以下は国際政治や経済に全くの素人が、自分の考えをまとめる意味で書いた記事です。そのつもりで読んでほしい。批判的な方は是非コメントをお願いします。
1)中国と米国は新しいタイプの冷戦に入った。米国の大きな貿易赤字と貧富の差の拡大により、経済的に厳しい状況に追い込まれた白人ブルーカラーの声が、政界に届いてトランプ大統領の誕生となったが、その時、(動機は兎も角)その方向は決まったと思う。大統領になったトランプは、その庶民の声を、かなり直線的な形で米国の主張として、世界各国に投げかけている。最初は移民問題をやり玉に揚げて、メキシコなど隣国に、そして最近は貿易赤字問題として、中国、ヨーロッパ、日本など同盟国もやり玉に揚げられている。
そんな中、習近平中国の大胆な将来計画とその内外へのアナウンスメントが、まるで地震の本震のように、今になって米国議会を揺るがせた。トランプの方針と合体するように、米国の対中国政策の全体が姿を現した。その真の目的は、一帯一路と「2025 made in china」にストップをかけることのように見える。ただ、トランプ大統領の視野の中心にあるのは、中国の覇権国家への道の封鎖なのか、貿易赤字解消と米国第一主義という孤立主義なのか、未だ明確ではない。
米国が、日本やヨーロッパという同盟国も対象にして、例えば自動車の輸入関税を25%にするなどの政策を実行すれば、米国の政策がピンぼけとなり、中国との新冷戦の比重が減少し、早い時期に頓挫する可能性が出てくる。
米国は、中国に対する厳しい姿勢に、ルールと公正の問題であるという逃げ道を用意するため、同盟国にも一定の範囲でこのような政策を取る可能性があるが、それは世界経済の混乱を大規模にする可能性が高い。その重大な影響を避けるために、上記中国たたきも何もかも、それを理由に中途半端な形で中止になる可能性も残されている。それは、北朝鮮の核問題に対する米国の姿勢と同じパターンである。(補足1)
6月下旬、トランプ大統領は一時中国の通信機器大手で、世界シェアトップのZTEと和解合意をまとめた。さっさと目先の利益を得ようとしたことは、トランプの対中国戦略として単に貿易赤字解消や米国ブルカラーへの仕事の確保が中心であるのかもしれないと思う理由である。 上院はその和解案見直しを要請した結果、現在、米国は概ね中国からの輸入品全てに関税をかけることになった。トランプ大統領は変わり身の早い人であり、議会の方の考えに沿うようになったのだろう。https://www.youtube.com/watch?v=jVW1DPGn6wM
米国議会は、先月末に国防権限法案を上下院が調整の末一本化し、中国の通信大手のZTEとファーウエイの利用を米国政府機関が用いること禁止し、海外資本の対米投資の監視を厳格化するなどを決定した。「2025 made in china」にブレーキをかけるためである。新冷戦が米国議会の方針として本格化したことになる。
2)最近、一帯一路とAIIB、2025 Made In Chinaなど、世界の覇権を狙った戦略をあからさまにする習近平主席に対する風当たりが中国国内でも強くなっているようだ。(c.f.墨汁革命)おそらくその進路に異論はないのだが、本来こっそりとやるべきところを大号令とともにやったものだから、米国に早々と対決姿勢を取らせてしまったのを批判されているのである。
習近平は、北戴河会議を無事乗り切ったものの、今後どうなるか注目される。ただ、米国は習近平追い落としが目的ではなく、中国の覇権狙いを潰すのが目的なので、それを知っている中国共産党組織は、習近平を今後サポートする可能性もある。つまり、独裁に歯止めをかけたところで内輪もめは止まる可能性が高いかもしれない。(補足2)米国も、世界経済の大混乱を避けなければならないので、それほど大きな争いにならない可能性がある。
下記動画は、経済評論家の渡辺哲也氏のこの件に対するコメントである。ここで渡辺氏は、米国自由法と国際緊急経済宣言法という二つの法律で、中国が保有する米国債を無効化する事ができると言っている。https://www.youtube.com/watch?v=A8Uj2z4jS3A しかし、私はそのようなことには絶対ならないと思う。それが、本当に発動された場合は、ただちに米国は金融破綻し、ドルは紙くずとなるだろう。(補足3)その結果、世界の政界経済もなにもかも大混乱となる。核兵器と同様、これらも国家存亡の危機に際する非常ボタンであり、あまり早く押すボタンではないからである。
何れ米国は強硬策を軟化させるのではないかと思う。それは、世界経済が傾きかけた時に明らかになると思う。それに、中国経済が何れ世界一の規模になるのは何をやっても変わらない。今回の米国の反応は、激しいアレルギーであり、戦略的にも未だ練られていない。米国にその戦略を練る能力がない可能性もある。その疑いは、トランプが大統領に成ったことで濃くなっている。
日本の評論家には、「グローバリズムからナショナリズムへの回帰」といって、トランプを持ち上げる人は多い。代表的なのは、馬渕睦夫氏である。しかし、その回帰は時計の針を逆に回すことであり、うまくいく訳がない。中国を、外から環境を作ることで民主化させるとしたら、もっと別の高度な戦略が必要だろう。勿論、そのために圧力をかけているのだろうが、破裂したときに米国経済も世界経済も吹っ飛ぶとしたら、その圧力は安全弁が作動して中途半端に終わるだろう。
習近平体制崩壊から、共産党一党支配体制の崩壊が、ベルリンの壁崩壊からソ連崩壊に至ったときのように、ある小さな出来事を切掛にした自然現象のように起これば非常にラッキーだが、そうはいかないだろう。ヨーロッパと中国では歴史も文化も何もかも異なる。中国には帝国が相応しいのであり、その国が欧米の経済環境で肥大したのである。中国が変わるのは、中国内部からである。
3) この件で、習近平が北戴河会議などで早々に失脚することなど無いという予測をしたのは、自民党参議院議員の山本一太氏である。https://www.youtube.com/watch?v=j0wvBLczKbM
山本議員は、世界を4つのグループに分けて考えている。一つは米国、自由主義の騎手でありながら米国第一主義の方向に揺れている。二つ目は、権威主義国家というくくりで、中国、ロシア、北朝鮮、イランなどを揚げている。この両者で新冷戦が始まっていると解説する。山本議員の日本の取るべき方針として述べたことについて少し考えてみる。
山本議員の分析で、三番目のグループが日本、ヨーロッパ諸国、豪州などの自由主義国、4番目がイスラムやアフリカなど中立国である。最後のグループはどちらが有利になるか風向きを見ていると云う。この新冷戦は、イデオロギー対決ではないので、互いの政治経済システムの有効性を、知恵を使って競うというタイプのものであり、その分、静かに深く進行するという。ここまでの解釈は全く正しいと思う。
そのような分類のあと、日本は、平和主義を表に出し、国際貢献を行うことで、自由主義の立場を貫き、地道に存在感を確保するというような主張している。全体的に聞き取りにくい録音なのだが、更にこの部分の内容は分かりにくい。新冷戦において、資金を使って国際協力をし、平和主義を貫くのは、如何にも効率が悪い。私は全くこの主張が理解できない。
私は、その4つのグループ分けを、遺伝子による分類のように定めてしまっているのは間違いだと思う。日本国は、トランプの大統領府だけでなく、米国議会などと広く連携を深めることで、米国を自由主義の考えで行動できる国のリーダーとしての道にもどすべきである。つまり、4つのグループを何とか3つにすべく努力すべきである。更に、山本議員の云う権威主義国家群を切り崩し、先ずロシアを自由主義圏に組み込む様に誘導すべきである。
習近平の方針には無理がある。つまり、中世的独裁政治の下で、経済だけ自由主義を採用することは無理である。現在の新冷戦は、その無理が中国において顕在化したのが、主原因の一つである。習近平独裁体制と一帯一路などの方針、更にその高らかな宣言は、その中国経済の陰りを乗り越える方針として出されたものである。しかし、それは本来中国が取るべき方向からは益々遠ざかることになる。(補足4)中国経済が自由主義経済体制の中でこのように大きくなってから、このような事になったのは、世界歴史の悲劇だろう。
その世界地図を色濃く塗り分けして、真正面から対決する姿勢では、何れ失敗する可能性が高い。せめて少しづつ自由主義経済圏の方に色を塗り替えていく”姑息”な方法を取るべきである。
計画経済はうまく動かないことは毛沢東の時代に十分学んでいる筈である。一帯一路の方針も良く出来ているようで、やはり一人の人間の知恵に過ぎない。現在、中国がその方針で投資した多くの国で不満が湧き上がっている。中国のための一帯一路に過ぎないという足元が露呈したのである。
繰り返しになるが、ロシアを権威主義国家という形で、中国と連携を強める様に仕向けるのは愚策である。ロシアは一応、大統領制を取っている国である。しかも、地政学的に中国とは潜在的に争いの種が存在する。トランプ大統領の考えのように、自由主義陣営の中に軟着陸できるように誘導すべきだろう。それが、中国を時間はかかるかもしれないが、民主化の方向に動く動機となると思う。その際、特にロシアに関して日本は重要な役割を果たせる可能性が高い。
山本議員のいう中立国への国際貢献を大きくすることは、ブラックホールに金を吸い込ませることになるだろうと想像する。
補足:
1)北朝鮮の核問題は有耶無耶になっていないと主張する人もいる。しかし、中国との対立は北朝鮮と中国の間を緊密にし、その問題の単独解決などあり得ない状況になっている。
2)日本のネットでは、習近平失脚間近という解説が多い。北戴河会議で、習近平が主席から降ろされる可能性を示唆した人もいる。「ハエも虎も叩く」として、多くの政敵を葬り去ったので、その恨みは共産党の中に深く存在するのは確かだろう。しかし、憲法改正をして、終身国家主席の皇帝のような地位を手に入れた人である。また、北戴河会議の直前に悠々とアフリカ訪問をしている。そんなに簡単には失脚しないだろう。
3)米国債の暴落が起こり、それは連銀の破綻につながると思う。
4)中国国内の経済がおかしくなったから、外国に経済進出してそれを解消しようというのは、そもそも厚かましいのである。
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