1)G20の前の日に米国オバマ大統領と中国習近平主席の会談が行われ、南シナ海の問題、韓国への迎撃ミサイル配備、北朝鮮問題などが3時間に亘って話し合われた。夕食会などを含めて、両首脳が接触した時間は4時間だという。
読売新聞で詳細に報道されたのは、地球温暖化問題に関するパリ協定であった。(9/4第14版1面)しかし、パリ協定合意は用意されたものであり、議論など不要だっただろう。時間をとって話合われたのは、中国が南シナ海で岩礁を埋め立てて領土とし、そこに軍事基地を建設している問題だろう。明確な国際法違反のこの行為をどこの国も国際機関も止められ無い以上、国際法による秩序は破壊されたと言って良い。元々、話し合いの余地など無かったのであり、話が長引いたとしたら、オバマ大統領の苦情を周主席がひたすら聴くのに徹したということだろう。
オバマ大統領が南シナ海の話しを厳しい表情で持ち出したとき、習主席は笑顔で聞いていたと新聞(読売新聞、9/4第14版、7面)には書かれていた。それは、米国の関与できる範囲は限られ、中国は独自の考えを押し通せるという自信の現れである。
オランダの国際仲裁裁判所の判決が中国の主張を完全に退けており、習近平政権に大きな打撃を与えたという論調が多い。しかし、上記記事を見る限り、中国は南シナ海の支配を完了するまで淡々と工事を続けるだろう。国際法といっても、法としての権威などないのだから(補足1)。
これらから言えることは、世界は多極化し、アジアの極は中国であるということである。中国主席の米国大統領に対する余裕のある態度は、それを自覚しているからである。今朝のニュースによると、フィリピン大統領がオバマ大統領に対して暴言をはき、二人の間で予定されていたニ国間首脳会議は中止となったという。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160906-00000002-jij_afp-int フィリピン大統領による米国大統領への暴言は、世界の多極化を明確に証明している。確実に時代の歯車は回っているのである。
2)国家間の問題の善悪は限りなく強弱に近いのは、歴史の証明するところである。米国も、多極化する世界を徐々に受け入れるだけであり、アジアにおいては中国が“棍棒外交”をするようになるだろう。日本も悪の烙印とそれに伴った他国からの仕打ちは、軍事力が弱ければ甘受するしかない。
ところで、G20後の安倍総理との習主席との会見は、20分の予定で組まれ、実際には32分間行われたという。30分という時間は何かを話会うという時間ではないだろう。しかし、両国に懸案となる事項がないかといえば、大ありである。
習主席の考えは、南シナ海問題と同じであると思う。尖閣問題についても“苦情は聞くが話し合う気はない”ということだろう。尖閣問題も南シナ海問題も米中の問題でない部分は、中国にとって話合いの対象ですらないと思っているのだろう。
おそらく、尖閣問題についてもオバマ米国大統領とは何らかの具体的現実的な話合いはあっただろう。しかし、米国も南シナ海問題ほど関心はないと思う。(補足2)オバマ大統領との会談で、尖閣の問題は対日問題というよりも、単に時間の問題(スケジュールの問題)という思いを、周主席は一層強めただろう。安倍総理との間の32分という短い首脳会談の時間はそれを示していると思う。
オリンピック閉会式前後に、尖閣周辺への米国戦略爆撃機の展開は、米国の保護国的な日本に対するできる限りの“思いやり”であり、中国を牽制する意味はあるが、実際上の頼みにならないと思う。
https://www.youtube.com/watch?v=Xp4aJaWsmDw
3)安倍総理が日ソ関係の改善を模索するのは、「戦後regimeの脱却」という基本路線上当然の方向であり、米国は不快感を示すだろうが、世界の多極化を必然的方向と考えている以上、それ以上は何も言えないだろう。
4島一括返還という考えは、まさに戦後regimeの中にある考え方であり、日本国民は千島を講和条約で放棄した事実を再度反芻すべきであると思う。日本の将来に残された道は、米国に隷属するという“戦後の枠組み”から脱却することが出来るのか、或いは枠組みから叩き出されるのかの間の選択であると思う。後者の道には、厳しい中国との外交が待っていると思う。
補足:
1)国際法に権威があるのは、弱小国に対してのみである。法の権威は、罰を与える力によって与えられる。中国を罰する力が世界に無い以上、国際法に中国を縛る権威はない。
2)原子力潜水艦の基地を深度のある南シナ海につくるという中国の計画(推測)は、米国に対する直接的脅威となるからである。
(以上は、素人のメモです。)
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