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人類史の本流は中華秩序なのか、それとも西欧型秩序なのか

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2017年11月14日火曜日

米中の覇権の中で日本はどう生きるか:問題点の整理

1)あるブログサイトに青木直人著「田中角栄と毛沢東」の紹介記事を見つけた。印象的なのは、日中国交回復の際の毛沢東と田中角栄との会談の様子である。すこし長くなるが、それを紹介したい。

毛沢東から招かれた時、田中角栄は護衛官抜きで、大平正芳、二階堂進とともに会った。護衛官は、一緒に行くことを主張したが、田中は「ここまで来れば煮て食われようと、焼いて食われようと、いいじゃないか」と云って、ニッコリと笑った。

毛沢東の家でのやりとりは以下のようである。相手の品定めかも知れないが、雑談的な話の後毛沢東は「田中先生、日本には4つの敵があります」と切り出した。「四つの敵」という言葉は、中国を訪問する前に行われた外務省のブリーフィングで、何度も聞いていた言葉だったから、田中は内心くどすぎると思った。「アメリカ帝国主義」、「ソ連修正主義」、「日本軍国主義」、「日本共産党宮本修正主義」の「四つの敵」は、中国革命外交のキーワードだった。(補足1)しかも、日本の軍国主義については、中国訪問の当日からさんざん説明し、中国側の理解も得たはずのテーマである。

だが、毛の口から出た「四つの敵」は田中の想像を裏切るものだったのである。指を折りながらその4つをあげた。「最初の敵はソ連です。」それから、アメリカ、ヨーロッパ、そして最後に、中国の名をあげた。(補足2)毛沢東は、田中に本音のレベルの話ができる能力をみて、それをぶつけたのである。

そして、世界中を敵に回して負けたヒットラーと東條英機を馬鹿な男と評し、「あなた方は、もう一度ヒットラーや東條の選んだ道を歩むのですか。よく考えなければいけません。世界から孤立して、自暴自棄になって自滅するのですか。アメリカ、ソ連、欧州、そして中国、この四つを同時に敵にまわすのですか」と言った。

その先の会話をブログのオーナーは推理している。「今後の世界は、アメリカ、ソ連、欧州、中国が基軸になる。この4大国は歴史的に見ても相容れず、今後とも協調しつつ対立していくだろう。そこで日本はこの4大国とどう関わり合うか、それが問題である。4大国全てと仲良くできそうにない。どちらかの陣営と連合する以外に生き延びる事ができない」と。http://www.marino.ne.jp/~rendaico/kakuei/phirosophy_higekisei.htm

2)毛沢東の指摘は、ソ連がロシアに変わったとしても、本質的に正しかった。日本を取り巻く情況は、現在もその時の情況と全く変わっていない。キッシンジャーが「ジャップめ」といって、日中国交樹立を悔しがったことがよく知られているが、それも毛沢東の予言した範囲内であった。しかし、その本当の意味を探らず、単にキッシンジャーを「反日ユダヤ人」ときめつけて納得して済ませている人が多い。(補足3)

日本は、田中角栄がアメリカに潰されてから、アメリカを選択したかのようにアメリカ追従を続けているが、アメリカはそのようには受け取っていない。米国に本音を聞けば、「日本が我々アメリカと組んでいると思ったとしたら、思い違いだ。日本は、単にアメリカの属国として甘えているだけだ」と言うだろう。日本経済の長期低迷を失われた20年というが、政治的には田中以降でも失われた40年である。

上記、毛沢東が田中に言った問が、北朝鮮問題を契機に45年後のこんにち、日本の喉元に突きつけられたナイフの様に不気味に姿を現した。2006年の北朝鮮の最初の核実験のときに、米国ライス国務長官が飛んできて「日本は米国が守る」と発言した時にも、目の良い人にはそのナイフは明確に見えた筈である。そして、そのライス長官の言葉を「日本は、米国の属国(敵国)にすぎません。決して、核武装はさせません」と翻訳できた筈である。

このままでは、米国が何と言おうと、米国の覇権ラインが近いうちに第二列島線まで後退するのは必至である。そこで日本のとる戦略は、米国に協力して米国圏のフロンティアになるか、北方から降りてくるロシア圏のフロンティアになるか、中国圏に入るか、それとも十分な独自防衛力を持ちどの勢力圏にも入らないか、その四つの道の中の一つだろう。しかし、どれをとってもかなり困難である。なかでも自主独立は、毛沢東の指摘通り殆ど不可能である。

国際正義と信義に基いて、非武装中立を貫くという選択は、よほどの幸運に恵まれなければ成立しないだろう。それを訴える政党やその支持者が、今でも日本に1/3位は存在する。地球上での争いは常に存在しているが、日本がその争いから避けられる位置に今後とも座り続けるという可能性はないだろう。

田中角栄なら、毛沢東の言葉を心に刻み、差し当たり米国への依存を減らすべく独自防衛の道を模索しただろう。何れかの領域の中で生き残ると決断しても、独立国としての一定の体裁を整えなければ、そこへの移行は不可能だからである。属国のまま存在し続けることもまた不可能である。属国は家畜と同様であり、売られるか、屠殺されるかしかない。日本はアメリカの愛玩動物であると思うほどの馬鹿は、流石に居ないだろう。

3)米中露の覇権が錯綜する西太平洋地域において、自主独立が許されるのならその単純さは魅力的である。しかし、上に述べた様に、そして、毛沢東が45年前に予言したように、まわりの大国に妨害され、自主独立の必須条件である独自核武装など日本には許されないだろう。(補足4) 何れにしても、米中の反対を巧みに躱しながら、憲法9条の改正から、再び国家としての威厳を取り戻す位は実現しなければ、日本に将来はないと思う。

その次に、将来の米中露の西太平洋地域における力のバランスがどのようになるかについて、日本は考えなければならない。もし、真の意味での日米同盟が構築され、且つ、日本の協力があれば、①米国が今後とも西太平洋地域で覇権を維持出来ると考えるのか;或いは、②米国は何れ第二列島線まで20年位の間に後退するのかの予測を立てる必要がある。それには、米国の能力と意思の両方を読まなければならない。

①の場合、現在の延長線上で考えれば、米国に協力して米国覇権のフロンティアになることが、活性化エネルギー(つまり超えるべき峠の高さ)が最少の道である。しかし、その場合、日本が米国と同盟関係を本質的なレベルまで深化させることが可能かどうかについて、考察する必要がある。つまり、米国が日本を仮想敵国から永久除外し、真の同盟国と考えることができるかどうかである。それは、米国が日本での核兵器の共同管理に同意できるかどうか、或いは、日本の核武装に同意出来るかという問題とほとんど同意である。

真の日米同盟には、歴史問題の克服が必要である。日本は、中国や朝鮮と歴史問題を抱えているので、相互理解が困難だと言う言葉は頻繁に聞くだろうが、日米の間の歴史問題についてはテレビや新聞ではあまり語られない。しかし、日米同盟の深化を達成するための日米間での歴史問題の克服は、中国とのそれよりも遥かに困難だと思う。

歴史問題を簡単に言えば、それは終戦前の半年間に行われた都市部空襲、中でも原爆投下に関して、日米両国間に存在する不幸な歴史である。更に、東京裁判という形での米国の日本に対する復讐劇とその判断の正当性を押し付けた戦後占領政治は、両国間関係に消し去る事ができないほどの傷を残した。それは現在、日本では乗り越えられている様に見えないことはない。しかし、米国在住の政治思想家の伊藤貫氏によると、池田内閣以降、日本政府は忘れた振りをし、経済を優先する道を選択しただけだと説明している。https://www.youtube.com/watch?v=Xx_tsuvu9i4(補足4)

②のケースでは、西太平洋の覇権を埋めるのは中国である。この場合、中国の覇権内で日本が生きる道を探し出さなければならない。そして、米国覇権内の属国的身分から、どのような身分で中国の覇権内に移動するかが問題である。その際、米国は日本から吸い取れる利益は全て吸い取ろうと努力するだろう。もし、米国が②のケースを想定しているのなら、その対日政策は既に始まっているかもしれない。

以上、問題点の整理をしたが、夫々についての考えについては、今後出来れば書いていきたい。

補足:
1)http://www.econfn.com/iwadare/page157.htmlにその4つの敵が解説されている。田中角栄は、毛沢東に本音をぶつける気にさせたのだった。
2)中国にとっては、第一の敵はアメリカ、そして、ソ連、ヨーロッパ、インドとなっただろう。
3)http://www.mag2.com/p/news/250663/2
4)伊藤貫氏の「核武装なき憲法改正は国を滅ぼす」という本に記載されているとおり、自主独立には核武装は必須である。
5)伊藤貫氏と西部邁氏の討論、「国家に必要な3つの要素」において、経済力、軍事力、価値観をあげている。価値観とは、国民が持つ形而上の価値、或いは哲学と言えるだろう。人間に必要な形而上の価値としての、独立心(independence)、尊厳或いは自尊心(degnity)、完全性(integrity)を現代の日本人忘れていると分析している。

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