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2022年10月17日月曜日

習近平の続投は困難かも?:米国による追加制裁及び国家安全保障戦略報告との関連

中国共産党の第20回全国代表大会が16日から北京で開催されている。この会議で、中国共産党の総書記を含む政治局常務委員の7名を始め、党の人事が決定される予定である。中国では共産党の方が政府よりも上位にあるので、この大会が今後の中国を決定する最重要会議である。(補足1)

 

今回の会議では、習近平が異例の総書記三期目に入るか、それとも交代するかが決定される。(補足2)それは中国が嘗ての社会主義の国に戻るか、それとも改革開放路線を継続するかの決定でもある。何故なら、習近平の共同富裕策は、毛沢東路線への回帰(鄧小平路線からの離脱)を意味するからである。

 

この会議の代表等の構成や注目点等については、元中国人記者のmotoyamaさんのユーチューブ動画が詳しく解説している。以下、私が理解した範囲で、その一部を自説を交えて紹介する。

 

https://www.youtube.com/watch?v=qGAHuoLDE5s

 

最も大事なのは、会議の主席団であり、今回は46人が指名されている。25名は習近平を含む7名の常務委員とそれ以外の政治局委員19名であり、残りの21名は長老たちである。(補足3)その中には、先日習近平は退任すべきだと言った宋平、胡錦涛や江沢民のような元総書記、温家宝のような元首相などが含まれる。

 

総書記を始め7名の常務委員を挙手で決定する他、各部門の代表団に人材を推薦するなど、この会議で主席団は大きな働きをする。

 

一般には習近平の続投は確実だといわれている。しかし、motoyamaさんは動画の最後の方で続投は困難だろうとの自説を紹介している。習近平が続投すれば、今後の中国経済は崩壊する可能性が高いことを、主席団の多くが気付いていると思われるからである。

 

このままでは国民も党員も食えないから鄧小平が改革開放路線を導入した。そしてそのシステムが、今日の強大な中国を作ったことを長老たちを含め全ての幹部が理解している。習近平の“共同富裕策”はそれを否定し、中国経済を停滞から衰退に導くことはほぼ確実である。

 

更に、習近平のゼロコロナ策が、外国資本の流出に拍車をかけるなど、国家にとって独裁が如何に危険か、そしてそれが上記経済衰退に拍車をかけることなどを、幹部全員が肌身で感じている筈である。

 

一旦誰かが習近平の続投に反対し、数人の長老がそれに続けば、あとは雪崩を打つように、習近平引退の方に動く可能性があると思う。

 

 

2)米国民主党政権の対中国の強硬姿勢表明とその影響:

 

米国民主党の背後で隠然たる力をもつジョージソロスがダボス会議で習近平は退陣すべきであるとの演説をしたのは良く知られている。民主党ネオコン勢力も習近平政権の共同富裕路線から旧江沢民派の改革開放路線に戻ってほしいのである。https://www.afpbb.com/articles/-/3208017

 

米国は107日、米国の持つ半導体技術への中国のアクセスを制限する措置を決定した。その技術はオランダのASML社の半導体露光装置に用いられている。その装置のASMLの世界シェアは何と80%以上を占めるという。

 

そして、中国は先端ICチップを製造するASML社の装置が輸入できず、ハイエンド半導体分野から閉め出されることになる。その結果、中国の半導体業界に未来は無いことになる。(補足4;追補1)https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-10-10/RJIQT9DWLU6801

 

更に、1012日、バイデン政権は、ロシアは本当の競争相手ではなく、中国こそこの10年間の対決すべき相手であると宣言する「国家安全保障戦略報告」を発表した。https://www.jetro.go.jp/biznews/2022/10/35758db0c6dd9568.html

 

このような相次ぐ措置でバイデン政権は何を狙うのか? 恐らく中国を改革開放路線に戻したいのである。それには、習近平の退陣が無ければならない。今回の二つの策は、第20回中国共産党全国代表会議へ出席する代表、特に上記主席団メンバーたちへのメッセージなのだろう。(補足5)

 

習近平が続投した場合、12日の米国の発表が示すように、今後西側経済から疎外されるようになる。その場合、共産党の殆どの幹部たちは、自分と多くは米国等外国に居る家族や愛人などとのこれまでの暮らしが出来なくなることが解っている。

 

従って、上記二つの政策は、中国共産党の46名の主席団などの幹部に対する、飴と鞭をセットにして、何方を選びますかと示した民主党バイデン政権の脅迫状(或いは罠)だと思う。

 

中国共産党の幹部たちや長老たちに、北京北三環路の“四通橋”に「習近平は国賊である」との横断幕を掲げた勇士の半分の勇気があれば、習近平の続投は否決されるだろう。一般には習近平続投が確実と言われる中、通説に疑問を呈するmotoyama氏の意見には十分な根拠があると思う。

 

勿論、現在恵まれた境遇にありながら、自分が弾圧され殺される可能性を覚悟して、習近平続投に反対することは至難であり、何もなかったかのように習近平の第3期目が決定される公算も相当大きい。それが通常のだれもがする解説である。

 

しかし、今朝の朝日TVの羽島慎一モーニンショーで中国専門家が言っていたように、習近平続投は昨年から決まったいたことで議論の余地がない情況ではないと思う。日本のテレビの解説は、かなり粗雑である。私はmotoyama氏の解説がより詳細で深いレベルからの話だと思う。

(20:35編集)

 

追補:(10/18/早朝追加)

 

1)以下は昨日から考えて居たことである: 反対意見も多く出る中で再選を決定した場合、習近平はハイエンド半導体チップが必要なら台湾を武力併合してしまえばよいと考え、台湾侵攻を実行する可能性がある。米国バイデン政権の上記二つの政策は、比較的経済力が残っている今が、台湾侵攻の機会であると、周近平に思わせるためのものだとも考えられる。そう考えると、バイデンのグローバリスト政権が共和党の政策に相乗りするような今回の対中国政策が読めるような気がする。

 

2)(10/18/6:30追加)昨日付けのmotoyamaさんの動画では、周近平の第三期総書記就任は50%以上だと思うに変更されていました。共産党大会一日目を過ぎた時点での観測結果だと思います。https://www.youtube.com/watch?v=FY7FUalzn28

 

補足:

 

1)共産党のトップが総書記であり、国家のトップが主席である。一般に、共産党のトップは行政組織である国家でのトップより上である。外交では楊潔篪(党)の方が王毅(国家)より上位にある。ただ、中国の政治権力でもっとも大事なのは中央軍事委員会の主席だそうである。例えば、国家主席にも総書記にもならなかった鄧小平が最高権力者としての地位を保つために、中央軍事委員会の主席のポストだけには拘った。

 

2)三期目が憲法で禁止されていたのは国家主席のポストであり、共産党総書記のポストではない。国家主席の三期目禁止条項も2018年に憲法改正でなくなった。総書記が国家主席を通常兼ねるので、総書記三期目が通例に無かったことになる。

 

3)中国の重要な意思決定は中央政治局常務委員7名の多数決で決定される。これが北朝鮮の独裁と大きく異なる点である。尚、常務委員はチャイナセブンと呼ばれることがある。以前9人だったこともあり、その際にはチャイナナインと呼ばれていた。

 

4)このような規制はWTO(世界貿易機関)の規定には違反すると思う。現在の世界は、この国際条約の規定を議論する段階を超えていることを意味する。

 

5)今回の国家安全保障戦略報告での中国脅威論は、先日のポンぺオ前国務長官の「中国共産党の敵は中国人民である」という考えとは根本的に異なると思う。(8日の記事:

https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12768333572.html )何故なら、もし中国共産党政権が最大の敵なら、その崩壊は習近平が続投して独裁を完成した方が早いと思われるからである。一旦豊かさを知った国民は、今後の経済の衰退に耐えられないだろう。その不満を弾圧する先にあるのは、中国政府の北朝鮮化である。それは、中国の旧ソ連型の崩壊まで後戻りが出来ないだろう。しかし、習近平が退陣すれば、従来の強い経済力の中国に戻り、民主党政権は徐々に10年まえの関係に戻る筈である。

 

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