今年も日本人がノーベル医学・生理学賞を受賞したことに最初びっくりし、その重要な研究内容を知って再びびっくりした。大隅良典氏が細胞による自食作用に関する研究で受賞することになったのである。
それまで自食作用は漠と知られていたようだが、その存在証明を大隅氏が行ったという。具体的には、細胞内で消化される部分に膜が張られ、そこに消化酵素が注入される仕組みを解明したという。
この自食作用の重要さは、「人間は一日に200gほどのタンパク質を必要とするが、食事から摂取するのはせいぜい50〜70g程度で、全く足りない。その不足分を、細胞内の不要なタンパク質を自食し再利用し補っている。」という説明は確かにわかりやすい。しかし、これは一面だけの説明に過ぎない。
この不要なタンパク質が、アルツハイマーなどの病気の原因になるとしたら、もう一面の重要性がわかる。つまり、細胞の機能維持をはかるために不要物を消化し、その結果生まれたアミノ酸などを再利用するのである。
つまり、オートファジーの重要性は、廃棄と再利用の両面から説明されるべきである。生物学の研究領域は物理学や化学と比較にならないくらい広いことが、このような重要な研究がノーベル賞受賞対象として残っていたことでもわかる。
上記は細胞内の不要部分の自食作用だが、細胞レベルでもプログラムされた死(アポトーシス)が、生体の成長や機能維持に重要である。これを延長して、個人の死は人類のアポトーシスなのかもしれないと想像する。
生体は本当によくできている。体全体の活動度を自律神経とホルモンで制御し、器官では細胞の増殖や上記アポトーシスで機能を保つ。更に、細胞内でも自食(オートファジー)で機能維持と栄養のリサイクルを行っているのだ。
蛇足だが、人間社会の機能維持もこのようなマクロとミクロのメカニズムで緻密な制御機能を持たなければ難しいだろう。
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