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2018年12月16日日曜日

中国の国家資本主義、米国のディープ・ステート、そしてトランプの反撃

1)中国の企業は資本主義的に経営されているが、それ以外の部分においては国家と一体だと考えられる。今回のファーウエイ(華為)のケースがそれを明確に示している。CFOであった創業者の長女が、カナダで米国の要請により逮捕された。国防に関係する同社の不正が容疑である。彼女は7つのパスポートを保持し、世界を股にかけて活動していた。国家が7つのパスポートを出していることは、国家が彼女に7つの人格を与えていたことになる。

この世界一に成長した通信機器の会社は、中国人民軍の関係者が1987年に起業した。その後の急成長が、“国家の支援”無くして可能な筈はないだろう。中国のグローバル企業は、特定の共産党幹部と繋がり、更にその背後に中国国家が厳然と存在する。あの国家は、国境までも超えた地域での企業活動の環境を整え、活動のためのインフラを整備する他、重要なポイントで企業に指示や支援を与えるのではないだろうか。

それら企業と共産党、行政機構が一体となっているのが、中国という国家なのだろう。(補足1)国家権力と13億人の国民(華僑華人を含めて)の相互の連携で、世界を舞台に企業活動している。大きな軍事力と何でもありの諜報活動、国内においては帝国主義的支配力を用いて、技術開発、資源調達、そして市場開拓を国家と企業が一体となって行なっている様に見える。 中国は、華為技術を含めて多くの巨大企業、その国家の支配下にある創業者及び経営者、及び諜報機関を含めた国家の諸機関からなる政治経済的怪獣のようである。そこで、中心的役割を果たすのが、全て共産党員と呼ばれる貴族階級の人間である。明治から昭和初期の、帝国主義の日本における財閥と似ているのかもしれない。

中国人は、広い大地での厳しい生存競争を生き抜いた、勤勉さと高い知能を持つ。その実力主義と中国文化の特徴である家族主義は、他に対する冷淡さと同族の強い結束力等と裏腹の関係にある。それらは、強い投資意欲と緻密な連携を産む。中国企業の多くは、“世界の工場”からノウハウなどの情報を持ってスピンオフして作られた企業だろう。それが一旦成功の道に入ると、野心的に大きなフィードバックにより、そして国家の支援もあり、短時間に大きなグローバル企業に育つことができる。

2)グローバルな経済体制は、アメリカが黙々と世界覇権維持の為に築き上げたものだろう。しかし、アメリカは西欧先進国文化圏の中心であり、先進文化の束縛から自由ではない。そのグローバルな経済体制の本当の司令塔は、民主主義を看板とする国家の中の地下深くに所謂ディープ・ステートとして存在すると言う人も多い。(補足2)

これまで、そこへ言及する人は陰謀論者として社会から排除されてきた。そのグローバリズム推進者たちは、ニューヨーク・タイムズなどのマスコミを牛耳り、世論誘導と政治資金の寄付などを武器に政治を牛耳ってきたと、“陰謀論者”は考えている。

兎に角、このグローバル経済を制限するために立ち上がったのがトランプである。グローバリズムは貧富の差を拡大し、その結果貧困層に落ちたWASPと呼ばれる人の支持で、トランプは大統領になったからである。

グローバル資本は、自国も外国も労働力の供給及び商品の市場として平等に見ることで成長する。その資本と行動を伴にする一部上流階級、及び、その資本の為に宣伝活動等を受け持つ芸能、報道、スポーツ界などが益々豊かになるが(補足3)、一方、労働力供給及び消費市場を構成する一般民は、その資本が移動する発展途上国と本質として同等な存在とみなされて、貧困化する。

グローバリズム経済の副作用で苦しむ米国や先進国諸国を横目に、中国はその恩恵を受けて成長を続け、世界覇権に近づいてきた。国家資本主義でもって、中華のアジアから中華のユーラシアを作り上げるという表明が、一帯一路構想の発表である。それは、習近平による大きくなった中国の米国に対する縄張り宣言であるが、米国は世界覇権をめぐる挑戦状と受け取ることになったのだろう。

米国は、近未来の中国が、米国の世界覇権とその経済的側面である米ドル基軸体制を危うくすると考えた。目が醒めた米国の反応は強烈であり、それが同盟国を巻き込んだ米中新冷戦の始まりである。早々と一帯一路構想を宣言することは、中国の伝統的戦略ではないだろう。(補足4)ただ、それにより国内の基盤を確かにする必要があったとすれば、習近平はその時点で大きな賭けをする必要に迫られていたということになる。

トランプが多大の出費となる世界覇権の放棄で、米国の慢性的赤字体質やWASPの貧困化などが克服できると考えたのなら、それは恐らく間違いだろう。グローバル化のネットワークに米国も深く依存する体質となっている今、世界覇権の放棄は世界の大混乱と米国の没落の原因となる可能性が高い。ドルの崩壊により、基軸通貨を失った世界は大混乱に陥る。その時、新たに基軸通貨となるのはやはり元かユーロだろう。

アメリカ第一主義と言ってみても、没落してしまっては何にもならない。米国は世界に米国債と、米ドルを配給して、今までやってきた世界一の赤字国である。その赤字体質は一朝一夕には変換できない。また、米国のグローバル企業の多くのトップ層としてインド人などの外国人が活躍していることなど、米国は大きく外国人に依存している。資本の多くを支えているのも、欧州などから来た外国人(ユダヤ人)だったことを考えると、閉鎖的な米国ではそれらの人々にとっても魅力に欠けることになるだろう。米国第一という宣言でグローバリズムから完全脱退することは、米国にとって致命的だと思う。

外国人に依存した米国は、見方を換えれば、世界に開かれたおおらかで夢の国アメリカである。それを大事にしてこそ、アメリカの更なる発展と安定があると思う。現在では、トランプ政権と米国議会など米国全体が反中国で一致していると報道されている。戦略家のルトワックは、この方向は当初から一貫してトランプの方針であると言っている。(補足5)兎に角、来年はたいへんな年になるだろう。

以上は一素人のメモであり、妄想の結果かもしれませんので、注意してお読みください。尚、専門的知識のある方による指摘等いただければありがたいと思います。

補足:

1)最近、アリババのジャック・マーが共産党員であることが明らかになった。これまで、アリババ創業という大成功が共産党員以外によりなされたと考えた中国の若者一般に、ジャック・マーが夢を与えていたという。 https://www.asahi.com/articles/ASLCX4TRKLCXULFA01D.html

2)https://www.youtube.com/watch?v=EYA2C_RgsZsに一つの解説がある。

3)昔の河原乞食が、現代のタレント貴族たちである。

4)中日新聞12月16日の社説で、鄧小平は絶対に覇権は目指さないと言ったと書かれている。その社説によると:1978年夏に日中平和友好条約締結のために訪中した園田直外相と鄧小平が会談した。その際、鄧小平は「中国は再三覇権を求めないことを表明している。この考えが変わるようなことがあれば、全ての国が中国に反対しても構わない」と言った。
まさに世界はその様に進んでいる。その鄧小平の言葉を素直に受けている中日新聞の主幹は、中国から何らかの利益を得ているのだろう。

5)トランプは、世界の多極化、つまりアメリカ・ファーストと他の各国は自国ファースト、の道を、本格的には追求はしないだろう。反グローバリズムは、他国に対する貿易赤字解消要求のための道具だった可能性がある。

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