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2018年12月23日日曜日

戦後体制からの脱却は、憲法改正ではなく選挙制度の改革から始めるべき

1)戦後レジームからの脱却は安倍総理が政権についた動機だと言われる。しかし、その宣言は、欧米から歴史修正主義として批判の対象になった。ヤルターポツダム体制からの脱却となれば、第二次大戦とその中の日本について詳細な歴史的評価をしなければならない。それもしないで、戦後国際レジームからの脱却と言えば、欧米から批判されるのは当然だろう。

日本中でも右派と一般に謂われている人の多くは、戦後レジームの中で改正すべき点として、現在の日本国憲法とそれに従ってできた日本国の骨組み、特に自衛軍の創設(自衛隊の改称)と日米安全保障条約の下での防衛体制整備などを考えているだろう。戦後国際レジームに抵触しないのなら、その範囲において改訂することは、既に未来志向の関係にある欧米から干渉される筋合いはない。しかし、東京裁判史観はおかしい(実際にはおかしいとしても)とか、首相も天皇も靖国参拝することは当然だと言いだせば、国際的非難だけでなく、国内からも批判が出るだろう。

最近ジョージ・ナッシュ氏が編集したフーバー大統領の回想録『Freedom Betrayed(裏切られた自由)』が刊行され、その日本語訳も出版されている。(補足1)私も、その解説本とも言える本(渡辺惣樹著、「誰が第二次大戦を起こしたのか」草思社)を読み、その感想をブログに書いた。 https://rcbyspinmanipulation.blogspot.com/2017/07/blog-post_20.html https://rcbyspinmanipulation.blogspot.com/2017/07/ii.html

当然、日本独自にあの大戦とそこに至る歴史に関する体系的な評価を作り上げることは大事である。ただ、それが東京裁判史観と一致しない場合でも、今後の国際情勢とその中の日本にとって利益になるかどうかを考えた上でなければ、戦後レジームからの脱却などという宣言をすべきではない。それが単なる右翼と、現実主義&保守主義の区別だと思う。

仮に、上記国際的な歴史修正が行われたとしても、惨敗だった先の戦争を指揮した者の責任を明らかにしないままに、総理大臣以下国政担当者は靖国神社に参拝すべきではないと思う。なんとか、国立墓地を設立し、そこに戦死者を祀り、国民が自由に参拝できるようにすべきだと思う。

2)日本の停滞はどこにあるかと言えば、政治の貧困である。元外務省の佐藤優氏は、「日本の官僚たちは心の中で政治家などバカにしている」と躊躇なく話しているように、どう考えても政治家のレベルは非常に低い。 https://www.youtube.com/watch?v=v6OomhRhUj0&t=837s

一方、戦後70年経ち、日本が国際社会の中で一応の存在感を持ち得ているのは、政治家が何もせずに米国追従路線をとったことと、その背景で日本が経済力をつけたこと、更に、霞ヶ関の官僚たちが一定のレベルにあったからだろう。しかし、戦後日本のレジームからの脱却となると、政治家としての能力が要求される。その壁に跳ね返されて元の自民党路線に戻った姿が、安倍総理の米国議会での演説だったと思う。その範囲の評価では、立派な演説だったと思う。

日本国憲法の改正も十分な準備が必要だが、現行憲法でも日本国には多くの解決すべき問題が残っている。それらは、①日本の国会議員が真に日本国民を代表するような選挙制度が確立されていないこと、②日本に三権分立の体制を確立していないこと、などである。例えば、最高裁が判断したように、集団的自衛権を持つ自衛隊(self defense force)が違憲でなければ、別に憲法を改正する必要はない。(補足2)

逆に、日本の裁判所が正常に機能していないとすれば、憲法など法律を整備しても何にもならない。日本の主権と、現在の国家体制においてそれを代表する元首をどう規定するのか、そのあたりの議論がなければどうにもならない。総理大臣が国家元首であるのなら、それは国民の意見が直接反映する選挙によらなければならない。

憲法改正=9条改正という類の憲法改正など、現時点では不要である。

3)先ず為すべきは、日本の国会議員を日本国民の真の代表とすることである。そのためには一票の格差を全廃すること、更に、小選挙区制を大選挙区制にすることの2点の改正が必要だろう。

国家機構が正常に機能するためには、国家機構が知的に成熟した国民の総意に基づく必要がある。知的でない国民が多数居たとした場合、或いは外国の利益を代表する一派が国民の中に混在しているとした場合、その一票が選挙結果に反映しない工夫が必要である。その一つが間接民主制である。(補足3)しかし、小選挙区制では選挙民と被選挙者との距離が近すぎて、地域の利益を超えた国家全体を考える人物が選ばれない可能性が高い。(補足4)

一方、全国区では極端な意見の人たちや、上記外国の利益を代表するような人たちも、強い組織を背景に数人の代表を国会に送ることが可能となる。それらの議員による妨害があれば、国会が正常に機能しなくなる。現状、日本の国会はそのような混乱の中にあるように思える。

それらを考えて、私は日本を15—20区程度に分けて、そこに完全な人口比で、議員定数を割り当てるように選挙制度を改定すべきだと思う。更に、それを新たに地方行政の区分けとすれば、尚良いと思う。

戦後の経済発展や高学歴化により、田舎の知的な人物は大都会に移動することが多くなった。その結果、田舎の票は地域の利益を優先し、視野の狭い人物を国会に送る傾向にある。その結果、外国に影響された勢力や明治の勢力が今でも国会で力を維持している状況である。 https://honkawa2.sakura.ne.jp/5237.html

最後に:

日本では人々は環境に自分を合わせようとする。その傾向は、神道の悪い面だろう。この辺で、日本人は自分に合わせるように、環境を変えるという風に考えるべきである。その風習が日本人をより積極的に、議論する国民にし、人と人の間の風通しも良くし、イジメやパワハラと言った公空間の改善も可能だろう。 補足:

1)フーバー元大統領の回顧録の要約版がネットに掲載されている:
http://midi-stereo.music.coocan.jp/blogcopy/hoover/hoover.htm

2)日本の最高裁など司法関係者はまともに仕事をして居ないと思う。最高裁は、砂川判決のように行政に阿る判決を出す自己保身的裁判官に支配されている。安保合憲論における、「高度な政治性をもつ条約については、一見してきわめて明白に違憲無効と認められない限り、その内容について違憲かどうかの法的判断を下すことはできない」という最高裁の判決理由は、私には屁理屈に思える。何故なら、「極めて明白」とはどういう意味かさっぱりわからないからである。もちろん、国家元首の存在しない国では、或いは米国大統領が国家元首なら、そのようなことになるかもしれない。その場合は、そう明言すべきだ。

3)ブレグジットは不適当だから、国民投票をやり直すべきだという意見を、英国民の多数が持っているようである。その再投票は愚策であるとの議論が以下のサイトに書かれている。 https://jp.reuters.com/article/lloyd-brexit-idJPKBN1O90R7 国民投票で決めたことを実行せずに、再投票にかけるのは民主主義の否定である。それがわからない人が多くいるのが世界の現状である。

4)IWCからの脱退が当然であると話す自民党幹事長は、鯨食文化の残る太地町のある和歌山県の選出である。父子二代の県会議員を経て、自民党幹事長まで上り詰めた。自民党幹事長としての知性と実力があるかと言えば、Qである。

1 件のコメント:

  1. 根本的には、政治家の水準が低いのは、国民の多数が愚かなためでもあります。
    と、言っていてもしょうがないですので、なるべく改善する案を考えてみました。

    戦後体制の脱却を図ることを目的にするなら、
    ●直接民主主義の導入。
    イギリスのEU加盟の是非を決めるなど、重要な採決は投票とする
    これが、いいと思いました。ちょっと目的に直接繋がらないのですが、
    ●公約を数値化
    公約事項を決め、投資対効果を数値=お金で、回答させます。
    正直、思想なんてあまり関係なく(本当はあるのですが、同じような差し障りないことをあげるので、評価できない)、経営者としての考えを述べていただければ構いません。

    というのは、どうでしょう?究極的には、最良の政策がとられればよく、経済的に破綻する、増税方向の政策に傾くことが第一の問題であるなら、経済的に良くなる政策を選び易くすることが重要です。

    あと、選挙システムが、改竄されないことを保証、検証できるようにあるべきと思います。

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