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2021年2月1日月曜日

ダボス会議と主催機関の世界経済フォーラムについて

1)ダボス会議:

 

機能不全気味の国連の外で、国際問題を議論する有力な場が幾つか存在する。例えば、ビルダーバーグ会議や国際経済フォーラム(WEF)の主催するダボス会議がある。WEFはローマクラブと同じく、スイスが発祥の地である。

 

ダボス会議は、WEFが招待した政治経済の世界的人物の他、芸能、スポーツなど、多分野からの2500人ほど集めて、通常毎年1月にスイスのダボスで、地球規模の問題を設定して議論する。参加者はWEFが自己都合で選定する。

 

今年はパンデミックを理由に5月に延期され、会場もシンガポールに変更された。1月下旬にはネット会議の形式で、世界の首脳の「ダボス対話」があったようだ。25日には、中国の習近平総書記のスピーチがあり注目された。(補足1)https://www.jetro.go.jp/biznews/2020/12/9394cbf09e15b6db.html

 

ダボス会議は、世界の指導者に世界政治や経済の方向を議論させる場を与えている。ただ、その議題は、前年の11月のWEFの「グローバル・アジェンダ・カウンシル(GAC)」の会合で決められる。GACの詳細はWEFのホームページには明示されていない。

 

2021年の年次総会のテーマは、パンデミック(世界的大流行)後の世界の再建に関する「グレート・リセット」だという。(グレート・リセットについては次回書きます)

 

 

2)世界経済フォーラムについて:

 

ダボス会議という名前は日本でも有名なので、そこから文章をスタートしたが、本来はその主催機関である世界経済フォーラム(WEF)の説明から始めるべきだったかもしれない。ダボス会議が花なら、WEFはそれを育てる草木であり、本体である。

 

WEFを知るには、そのHPを読むのが良い。https://www.weforum.org/about/world-economic-forum その日本語版は、上記からプルダウンで出てくる。WEFの評議員に、菅政権のアドバイザーの竹中平蔵氏が存在していることに注目すべきである。

 

そこのミッションのところに、The World Economic Forum is the International Organization for Public-Private Cooperation. と書かれている。日本語のページでは、「世界経済フォーラム(World Economic Forum)は、官民両セクターの協力を通じて世界情勢の改善に取り組む国際機関です」と訳されている。

 

官民協力は(Public-Private CooperationPublicGovernmentalは同じではないが、非常に近い)政府の仕事であり、国際機関が割り込むことには大きな違和感を感じる。菅政権がカーボン・ニュートラルを言い出したことと、WEF役員として竹中平蔵氏が居ることを考えると、菅政権は、WEFに中心的政治課題を委ねているようにも見える。尚、菅氏と竹中氏の関係は、以下のページなど数多く報道されている。

https://news.yahoo.co.jp/articles/06b7db31f160c7b6a6aff38274d476cc9d69ac90

 

スウェーデンの環境問題の活動家であるグレタさんも、ダボス会議の重要な講演者として活動していることも印象的である。カーボンニュートラルは、WEFのメインテーマの一つである。

 

WEFのミッションとして記した文章は、WEFは世界政府が出来たとき、その行政部門を担うことを考えていると読むことが可能である。つまり、主権国家の内政に干渉する可能性のあることをミッションにしているのである。尚、WEFは国際連合の経済社会理事会のオブザーバーの地位を有し、スイス連邦政府の監督下にあるということである。(ウィキペディア)

 

WEFは、「特定の利害と結びつくことのない、独立した公正な組織です」とあるが、ダボス会議の他に、「イノベーション、科学、およびテクノロジーについての年次総会」を中国で開催している。役員(評議員)の中に含まれる中国系人物は、ヨーヨーマ(チェリスト、米国籍)だけであるが、中国を活動の一つの重要域(拠点または対象)としており、今後の姿勢に注目すべきである。

 

共産党一党独裁という特殊な政治形態を持ち、人権弾圧を当然のこととして行っている国において、毎年大きなイベントを開催する団体が、「特定な利害と結びつくことのない独立した公正な組織」と言えるだろうか? 

 

3)WEFのメンバーについて:

 

WEFへの参加者として、政治や経済だけでなくスポーツ界や芸能界などからも著名人を集めている。また毎年、ヤング・グローバル・リーダー(YGL) という「賞」を数十名程度に授与して、WEFの協力員とし、ダボス会議に参加する「栄誉」を与えている。これらのことは、WEFの活動の幅広い層への宣伝を通して、長期に亘るWEFの維持成長と世界の変革を綿密に計画している事を意味していると思う。

 

YGLの一人に選ばれた齋藤 ウイリアム浩幸氏によれば、日本以外の国々では、YGLに選ばれるということは、たとえば「ウォール・ストリート・ジャーナル」や「チャイナタイムズ」でフロントページを飾るニュースだという。そして、名刺に「YGL」と書くのはひとつのステータスになっているというのだ。

 

多くの欧米メディアも、WEFに特別の配慮をしているようである。若干深読にすぎるかも知れないが、若い有能な人を選び、マスメディアと連携して高いステイタスを意識させ、ダボス会議のアジェンダを各地で広報をさせるためだと思う。https://gendai.ismedia.jp/articles/-/41784?page=2

 

更に、ストラテジック・パートナーと呼ばれる、グローバル企業100社も選定して、WEFの目標達成に協力させようとしている。それらの企業も、背後にあるかもしれない巨大な力と、それらと関係するマーケットを考えて参加しているのだろう。(補足2)

 

一人の大学教授の主催する私的な団体としてスタートした事になっているが、スイス政府がバックアップしているので、米中中心の経済的グローバリズムを超えた巨大な政治的グローバリズムを目指しているように感じる。

 

主権国家体制を国際関係の中で最善だと考える者にとって、何やら胡散臭い感じがする組織であり、会議である。実際、今年のダボス会議にはトランプ前米国大統領は招待しないと明言している。https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-01-24/QNFQ9ADWLU6A01

 

ダボス会議は、今年「グローバル・リセット」なる言葉を、参加者やメディアを利用して喧伝し、何となく世界の近未来のあり方として世論を誘導しようとしているようだ。今年のアジェンダ:グローバルリセット及びステークホルダー資本主義については、次回考えをまとめる予定である。

(13:50 日本語修正)

 

補足:

 

1)習近平はスピーチのなかで、国際法と国際的なルールを重視することが極めて重要だとし、「対立はわれわれを袋小路に陥れる」と指摘した。新型コロナウイルスのパンデミックから世界経済の回復を協力して目指すべく、再び互いを尊重し合うよう訴えた様だ。相手としては勿論米国を念頭に置いている。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-01-25/QNHP0VDWRGG101

 

2)スイスはオフショアのプライベート・バンキングで世界一である。スイスの銀行は堅く秘密を保持することが人気の理由のひとつだろう。つまり、スイスには恐らく中国を含めて世界の富豪が資産を預けており、それらの富豪の政治的思想が、WEFに影を落とす可能性があると思う。

 

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