現在すでに十分円安である: 日銀の偏った金融政策現在、日銀は年間80兆円の量的緩和を行っている。物価上昇目標2%というが、世界経済はグローバル化で物価が下がる方向にあり、それが逆転するとは思えない。したがって、物価目標2%は言い訳で、目的は単なる円安誘導のような気がする。そして円安誘導は結局日本国民にとって、貯蓄の目減りを意味し、損である。
海外で事業を展開している会社や海外に輸出する企業の株価は、円安で上昇し円高で下降する。世界最大の債権国である日本は、毎年一定量の外貨が円に両替されて国内に流入するため、当然円高に傾く。ただ、日本に滞留しても利を産まないため、その金が再び海外へ投資として向かえば、その円高は是正される筈(補足1)。
上図は過去40年ほどのドル/円レートを消費者物価(赤)、企業物価(緑)、輸出品物価(青)のドル円購買力平価と実勢為替レート(黒)である(出典は図内に表示)。過去黒田総裁以前のレートに相関性が高い曲線は、輸出品でのドル円購買力平価である。日本は輸出で外貨を稼いでいるならば、それが自然である。2000年以降ドル/円レートが上方に外れているのは、外貨取引における輸出品決済の割合が減少したことを意味していると思う。企業の海外進出が進んだ結果だろう。そのように考えると、2009年からは円高傾向は、2014年ころには是正されている(〜110円)と思う。
日銀は、2012/4~2015/4の間に通貨供給量を120兆から300兆に増加させている(現在約350兆円)。この図で見る限り、現在すでに相当の円安であるから、マイナス金利などの異常な金融緩和は短期に終了すべきであると思う。日銀の円安政策は、国民の蓄えを実質的に小さくする政策であるから、企業の円安での業績改善は国民の蓄えを食って延命していることにすぎない。
ドル円レートは、中央銀行の通貨供給量から中央銀行当座預金残高を差し引いた額、つまり実際に流通している通貨量の比率(その図は修正ソロスチャートと呼ばれる)で良く説明される。現在日銀が行っていることは、市場に流通する通貨量を少しだけ増加させるために、通貨供給量全体(マネタリーベース)を異常に膨らませていることである。量的緩和を行っても、円の流通量増加になるのは一時的であり、ほとんどは結局日銀当座預金に溜め込まれることになる。
今年に入って、日銀は一定の量的緩和を続けているものの、ドル/円レートはむしろ下落している。これを石油価格の下落などの経済の混乱と関係付けて、“有事の円買い”という人が多いが、その効果はそれほど大きくはないと思う。有事の時には金価格の値上がりがあっても良いのだが、金価格は最近少し戻してはいるが、2013年からほぼ直線的に下がっている。
従って、最近の円高傾向は単に本来のドル/円レートに近づいているだけであると思う。日銀の国債買付けが市場から合法的に行われているとしても、国の財政規律を無くするおそれがある。現政権は実際その傾向にあると思う。国民は、この金融政策に対してそろそろ反対の声を上げるべきであると思う。
補足:
1)実際に企業の多くは、海外に投資している。製造業の多くは海外に工場を持ち、海外の経済発展に寄与している。今朝のモーニングサテライトでは、ミャンマーへの投資のほぼ半分は日本からのものであると紹介されていた。
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