論に欠けた国際的視点:「コロナは漣程度」発言について

インターネットの「Will 増刊号」(以下の動画)で、山口敬之氏は「コロナ被害は漣程度」という高橋洋一氏の発言を擁護している。1分ほど視聴したところで、その非論理的発言にあきれて、聴く気がなくなった。https://www.youtube.com/watch?v=iOj5SKH5CIA

 

山口氏は「緊急事態宣言に伴う飲食店を中心にした規制は効果があったのか、これは一切検証されていない。真面目に検証すると、一切効果が無かったという結論にならざるを得ない」と発言した。一切検証されていないのに、真面目に誰が検証したのか?その結果、どうして一切効果がなかったと言えるのか。この非論理的発言に、この方の知性の無さが如実にあらわれている。

 

私のコロナ被害の理解は、禁酒要請の是非は兎も角、「真面目な日本人が必死に抑えた結果(所外国に比べて)”さざなみ程度”の被害で済んだ」というもの。その対策の結果を、「日本経済やオリンピックを犠牲にするほどの努力をする必要はない」という、対策の有効性否定の根拠に使うのは間違いである。(補足1)

 

例えば、一端罹患したときのコロナの死亡率は、西欧諸国と変わらず2%程度であり、日本人特に70代以降にはコロナは恐ろしい病気である。https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12668544940.html

 

「コロナの被害はさだなみ程度」という発言の擁護は、高橋洋一氏自身によっても成されている。

https://www.youtube.com/watch?v=RDhcXK1mKIg

ただ、高橋氏の議論には大きな間違いが数箇所ある。

 

その一つは、日本の感染者数ばかり見ているが、オリンピックは国際的行事であること。日本はそのオリンピックが正常に開催されることを期待して、場所の提供を含めて開催への協力を契約した。(補足2)もし、インドや南米やアフリカ諸国が正常に参加出来ないなら、その開催の意味は大きく損なわれる。それは、日本がオリンピック開催を中止する充分な根拠となり得る。

 

高橋洋一氏は、上記動画であくまで日本でのオリンピック開催決定はIOCの専権事項であると言っているが、それが二つ目の間違いである。私は、契約の詳細については知らないが、もし日本国憲法に契約が違反していないのなら、IOCの決定が国家主権に優先する筈はない。

 

従って、日本にオリンピック開催のデメリットがメリットより遥かに大きいと判断するなら、中止をバッハ会長に通告しても全く問題はない。

 

高橋氏は、中止を通告した場合、日本は数千億円規模の賠償責任が発生するというが、それも嘘だろう。何故なら、IOCは日本で裁判を起こしても、日本にこのパンデミックの責任はなく、更に、上記理由を提示すれば、国益に反した判決を日本の裁判所が出す筈は無いだろう。

 

2)国際的なオリンピック中止の声:

 

現在のパンデミックの情況での東京五輪の開催は、本来世界の多くが祝と希望の気持ちで参加するオリンピックのあり方にふさわしくない。例えば数日前の米国ワシントン・ポストは、IOCバッハ会長を「ぼったくり男爵」と呼び、開催にこだわる同会長を批判している。

 

 

 

 

 

その他、米国ニューヨーク・タイムズは、東京五輪が一大感染イベントになる危険性を指摘し、サンフランシスコ・クロニクル紙は、世界で新型コロナの影響が長期化する中、東京五輪は「開催されるべきではない」との記事を掲載した。

 

その他の議論を紹介しているブログ記事を引用させてもらい、筆を置く。

https://ameblo.jp/chuka123/entry-12672580475.html

 

 

補足:

 

1)論理不明瞭な対策だとは言え、その対策の効果を含めた結果としての小さな被害を、その対策の効果の否定に使うべきではない。その論理は、時系列を無視しているからである。その対策の根拠に対する否定は、その結果を用いずあくまで論理展開によりなされるべき。つまり、従順な日本国民は非常事態であるという宣言により外出を自粛した結果、被害を小さく抑えることが出来た可能性が高いと思う。失礼なたとえ話だが、「カカシは動いて雀を追い払わないから、稲をすずめから護るには効果はない」という議論に似ている。この「」の議論は、すずめがカカシを設置する人間の存在を怖れる可能性を無視している。

 

2)協力と言ったのは、あくまで主催はIOCであると高橋氏が主張するからである。共催でも協力でも、その名称はどうでもよく、問題は契約の内容である。

 

 

2021年5月9日日曜日

コロナ流行を早期に抑える為にワクチン接種を活動的な若者から行うべき

ワクチン接種の目的には、二つある。一つは個人がその病気に罹らないようにすること、もう一つは集団免疫の獲得である。前者の目的からは、医療関係者の他に、集団で生活する施設での老人やその職員に対する接種が優先されるべきである。そして、後者の目的からは、社会での活動度が高い20代から40代の若手が、優先的な接種対象となるべきである。

 

多くの都道府県での実効再生産数は2より下であり、世代別人口を考えると、20代から40代の人たちが接種を済ませて免疫を得た場合、実効再生産係数は50%以上下がることになる。(補足1)

活動度の高い若手感染者の実効再生算数への寄与は、老年の感染者(施設を除く)より大きいとすれば、実効再生算数の下落は感染者の構成比の51%より相当大きくなると思われる。(補足2)

 

図は東洋経済オンラインが公表している世代別の感染者数である。https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/

 

この数値を用いると、20代、30代、40代の感染者の概数は、1320009000087000人である。前感染者数が601000人だとすると、20代〜40代の感染者数約31万人は、半分以上を占める。この世代の人口は約4348万人であり、人口の35%程であり、他世代に比較して感染率が高い。

 

それは彼らが仕事で社会を支える年代であることと関係しているだろう。そして、その高い活動度は、感染拡大への寄与も大きいことを示している。現在、日本での実効再生算数は1.0であり、4月頃の最高値が1.3ほどである。もし、この実効再生産数を半分に抑えられれば、日本での新型コロナの感染をゼロに近づける事ができる。

 

最近、人口密集地でのワクチン接種を優先すべきであるとの意見を取り入れて、東京等で大規模接種場をつくる話がでている。それよりも、医療関係者、20代〜40代、施設の老人やその職員、などへの接種を優先すれば、少ないワクチンで迅速な効果が期待できるだろう。

 

補足:

 

1)20代、30代、40代の人口は、夫々約1268、1384、1796万人である。この合計4348万人は全人口の12600万人の約35%を占める。その一方、その各世代の感染者数は夫々、132000、90000、87000人であり、全感染者の51%以上である。

 

2)各世代の実効再生産数への寄与は、詳しく考察したわけではないが、感染率の2乗に比例するだろう。それは、施設に居て動かない老人の感染が、訪問者である若い世代の感染者との接触によることを考えれば直感的に解るだろう。

 

2021年5月8日土曜日

日立の米国企業グローバルロジック社買収について

全くの素人がこのような文章を書くのは僭越至極なのだが、敢えて挑戦してみた。日本企業の海外企業買収の最近の失敗例として、日本郵政によるオーストラリアの物流会社トール・ホールディングスの買収がある。親方日の丸の企業と日立を一緒にしてもらっては困るという声もあるだろうが、私は多彩な人材が議論をするという文化のない「日本病」の結果なのだろうと思う。

日本の菅内閣のコロナ対策やオリンピックに向けた姿勢などを見ていると、日本の何もかもが三流に見えてくる。今回の日立の件は、東芝や日本郵政、更にはソフトバンクなどの過去の海外企業買収劇とは全く別で、大英断なのだろうか?

日本郵政の「大型M&A」失敗は必然だった

 

1)日立のシリコンバレーにあるグローバルロジック社の買収

 

5月3日のテレ東TVyoutube)によると、日立製作所(株)は3月31日、約1兆円を投じて、米国のソフトウェア企業グローバルロジックを96億ドル(負債返済込み)で買収すると発表した。買収劇の主役を演じた同社副社長は、「本買収は日立の戦略ルマーダを進化させて、グローバル展開を加速するために行うものだ」という。https://www.youtube.com/watch?v=pX54eIZcpBw

 

 

テレ東の担当者は、今回の買収劇の取材でその主役となった徳永副社長から、「日立のITセクターの課題はグローバル展開の能力不足であり、その解決が今回のグローバルロジック買収の動機である」との説明を得た。

 

このシリコンバレーにあるグローバルロジック社(以下GL社)は、企業向けのソフトウエアを開発する会社であり、技術者2万名と、クラルコム、ロイター、マクドナルド、ノキアなどの著名なグローバル企業を含め400社以上の顧客を持っているという。この企業の買収により、「今のルマーダ事業を一気に世界展開し加速出来ると信じている」というのである。

 

ルマーダ(illuminate dataからの造語)とは「データを活用して社会や事業所の課題を、顧客と一緒になって解決するデジタルソリューション事業である」(補足1)。「社会や企業の課題が複雑化する中で、デジタル技術を用いてITOTと製品を組み合わせ、ルマーダの力で顧客の課題を解決するのが日立の生きる道である」と徳永副社長は話す。

 

外国語を効いているような感じであり、ルマーダ、OT、デジタルソリューションなどの専門用語を用いてしか、DL社の買収の動機が説明できないものなのだろうか。

 

個々の製品を対象にするのがIT(情報技術)で、製品が集合した事業所や社会でのそれらシステムの操作全体を制御するのがOToperational technology)だとすると、それらの事業所などでの最適化には、事業所への入力と出力のデータを解析して問題点を見出すのだろう。この問題点の解決をITOTの融合というのだろう。この最適化のプロセスが、日立のルマーダ事業なのだろうか? それとも、もっと複雑なノーハウを含むのだろうか?

 

「日立のルマーダ事業は売上をあげているが、海外は全体の3割に過ぎない。このグローバルな事業展開能力を5割以上にあげるのが、今回の買収の目的だ」と日立の問題点との関係を語る。しかし、優秀な従業員2万名と顧客リスト400がその課題解決の鍵なのだろうか?

 

過去の日本企業による海外企業の買収の多くが失敗していることから、GL社を日立の一員として成長させられるのかという心配も承知していると副社長は語る。日立はGL社の社員で、信頼できる情報を与えてくれる者を何人かと接触を持っているのだろうか? 

 

筆者は、日立も今回の買収で失敗するだろうと思う。何故なら、今回の買収においても、幹部らは専門用語を駆使して充分な議論をしていないと想像するからである。日本には議論の文化が無いという一般論の他に、副社長から海外企業買収における明確な問題点とその解決方法が示されている様には思えない。それが出来るなら、ルマーダなる社内用語を用いずに解説できる筈である。マスコミ取材は、そのような株主の心配を払拭するチャンスであるのにも拘らずである。

 

買収が成功するかどうかの鍵は、もっと泥臭いところにある様に思う。白人の幹部と派遣された日本人幹部との間で、充分コミュニケーションが取れ、一定の結論に到達できるのか? その到達した結論に彼らが従うのか? 欧米文化と日本文化の違い、その一部である英語でのコミュニケーションの問題、更に、日米の政治の問題、人種差別の問題など、充分考慮したのだろうか?

 

つまり、東芝のウエスティングハウス買収やソフトバンクのスプリント買収などが失敗した原因を充分研究しただろうか? この発表直後に日立の株価が急落したのは、株主一般は今回の買収を否定的にとらえている事がわかる。

 

2)過去の海外企業買収の失敗について

 

東芝によるウエスティングハウス買収の失敗は、海外企業の経営には日本企業ではあまり重視されていない特別のノーハウがあることを示している。東芝は結果的にウエスティングハウスを買ったまま、現地の経営者に任して(放置して)しまったという。この事情は下に引用の頁にも書かれているが、複数の頁にも確認される。https://www.shacyoyutai.com/toshiba_wh/

 

ソフトバンクのスプリント買収の件だが、最初から計画にあったTモバイルの買収が米国政府の介入で不可能になったのが、計画が暗礁に乗り上げ結果的に失敗した原因であった。https://news.mynavi.jp/article/mobile_business-67/ 

 

一般に、M&Aにおける他社買収では、現在の企業価値よりも高い価格が設定される。それは、自社との融合による“相乗効果(シナジー効果)”(補足2)を想定して決定されるからである。ただ、日立副社長の取材に対する言葉から、その片鱗は感じられ無かった様に思う。

 

GL社の、400社に及ぶ世界有数の取引先や、2万人の優秀な技術者集団、更に直近の年間売上高が1300億円に上るということは、GL社の現在の数値であり、化粧された外見である。また、GL社の買収無くして、グローバル展開が不十分である日立の現状の解析と、それがGL社のM&Aで解決するシナリオが充分な確実性で書かれているのだろうか? 

 

そのシナジー効果の具体的な説明がなければならないと思う。https://www.hitachihyoron.com/jp/archive/2010s/2018/04/07a06/index.html

 

 

補足:

 

1)発電から鉄道制御など、今までのユニットよりも大きなユニット、更には社会全体の全操作まで、デジタル制御する範囲を広げる技術の開発を、デジタルソリューション事業(DX)というのだろう。なお日立は、既に株式会社 日立ソリューションズ・テクノロジーという会社を持っている。

 

2)シナジー効果とは、一社と一社の融合が、1+1=2+αの式のように相乗的に企業成績が増加することを言う。

 

2021年5月4日火曜日

菅総理の訪米:バイデン政権と中国の深い関係&オリンピックは対米公約?

バイデン政権と中国の深い関係

 

大統領がトランプからバイデンに変わって、中国の人権無視の政策や国際的ルール無視の軍事拡大政策、それらを用いた世界覇権を目指す姿勢が強くなること等に、多くの人が恐怖を感じていただろう。政権交代後3ヶ月余り経って、米国と中国の対立はトランプ政権の延長上にあると感じる人が多いのではないだろうか? しかし、それは米国バイデン政権の表向きだけの姿勢かもしれない。

 

つまり、米中対立の継続は米中首脳の間で申し合わせ済の演技の可能性、或いは、その意志のシグナルをバイデン政権は中国に送っている可能性がある。これが米国議会の民主党の考え、裏で権力を握る金融資本家達の考えと共通しているのかどうかはわからない。

 

そう考えた切っ掛けは、菅総理に対する訪米の際の冷遇である。これは、国際社会の対中強硬姿勢の中心にあるのは、台湾を除いて、米国と日本であると考えられているが、バイデンは、そこから一歩引く気持ちを、菅総理に対する冷遇という形で中国に送りたかったからだろう。ただ、日本のマスコミでは、冷遇の影を完全に消し去った報道がなされている。

 

その冷遇の具体例としては、バイデンはホワイトハウス玄関で迎えなかったこと、夕食会や昼食会などの開催を日本側が要求しても、執り行わなかったこと、更に、翌日ゴルフにでかけたが、そこにゴルフ好きの菅総理の姿が無かったことなどである。その詳しい解説は:https://gendai.ismedia.jp/articles/images/82412?page=4&skin=images

 

 

このバイデンに疑われる対中国融和姿勢の背景には、バイデンの次男のハンター・バイデンと中国との深い関係である。そのハンターのビジネスパートナーだったデバン・アーチャーは、オバマ政権時の国務長官だったジョン・ケリーの義理の息子である。ケリーは、気候変動問題の大統領特使に指名されたのだが、今後のバイデン政権の動きを決めるキーパーソンの一人だろう。(補足1)

https://jp.wsj.com/articles/SB11558895924352213554804587039422332772122

 

バイデン政権は、中国と真証券から対立するように見えているが、それをそのまま信じるのは、間違いである。日本の大手マスコミはそれを隠して、日米協調のみを宣伝している。

 

2)オリンピック中止は菅総理の頭には全く無い:

 

この訪米を米国メジャーなマスコミであるCNBCは、「バイデンと菅は中国の主張に統一して対峙する」というタイトルで表に見えることを淡々と報じている。それらの発言に対する中国の「ひどい内政干渉である」という反論も掲載している。

 

この記事の中で以下のような記述を見出した。

 

ホワイトハウスでの記者会見で菅総理は、「今年の夏、東京オリンピック・パラリンピックを世界統一の象徴として実現する決意を大統領に伝えました」と言い、その夏季オリンピックを前進させる約束に、バイデンは支持したと語った。日本は、開始日まで100日未満だが、増加中のコロナウイルス感染と格闘している。

https://www.cnbc.com/2021/04/17/biden-and-japans-suga-project-unity-against-chinas-assertiveness.html

 

つまり、オリンピックはバイデン大統領と約束したことであり、菅総理としては簡単には中止の決断は出来ないのである。菅総理は愚かだと思う。

(11時10分、二つの動画引用)

 

補足:

 

1)ハンター・バイデンとデバン・アーチャー(ケリーの義理の息子)が共同出資して設立した投資会社へ中国から千億円以上の金が流れたようだ。その辺りについては、1年半以上前に記事を書いている。https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12536039832.html

 

2021年5月3日月曜日

オリンピックは中止し、予定の予算を国内外の疫病対策に充てるべき

1)オリンピック開催の議論に無いオリンピック哲学と世界的視野

 

このままオリンピックを開催すれば、参加しない国の数、観客の数、国内外での開催反対の意見、オリンピック開催に関連した関係者等の感染者数などにおいて、オリンピックの歴史の中で特異な例として、2021東京オリンピック&パラリンピックは語り継がれるだろう。

 

オリンピックは何の為にやるのか?オリンピックは、人類の文化の発展と、その結果としての世界平和を謳歌する祭典ではないのか?オリンピック憲章の基本の第二項に以下のように書かれている。

 

オリンピック哲学(オリンピズム)の目標は、 人間の尊厳の保持に重きを置く平和な社会の推進を目指すために、人類の調和のとれた発展にスポーツを役立てることである。(補足1)

 

現在世界は、疫病の世界的大流行で、平和には程遠い。インドなどの様子をテレビ等で見ると、人間の尊厳保持に必要なのは、酸素ボンベでありスポーツの演技ではない。恐らく、南米、インド、アフリカなどの発展途上の国々は、冷ややかな目で開催されたオリンピックと日本を見るだろう。

 

日本政府が今やるべきことは、オリンピックの中止を宣言して、オリンピックに用いる筈だったエネルギーと資源を、国内外の疫病に苦しむ人々を出来るだけ救うようにに方針を転換することである。それが、上記オリンピックの哲学に沿った決断である。

 

昨日朝、フジテレビ系の番組で、橋下元大阪市長と自民党のワクチン対策PT座長・鴨下一郎氏の議論を聞いたとき、自民党&公明党の政府は、何が何でもオリンピックを開催するつもりのようだ。その理由は、わからないが与党内の様々な事情だろう。

 

橋下氏が「たとえ6月にステージ3、4でもやるんですか」と質問したところ、鴨下氏は「ステージ3でも4でも、オリンピックの管理は別のエリアで、別の管理でやる。全員が感染の中にさらされているわけではない」と、市中での感染拡大とは別だと説明した。https://news.yahoo.co.jp/articles/c2d3f46f7fcb332b925c60f4485820b45a4b7af1

 

2)世論を無視する与党の政治家

 

4月に共同通信が行った世論調査によれば、国民の72%がこの夏のオリンピック開催を望んでいない。https://www.bcnretail.com/market/detail/20210502_223158.html

 

それでも、政府与党がこのようにオリンピック開催の強い意志、全体主義的意志、を持つのは、恐らく日本国民の命や日本国の国際的地位よりも、現政権の権力維持と自分達の政治的地位が大事なのだろう。その姿勢は、北京オリンピック開催の強い意志を持つ隣国の中枢と瓜二つである。

 

東京五輪開催の強い意志は、「外圧を感じてのものではないのか?」というのが、昨日書いた記事の内容である。与党の中には、東京オリンピック開催を支持する隣国の顔を何よりも重視する人達が多いようだ。

 

上記フジテレビ系の昨日の議論、更に今朝の橋下氏出演のテレビ番組でも、決定的に欠けているのは、国際的視点である。このままでは、本来開催すべきでないとする国際的雰囲気の中で、完全には程遠いオリンピックを開催して、日本が汚名を着せられることは確実だろう。

 

そのエネルギーと資源を、国内外の疫病対策に充てることで、その汚名は名声に換わるだろう。今、その外交的決断のときである。国民も心ある政治家も声をあげるべきである。

 

 

補足:

1)オリンピック憲章の中にあるオリンピズムの根本原則第二項の文章である。

https://www.joc.or.jp/olympism/charter/pdf/olympiccharter2020.pdf

 

2021年5月1日土曜日

オリンピック・パラリンピック開催への圧力は日本に仕掛けられた罠かもしれない

 

1)オリンピック・パラリンピックで国際的評価を悲劇的に落とす日本

 

東京オリンピックが予定どおり開催されたとしても、アフリカ、南アメリカ、インドなどの発展途上国の多くは、まともに代表団を日本に送れないだろう。もしオリンピック開催を強行すれば、日本はパンデミックで苦しむ発展途上国を切り捨てた国として、これらの国々から憎しみと侮蔑の眼差しで見られるだろう。それは10兆円や20兆円の損害ではない、日本民族全体の将来を危うくするレベルだろう。

 

更に、もしオリンピック・パラリンピックの後に、新型コロナのパンデミックが更に大規模になれば、日本はCovid-19発生と人人感染を隠し、旧正月に全世界に数十万人の武漢の人をばら撒いた中国に次いで、2番目の責任国として糾弾される可能性が高い。それは、韓国の慰安婦問題や徴用工問題より深刻である。何故なら、その非難は一定の事実と論理に基づいているからである。

 

この大事なポイントが、日本の菅総理には分かっていないし、マスコミでは流されていない。それは国際的陰謀かもしれない。何故なら、極めて単純で明快な論理であるにも拘らず、マスコミはその考えを封じているからである。

 

日本国民の半分以上は、直感的にオリンピック・パラリンピックの開催の危険性に気づいている。もし、日本の将来を憂うのなら、オリンピック反対のデモや署名を急遽行うべきである。野党がもし日本国民の味方なら、菅総理に内閣不信任案を提出すべきである。

 

 

 

こんなことは、たけしや松本人志だけでなく、皆知っている。

 

 

今年の衆議院選挙においては、自民党や公明党の惨敗は予想されるが、それよりも強い圧力を外部から受けている可能性がある

 

2)新型コロナの現状:

 

新型コロナ肺炎(Covid-19)のパンデミックが収まりそうにない。ワクチン接種が進んだイスラエルや英国では、新規患者数が大幅に減少しているが、その他の国々では未だ収まりそうにない。日本も、第4波が始まり、緊急事態宣言が東京などに出された。それに、世界に目を向ければ、インド、南米諸国、アフリカなどは、現在ひどい情況だが、今後更に一層ひどい情況になる可能性が高い。

 

その様な日本と世界の情況下で、菅政権と東京都知事はオリンピックの開催を強行しようとしている。計画されている日程は、7月23日から8月8日であり、あと90日も残されていない。世界のワクチン接種が、この90日間で進むとは思えない。従って、その日までにこの病気が終息することは絶対にない。

 

菅総理は、「東京オリンピックですけれども、これの開催はIOCが権限を持っております。IOCが東京大会を開催することを、既に世界のそれぞれのIOCの中で決めています」と言ったという。バカというか救いがたい首相だ。https://news.yahoo.co.jp/articles/4c152abdcea823931abf0733cee6f16726cd4c77

 

日本が主権国家であれば、日本で開催されるどんな行事でも、その開催の可否を最終的に決定する権利は日本国政府にある。だれかが言ったように、IOCはGHQではないのだから。誰か、その根本を先ず菅に教えるべきである。

 

穿った見方をすれば、北京冬季五輪の開催に執着している中国への遠慮があるのかもしれない。その中国の東京五輪を応援する姿勢は、日本の国際的評判を落とす罠なのかもしれない。

 

フリージャーナリストの江川紹子さんが「IOCは日本国民の命や健康に責任を持っていない」と追及したのだが、菅総理はまともに答えない。ただ、江川さんの視野も狭い。これは上記のように日本国民の安全と命の問題だけではない。これは国際的問題、日本国の将来の国際的地位の問題、現在の子どもたちの日本の問題である。

 

更に視野の狭いのが菅総理なのだろうか? 彼の視野及び思考の範囲は、地理的には日本国内の永田町界隈であり、時間的には選挙のある10月までなのだろうか? それほど愚かな人なのだろうか? それともどこか西方から脅しというか、そんな脅威を感じているのだろうか?

 

もし日本が中止を決定すれば、IOCは違約金を請求するかもしれない。しかし、天変地異や疫病のパンデミックが理由なら、裁判ではその違約金請求は認められない筈である。そんな思考力も菅にはないのかもしれない。

 

(一昨日の記事に加筆、再編集しました。)