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人類史の本流は中華秩序なのか、それとも西欧型秩序なのか

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2019年12月17日火曜日

新「チャイナ・シンドローム」:中国は国家資本主義により世界支配を目指すのか?

1)チャイナ・シンドロームとは、原子炉の炉心溶融を意味する言葉である。事故で溶融した核燃料が、原子炉の底から高温のまま地球の裏側の中国まで到達し、世界をパニック状態にすることを想像して、米国の技術者がジョークを交えて作った。(補足1)

 

現在、米国のグローバル資本主義経済のシステムが、地球の裏側の中国に波及した結果、新しいタイプの混乱が世界に生じている。表題は、それを原子炉溶融に準えて、「新チャイナ・シンドローム」と呼んだのである。

 

「法の支配と個の自由」を中心的価値とする西欧諸国が、無警戒に共産党独裁の中国と資本主義的経済交流を行い、国家資本主義の中国を大きく育て上げた。その必然的結果として、西欧諸国は上記”中心的価値”を脅かされる情況に陥っている。そのことに、漸く欧米は気付いたのである。

 

その地球規模の混乱は、西欧諸国の個別的な防衛行動、米国と中国の間の経済を戦場とする覇権戦争、新東西冷戦など、色んな側面とそれに対する形容はあるが、それらは総合的に上記「新チャイナ・シンドローム」的な混乱と呼べるのではないだろうか。

 

米国から見て地球の裏側にある中国は、共産党一党独裁の国である。共産党とは言うまでもなく、労働者である人民が平等に政治権力を持ち、その政治・経済活動の成果である生産物や、個人としての権利を平等に享受する、そのような社会を目指す政治勢力である。その夢物語は、ソ連崩壊とともに消えた筈である。

 

しかし中国は、1970年代のニクソン訪中の数年後から、“民間資本”の蓄積を許すように方針転換して、昇竜のように復活した。共産主義独裁国家を標榜し続けながら、そのような方針転換をすることは、毛沢東から鄧小平に至る中世帝国的な恐怖政治により可能となった。それは、共産党独裁の国の共産主義の放棄であった。

 

共産主義の放棄が国家トップの決断一つで可能だったことは、そこでの共産党思想はその標語だけが重要であり、だれもその中身など考えもしなかったからだろう。中国とは、何ものにも縛られない野生の自由に近い自由を持つ、軍事的にも経済的にも巨大な国家となったのである。

 

民間資本とはいうものの、共産党独裁政権下の中国の資本は、国家の土地の上に建造した私設ビルのようなものである。つまり中国の民間資本つまり株式会社とは、一党独裁の政治体制の上に構築された資本主義経済構造体の一枝であり、独立した民間会社ではない。現在の中国は、全く新しいタイプの資本主義的帝国である。国家が野生の自由に近い自由をもつのなら、その一枝である企業も、同類の自由を持つ。それが欧米先進国との関係において、トラブルの原因となっている。

 

その中国を育てた中心的勢力が、上述のように米国のグローバル化を進める政治勢力と、そのバックボーンにある巨大民間資本であった。この共産党員を名乗る人たち(補足2)の国家資本主義体制は、天才鄧小平の発明だとされるが、その環境を整備したのは米国であり、そのアイデアを与えたのは米国の政治中枢に居た、現在高齢のあの天才かもしれない。(補足3)

 

2)中国の海外企業買収戦略:

 

その中国の政治は、共産党独裁から中世の専制国家の方向を向いており、人類の歴史を逆行しつつ巨大化していると考えることも可能である。(補足4)歴史は繰り返すのだから、時間軸の周りの螺旋上の一巻き上の段階を、中国は歩み始めたと見ることも、また可能である。(補足5)

 

中国首脳は、当然後者の考え方である筈。中国の体制とこれまでの政治経済のグローバリズムとが一体化することにより、世界が「開放」されるだろうと言うかもしれない。(補足6)ここ数年の間に、欧米各国の保守系の人たちは、前者の考えにたち、中国による世界史を逆行するような世界制覇の野望に気付いて、警戒感をもってその戦いを開始した様に見える。

 

以上のような世界情勢の理解に導いて呉れたのが、今日も及川幸久氏のyoutube動画であった。その表題は「中国製造2025に向けた海外買収戦略」である。https://www.youtube.com/watch?v=8q8VbPJrBZU

 

 

 

この動画で及川氏は、2014年より中国による欧米先進国の企業買収が急増しており、それを警戒すべきだとする、米国のForeign Policyという雑誌の記事の解説をしている。そこで注目されたのは、中国ゲーム会社によるGrinderというゲイとバイセクシャルのための出会い系サイトアプリの提供・運営企業の買収と、それを米国のCFIUS(米国への外国投資監視委員会)が強引に取り消したという出来事である。

 

CFIUSは通常、軍需産業、エネルギー産業、SNSなどの買収を監視しているが、ゲイ等の出会用アプリの運営会社の、しかも既に終了した買収を強引に取り消させたことの背景に、300万人に及ぶ個人情報の保護であると及川氏が解説している。つまり、その個人の中に、もし米国軍や政府の高官が含まれていると、中国に利用される可能性が高いからである。

 

つまり上記買収は、単なる経済活動の一環ではなく、中国という国家による米国の国家組織へ介入する目的の一環として、中国“民間企業”が国家の手足となって実行したと、CFIUSは見做したのである。

 

この中国の民間資本による、中国の国策のための西欧諸国内の企業買収は、ドイツやスウェーデンなどで急増しており、既に両国は警戒態勢をとっているという。これらは、中国の「中国製造2025」のための買収だと分析される。

 

つまり、先端技術の工業製品の全てを中国国内で製造する体制を2025年までに完了するという国策国策のために、中国の各民間企業は、一体となって西欧先進国の先端企業を食い荒らしているというのである。自国での短期間での技術開発は無理なので、会社ごと買い取って、技術を全て中国に移転すれば良いと考えたのだと推測している。

 

上記ゲイやバイセクシュアルの出会系サイトの買収では、むしろもう一つの政治目標である一帯一路構想、つまり世界制覇、の実現と大きな関係があるだろう。21世紀の一帯一路構想が想定する領域が、13世紀初頭のチンギス・ハーンの制覇領域で終わるわけがない。

 

米国と覇権争いにおいても、平和共存ではなく最後は勝つことを目標にしているのだろう。その中国覇権バブルは、地球を覆うか破裂するかの二つの路しかないだろう。

 

このように考え、我が日本国を振り返ると、暗澹たる気持ちになる。日本には国家防衛の意思は、憲法にも国民にもなく、従ってスパイ防止法もない。実際、中国に北海道を始め要所を買収されて、将来北海道や沖縄で独立騒動が起こる可能性もある。その後の経緯は、クリミヤの歴史を想像すれば自ずと明らかである。

 

自分の政権を犠牲にしてでも、現在の国際情況についてありのまま紹介し、国民に強力な「目覚ましコール」を送るのが、安倍氏の最もやるべき仕事だろう。国民が目覚めれば、次の政権がその民意を吸収する形で体制をまともなものにすれば良い。一つの政権で全てを行うことは所詮無理である。何故、そのように安倍氏は考えずに、中国に媚を売るのか。

 

以前、伊藤貫さんは、西部邁さんとの討論で日本の危機を心配しつつ笑って話していた。その気持ちが分かるような気がしてきた。動かない政治を前にして、笑う以外に手がないのである。

 

 

https://www.youtube.com/watch?v=L5biijJUQ6o&t=1200s

(12月18日早朝、最終編集)

 

補足:

 

1)溶融した炉心の核燃料が高温のまま地球の裏側の中国まで到達すると想像して作られた言葉であるが、当然重力の法則により地球の中心より中国側には進む筈はない。福島原発の炉心溶融でも、溶融状態で地殻に浸透はしなかった。

 

2)中国の共産主義体制は、ブルジョア市民革命を経ることなしに出来上がったので、借り物の共産主義である。20年ほど前までは、国家のトップを「同志」と呼ぶならわしが中国にもあった。その欺瞞は流石に現在の中国からは無くなった。現在その言葉を用いるのは、北朝鮮のみである。

 

3)鄧小平の支配の時期になる少し前に、その人がニクソン訪中に随行した。そして、その数年後にあの「白猫であれ黒猫であれ、鼠を捕るのが良い猫である」という鄧小平のプラグマティズムが開始された。ただそれだけの二人の時間的空間的関係から推理しただけである。

 

4)中国「元」の皇帝チンギス・ハーンが東ヨーロッパに至るまで、その支配下に収めた。その新しいバージョン、新シルクロード構築が、一帯一路構想である。

 

5)国家資本主義の中国の経済が、世界の脅威ではないとする意見も勿論存在する。その文章は、中国の国有企業の割合が年々減少しているという図を、その先頭に掲げている。これだけで欺瞞的内容だと分かる。純粋な国有企業なんか問題ではないことは、上に述べた通りである。https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/57658

https://jp.reuters.com/article/usa-trade-china-msci-idJPKBN1X42D6

 

6)米国と中国の資本の往来を妨害すると、世界はパニックになると主張する声も米国に多い。つまり、反グローバリズムは単に共和党トランプの政策であり、大統領が民主党になれば、これまでの米中関係が復活する可能性もまだ残っていると思う。

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