NASAが、太陽系から比較的近いところに水が存在するかもしれない惑星を持つ恒星について発表した。その恒星は名前をトラピスト1というのだそうである。この発表について、“「地球に似た7つの惑星を発見」――NASAの発表を正しく理解するために大切なこと”と題して、ヤフーニュースが解説している。
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20170228-00130944-hbolz-soci
その記事の中で、この種の惑星の存在についての発表が以前からあったと断わりながら、それらと比較して今回の発表の重要性について説明している。そして、その記事の筆者は「地球外生命の有無の答えが出る日は近付いている」と書いている。(補足1)
私は、地球に似た温度や気圧の環境と水が存在する惑星が、多数宇宙に存在する可能性があるだけで、地球外生命が存在するかもと騒ぐ神経がわからない。私が考えるこの発表の大事な点は、NASAがトランプ政権下でどれだけの予算を獲得できるかという点に影響を与えるかどうかだけである。
現在の科学の知識では、生命はどの様な環境で、そして、どの様なメカニズムで発生するのかさっぱり解っていない。第一に、高度で複雑且つ精密な組織である生命の発生は、エントロピー増大の原理が支配するこの宇宙で不可能だと思う。つまり、この地球上と同じだが生物の存在しない環境が宇宙にあったとして、そこで数十億年待っても、必要な数の分子が集合して一つの原始的な生命体が生じることは、確率論としてはあり得ないだろうと思う。
従って、地球外生命の存在の問題は、信仰の問題であり、NASAの担当する科学の問題ではないだろう。生命とは、精巧な何百という化学物質の極めて高能率な合成の場であり、その量を精密に制御するシステムを持ち、外敵に対する情報収集システムに戦闘システムとか、数え切れないほどのシステムが調和的に共存する巨大複合システムである。それを記述すれば、生命以外の全宇宙を記述するよりも遥かに大きい書物になるだろう。
我々人間は、この生命体の主のように思っているが、単に一刹那の間借り人にすぎない。そして、生命の発生については何にも知らない。そんなレベルの存在が、宇宙のなかに水が存在する星が多数存在し、そして、その星の温度や圧力が地球上の値に近いかもしれないという知識を得ただけで、地球外生命が存在する可能性が高いとか低いとか、其の答えがもうすぐ出るとか言うなんて、愚かにも程がある。
補足:
1)以下にまとめる。「太陽系から39光年という、比較的近いところでの発見であること、また惑星を7つ、さらにハビタブル・ゾーン(地球上のような生物が棲むに適した領域)の中に限定しても3つも惑星が発見されたということ、更に、トラピストは赤色矮星という星で、宇宙にもっとも多く存在する星で、それらに生物が住めるような環境の惑星が共存する可能性が高いとなると、それだけこの宇宙のどこかに生命がいる可能性が増えることにもなる。
今の時点では、地球外生命がいるとは言えないが、しかし、いないとも言えず、私たちが探し続けさえすれば、いつかは見つけることができる可能性は大いにある。今はまだ、その日がいつなのか、近いのか遠いのかさえわからないし、もちろん空振りに終わる可能性もある。けれども、今回のような研究や、最新技術を使った新たな望遠鏡によるさらなる探索によって、少しずつ答えに近付いていることは間違いない。」
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