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2022年6月26日日曜日

NATO首脳会議に出席する日本と欠席するニュージーランド

今日からドイツでG7首脳会議が開かれ、食糧危機やエネルギー危機についての話が、ロシア批難の合唱とともに出されるだろう。それに続いて29日と30日には、スペインでNATO首脳会議が開かれる。NATOメンバーではないものの、日本、韓国、オーストラリアの首脳も参加する。


 

これらの国々は、米国と軍事同盟の関係にある主な国々全てである。NATOの太平洋バージョンの結成ではないかと勘ぐる向きも多いだろうが、ホワイトハウスの報道官は否定している。


 

今回の拡大NATO首脳会議の意味と、その会議に日本、韓国、オーストラリアが参加し、ニュージーランドが参加しなかったことの意味を、夫々考えてみる。


 

1)ニュージーランドの首相が参加しない決断をするまでの経緯:

 

618日、ニュージーランドのメディアNewsHubは、NATO事務局長Jens Stoltenberg氏がオーストラリア、日本、韓国、ニュージーランドの指導者を今回のNATO首脳会議に招待したと報じた。(補足1)

 

Stoltenberg氏は、この招待は、アジア太平洋地域の志を同じくする国々とのNATOの「緊密なパートナーシップ」の「強力なデモンストレーション」であると述べた。今回のNATOサミットで、次の10年間の戦略を設定し、同盟が直面しているセキュリティ上の課題と、それらに対処するために何をするかを決定するとのこと。

 

また、防衛力の強化、ウクライナの更なる支援、フィンランドとスウェーデンの加盟申請についても話し合う予定だという。

https://www.newshub.co.nz/home/politics/2022/06/jacinda-ardern-first-new-zealander-to-be-invited-to-speak-at-nato-leaders-summit.html

 

しかし、25日になって同じメディアがNATO事務次長の言葉「ニュージーランドは今回の首脳会議に招待されない。しかし、ニュージーランドとの協力は、ロシアや中国などの独裁国の台頭と対抗するために大事である」を報じた。

https://www.newshub.co.nz/home/politics/2022/06/nato-says-new-zealand-will-not-be-invited-to-join-at-summit-but-develop-its-partnership.html

 

18日の報道は、招待の打診(または予定)を、間違って招待と報じてしまったのだろう。実際、下に引用の20日の記事では、招待される予定と書かれている。当然受け入れる筈だと思ったが、ニュージーランドの女性首相のJacinda Ardernが、世論and/or 中国との関係などを考慮して参加しないことに決めたのかもしれない。

 

そのNewsHub620日の記事の表題は、「何故連合王国会議(20日、ルワンダ)に出席しないでNATO首脳会議に出席するのか?」というものである。ニュージーランドは、連合王国会議に外相を派遣した。同じ会議にオーストラリアが副首相を派遣したのは、首相がNATO首脳会議に出席しなければならないからだろう。

 

アーダーン首相が連合王国会議に欠席しながらNATO首脳会議に参加しなかったのは、最初からNATO首脳会議には欠席の予定だったが、決してNATOを軽く見たのではないという姿勢を示しす為だったのだろう。


 

2)NATOサミットへの日韓首脳の招待は、ウクライナ戦争の真の意味をあらわしている:

 

611日の私のブログ記事「米国ネオコンが心に抱く新しい世界:ウクライナ戦争の今後」において、伊藤貫氏のウクライナ戦争の性質に関する指摘:「今回の戦争は100年間に一度起こる世界の構造転換の戦争であり、かなり長期に及ぶ可能性がある」を紹介した。

 

ここで再び最初に紹介したNewsHubの記事の中での専門家の指摘を引用する。ニュージーランド最古の大学オタゴ大学の国際政治の教授であるRobert Patman氏は、「この招待は重要で、現在の国際情勢の重大性と現時点のヨーロッパが極限状況にあることを現わしている」と語る。
 

また、「ニュージーランドとオーストラリア、韓国と日本は地理的にNATOから遠く離れているが、価値観と国際秩序へのアプローチの点でNATO諸国と多くの共通点があるという認識がNATO諸国にある」、「ウクライナでの戦争の劇的な背景を考えると、私たちがNATOに招待されたのはおそらくその様なNATO諸国の認識があったからだと思う。」(補足2)

 

ウクライナでの戦争の劇的な背景の意味だが、恐らく米国の代理として、ウクライナがロシアと戦っているということを意味しているのだろう。https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12735014774.html

 

これだけ重要な会議だと同じ国の専門家が言っているにもかかわらず、アーダーン首相が欠席するのは、NATO首脳会議の期待が何かを彼女が予想できており、且つ、ニュージーランドがその期待に答えられない、或いは答える積もりがない、と分かっているからだろう。

 

NewsHubの記事の最後の方で、「サミットで、アーダーンはNATOの指導者たちに、この国が決定的に依存している規則に基づく国際秩序の重要性を再確認することを望んでいる」だろうというパットマン教授の言葉を紹介している。

 

ニュージーランドの女性首相は左派の政治家として知られている。今回のウクライナ戦争は、「規則に基づく国際秩序の原則」に何重にも違反しているのだろう。ロシアが規則に基づく国際秩序の原則に違反したことは言うまでもない。それは、彼女が参加しない理由にはならない。

 

今回のロシアによるウクライナ侵略は、NATOの総元締である米国による「規則に基づく国際秩序の原則に」に反したウクライナへの政治干渉の結果であることが、まともな政治家なら分かっている筈である。

 

このブログ筆者の想像だが、NATO首脳会議の共同声明の内容が、ウクライナを当事者的に支援すると概ね決定されていることを知ることになったのだろう。彼女の理想の実現が果たされる可能性がなければ、ニュージーランドの利益にはならないと結論した可能性が大である。


 

3)日本と韓国は第二のウクライナになる

 

NATOは、これらの太平洋地域の国々とも様々な協力関係を持っているが、日本や韓国まで招待して首脳会議を開催するのは初めてである。それだけ、拡大しなければ、今回のウクライナ戦争に対する十分な対処が出来ないということを意味する。
 

この辺りでウクライナ戦争を止めさせるべきだと、米国のキッシンジャー氏がダボス会議で発言したのだが、そのように出来ないと現在のNATO首脳、つまりバイデン政権が考えて居るのではないだろうか。

 

それが全子分国を集めて、スペインで会議を開く理由だろう。つまり、これまでのレベルでのウクライナ支援ではウクライナは敗れ、ロシアが殆ど弱体化しないということだろう。そこで考えるのが、これも筆者の想像だが、ロシアに東の方から嫌がらせをする作戦である。

 

この会議の後、日本や韓国が軍事力を増強するだけでも、西方で戦うロシアには大きな圧力になると考えられる。もし、東アジアで一発でも銃声が響けば、ロシアは二面作戦を強いられるからである。

 

日本は、これまでのウクライナ支援でも、ロシアから敵国指定されている。更に、ロシアの有志議員は、これまでの93日の戦勝記念日の名称を「軍国主義 日本に対する勝利と第2次世界大戦終結の日」とする法案を下院に提出したようだ。https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220624/k10013687671000.html
 

つまり、今後恐らく100年ほどは、日本と冷たい関係になることを確信しているということだろう。それは、中国の支配下にはいる日本の将来の姿を、より一層鮮明にすることを意味している。今回のNATO首脳会議に参加することは、そのような重大な決断であることを岸田首相は承知しているのだろうか?

 

もし、戦争があと半年から一年まで続けば、ロシアは核兵器を使う可能性がある。その場合のターゲットとして、日本の北海道周辺が心配される。既にロシアは北海道の領有権を主張しているのだから、ポーランド国境よりもモスクワから遠く離れた北海道周辺の方が落としやすいだろう。ロシアも、ヨーロッパとの敵対関係を決定的にするよりも、日本との敵対関係を明確にする方が荷が軽い。
 

その時、NATO諸国は挙って日本支援を叫ぶだろう。つまり日本は第二のウクライナである。

 

今回の米国による日本や韓国の招待は、非常に重い意味がある。参加せずに済ませることは非常に困難である。しかし、喜んで参加することはないだろう。つまり、参加するにしても、ぎりぎりの判断で参加したというポーズをとるべきだったと思う。

 

勿論、主権国家なら、今回のNATO首脳会議への参加は、断ることも可能だった。それはニュージーランドの決断を見ればわかる。マスコミなどを使って反対の世論を醸成することも可能である。日本国民の一人として、あまりにも当たり前の顔をして、或いは喜んで参加する首相には腹が立つ。

 

追補: 集団的自衛権は、日本の防衛上非常に大事であると、今日午後の「そこまで言って委員会」で、ある評論家が言っていた。しかし、戦争を好んでする国家との同盟関係を考えれば、それは逆かもしれない。たとえば、第二次大戦で米国との戦争になったのは、三国同盟が主原因である。
(17時編集、追補の追加)

 

補足:

 

1)念のため原文を示す。NATO's Secretary General, Jens Stoltenberg, has invited the leaders of Australia, Japan, South Korea and New Zealand to attend the military alliance's meeting in Spain held 28-30 June.(下線はブログ筆者による)


2)これも念のために原文を示します。"There's a recognition among NATO that although New Zealand and Australia and South Korea and Japan are geographically a long way from NATO, they share a lot in common in terms of values and in their approach to international order.

"So I think that's probably why, given the dramatic backdrop of the war in Ukraine, that we've been invited to NATO."

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