トランプ大統領は「取引こそ芸術だ」と自著で述べているという。その芸術的取引を現在行っているのだろうが、我々には芸術には程遠く一見八方破れの戦術に見える。水攻め拷問は国防長官に諌められて止めたが、今や古くからの同盟国だった日本も、中国と同様に為替操作などの不公正貿易を行う国という一方的な烙印を押されて、今や敵に回されている感じがする。
経済評論家の上念司氏が、プロレスの試合前のマイク合戦のようなものだと言っていた。しかし、試合はもう始まっている。最近、防衛省現役の必読書と言われている、「米中もしたたかわば」(元のタイトルはクラウチングタイガー)という本に面白い記述があった。それは、Mad man’s theory(気狂い男の理論)というもので、ニクソン大統領が北ベトナムとの交渉の時に用いたそうである。つまり、気狂いじみた奴で、この辺りで手を打たないと何をするかわからないと相手に思わせる交渉術である。その戦術を今トランプ大統領が用いていると考えると、わかりやすいと思う。
当然、最初しかこの戦術が使えない。理路整然と話していた人が急にMad Man’s理論を使うわけにはいかないからである。このタイプを相手に上手く交渉をするには、この時期を外して交渉することである。今朝のテレビ番組「とくダネ」で、木村太郎氏がその対策を喋っていた。「逃げるが勝ち」だというのだ。こちらから、早々にアポイントメントをとって、会いに行くのは愚かなことだというのである。
我が安倍総理は、このことをご存知なかったようだ。実務的なことは国防長官が来日されるので、事足りる。このような情況では、向こうから声がかかるまで、じっと待っていた方が良い。声をかける側には、その時点で交渉にハンディがつくからである。
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