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2020年10月29日木曜日

日本がリアリズム外交が出来ない理由

1)北野幸伯氏の勝者の戦略論について:

 

著書「クレムリン・メソッド」で有名な北野幸伯氏のyoutube動画に、「勝てば官軍、でも負ければ...先の大戦から日本が検証すべき“たった1つの視点”:北野幸伯の大戦略論」がある。この動画は、北野氏の大戦略論の二本目の講座である「勝者の戦略論」の序論の部分の様だが、非常に重要な指摘をされている。

 

 

https://www.youtube.com/watch?v=k-KSdSrzH44

 

 

そこで話されている内容をざっと私流に書き下すと以下のようになる。

 

日本の歴史観には、日本が悪かったという歴史観、つまり自虐史観(或いは東京裁判史観)と、日本は悪くなかったという歴史観、つまり脱自虐史観の二種類しかない。問題点はこれらの歴史観は、単に日本の善悪を議論するだけで、戦争に負けた理由を考えるまで至らなかった。

 

本来なら、何故負けたのか、その失敗の理由を導き出し、日本が今後負けない戦略を立てることに役立てるべきである。それがリアリズムであり、善悪を超えた戦略ということになる。

 

リアリズムを学べば、様々な戦略から勝てる(負けない)戦略を立てることが可能となる。日本はエモーション(感情)或いは善悪論で動いている。善を通して負ければ、それでも良いのかといえば、そうではない。負けてしまえば元も子もない。

 

自虐史観では、①命を懸けて戦って死亡したご先祖様に申し訳が立たない。従って、脱自虐史観の方が良いのだが、負けてしまっては何にもならない。是非、リアリズムの戦略論を立てて、今度こそ負けない日本を作らないといけない。

 

2)日本が、リアリズム思考が出来ない理由(1)

 

以下、私の考えを述べる。ここで、上記動画で北野氏が語った「善悪を超えた戦略論」という考え方は、戦略を考える上では世界の常識だろう。その理由は、善悪は「国家の枠」を超えては、意味をなさないからである。「敵への悪は、味方では善」となるのは直ぐ分かる筈。ただ、日本でもどこでも、この現実論を取りにくくなる一つの理由は、世界が徐々にグローバル化して来ているからである。つまり、左派が勢力を増している現実がある。(補足1)

 

主権国家が国際社会をつくり、パリ不戦条約やハーグ陸戦条約のように、戦争は避ける、そして捕虜の人権は護るなど、国境を超えて善悪が存在しうる国際文化を人類が得つつあった。(補足2)更に、インターナショナルを歌う、国際共産主義運動などのグローバリズムを経験すると、尚更である。

 

つまり、完全にインターナショナルな理想論に立脚すれば、善悪は世界共通である。しかし、主権国家と内政不干渉の原則に立ち、戦争も考慮の内に置く現実の世界を前提にした場合、善悪は国境を超えずに定義され、「敵への悪は味方への善」となる。この思考のスイッチングは、幼稚な理想論に洗脳された場合、再獲得するのはなかなか難しい。それが、日本国民の一般大衆が置かれた情況である。

 

リアリズム戦略では、他国に対しては悪を多用する。嘘を付いて、イラクを攻める。嘘を付いてカダフィを殺して、リビアを混乱に持ち込む。それでありながら、中国に対しては人権を重視すべきだと要求する。(補足3)それは、現状の主権国家間の緩い協調の世界では、現実的である。

 

このイントロダクションで、北野幸伯氏は、何故日本にはリアリズム(幻術主義)が成立しないのかという理由について、「日本の人はエモーショナルだから」という類の話をしている。それを具体的に解釈すると、日本は理想論に染まり、今でも野党は、軍事力を保有する方向に憲法を変えることに反対しているということになる。(補足4)

 

理想論の呪縛から逃れるには、歴史に学ぶべきである。それは北野氏が話しておられる。日本には更にもう一つの壁がある。

 

3)日本が、リアリズム思考が出来ない理由(2)

 

日本は、歴史に学ぶことが困難である。それは明治維新のタブーを抱えるからである。未だ、明治維新を秘密にしたい人たちが、日本の政治を牛耳っている。つまり、江戸時代末期にテロリスト集団が薩摩と長州に現れ、それを結びつければ面白いと考えた英国の戦略の下に、土佐の人が仲介した。

 

そこに金を貸して最新式の武器を持たせ、彼らを江戸や京都でテロを起こさせる。ロックイン(固定化)された所に変化を起こすには、先ず混乱を起こす必要があるからである。幕府は信用を失墜させ、ロックインが解ける。そこで、天皇を無理矢理担ぎ出し、一気に革命を起こさせる。その後、その集団は日本を牛耳って、英国に協力するだろう。(補足5)

 

それが日本(政府)のタブーである。天皇と司馬遼太郎の「坂の上の雲」の史観(司馬史観)で、それに蓋をしてきたのが日本の現状である。英雄坂本龍馬は、上記英国から観た史観では、単に香港にあるジャーディン・マセソン商会の小間使である。フランスは幕府側についた。しかし、英仏の間では実力の差があった。

 

近代的主権国家を設立する必要性から、明治政府は中央集権の軍事国家を、天皇を中心に作り上げた。国家神道を作り、戦死者は神として祀ると約束し、兵の調達を容易にした。憲法を制定して、その方針を憲法第一条:「大日本帝国は万世一系の天皇之を統治す」、憲法第11条:「天皇は陸海軍を統帥す」と書いた。

 

戊辰戦争(革命戦争)の時も、それ以降も天皇は御簾の奥の存在であった。それを政治の表に担ぎ出すために上記憲法の条文を書いた。そこで、実際に采配を振るうリーダーの権威が、下々まで届かないし、そのリーダーは責任をとらない。無責任国家、ごまかしの国家が出来上がった。それが今まで続いている。

 

負けた原因を追求すると、責任を自覚するリーダーが誕生して、国家を指揮する体制が出来るだろう。しかし、明治の初期は兎も角、大正から昭和になるとその方向には戻れないだろう。そして、現在の政府ではこれまでの歴史に対峙出来ない。政治家を含め多くの人実力者は、そのテロリストの末裔だからである。

 

米国に敗戦したのち、マッカーサーはこの日本の体制を温存した。そして、国民には甘く接し、公職追放と手下の吉田茂以下の番頭を用いて、日本を換骨奪胎し、ウィルソンの理想主義を書いた憲法を与え、ひ弱な国家に改造した。②その世界にない自虐国家の憲法に番人を置いた。それが、日本社会党である。

 

この日本、改造できるのか? 今、世界は混乱の中に入ろうとしている。チャンスといえばチャンスだろうが。。。

 

日本は明治以来、世界の荒波に揉まれた。目が覚めない内に、世界の強国になり、そして悲惨な属国になった。奇跡的な経済復興を遂げたが、今は新自由主義、グローバリズムの世界で、無限の下り坂の途中にある。日本の伝統も、その中の基本単位である家族も、その過程でバラバラになった。最初の日本の伝統から出た言葉、下線部①をもう一度読んでもらいたい。

(午前10時30分、編集)

 

補足:

 

1)米国副大統領候補として、一部の人が極左と呼ぶカマラ・ハリスが立候補している。もうひとりの民主党の女性のアレクサンドリア・オカシオ=コルテスも注目されている。あのMMT(近代通貨理論)の提唱者である。

 

2)国際社会を野生の世界に強く引っ張り戻しているのが、中国共産党政権である。王岐山は、中国は神が支配する国、憲法は紙切れと豪語した。

 

3)ウイグルでの人権無視は、国際社会が野生の世界でないと考えた場合、悪である。しかし、一銭五厘で一家の主や長男を徴兵して無駄死にさせることと、どれくらい差があるのか? 自分は私腹を肥やしたり、名誉を独占したりしなかったカダフィ大佐を、極悪人として殺して、リビアという国家を混乱させた米国のやり方と、どの程度差があるのか?

 

4)その理由としては、第3節の下線部分②をみていただきたい。

 

5)英国への協力とは、特に東アジアでの協力者となることだろう。英国の中国侵略を黙認し、ロシアの勢力を抑える。それに、米国の監視役かもしれない。日本に開国を迫ったのは、浦賀に来たペリーである。その米国も東アジアへの進出を狙っていた。南北戦争で、その機会を逸した焦りが、日本への接近と桂タフト協定などの協力体制の模索だろう。満州への利権を譲渡しなかった日本は、世界大戦で、完膚無きまで叩かれた。

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