1)「残業100時間で過労死は情けない」とするコメントを武蔵野大学(東京)の教授がインターネットのニュースサイトに投稿したことについて、同大学が10日に謝罪した。7日に電通の女性新入社員の過労自殺のニュースが配信された件との関連で、その教授の投稿に対してネット上で激しく議論されたようである。
武蔵野大などによると、7日夜「過労死等防止対策白書」の政府発表を受けてニュースサイトに、「月当たり残業時間が100時間を越えたくらいで過労死するのは情けない」「自分が請け負った仕事をプロとして完遂するという強い意識があれば、残業時間など関係ない」などと記したという。
ネット上で「こういう人たちが労災被害者を生み出している」「死者にむち打つ発言だ」などと批判が広がったようで、その教授は8日に投稿を削除し、「つらい長時間労働を乗り切らないと会社が危なくなる自分の過去の経験のみで判断した」などと釈明する謝罪コメントを改めて投稿したとある。武蔵野大は10日、公式ホームページに「誠に遺憾であり、残念」などとする謝罪コメントを西本照真学長名で掲載し、その教授の処分を検討しているという。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161011-00000092-asahi-soci
2)上記教授の発言の当否を論じる前に、当該教授が
私人として行った勤務時間外における職務外の行為に対して、なぜ大学が謝罪をするのかさっぱりわからない。そして、その教授を職場である大学が処分を検討する根拠もさっぱりわからない。たとえ三流と言っても、そのような大学がこの日本国に存在することが、同じ日本人として歯がゆい限りだ。教育者として相応しくないという理由だろうが、言論の自由を封じようとする学長以下の幹部教授たちの方が教育者として相応しくない。
ここで上記教授の発言内容に関する議論に戻る。当該教授の発言は自殺した電通社員の過重時間外労働によるうつ病発生を意識したものだろう。この件、私も10月8日のブログに書いた。残業時間が一月に100時間を超えてうつ病を発生したと言われているが、私は過重時間外労働に重なって将来その会社でやっていけないと思ったのがうつ病の原因だろうと思う。その電通社員のような自殺は、なんとかなくさなければならない。そのための対策は、単に直接的な労働時間制限などのルールではダメだと思う。
日本経済の国際的競争力を維持したままでこのような悲劇を無くするには、日本の労働力市場における流動性を高めることが大事であり、より本質的な解決策であると思う。国際化の中で日本経済が生き残るには、我が国の労働力の質と量を高めなければならない。それには、適材適所を市場の中で実現する必要があるのだ。その適材適所の実現にブレーキをかけているのが、従来の労働市場のあり方である。
つまり、当該教授の「自分が請け負った仕事をプロとして完遂するという強い意識があれば、残業時間など関係ない」というのは、労働力として質と量の積の大きい労働者が会社には必要だという考えであり、一つの正論である。ここで注意しなければならないのは、プロ意識が持てるのは適材適所が実現した人のみであることである。
一方、現在の日本の労働市場は閉鎖的であるため、新卒生は4月1日付けで採用されなければ、そして一旦就職しても退職すれば、相応の再就職先を見つけるのが非常に困難になる。その日本の労働市場とそれを支える文化を改革しなければ、長時間残業によるうつ病の発生とか過労死を防ぐ根本的解決ができないのである。政府の今回の対策を読んで、おそらくそのような視点がないと当該教授はかんがえたのだろう。
上記教授の暴言と受け取られた発言は、以上のような議論に発展しなければならない。その芽を摘み取るような大学当局の処分検討は、非常に愚かである。ネットの炎上は珍しくない。それにいちいち阿る行為は、衆愚政治の始まりであり国を破滅に追いやるだろう。
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