ウクライナは戦争に負けるだろうが、プーチンは本来の目的を達成できないだろう。プーチンの目的とは、ウクライナを親ロシアに戻すことである。それは、プーチンが夢見る嘗ての偉大なロシアの再興の一環とも考えられるだろう。
今回のロシアによるウクライナ侵略は、(国際金融資本や軍産共同体などと呼ばれる勢力下の)米国による旧ソ連領域支配の最終プロセスに見える。それに抵抗してきた(ソ連の中心だった)プーチンロシアが、いよいよ丸裸になるだろう。以下にこの考え方のアンチテーゼ的な考え方を示す。それは、国境に映った侵略的な自分の姿に怯えるプーチンロシアという考え方である。
以前北野幸伯氏のメルマガとして紹介したように、全ロシア将校協会はウクライナ侵攻の約1ヶ月前に、今日の事態を見越してプーチンの辞任を要求した。この全露に公開された文章(ロシア語)の一部をグーグル翻訳すると、以下のようになる。(補足1)
ウクライナに対する軍事力の使用は、第一に、国家としてのロシア自体の存在に疑問を投げかけるでしょう。第二に、それはロシア人とウクライナ人を永遠に致命的な敵にするでしょう。第三に、一方と他方に数千人(数万人)の若くて健康な死んだ男がいるでしょう。これは確かに私たちの死にゆく国の将来の人口動態に影響を及ぼします。戦場では、これが起こった場合、ロシア軍は、多くのロシア人がいるウクライナの軍人だけでなく、多くのNATO諸国からの軍人と装備にも直面し、…
(敢えてグーグル翻訳のままに示す;)
その手紙には、以下のようにも書かれている。ロシアは過去の超大国だったころのロシアを再興するのではなく、身の丈にあった民主的なロシアになることが良い。そして、プーチンの対外戦略は間違っている。例えば、クリミヤを併合しても、国際的にはクリミヤは依然ウクライナに属すると見なされている。
この全ロシア将校協会の手紙の内容は、北野氏執筆の現代ビジネス誌上の記事に紹介されている。(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/92504?imp=0;補足2)
ソ連崩壊後にNATOの役割が一旦なくなったのは事実である。しかし、その後のロシアによる旧ソ連諸国等への軍事的介入が証明しているように、NATOはロシアの侵略を想定した軍事同盟として新しいバージョンとなった(NATOバージョンII)のである。
そして驚くべきことだが、全露将校協会のこの手紙では、NATOはロシアにとって脅威となるような活動をしていないとか、ウクライナがNATOに加盟する権利も認めるべきだと主張していることである。これはバイデン政権の主張と同じである。
ロシアの将校協会のこの記事は、1月の段階でロシアのウクライナ侵攻が高い確率で予想されていたことを明確に示している。日本の多くの記事や解説のロシアのウクライナ侵略は得にならないからあり得ないというモデル(例えばhttps://president.jp/articles/-/53674)は、完全に間違っていたのである。独裁的なトップには、国家と国民の経済的利益は第一の項目ではないのだ。
2)プーチンの戦略は愚かであった
上記全露将校協会の手紙が、そのトップの意見ではなく、その協会員の平均的意見なのかどうかはわからない。しかし、この協会は以前はプーチンを支持していたことを考えると、プーチンのウクライナ侵攻の動機は、ロシアの視点からも正しくない(つまりプーチンの夢想或いは偽装による)と考えるべきである。
つまり、NATOの東方拡大はロシアにとって脅威であるというのは、単にプーチンロシアが国境という鏡に映っている自分自身の姿を見ただけということになる。この点は、以前の私の記事の主旨を否定するものだが、ここで訂正しお詫びするしかない。
つまり、ウクライナのNATO加盟がロシアの脅威であるかどうかは、ロシア次第だということである。少なくとも、「ロシアが侵略的でなくなれば、NATOバージョンIIはロシアにとって脅威ではない」という前提で、ロシアは外交を展開すべき時になっていたのだろう。
勿論現在では、NATOの対ロシアに対する敵対姿勢は明らかである。例えば、2017年のワルシャワサミットにおいて決定された、ロシアの襲来を仮定してバルト3国とポーランドに仕掛けられた罠としての一個大隊(Tripwire Force )の配置は、明らかに反ロシア戦略である。
https://www.youtube.com/watch?v=AI2JuvQ15qo
ただ、ロシアとNATOの敵対関係を無くす努力はロシアがすべきだというのが、その手紙の主旨である。それは、ウイグル人や法輪功の団結に恐怖を抱く中国共産党政権にも言えることである。ウイグルでの出来事を理由に中国共産党政権を批判するのなら、このプーチンのNATOの恐怖を認めることは矛盾している。(追補1)
これで、プーチンは失脚するだろう。それは、ロシアの崩壊と同時進行するだろう。ウクライナは大破壊されるが、再興するだろう。
上記動画には、テレビにはあまり出てこられない二人の専門家の意見を引用して、客観的にロシアのウクライナ侵略について報告している。この二人のような専門家が、テレビなど表のメディアに出られないのが、日本の弱点だと思う。
終わりに:
この話題は、2月13日の記事で基本的な背景を書いた時に述べたように、正直“しんどい”。そして、ブログを書いている以上この問題に触れる義務があると思い、続けてきたことを正直にここに記します。尚、上記動画は、これまで引用してきた動画サイトよりも、より専門的で信頼できるものだと思います。
追補1)一人の人間は天才でも国家に比べれば非常に小さい。その小さい人間が小さい頭脳で考えて国家を治めることは至難である。権力が一人に集中するプロセスで、周辺に対する感受性の高さという天才的な能力が、最後には国内の大衆と周辺の諸国家に対する恐怖心となる。
(3月10日午前6時、全面改訂、追補追加;大幅改訂に対し、お詫び申し上げます。)
補足:
1)この記事を書いた北野幸伯氏は、2月10日のメルマガでこのことを原文のサイトを引用して配信している。http://ooc.su/news/obrashhenie_obshherossijskogo_oficerskogo_sobranija_k_prezidentu_i_grazhdanam_rossijskoj_federacii/2022-01-31-79?fbclid=IwAR2PimuTHdfkV3OegwLuOajfjYsbBxmiTWOriThAgNJF-R4rh-NY15DJSLY
後述のように、北野氏はこの記事を現代ビジネスに紹介している。
2)この内容は北野幸伯氏の記事に、まともな日本語で引用されている。このような書き方をするのは、元の報告、北野氏のメルマガ、そして私の2月13日の記事の関係を正しく示すことが必要だと思ったからである。https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12726626308.html
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