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2022年6月18日土曜日

日本人拉致問題の本質的解決

1)馬渕元ウクライナ大使による拉致問題解決に向けた話

 

最近、元ウクライナ大使である馬渕睦夫氏により北朝鮮の拉致問題の解決を妨げるものについての話がyoutube動画で公開された。https://www.youtube.com/watch?v=lC8gNmqxaAU

 

 

最初の方で馬渕大使は:
 

「北朝鮮による日本国民の拉致は、国家による侵略行為であり、戦争行為の一種である。本来なら、日本は北朝鮮に対し攻勢に出て然るべきだが、それが何十年と出来なかった」

「それが、北朝鮮問題というか、朝鮮半島情勢、或いは戦後日本の政治体制と言って良いのですが、それの闇というものの縮図である」

 

と仰っている。この言葉は本質的に正しいと思うが、文章①「攻勢」の意味が不明確であることや、文章②が回りくどい表現になっていることが不思議であり、その理由がわからない。特に②の「闇」とは何なのか、この動画の後の方にも説明がない。米国の朝鮮半島政策のことを言うべきなのだが、それを意図されているのかどうかもこの表現では分からない。
 

そして、
➂「この本質的問題があるにしても、とにかく拉致被害者を全員取り戻すことが政治的に重要であるから、様々な方法(タクティックスと言っておられる)を使って政治的解決をすべきである。その為に前提条件なしに金正恩に直接会ってこの問題を提起するのは、正しい方法だと思う」

 

と発言されている。しかし、そのような解決は間違いである。その指摘が本記事の目的である。


④「(上記①の理解に基づき)日本がこの問題を正面から取り上げるには、その為の土台が出来ていない。土台とは、軍隊が無いこと、そして情報機関がないこと等である。北朝鮮にはそれら両方があり、そこに日本と北朝鮮の差が生じている」と。
 

このあたりから、話が世界に対する情報戦について、日本が何もしてこなかったこと、国内メディアがまともに報道しなかったことなどを非難する内容となる。拉致問題について、正しい出発点(①の本筋論)に立ちながら、それ以下の議論は方向としては正しいものの、纏まりを欠く分かりにくい話で、非常に残念である。


上記➂の間違った議論になるのは、一つには、以下の様な分かりにくい言葉や表現を用いるからだろう。つまり、「政治的に重要」の政治的という言葉、「金正恩と直接会う」ことの政治的外交的定義付け、「問題を提起する」での提起という言葉など、意味が分かりにくい。何故このような表現になるのか、理解に苦しむ。そこで、以下のようなコメントを書いた。


非常に分かりにくい話です。根本にあるのは、朝鮮戦争が終わっていないことと、日本が北朝鮮を承認していないことです。日韓基本条約では、北朝鮮を含めて朝鮮半島全体を韓国の領土としていますから、韓国の了解を得て軍隊を(日本の立場としては原野と同様である)北朝鮮に出兵して取り戻すのが本筋の解決法です。(補足1)


それができないのは明らかですが、そのような解決に対する障壁を取り除くという考え方で、拉致問題の解決策を探るべきです。メディアの責任は、拉致問題の解決とは次元の異なる話です。
 

この大使の言葉の分かりにくさを、以下のような疑問文形式で指摘したい。


馬渕大使は上記③の部分で、「前提条件なしに金正恩に直接会ってこの問題を提起するのは、正しい方法だと思う」と発言されているが、日本の高官がどのような資格で、金正恩に会い、どのような(提案、叱責、懇願)を行うのか? 


日本国政府の文書に、金正恩との交渉をどのように書き残すのか? 国交がないのだから、国家の首脳間の会談ではあり得ないし、拉致という文字で合意文書など出来るわけがない。「行方不明者を探し出してくれてありがとう」と言って、「未承認国家のひとから日本国民を引き渡してもらった」と書くのだろうか?(補足2)

2)本質を離れた解決法の模索は、問題を複雑化し解決不可能にする:

この動画における馬渕大使の拉致問題の本質についての記述(上記①)は全くその通りであり、この点には敬意を表したい。政治家は兎も角マスコミまでもが、この本質論を明確にしてこなかった。勿論、自民党は日本を換骨奪胎する米国への協力者であり、マスコミはそのプロパガンダ機関であるとすれば当然なのかもしれない。(補足3)

 

ただ、馬渕大使の対策は、被害者のことを第一に考えた末のことであるとしても、間違っていると思う。一般の国民がそれが本筋の解決法だと考えると、拉致被害者の方にむしろ失礼になる。


つまり、拉致被害者の救出は、山で遭難された人の救出とは訳が違う。彼らの救出は、日本国と日本国民の義務である。それは国境を守れなかった日本国家の失政によるのであり、原状回復(つまり被害者を取り戻すこと)は日本国の威信をかけて行うべきことである。


拉致が北朝鮮による日本国への侵略行為だと考えれば、その被害者は、侵略戦争における戦死者あるいは捕虜となった人たちである。つまり、現在のウクライナ戦争におけるウクライナ人被害者やロシアの捕虜になったウクライナ人たちと全く同じ状況である。


ここでもう少し冷静になり、問題の本質を歴史を遡って考え、そのうえで損害を最小に抑えるもう一つの本質的な解決を考える。第一に注目すべきは、朝鮮戦争である。北朝鮮のこの行為は、彼らの国家防衛の一環であり、そのためのスパイ養成の為になされたことと考えるべきである。


従って、日本国が、拉致被害者の救出の一環として行うべきことは、この朝鮮戦争の正式な終結を関係諸国に要請し、その後日本と北朝鮮の間で平和条約を締結することである。(補足4)平和条約締結交渉の中で、拉致問題を解決するのである。

 

戦争状態も終わって居ない未承認の国から、捕虜だけ多額の資金と引き換えに取り戻すのは、(同盟国である米国や韓国の)敵側への軍費供給にあたる。


そのような解決法では、時間をとりすぎると言うのなら、上記のように日本も戦争の当事国となり、軍隊を派遣して北朝鮮から被害者を救出するしかない。どちらかの解決法にも努力しないのなら、日本国は国家としての基本的な要素も思想も有していないことになる。


日本国は、国民の命と財産を守るという最も根本的な機能も持たないで、国民に納税などの義務を押し付けていることになる。この一方的に”ぼったくりやくざ”のような日本国に対して日本国民はどのように対すべきか、一人一人がそれこそ命を懸けて考えるべきである。(補足5)


北朝鮮との国交樹立だが、それは北朝鮮が共産主義独裁の国であるとか、非人道国家であるとかの問題とは別である。そもそも北朝鮮は、英国やドイツを含め、世界のほとんどの国と国交を持ち、国連に加盟済の国であることを考えるべきである。そして、早急に国交を持つべきである。それが核兵器による攻撃などの悲惨な未来から日本を救う方法の一つである。


それら以外の解決法はない。拉致被害者を取り戻すために、直接金正恩に会うなど、言語道断であると思う。日米は軍事同盟を締結しているのだから、朝鮮戦争終結前に、日朝が平和条約を締結することはあり得ない。

3)朝鮮戦争が終結しないのは何故か:

 

朝鮮戦争が終結しないのは、恐らく米国が朝鮮半島を不安定に保ちたいからだろう。それは、米国が東アジアにおける存在理由を確保するためである。これはマッカーサーが朝鮮戦争に勝利しようとした寸前で、トルーマンがその考えを拒否し、マッカーサーを司令官から外したことからも想像がつく。


その後ソ連が崩壊し21世紀になり、共産圏の経済が停滞して資本主義圏との差が開いたときから、北朝鮮は継続的に朝鮮戦争を終結し、米国、中国、韓国、北朝鮮の間で平和条約の締結を望んでいたと思われる。


実際、2016年1月のロイターの記事に、「北朝鮮は中国を仲介として、米国(国連軍、追補1)との朝鮮戦争を終結し、平和条約を締結することを望んでおり、それが叶わないのなら、もっと核実験を行うと主張している」との記述がある。http://www.reuters.com/article/northkorea-nuclear-usa-をidUSKBN0UM12S20160108

繰り返すが、マッカーサーが極東を支配していた頃から現在まで、米国は北朝鮮を極東でのトラブルメーカーとして育てたかったのである。そして、北朝鮮の核武装も米国の希望通りだったということになる。北朝鮮制裁により、韓国や日本に恩を売る形で、米国の存在感を東アジアに示すことができるからである。

 

これは、中国やロシアに対して、米国の東アジアにおける存在感を示すのが主目的だろう。そして、中国にとっても暴れ者の北朝鮮の存在は、米国との綱引きの綱にあたるので、都合がよさそうだ。


ロイターの記事には、「米国と中国はどちらも、制裁の解除や、北朝鮮が核兵器開発を放棄し、平和条約の締結などより良い見通しをぶち壊した」という記述がある。原文は以下のようである。dangleの意味を考えて意訳した。
The United States and China have both dangled the prospect of better ties, including the lifting of sanctions and eventually a likely peace treaty, if North Korea gives up its nuclear weapons.


当然、日本人拉致は、朝鮮戦争休戦下のまま地域が不安定化されているために発生した。北朝鮮は、自国の安全をどう維持するかを考え、日本人を拉致して、日本語の教師などにして、スパイ養成などに使役したのである。このような歴史の総括とともに、朝鮮戦争を正式に終結し、平和条約を締結することは、拉致問題の本質的且つ唯一の解決法である。

 

 

終わりに:


このロイターの記事を参照して、「米国が東アジアでの米国の存在根拠を温存し、この領域が完全に安定しない様にする目的で、北朝鮮問題を温存してきた」との指摘は、過去の記事(2016年1月24日)で行っている。以下の二つの記事をご覧いただきたい。
https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12466514866.html
https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12466514862.html

米国ネオコンのウクライナを反ロシアに育てる企みと同様に企みが、緩衝国である朝鮮半島でも行われていたのだと思う。

 

追補1)ウィキペディアによれば、朝鮮戦争の当事国は韓国と北朝鮮であり、交戦国は国連軍と金日成の軍及び中国共産党義勇兵である。北朝鮮は国連に加盟しているので、当然終わっている筈の戦争である。正に、この部分が馬渕氏の話す闇の部分だと思う。


(11時30分、一部文章を修正、補足4追加、終わりにのセクション追加;6月20日早朝、追補1の追加と文章の間違い3か所ほど修正)

補足:

 

1)この方法は、本筋の解決法のうちの直接的方法である。日本国にとって損害の小さいもう一つの本質的解決は、以下に書くように、朝鮮戦争の正式な終結から、日本と北朝鮮の間の平和条約(多分日朝基本条約のような呼称になるだろう)締結交渉の中で解決する方法である。

2)小泉政権では国民から集めた税金を北朝鮮に与えることで何人か取り戻したが、それは上に書いたように、本質的解決にほど遠く、むしろ本質的解決を妨害する愚かな方法であった。それは、ダッカの日航機ハイジャック事件の時、福田赳夫総理が取った超法規的措置と同様である。
勿論、小泉内閣は、北朝鮮との国交樹立を考えたのかもしれない。しかし、朝鮮戦争の正式終結と米国、中国、北朝鮮、韓国の間の平和条約前にそれが可能と考えたのなら、愚かである。

3)日本の近現代史の様々矛盾点について、「国難の正体」などの馬渕睦夫氏の本で教えてもらった。従って、この文章も馬渕さんの本から学んだ延長での思考である。

4)朝鮮戦争を継続する理由は、韓国にも北朝鮮にもない。それは、米国のトランプ政権のとき、文在寅韓国大統領、金正恩北朝鮮首席の間で確認されたことである。朝鮮半島の両国には朝鮮戦争を継続する意味が消滅していることは、後で述べるロイターの記事内容からも明らかである。

 

5)本当に日本が国家として何も持っていないのなら、日本国を解体するのか、日本から逃げるのか、それぞれの地方が独立するのか、自分達の生命と財産を守ることを独自に考えて行動すべきである。拉致問題への解決に向けて何の行動も日本政府が行わないことは、重い政治的犯罪である。青いバッジを背広に着けて納得している政治家連中の姿が非常に疎ましい。

 

 

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