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2018年8月25日土曜日

手の込んだ安倍総理の改憲案

中日新聞8月20日第12版の2面に、安倍総理の憲法9条の改正案についての議論が掲載されている。安倍総理の案は、現憲法9条の1,2項をそのまま残し、9条の2を追加する加憲案である。

9条の2の第一項:
前項の規定は我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置を取ることを妨げず、そのための実力組織として、法律の定めるところにより、内閣の首長たる内閣総理大臣を最高の指揮監督者とする自衛隊を保持する。

9条の2の第二項:
自衛隊の行動は、法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する。

この加憲案は、2012年作られた自民党草案とは大きく異なる。

自民党草案では、現在の9条第二項を削除して、「9条第二項:前項の規定は、自衛権の発動を妨げるものではない」と変更する。更に、9条の2に国防軍を規定し、「9条の3:国は、主権と独立を守るため、国民と協力して、領土、領海及び領空を保全し、その資源を確保しなければならない」を加える。 http://satlaws.web.fc2.com/0140.html

国防軍の設置について、完全なのは自民党草案であるが、安倍総理とその周辺は、差し当たり公明党等の中間勢力の賛同を得る為に、上記独自案を提唱したのだろう。正確には、中間勢力を支持する有権者の賛同を得るためにと言い換えるべきである。

ここで、安倍内閣の案の9条の2は、論理的に現在の9条第二項と衝突する。それは論理矛盾であるという指摘はある。しかし法律論としては、そうではないようだ。つまり、現在の9条第二項の死文化である。中日新聞の記事では、ひとこと:「二項は死文化するとの指摘も」との記述があるだけである。

それを指摘した記事が機関紙連合通信社の23/5/2017にある。そこに東京慈恵会医科大学の小澤隆一教授(憲法学・「九条の会」事務局)の考えとして、『後法は前法に優る』として、現在の9条第2項の「戦力不保持」の規定は、9条の2ができた時点で、無効化するという考えを掲載している。

そこで引用しているのが、米国の憲法改正が修正条項で行われるということである。禁酒法の根拠は憲法の修正第18条だが、その廃止には「修正第18条は廃止する」という修正第21条を付け加えることで行われたという。明らかに論理矛盾する場合、それは上書きと同じであるということである。ただ、安倍改憲案では、9条第二項を廃止するとは書いてない。

自衛隊は戦力か?という論争がこれまで延々と続けられてきた。現在の自衛隊が憲法9条第二項に違反しないのなら、自衛隊は戦力ではない。一方安倍改憲案では、9条の2において自衛隊を自衛のための実力組織と規定している。つまり、9条の2の規定は、これまでの自衛隊をそのまま「自衛隊という名の国防軍」に改組するという内容を含んでいる。

手の込んだことをするものだとつくづく思う。安倍総理の近くに、そのような策略を用いる人がいるようだ。(編集あり:8月26日早朝)

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