1)先ず不思議に思ったのは、「逮捕歴の削除を認めず」となっていて、犯罪歴とはなっていない点である。最高裁判所の判決文でも逮捕歴という言葉が使われていて、犯罪歴という言葉はない。
最高裁決定の要旨(朝刊9面)の結論の中にも、「ウエブサイトに逮捕された事実の記事などが掲載されているとして本件検索結果の削除を求めている。」となっている。削除要求した人は、児童買春の容疑で逮捕され、2011年11月に逮捕され、12月に罰金刑に処せられている。従って、犯罪の事実はあったので、逮捕の記事は正しいので問題がないと思う人が大半だろう。
しかし、裁判所が命じたのは罰金刑であり、その逮捕を報じた記事を延々とネットに掲載されることは、事実上罰金刑よりも重い刑罰であるが、それでも良いのか?それは憲法第三十九条の規定:「何人も、実行の時に適法であつた行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問はれない。又、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない」に違反するのではないか。
最高裁決定の要旨の結論部分の文章を一部再録すると:「児童買春した容疑で逮捕された事実は、他人にみだりに知られたくないプライバシーに属するが、児童買春が児童に対する性的搾取及び性的虐待と位置づけられており、(中略)今尚公共の利害に関する事項であると言える。」とある。
そして、「抗告人が妻子と共に生活し、罰金刑に処せられた後は一定期間犯罪を犯すことなく、民間企業で働いていることがうかがわれるなどの事情を考慮しても、逮捕された事実を公表されない法的利益が優越することが明らかであるとは言えない。」とある。この家庭内での抗告人とその家族の苦しみを想像すれば、それが罰金よりも重い刑であるとの判断が正しいと理解できるだろう。
2)ここでこの判断のもう一つの問題を提起したい。それは刑法第6章の刑の時効及び刑の消滅の中の、第34条の二の「刑の消滅の条項」に反するのではないかという疑問である。そこには、「罰金以下の刑の執行を終わり、罰金以上の刑に処せられないで5年を経過した時には、刑の言い渡しは効力を失う(要約)」と書かれている。
つまり、履歴書の賞罰の欄を作るように提出先に言われても、この期間(5年)経過後には、その刑罰を記載する必要がないのである。つまり、今回の最高裁の判断は刑法34条の二に反するのではないだろうか?つまり、最高裁の判断が出た時点(2016年12月31日)で、その刑は消滅しているのである。
この件、読売新聞では一面トップ記事として取り上げ、9面に詳報として全面を割いて掲載し、更に3面と33面に半分以上の紙面を割いて関連記事を掲載している。三面には社説でもこの件を論じている。しかし、刑の消滅との関連を報じた部分はない。兎に角、最近の新聞は政治面でもそうだが、ほとんど読むに値しない。
法律の素人なので、謝りがあればコメントをお願いします。
0 件のコメント:
コメントを投稿