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2015年8月9日日曜日

非核三原則の嘘と核戦略

1)広島に原発が落とされて70年になる6日、記念式典での安倍総理の挨拶の中に、非核3原則が無かったとして問題視された。安倍総理は、長崎での挨拶には明確に言及すると約束した。

非核三原則は、佐藤総理が沖縄返還の際に米軍に対して核兵器の持ち込みを了承するという密約をしながら、国内に向けて表明したものである。6日のブログに書いた様に、中国が核実験に成功した1964年、佐藤総理は日本も核武装を考えるべきとの意見を表明していたのだ。

つまり、核アレルギーの国民に配慮しながら、沖縄返還を米国から勝ち取る為には、嘘をつくしか方法がなかったのである。国民が核アレルギーを持つに至ったのは、マスコミに責任の一端がある。マスコミは国家と国民の間を正しく橋渡しする社会的責任がありながら、それを果たさず核アレルギーを煽った。核アレルギーは克服すべき病的症状であり、沖縄返還などの国益に寄与する政策をも阻害するのである。(注釈1)

核兵器はパキスタンから北朝鮮更に中東などに拡散し、事態は逆方向に進んでいるにも拘らず、核廃絶という空しい看板を毎年塗り直している。自分達の理想論を振りかざして運動を続け、或る種の達成感を持つのは卑怯な行為である。何故なら、現実を無視した理想論は、次善の策を妨害するからである。(注釈2)

2)元NHKワシントン特派員で米国ハドソン研究所の日高義樹氏が最近出版した、「日本人の知らないアジア核戦争の危機」によると、北朝鮮は核兵器の小型化に成功し、2020年には数十発の小型核兵器を持つ見通しであるとのことである。これは、米国国防情報局(DIA)のマイケル・フリン中将という人の米国上院軍事委員会での証言である。

オバマ大統領は、核兵器削減を演出して自身のノーベル平和賞の曇りを防ぐためか、フリン中将を解雇した(60頁)。その代わり、オバマ大統領に近いクラッパー国家情報長官の「北朝鮮は核の小型化に手間取っている」という発言をとりあげた。

佐々江駐米大使は、後者の大統領直属の情報のみを受け取り(国防総省の情報を無視して)、日高氏に「北朝鮮が核兵器をもつことなどありえませんよ。あまりおかしなことを言わないで下さい」(忠実に再掲)と言ったと上記著書に書かれている(57頁)。

北朝鮮は自国の軍事力を宣伝する為か、核の小型化に成功していることをこの五月に表明している。つまり、クラッパー国家情報長官は、オバマ大統領の希望的観測を代弁しただけであると考えて良さそうである。在米日本大使館は独自に情報を集める能力がなく、大領領側の考えをそのまま信じる様では、日本外交の将来が心配である。

3)9日のサンデーモーニングで、司会者の関口氏は「日本でも核兵器を持つべきという人が居るのですよ」と、日本も核兵器を保持すべきと考える人を、天然記念物のような”極少数の奇人の類い”と決めつけた。「そんな人はこの長崎の惨状を知っているのでしょうか」「知らないと思います」という対話が、引き続き番組参加者の間でかわされた。まともなことを言っているつもりだろうが、世界的標準では、自分達が”天然記念物的”であることに気が付いていないようである。

続いて放送では、カーネギー国際平和財団の誰かが将来核兵器を持つ可能性のある国として、中東の国々の他に韓国や日本をあげていた。日本の場合、尖閣諸島などで緊張が高まっているのが、その動機であるとその人は分析している。世界の国際関係の分析者はそう考えているのにも拘らず、関口氏や岸井氏は自分達の核アレルギー発作を警戒してか(注釈3)、そのまま受け取ることを拒否しているだけなのである。

マスコミは、世界の政治状況とその変化をしっかりと捉えて事実を曲解無く報道し、その中で日本がとるべき道を考える為の材料を国民に提供すべきである。それがマスコミの社会的責務であると思うが、日本では核アレルギーであることが正義であるような空気がマスコミの空間を覆っている(注釈4)。

つまり、国民は北朝鮮の核兵器の開発情報などについても、政府もマスコミも頼りに出来ないということである。政府は、内閣から外務省官僚まで(頭のてっぺんから足の先まで)、防衛問題を米国に丸投げしている。

米国が丸投げに答えてくれるなら良いが、米国は自国の利益で動く上に、米国の政治も日本の政治と同じ様に混乱が多とのことであり(引用書の144頁参照)、あてになどしてはいけない。独自の防衛努力をしなければ今後日本国は滅びた天然記念物になる可能性大であると私は思う。

注釈:

1)核アレルギーは原子力発電所の再稼働にも影響している。空中二酸化炭素削減の国際的圧力が今後増加する。太陽光発電のコスト低下を研究することも大切だが、エネルギー源の分散は安全保障上も大切である。

2)核廃絶の可能性があるとしたら、宇宙からの電磁攻撃などで保管中の核兵器を爆発させるテロ技術、或いは、サイバーテロによる核基地の発射装置乗っ取りが容易になるなど、核兵器を持つ危険性が増加した時である。

3)最初に言及した様に、このようなマスコミの対応が国民の核アレルギーを煽っているのである。

4)山本七平氏は、”日本教について”においてマスコミが喧伝する”世界の核を廃絶せよ”という様な言葉を「空体語」と呼んだ。空体語と対をなす「実体語」は、この場合、核兵器を隣国が持つなら日本も持つべきだと考える、岸信介元総理や佐藤栄作元総理の様な現実的考えである。日本教では、空体語と実体語を天秤の両端に抱え、その支点に位置するのが一般の日本人(つまり日本教信者)だと考える。政治家の現実的考えである「実体語」に対応する「空体語」を、国民に提供するのが、マスコミや野党の役割だという信仰が日本にあるのかもしれない。

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