この問題を考える動機は、ウクライナ戦争のニュースに接したときの疑問から生じた。何故、多くの国民の命を無くし、美しい街と生活インフラを破壊してまで、ロシアと戦う必要があったのかがさっぱり分からなかったからである。(追補参照)
ロシアとウクライナの二か国の範囲では、幾ら考えても答えが出そうに無かった。そして得たのは、この戦争は米国の代理としてウクライナがロシア潰しのために戦っているという結論である。
それは米国のシカゴ大のミアシャイマー教授の考えであり、在米評論家の伊藤貫氏の考えであり、日本の馬渕睦夫氏の考えでもある。https://www.eui.eu/news-hub?id=john-mearsheimers-lecture-on-the-causes-and-consequences-of-the-ukraine-war
記事中に引用されている動画:https://www.youtube.com/watch?v=qciVozNtCDM
ミアシャイマー教授は、仮にプーチンが最初にウクライナに侵攻したという事実を考慮しても尚、この戦争の責任は米国にあると明言している。ただ、伊藤貫氏によると、米国においても高名なミアシャイマー教授の意見はマスコミには完全に無視されているようだ。(補足1)
国家を形成する目的について:
国家の主なる目的は、① 現在の国民の命と生活を守ることである。領土の確保は、そのための手段である(領土の確保は目的の二番目)。
今回のウクライナ戦争にその見方を適用すれば、ロシア人が住民の大半を占めるドネツクやルガンスクを独立させるべきだった。 そうすれば、プーチンも戦争を始める理由など存在しないということになる。
つまり、今回のウクライナ戦争は、為政者のエゴイズムが米国の世界戦略に利用された結果である。この件についての基本的な理解は2月13日の記事に書いた通りである。https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12726626308.html
そして、今回の戦争が日本に与える影響について、特に中国問題との関連を中心に書いたのが2月24日の記事である。https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12728559999.html
国家の目的の第二は、② (自分達国民の)社会を守ることである。それは、領土とその上にあるインフラを含めた国家の機関、多くの社会的機関からなる。株式会社もその中に含まれる。(補足2)
主なる目的と二番目の目的の順番を考えてほしい。入れ替わることは絶対にあり得ない。ただ、国民は一人ではないので、最大多数の最大幸福という別次元の原則との折り合いから、職業的軍人による国防軍を組織することになる。
今回のウクライナ戦争でのロシアの意図はロシアにしかわからない。ミンスク合意を完全実施した後にロシアが訳なく進攻してきたときには、戦うのが本来の政治と外交のプロセスだろう。
国家の目的の第三は、➂ 自分たちの文化と伝統を守ることだろう。勿論、文化と伝統は時代の流れとともに日々変化してゆくので、何でも継続することを意味しない。文化の変化は、自然に自分たちの裁量で行うことを意味する。
①に生活を守ると書いたが、それは「より豊かな生活を実現する」という風に、”攻めの表現”に替えることが可能である。同じ趣旨で書き替えると、②は「社会をより発展させる」となり、➂は「新しい伝統となる創造的な活動を進める」などとなるだろう。
この攻めの表現を含めて、上記①~➂は、西欧文化が辿り着いた民主国家の目的であると私は考えている。
大事な点は、現実の政治と外交は、その目的に立ち戻って、つまり原点思考を採用して、その方策を自分たちで考えることである。そのプロセスが、意図を以て外国の干渉によって歪められると、やがて国の崩壊に繋がる。現在(特に岸田政権)の日本の姿は、正にそのような情況にある様に見える。
この原点に戻って、20世紀後半からの政治と経済のグローバル化を見ると異常であり、背後に何らかの勢力による隠れた企みがあることに気付く筈である。例えば、移民を受け入れるべきだという考え、更に、資本の完全自由化など、上記国家の目的という観点からは簡単には実行できないことである。
追補: 最初の数行の文章は、ゼレンスキー大統領によるミンスク合意無視がプーチンの進攻を招きいれたという理解、そして、2月13日の記事におけるウクライナ戦争の理解を前提にしています。本文における国家は、国家主権とその諸機関であり、民主制を前提としています。尚、以上はオリジナルな考えです。
補足:
1) 2月27日のブログ記事に、及川幸久氏のyoutube動画からの引用で、米国の元財務長官顧問のPaul Craig Roberts博士の言葉を紹介している。
https://usawatchdog.com/no-shooting-war-in-ukraine-dr-paul-craig-roberts/
その中でRoberts博士は、「オバマーバイデン政権は、明らかにその地域で戦争を引き起こそうとしている」と書いている。その一つの証拠として、ウクライナのゼレンスキー大統領によるミンスク合意実行を、米国が妨害したことが語られている。
2) 前回記事で尖閣問題を議論した。尖閣など日中平和条約の時に中国領と明記すべきだと書いた。その目的は沖縄と小笠原を日本領と書き込むためである。 尖閣や沖縄の領有権は、日本は返還されたとのんきに構えているが、中国はそのようには考えていない。その理由は、沖縄返還協定は日米間の条約であり、あの第二次大戦の戦勝国全てとの条約ではないからである。
勿論、条約は本質的に野生の原理で動く国際社会においては、紙切れである。しかし、国際社会が、その紙切れにより辛うじて完全野生から、インチキながら公正を演じているのである。
(投稿:7/7午前6時)
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