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2018年9月24日月曜日

文明と科学の二人三脚は終わった。岩手へのリニア加速器誘致は金の無駄使いだ

科学の発展と伴に、人類は高度な文明を築いた。その歴史を簡単に振り返り、その二人三脚はもう終わった事を示す。そして、次世代の大型加速器「国際リニアコライダーILC」の日本での建設は(補足1)、貧乏国になりつつある国の金(かね)の無駄遣いであると思う。ILCは、日本が岩手県に誘致することを検討している。(追補:「科学=物理と化学の理論」と科学を狭く定義して議論しています。9/25 早朝)

1)文明の本格的な発展は、農業の始まりと伴にスタートした。(ジレッド・ダイヤモンド著の「銃、病原菌、鉄」参照)農業は、鉄を入手することで本格的に発展した。鉄鉱石は一般に鉄をプラス二価又は三価のイオンで含んでおり、そこから鉄を取り出すには炭などの還元剤とかなりの高温で熱する必要がある。(補足2)その技術開発は、科学の一分野である化学の誕生とも言える。

機械文明の発展は、蒸気機関の開発が契機になったと思う。それは熱を機械的運動に換える装置であり、物理学の熱力学も同時に発展した。装置には鉄が主に用いられた。ここまでは、科学は技術の後を追っていたのかもしれない。在る特定の技術は、それまで発展した文明の上に経験的に得られた可能性が大きいからである。ただ、発芽した技術が大きく発展するためには、科学的考察を必要としたから、二人三脚と考えるのは正しいと思う。(補足3)

現代の高度な電子技術文明は、それまでの真空技術などの技術の総体と量子力学とそれを応用した物性物理の発達の結果である。量子論は、物質の性質を電子のエネルギー状態と微視的な運動で記述することに成功した。その物性物理学進展の結果、半導体を高度な接合技術で組み合わせて、論理回路をつくりあげるなど(補足4)、人工頭脳的な装置を作り上げたることまで可能になった。この段階では、科学が技術を引っ張る役割を果たしたと思う。

未来の技術として期待されたのが、原子力技術である。これはアインシュタインの相対性理論と核化学(補足5)を組み合わせた技術である。この段階では、完全に科学的成果が新しい技術を生むことに繋がった。それは原子力発電(特に増殖炉)という、人類からエネルギー問題の払拭を可能にする技術を産んだ様に見えたが、核爆弾による悲劇を産み、人類絶滅の危険性も同時に産み出した。

ここまでの科学と技術の二人三脚を振り返ると、人間が両手で実験し、経験可能な現象を対象にした科学は、人類に繁栄をもたらす文明の基礎となり得た。それは、例え悪用され個人の範囲で悲劇を生むことはあっても、人類の絶滅の恐れなど招かない。

しかし、現在の素粒子物理の領域は、少数の特別の才能を持った科学者のみが踏み込む通常経験不可能な領域であり、その研究の結果がどのような危険性を招くか分からない(補足6)し、そもそも個人の生活を個人のレベルで豊かにするような文明に貢献することなどない。

2)例えば、スーパーカミオカンデの建設と維持には、これまで1000億円を超える金が使われたが、この中で発見されたニュートリノの質量についての話は、人類の文明に寄与することはないだろう。(補足7)先端的な分野の研究者を納得させ、ノーベル賞がプレゼントされたが、それは日本を豊かにすることも人類を豊かにすることもないだろう。

それは、人間の経験を遥かに超えるところでの現象に関する研究であり、従って、人間の生活に寄与する筈がない。あり得るとすれば、日本の国際的印象を多少良くする位であり、その寄与は質は違うが、(国民という大きな視点では)大谷翔平さんや大坂なおみさんのと同列に語られるものだと思う。

今回のリニア加速器で、「宇宙誕生の謎を明らかにする」という(補足1に引用した三橋貴明氏の動画で三橋氏により語られている言葉)のは、単に無知な大衆に向けたキャッチフレーズであり、人類に宇宙誕生の謎など分かる筈がない。

科学者たちは、一般大衆に一つのごまかしを用いて、説得を試みている。それは、「科学は真実の集積である」という嘘である。正しくは、「科学は仮説の集積である」。仮説とは、そう考えればこれまでの現象が説明できるという「仮定」である。宇宙の誕生の場面を、やっぱりそうだったと将来人類が経験出来ない以上、「宇宙誕生の謎を明らかにする」ことは論理的に不可能なのだ。

重要なポイントなので繰り返す。仮説であっても、次の体験の予測と体験後の説明に使える仮説と、そうでない仮説がある。宇宙の誕生に関する仮説から、人類のどの体験を予測し、それを説明するのか。後者の人類の体験とは無関係な分野での仮説を得るのに、国家のレベルで支援するのは間違いである。

文明と科学の二人三脚は、相対性理論という科学の分野で終わりになった。それ以降の先端物理は文科省科研費なども含めて一定のパトロンの支援の元で行うべきであり、国民全てが支援する形の国家プロジェクトとして推進することは、国民の財産の無駄遣いである。

補足:

1)このILCの件、三橋貴明氏が9月21日公開のyoutube動画(マット安川のズバリ勝負)で、その誘致を主張していることで知った。https://www.youtube.com/watch?v=Bt6XKTHh_EU 建設費用として、日本が5000億円負担しなければならないが、そのGDPを押し上げる経済効果は、4-5兆円にもなると、三橋氏が主張している。この件、調べてみると日経でも報道されている。https://www.sankei.com/region/news/170629/rgn1706290069-n1.html 三橋氏の大きな経済効果は、私には法螺に聞こえる。何故なら、そんなに経済効果があるのなら、引き受けてが多く競争になって然るべきである。しかし、そうは成っておらず、CERNと日本側研究者は計画の縮小を検討しているという。

2)酸化とは、原子がプラスイオンの形になることである。それが電荷を帯びない状態になることを還元という。

3)よく聞く話、「手違いがありそれが大発明に繋がった」というのがその証拠である。しかし、その発見後、科学的考察が「その手違いが偶然に行われた最善の実験であった」ことを説明し、次の科学と文明の発展の基礎としたのである。経験だけでは、この文明は築けなかったのである。

4)それ以前に真空管による同調、増幅、検波などの電気回路を組み上げることに成功し、電信技術や放送技術となって結実している。トランジスタは真空管である三極管を半導体で再現したものである。何方でも、論理回路を組み上げることが出来るが、トランジスタの発明は装置の小型化と省エネを可能にした。

5)例えば、ウラン235に低速で中性子をぶつけ反応させると、イットリウムとヨウ素に分裂する。また、ウラン238が中性子と反応して、プルトニウム239になる。核化学とは、そのような原子核の反応や崩壊を研究する学問。

6)例えば、ホーキング博士がヒッグス粒子の研究が地球の終焉を招くと心配をしていたという話がある。http://karapaia.com/archives/52174036.html &  https://www.excite.co.jp/News/odd/Tocana_201510_post_7680.html

7)勿論科学技術という文化のいち側面に大きく寄与しただろう。文化と文明の違いに注意してほしい。

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