1)繰り返し感染の可能性
新型コロナが、全世界で猛威を奮っている。今回のパンデミックは第三波である。感染者数は急激に増加しており、冬に向けて非常に心配である。ワクチンが米国や英国で開発されて、それを60%以上の人が摂取すれば治まるとの推測もあるが、本当に効くとしても、どの程度効くのか心配である。何故なら、一度罹った人がもう一回罹患するケースが報道されているからである。https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/medical/detail/detail_41.html
この何回も罹患することが本当なら、ワクチンをどの段階のウイルスを対象に作られたかで、第三波或いは第四波の感染に対して効果に大きな差が出る可能性がある。
スウェーデンの統計をみた時、私は、再感染の話は事実だろうと思った。
その感染データを最初の図に示す。(補足1)グラフは、日毎に現れた感染者の数(上)と日毎の死者数(下)である。(補足2)スウェーデンは、高齢者などウイルスに弱いと思われる人を隔離し、それ以外は規制しなかったので、新型コロナ(covid-19)の性質を考える上で、基礎となるデータを与えてくれている。
感染者数は、3月初旬から急増し、ダラダラと6月下旬になっても感染が広がっている。このダラダラと続く感染は、かなり厳格に隔離した筈の老年層等にまで感染が徐々に広がったからだろう。或いは都会と田舎で、異なる感染動態が生じたのかもしれない。
以前の記事に書いたように、スウェーデン保健当局は首都圏での感染拡大を防止できるレベルの集団免疫が、5月中にもほぼ達成できると考えていたようだ。しかし、第一波にたいしても終息は7月初旬になった。その後8月の小さい感染ピークは恐らく、第二波によるものだろう。https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12592362942.html
この第二波のピークが非常に小さいのは、第一波で作られた集団的免疫の効果だろう。しかし、10月からの第三波が、第一波と同程度或いはそれ以上の規模で発生した。これは第一波の際の集団免疫は、第三波にはそれほど役立っていないことを意味するのだろう。
つまり、再感染の話は事実だろう。第三波のピークは11月20日辺りだが、最終的には来年まで続くと予想される。(補足3)従って、スウェーデンの集団免疫を目指すという方針は、公衆衛生という観点からは失敗だろう。尚、人口100万あたりの死者は670人で、米国、英国、スペイン、フランスなどより小さいが、隣国のフィンランド(70人)やノルウェー(65人)らと比べれば相当大きい。
2)米国の感染データの紹介
同様の図を日本と米国を対象に掲載した。米国全体、及び日本の図の両方とも、よく似た傾向を示している。日本は3月ごろまで、データを誤魔化してきたという風説があったが、そして実際、私もそれを強く疑ったが、感染者数や死者数については、それほどの誤魔化しは無かったことが判る。
日本では第一波は5−6月頃ほぼ終息していたが、米国では土地が広いことも関係して、終息しなかった。そして、感染者数と死者数ともに米国が二桁大きい。ただ、この被害数における大差は、既にブログ記事にかいたように日本と米国の文化の差であって、ウイルスの差やBCG摂取の有無ではないだろう。
ここで注目されるのは、死者数の感染者数に対する比(DRと定義)が、DR(第一波)>DR(第二波)>DR(第三波)である点である。それぞれの流行時期が、第一波が早春、第二波が初夏、第三波が冬であることを考えると、季節因子よりもウイルスの変異がその原因と考えられる。
従って、集団免疫やワクチンの効果は限定的であり、あまりそれに期待や依存をしすぎてはいけないと思う。その一方で、第三波は医療崩壊してしまえば死亡率も上昇するだろうが、医療体制が整っていれば、それほど恐ろしいことにはならないだろうと予測する。
次に、米国の二つの州、ニューヨーク州、及びジョージア州の図を下に示す。
ここで興味深いのは、ニューヨークでは第二波が殆ど無いことである。この傾向は、スウェーデンでも述べたが、第一波の被害が大きいヨーローパ諸国でもほぼ共通している。つまり、英国、フランス、イタリアなどでも第二波のピークは、あっても非常に小さい。これは、繰り返しになるが、それらの地域で一定の集団的免疫がついたと考えれば理解できる。
そして、全ての地域で対になった上下二つのグラフを見れば判るように、Covid-19の流行の特徴として、第三波の死亡者数/感染者数が小さいことが判る。
このニューヨークのタイプは、ニュージャージーやコネチカットなど隣接州にも同様にみられる。集団的免疫の効果が、ウイルスの変異により小さくなるのは当然予想される。ジョージアのタイプのグラフは、フロリダなど隣接州でも同様に観測される。
3)日本での予測と全体のまとめ
日本は、第一波の被害も第二波の被害も国際的に見れば、一桁以上小さい。従って、、第三波による被害の相対的大きさは諸外国に比べて大きいだろう。それは、集団的免疫がほとんど付いていないと考えられるからである。更に、日本でのワクチンの摂取が行われるのが遅くなれば、尚更である。
スウェーデンでも、英国、フランス、イタリアなどの西欧諸国でも、第三波が大きく現れているのは、第一波の際につけた免疫が限定的にしか効かないからだろう。今回のモデルでは、今回米国等で承認されつつあるワクチンが、第一波のウイルス株を用いて製造されたのなら、第三波のウイルスに対する効果は限定的だということを意味する。
つまり、ワクチンに過度に頼って、オリンピックなど将来の計画を立てることは、かなり危険である。それは、第四波の可能性も念頭に置くべきだということである。
今回、大きく分けて3つの感染流行のピークが世界でほぼ共通して出現したこと等から、これがウイルスの変異によると考えるモデルを提出した。この3つのピークが人間社会の気の緩みにおける周期とか、或いは、地理的な原因によるピークの時期的ズレなどに因るのではない。それは、どのようなミクロな単位で統計をとっても、これらピークが見られることからもあきらかだろう。
蛇足:
上図は、人口15万弱の筆者の住む小さな都市での感染者数の統計である。3つの感染ピークが明確に現れている。12月1日まで合計216名の感染者である。市のHPからのデータだが、そこには何処でどのような環境で感染者が出たのか一切書かれていない。スマホで感染者の位置情報まで公開する韓国の情報公開のレベルに比べて格段に劣っている。
補足:
1)本記事内の全ての数値データはworldmeters info というサイトから引用した: https://www.worldometers.info/coronavirus/#countries
2)感染者数を見る場合注意が必要なのは、検査をどのような人を対象に行っているのかは、国ごとに異なることである。上記worldmetersでは、感染者数(number of infected)ではなくnumber of casesという言葉で表現している。これは、 コロナ感染者として把握したケースの人数という意味であり、把握の基準はバラバラであることを暗に示している。死因を新型コロナにする場合の基準も同様に曖昧である。この種の曖昧さに捕われては何も議論できない。それらの点での曖昧さはこの文章全体に残ることを指摘して、先に進む。
3)スウェーデンは、集団免疫を目指したので、検査件数は人口の30%程度とかなり低い。従って、感染或いは発病としてカウントされた人数が人口の2.6%であり、感染数(或いは発病数)/検査件数が大きい。実際の感染者数はこの2−3倍程度あった可能性があると私は思う。
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